十四朗亭の出納帳

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十四朗

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『徹夜明けのブレイクタイム』

久々に上海SSシリーズ。
この上海、なんか「撃てます」とか「操作説明を行いますか?」いいそう。


『徹夜明けのブレイクタイム』


霖之助、アリス、上海











私は自己を定義する。起動の度、再起動の度、私は自らを自らであると定義する。
私は上海と名付けられた自動人形。膨大なデータを書き込まれ、創造主の手を離れて行動する自動人形。

正式名称は『オートマタ・シャンハイ』。

最初期に創造主アリス・マーガトロイドにより創造された人形を元に新たに生み出された。
製造目的は『人工生命体における自我と意識の発芽を観測する為』。
現在、私に意識は存在していない。自分が自分であるという事を確かめる為の意識が存在していないのだ。

私は『感じる』事が出来ない。
熟れた林檎の赤さを感じられないし、赤という色を視認した際、様々なイメージを感じる事も出来ない。
私には感じる機能――クオリアが存在していないからだ。

私は感じる機能を求める。世界に触れ、感じる事が生命への筋道だと考える。
起動完了。上海、これより学習と活動を再開する。

――"Hello World"

まずは私は世界に挨拶をした。









アリス・マーガトロイドとご近所付き合いをする上で、気を付けなければならない事が一つある。
彼女は魔法使い、つまりは研究者としての性質上、長期間自らの魔術工房に籠って研究を行う。
昼夜を問わず、寝食を忘れて、長い時は三ヶ月以上僕の前に姿を見せない時もある程だ。

いっそこのまま研究にかかりっきりで僕の店に訪れなければどれだけ僕の気が晴れる事か。
あの煩わしい金髪美少女の相手をしなくていいというのは実に素晴らしい。
からかわれる事も、煙に巻かれる事もない。客の相手をして、終わるだけの穏やかな日常。

だがそういう訳にもいかない。必ず彼女は研究に一区切りを付けて僕の店にやって来る。
眠たそうな眼を擦りながら、異様にハイテンションの状態でやって来る。

「シャンハーイ! ヴァージョン3.67のお披露目よ!」

こんな風に。目の下の隈ぐらい化粧なり、仮眠をとるなりして消してきたらいいものを。
整った目元に黒い斑点を作った彼女は僕の店に来るなりそう叫んだ。
よく見ると髪の毛もボサボサで服装も乱れている。
だが瞳だけは炯々と輝いていて、口元には張り付いたような笑が浮かんでいた。

相変わらず上海はそんな主の肩に座り、無表情を崩さない。
ヴァージョンアップとアリスは言っていたが、外見上の変化は無いようだ。
創造主によく似た金髪と表情を欠いた顔立ち。碧いガラス玉の瞳は無感情に僕を見つめている。

相手にしたくない。
面倒だ、煩瑣だ、煩雑だ、煩わしい、迷惑だ、頭を抱える、不都合だ、トラブルだ、許容し難い。
頼むから僕以外に上海の自慢話をしてくれ。
どうせ僕の意見が小馬鹿にされるのが目に見えているのだから。
そっとしておいてくれ、明日に繋がる今日ぐらい。

「よく来たなアリス。帰れ」

「帰らないわよ。いいから上海を見なさい。この子は二週間前に比べて格段にパワーアップしたのよ」

「じゃあ、具体的に何が出来るようになったかだけ言ってくれ。そして帰れ」

「言う代わりにお風呂とご飯の支度をしてください。あとお布団」

「そこまでにしておけよ、マーガトロイド。僕は君の何だ、何なんだ」

「霖之助さんは私にとっての大切な人よ」

「……話を聞こう。風呂と食事と布団を用意しようじゃないか」

そう、ご近所さんなのだから話しぐらいは聞いてやってもいい。人情は実際大切な事だ。
よくよく考えてみれば彼女は僕が店を開いた時からの付き合いではないか。
それを顔を合わせるなり帰れだなんて、薄情にも程がある。

