十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

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十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
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趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
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キリングマシーン・フロム・博麗

鬼さんのラジオで承ったリクの霊霖。
れーむちゃんではなく霊夢さんなお話。
物騒なタイトルは査読を担当していただいたベルマンさんが名付けてくれました。
話の内容とは一ミリも関係ありませんが、気に入ったので採用。
B級アクション映画かゾンビ映画くさいタイトルです。



『キリングマシーン・フロム・博麗』


霊夢、霖之助












僕は彼女にただの一度も情熱というものを見た事がない。
妖怪退治をする時も、修行をする時も、料理を作る時も、異変を解決する時も。
彼女は情熱から動くのではなく、そうするべきだというただの役割から行動する。

あらゆる分野で他者を凌駕する才能を持ちながら習得するだけで、極めようとはしない。
技術の習得に対する情熱や執着がある訳でもないのに、
時間がある限り彼女は様々な技術を会得し、一通り使いこなせるようになると飽きて捨ててしまう。
一貫して不可解な行動。

幼少の頃より彼女をよく知る僕はそんな彼女についてよく尋ねられる。

「霊夢はどうしてあのような生き方を選んだのか?」と。

その問いに僕は何時も首を横に振って答えた。

「彼女が自分の生き方を選んだ事など、僕の知る限りでは一度もない。
 彼女は巫女になれと言われたから巫女になり、妖怪を退治しろと言われたから妖怪を退治している。
 多分、自分が何を考え、何を想い生きているのかなんて、霊夢にも分からないと思う」

霊夢は笑う。怒りもするし、哀しい顔をする事もある。
だが僕は彼女の涙を見た事がない。
彼女が小さかった頃から今に至るまで。彼女の流した涙を僕は知らない。

僕は彼女の側に居ながら、彼女が流す涙の色を知らなかった。








「飽きたわ」

銀の指輪に紋様を掘る作業を続けながら、霊夢は僕に向かってそう呟いた。
僕はと言うと、そんな霊夢を横目で眺めながら同じように銀の指輪に紋様を掘っている。
鏨で削り、鑢で形を整えながら自分が思い描く紋様を刻む。

こういった細かな作業は僕の好むところであり、修行時代から暇を見つけては培ってきた技能だ。
今ではそこそこの物が作れると自負している。
アクセサリーは幻想郷の少女達にも受けが良い。予め作っておいたものを買っていく少女もいれば、
多少値が張るものの、僕に直接デザインを依頼して、自分だけの一品を求める少女もいる。

最近だと紅魔館のメイド長、十六夜咲夜が銀の指輪に髑髏の紋様を刻んだ物を依頼してきた事がある。
中々エキセントリックなデザインを好むと思ったが、当の本人はいたって真面目な面持ちで、
「五つの指輪にそれぞれ名前を彫ってください」という注文を付け加えた。

名前はそれぞれ、アウグストゥス、ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロ。
全てユリウス・クラウディウス朝時代のローマ皇帝の名前だった。
中々に酔狂な趣味だ。感服すると同時に呆れもした。

そんな訳で僕は店を開く傍ら、カウンターで指輪に紋様を刻む作業を行った。
シンプルといえばシンプルだが、これが中々に地味で手間隙のかかる作業だ。

注文を受けてから七日目。
アウグストゥスの指輪が形になりはじめた頃、霊夢が店にやって来た。
黙々と作業を続け、挨拶を忘れていた僕を一瞥すると、カウンターに近づき、にこりとも笑わず、
「楽しそうね」と言った。

「趣味?」

「仕事」

「そう」

霊夢は僕から指輪を取り上げると、光にかざして様々な角度からじっくりと指輪を見つめた。

「髑髏ね」

「その髑髏はアウグストゥスと言う」

「誰?」

「ローマに帝政を敷き、パクス・ロマーナを実現したローマの皇帝だ」

「知らないわ。何となく偉い人ってのは分かるけど」

「世界史ぐらい勉強するんだな」

「気が向いたらね」

僕に断りもなく霊夢は戸棚を漁り、饅頭の箱を取り出すとこれまた理もなく饅頭に口を付けた。

「お茶は?」

「仕事の最中だ。自分で淹れろ」

霊夢から奪い返した指輪に紋様を彫りつつ、僕は素っ気なく返す。
如何に僕が古くから彼女の知り合いであろうと、仕事を中断してまで世話を焼いてやる義理はない。
店で勝手にくつろぐのは大いに結構だが、僕の仕事の邪魔だけは遠慮願いたい。

「ねえ、それ楽しい?」

「彫金細工の事か?」

「そう。熱心にやっているものだから、楽しいのかなって」

「仕事だからな。楽しい楽しくないは別だよ。ただまあ、昔からやっている事で、
 始めた切っ掛けは趣味のようなものだったから、楽しいと言えば楽しいか」

「ふーん」

饅頭を飲み込み、カウンターの上に置いてあった新品の指輪を手に取る。
まだ紋様が彫られていない、銀の指輪。
窓から差し込む日光が反射してきらりと光った。

「私もやってみたい」

「君には向かないよ」

「やってみたい」

「君は飽き性だから続かない」

「やってみたい」

「これは仕事だ。素人の君には任せられない」

「やってみたい」

「……霊夢」

指輪をカウンターの上に置き、霊夢と向い合う。
黒曜石のような黒髪と、人間にしては珍しい紅い瞳が曇りなく僕を見つめていた。
口元は真一文字に結ばれていてにこりともしていない。