「では上海の新機能その一。楽しいお喋りをします」

「前も聞いたぞそれ」

「ならもっと楽しいお喋りをします」

「試してみよう。上海」

肩の上にのった上海人形に声をかけてみる。

「温かいココアの準備、了解」

「いや、僕はまだ何も言ってないぞ」

「しかし私のデータによれば森近霖之助の上海、
 という呼びかけはココアか菓子の用意を命じる第一プロセスであるとされている」

「色々省き過ぎだ。僕は君に話しかけただけだ。ココアと菓子の用意は後でいい」

「了解」

カウンターテーブルに降り立ち、直立状態のままで静止する上海を見て、僕は溜息をついた。
まるで成長していない。いや、むしろこれは退化といっていいのではないか。
まだ以前の方が論理的思考を行なっていたはずだ。それがどうしてこんな事に。

「アリス。これでは退化だぞ」

「いいえ、進化よ。正確に述べるならばより人間的になっただけ」

「何処がだ。名前を呼んだだけでココアの準備をしようとしたぞ」

「そう、まさにその反応こそ人間的だと思いません? 
 名前を呼んだだけで何をして欲しいか分かる。
 論理的思考を放棄し、直感による行動を上海に組み込んでみたの」

「直感……しかし、的外れでは意味が無い」

「それをこれから学習させるのよ。
 アナタは今までと同じように上海と接すればいい。
 元よりそれ以上は望んでいないし、期待もしてないから」

「前から思っているんだが、そう考えるのなら誰か別の人間を当たったらどうだ」

「まあ、そんな冷たい事言わないで。私が頼れるのって霖之助さんだけなの。
 霖之助さんなら途中で飽きずに最後まで私とこの子に付き合ってくれるって信じてるの」

「なら仕方がないな。本当に仕方がない」

何にせよ頼ってくれるというのなら悪い気はしない。他意などない。
僕も暇なので気晴らし程度に付き合って欲しいというのならやぶさかではないという事だ。

「森近霖之助、私は貴方と何か話がしたい」

一人で頷いていると上海の方から声をかけられた。
僕は少々面食らった様子で「ああ」と答える。
上海の方から話を振る、という事自体は前からあったが、
「何か話がしたい」という漠然とした物言いは初めてだった。

彼女の会話には必ず何かしらの目的があり、目的の為に会話を行う、というのが常習化していた。

取り留めのない会話、というものを上海とした覚えはない。
そもそも、上海には会話を楽しむ心というものが存在していないのだ。
比喩でも何でもなく、彼女には心がない。感じる力を持ち合わせていない。

瞳から周囲の状況を読み取り、コードとして組み込まれた無数のパターンを組み合わせて彼女は会話をする。
僕が「今日は天気がいい」といえば上海は窓から空を眺め、天気が良ければ肯定をし、天気が悪ければ否定する。

こうして行う会話を常に記録し、学習していくので理論上では、
上海は他人と会話をすればする程人間らしいやり取りを覚えるという事だ。

ただしその先については僕とアリスで意見が別れている。
こうして学習を続けた果てに上海は自らの意思、つまりは自我を獲得するというのがアリスの意見だ。
第三者との接触による意識の学習と人の中に潜む非効率で不確定な要素を理解したその時、上海は自我を持つ人形となるだろう。

一方の僕は否定派だ。
上海の行為は何処までいっても所詮は模倣であり、ある程度までは自我らしきものを獲得するかもしれないが、
完全な自我の発芽には至らない。無から有など生まれはしない。

第一魂の無い上海がどうして一個の生命体になれるというのだろうか。
感じる事の出来ない人形に、人間らしさの再現など不可能に決まっている。

「何かな、上海」

「私は問いたい。生命の判断基準とは何か?」

「生命の判断基準か」

「肯定。寿命か、心臓の鼓動か、自我の有無か、意識の有無か、貴方の意見を参照したい」

「生命自体の基準は酷く曖昧で多様的だ。
 雄雌の性交により生まれるものもあれば、自然に発生するもの、
 一つの個体から分裂するもの、概念が蓄積し生まれるもの、元あったものに宿るもの、他にもたくさんある。
 ただそれらには一様に意識があり、自我があるんだ。自我については前にも話したね?」

「肯定。森近霖之助は自分が我であると認識する事が自我であると教えた」

「そうだ。我は我である。言葉にするだけなら簡単だが、君にこれが出来るかい?」

「思考。回答不能。
 理論上私はこの身体が破壊され機能停止に陥ったとしても、
 また新たな身体を得て活動を再開する事が出来る」

「そうだろう。君には今の身体が自分だけのものだと思えない。いや、感じられないんだ。
 他にも代わりはある。この体が駄目になっても他の身体がある。
 こんな考え、普通の生命がすると思うかい?」

「否定。一般的ではない」

「そも、君には死の概念が理解出来ない。
 君にとっては機能停止が死ではないというのもあるが、君が恐怖という感情を持たないからでもある。
 なあ、上海。君は今の自分が消えてなくなるとしたら、どう思う?」

「アリス・マーガトロイドの研究続行に大きな不都合が生じる。
 また私の中に蓄積されたデータが失われるのは不都合である」

「駄目だな。死に対する模範解答ではない。
 もっと忌避しろ、もっと怯えろ、その上で考えないようにするんだ」

「発言の意味が不明。死についての解答を求めたのは森近霖之助である。
 にも関わらず、考えないようにしろというのでは矛盾が生じる」

「僕の言い方が悪かったな。
 いいか、君は死を恐怖するようになりながらも日常では努めてその事を考えないようにするんだ。
 目が覚めた時や、眠りにつく前にふと思い出して不安になる。そんな体験をしてみるといい。
 頭の隅に追いやっていた死への不安が鮮明に描き出すあの不安。それを学習しろ。
 そうしたら少しは生命の定義を自分の中で決められるかもしれない」

「了解。以上の会話を学習対象として保存する」

「いい子だ」

僕は微笑んで、アリスの方へ目をやった。
アリスは僕と上海のやり取りに耳を傾けながらも眠そうな顔で船を漕いでいた。
いくら種族としての魔法使いとはいえ、長期間の覚醒状態は堪えるらしい。
特にアリスは健康な精神を保つ為、普段は三食をしっかりとり、睡眠もとるという珍しいタイプだ。
おそらく上海のアップデートにつきっきりでろくに食事をとっていなければ、寝てもいないらしい。

「アリス」

「あ、ああ、霖之助さん。聞いてたわよ。聞いてました」

「風呂と食事どっちが先だ?」

「どっちも……いえ、お風呂がいいわ。ご飯は軽いものでいいから。
 トーストとミルクかおにぎりと味噌スープで。悪いわね」

「といいつつ、しっかりと意見を伝える君の図太さには恐れ入る」

「だって霖之助さんは私の要求を断らないし、断れないでしょう」

無視して僕は上海を呼んだ。

「了解、温かいココアを準備する」

「アリスに温かいココアを……あーそうだ、それでいい」

アリスが追加した『直感』が上手い具合に機能した。
ただの偶然か、今までの学習結果を元にした反応だが、少しだけ人間的な反応でもあった。
台所へと消えてゆく上海を見送りながら、僕は風呂を沸かす為風呂釜へと向かう。

少し熱い方が徹夜明けにはいいだろうか、等と考えながら煌々と燃え始めた釜の中へ薪を放り込む。
揺らめく炎を見つめながら、僕は上海の事を考えた。
アリスが上海の学習を僕に任せるようになってからというもの、
アリスと顔を合わせる機会は格段に増えた。

彼女の研究に対する情熱と行動力を評価する事もあれば。
その奔放な態度に腹が立つ事もある。
けれど結局は自分の中で、こういうものだから仕方がないと諦めてアリスと付き合っている。

今日にしてもそうだ。
僕は久々にアリスと会えて、少し嬉しかった。
煩わしい煩わしいと思いながら、結局は彼女のして欲しい事をしてやる。
昔から魔理沙や霊夢に甘い事を自負してはいるが、この行動の根底にあるものは……。

そこまで考えて、僕は釜に薪を入れすぎている事に気付いた。
炎は轟々と燃え盛り、このままでは風呂に入ったアリスが茹で上がってしまう。
慌てて僕は薪を除けて、火力を調節した。僕も上海の事を言えないのかもしれない。

とにかく、僕のアリスに対する感情については考えないようにしよう。
今しばらくは、アリスもそんな事に時間を割く余裕はないはずだ。
何せ彼女は寝食を忘れる程に自分の研究に夢中なのだから。

Comment

#No title
霖之助さんが恋する展開とは素晴らしい。
続きを楽しみにしております。
  • by:
  •  | 2012/11/28/19:47:57
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#No title
やっぱりこのシリーズ面白いです。
これと軍人鈴仙シリーズ、続きがあるなら読みたいなー
  • by:
  •  | 2013/07/27/00:04:30
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