「僕にどうしろと?」

「自分より年下の少女に答えを求めるのは些か不恰好じゃない?」

「言ってろ。元より君が言い出した事だ」

「なら尚更答えは簡単じゃない。どうして気づかないのかしら」

「僕に彫金の技術を教えろと言いたいんだな」

「はい正解」

「駄目だ。自分の作業をしながら他人に物を教えられる程僕は器用じゃない」

「見せてくれるだけでいいから」

「だから邪魔はしないと?」

「そう」

「……勝手にしろ」

「勝手にさせてもらうわ。道具は何処?」

「工具箱の中に道具はある。そうだな、屑鉄なら好きに使えばいい。
 言っておくが僕は本当に何も教えないからな」

「釘を刺さなくてもいいわよ。興が削がれるわ」

僕の言葉に対して霊夢は心底つまらなさそうな顔をした。
それが他人に物を教えてもらう態度かとも思ったが、
僕も別段手取り足取り霊夢に物を教えるという訳ではないので強くは言えない。
どうせすぐに飽きて何処かへ行くだろう。そんな風に考えてた。









「後もう少しだろ、仕上げぐらいは自分でやれ」

「飽きたわよ。まあ、ここまで付きあわせてくれた義理もあるから仕上げぐらいはするけど。
 中々楽しかったわ。一月だけの趣味だったけど、まあまあってとこかしら」

「僕の技術を見るだけで盗んでおいてよく言う。巫女の仕事が暇になったら彫金技師にでもなるといい」

「嫌よ。飽きたもの」

「暴君だな。君が今手にしているネロの指輪のように」

「嫌いじゃないわよ。彼みたいな人間。悪政の合間にきちんと善政も行なっていたみたいだし。
 でも国家元首としての在り方については私も否定的な意見を持たざるをえないわ。
 自由な行いは地位のない人間が行なっても許されるけれど、
 彼のように地位ある人間が自由を行う事は許されない。
 私が思うに彼の欠点はローマとそこに住まう民草を心の底から愛していたという事だと思うわ。
 血も涙もないただの暴君なら君主が民を選ぶという選択もあったのだろうけど、
 彼は自分の下に住まう民を愛し、ローマを愛していた。暴君としては二流ね」

「それが君の暴君ネロに対する評価かい?」

「後世の歴史家よりも辛辣な意見ではないと思うけど? 
 私は暴君と呼ばれた皇帝達よりも矢面に立たず、
 いつもひそひそと物陰で陰謀を張り巡らせていた議会の方が悪辣だと思うわ」

「古代ローマ史についてよく勉強したものだな。興味が無いと言っていたはずだが」

「頼んでもいないのに延々と古代ローマ史について話をしたのは霖之助さんよ。
 何が他人に物を教えながら作業は出来ないのかしら? 実によく喋るじゃない」

「独り言だよ。それにしても君を少し見くびっていたようだ。
 僅かな期間でここまでやれるとはね」

「言ったでしょ。見たものをそのまま真似ただけ。
 霖之助さんと同じように手を動かせば霖之助さんと同じ物が出来上がる。簡単よ」

「君だから許されるような発言だな」

「はいはい、完成っと」

霊夢が手にしたネロの指輪を興味もなくカウンターの上に置いた。
王冠を冠った髑髏が笑っているという些か悪趣味な指輪。
十六夜咲夜が依頼した五つの指輪の一つ。
一般に暴君として知られているネロの名を持つ指輪。

霊夢の技術的成長にはやはり驚かされるものがあった。
初めの一月。霊夢は僕の指先の動きをじっと見つめながら屑鉄に紋様を描いていた。
蝶や鳥、龍に虎。思いつく限り様々な紋様を彫っていた。
ぎこちなかったのは最初の三日だけで、後は卒なく僕の技術を見るだけで獲得し、
気が付けば僕と同じように自由自在に紋様を彫っていた事には驚きを隠せなかった。

毎度の事ながら彼女が新たに技術を獲得するという速度には感嘆する。
一から技術を覚えるのではなく、元々自分が持っている技術を思い出すようなものだ。
一度コツを掴めば後は大した失敗もなく技術を習得してしまう。

何か一つでも情熱を持って取り組める物事に出会えたのなら、
霊夢はたちまちその道を極めてしまうだろう。
もし巫女を引退した後に道具屋になりたいと言い出したら、僕なんかは店を畳まなくてはならない。
きっと商売あがったりだ。閑古鳥どころか鴉さえ鳴かないだろう。

「霊夢。君はいつも物を覚えるのが早いな」

「そう? 私にはそんな自覚がないわ。他の人が遅いだけじゃないの」

「驚異的だよ。僕は今の技術を身につけるのに数年は掛かった。
 それを一月と少しで会得されるとなると、僕の自信も揺らぐ」

「心配しなくてももう彫金なんてやらないわよ。言ったでしょ、飽きたって」

「次は何を始めるんだ?」

「まだ決まってないわ。気が向いたらまた何か教えてね」

「言ったはずだ。教えたつもりなどないと」

「あっそう」

完成間近となったクラウディウスの指輪を置き、作業の手を止める。
霊夢はそっぽを向いて、店の中に自分の興味を引きそうな物が無いか探っていた。
もう指輪になど興味が無いのだ。元より情熱を持って取り組んでいた事ではない。
自分がもう飽きたと言ってしまえばそれまで。価値はなくなる。

「霊夢」

「何?」

「君は何か一つの物事に拘りを。情熱を持った事はあるか?」

「どうしたの、突然」

「いいから。僕はね、霊夢。前々からずっと不思議に思っていたんだ。
 君は他の誰とも違う人生を歩みながら、
 余りある才能を持ちながら一度も情熱らしいものを僕に見せた事がない。
 他者がどれ程焦がれても手に入らないものを君は手にしている。
 なのに君は如何なる物事に対しても冷静であり、無欲だ。
 僕にはそれがとても危険な事に思える。君は一体……何を求めるんだ?」

沈黙があった。
霊夢は無表情のまま僕を見つめている。
その表情の奥底にあるのは何か。
疑念だろうか。何故こんな事を質問するのかと、不思議に思っているのか。
あるいは混乱だろうか。僕の問に対する答えが見つからず、その胸の中で右往左往しているのか。

僕には霊夢の心が分からない。
ただの一度も霊夢の内面というものに触れる事が出来なかった。
そもそも真に霊夢の事を理解し、分かり合える人物など存在しているのか。

「そうね、霖之助さん」

沈黙を破り霊夢が切り出した。

「私が何を求めるのかと問われれば、そう。私は普通である事を求めるわ」

「冗談か?」

「いえ、本気よ。ねえ、霖之助さん。私は普通よね?
 この年頃の女の子なら何にでも興味を示すはずよ。
 料理に裁縫、服装に異性。私はおおよその少女が普遍的に抱くであろう興味を抱いているだけ。
 今回の彫金細工も言ってみればアクセサリー作りみたいなものね。女の子らしい可愛い趣味よ」

「そんな考えをしている時点で普通とはかけ離れていると思うが」

「そうでもしないと普通になれないもの。
 私は基準から逸脱した人間にはなりたくない。私は人間よ。
 なら人間らしく移り気にその日を生きていたい。
 そうすれば私は一応人間らしく、女の子らしく生きているという事になる」

「随分変わった思想だな。確かに他人から見ればそうだが、
 でもだからといって一般的かどうかは別問題だ」

「それは変な事かしら? 私ぐらいの少女が普通であろうとする事は」

「まともではあるが普通では無いよ」

「そう。なら私はまだ普通の少女になってはいないのね」

霊夢の眉が少し下がり、小さな落胆を垣間見る事が出来た。
感情はある。目指しているものに手が届かないという事に対する落胆は僕でも感じる。
だがこの博麗霊夢が他の少女と決定的に違うのは、その内部構造だろう。

僕が予測するに、彼女の内面には何も無い。
一人の人間が抱えるには大きすぎる空虚と深すぎる淵があるだけだ。
率直に言って尋常ではない。
ましてその巨大な空洞の持ち主がまだ二十にも満たない少女とあれば尚更だ。

一体霊夢の何が霊夢の空洞を生み出すのか。
それは元々そこにあったものなのか、あるいは何者かの意図によって穿たれたものなのだろうか。
霊夢本人に分からない事が僕に分かるはずもない。

唯一言える事は、この空洞がある限り、霊夢は今までと何も変わらないだろうという事だけだ。
興味は示すが情熱はない。
技術や知識を習得しても極めようとはしない。

何者にも囚われない人の理から外れた巫女のまま日々を過ごすのだろう。

「霖之助さん」

「何だ」

「お茶」

霊夢が僕に茶の催促をした。
万人が抱く博麗霊夢ならば、このタイミングで茶を要求するだろうという予想に漏れない要求。
つまるところ、普通の博麗霊夢だった。

Comment

タイトル見てエスケープ・フロム・L.A.思い出した。好きだったなぁ、アレ。
今までの続きものではない霊夢さんSS。普通の女の子になるのは難しそう。博麗の巫女をじゃなくなる時にはどうなるんだろうね。案外それからが始まりかも。
  • by:のた
  •  | 2012/06/04/09:09:25
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#No title
何故か坂本ジュリエッタを思い出しましたよこの霊夢
その次に思い出したのは範馬勇次郎でした
強すぎる腕っ節が、あらゆる栄光を、一般人がまるで近所の自動販売機に缶ジュースを買いに行くのと同じ程度の労力で手に入れてしまうと言う……
霊夢サンも恋すれば普通の少女になれるのかな?
  • by:くぅ
  •  | 2012/06/05/01:02:09
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