十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

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十四朗

Author:十四朗
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東方の霖之助SSが主流です
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『まだ君に恋してる』

いい夫婦の日は過ぎましたがいい夫婦の日慧霖。
タイトルはいい◯この歌詞。
いい夫婦っぽい曲ですよね。

慧音先生はようと前後不覚になるタイプ。


『まだ君に恋してる』


慧音、霖之助












「結局のところだ! 壊れる程愛しても三分の一も伝わらないという事だ!」

「その前に君は壊れる程愛したのか?」

「愛が愛を重すぎるって理解を拒んだぞ! 慧音はそれが悲しい!」

赤い顔で酒臭い息をまき散らしながら、
僕の古い友人である上白沢慧音はよく分からない理論を熱の篭った口調で力説していた。
所詮は酔っぱらいの戯言と受け流してはいるが、力の加減も考えずに肩を何度も叩かれるのは流石に堪える。

僕は若干の精神的幼児退行がみられる旧友に辟易しながらも、
彼女と酒を飲むとこうなる事は分かっていたんだ諦めろと自分に言い聞かせた。

彼女は酒に強い方ではない。
決して弱い方ではないのだが、かといって蟒蛇の毎に大酒飲みという訳でもなく。
平均的な女性と同じ程度かそれより少し弱い程度か。

少し酒を口にすると顔がほんのりと赤く染まり、目が据わる。
これぐらいならばまだ円滑な意思疎通が可能な段階だが、
一定の境界線を超えると彼女の言動と行動は歯止めの利かないものとなる。

そういえば昔、まだ僕が人里で商いの修行をしていた頃、
酔っ払った慧音が水を飲もうとして井戸に落ちた事があった。

確かあの時は僕が偶々駆けつけたから事なきを得たが、
あの時僕が助けなかったらどうなっていたのかについては余り考えたくない。

「……駄目だ、話にならない。慧音、少し飲み過ぎだよ」

「ふっふっふー! この程度で飲み過ぎとは両腹痛いわ!」

「物凄く痛そうだな」

相変わらず赤い顔で慧音はニコニコと笑っている。
心底楽しそうだ。こんな慧音の笑顔を見るのはいつ以来だろう。
まだ僕も慧音も幼く、色々な物事と正面から向き合わなくとも良かったあの頃以来か。

あの頃からどれだけ歳を重ねたか。
互いに大人になって、それぞれの生活と理想の為に道を違えたが、
昔から繋がっている関係性はそう簡単に消えて無くならず、
今でも彼女とはこうして交流がある。

「うっへっへぇ~霖之助ぇ~」

「くっつくな。君は酒を飲むと体温が上がって生温かくなるんだ」

「冷たい事言わずに」

「だから生温かいと言っている」

僕の体にベタベタと触れながら腕にを絡めてくる慧音の体温が生暖かく、妙な感覚だ。
柔らかな彼女の体に僕の腕が包み込まれ、
体温によって僕の腕が僕の意識と違ったところで何かを感じているような。
そんな感覚。

それが良いのか悪いのか、心地良いのか悪いのか分からず、口だけは反抗の意思を告げる。

「止めろ」

「なんだ霖之助。昔に比べて冷たい反応をしてー」

「僕ももういい大人だからね、それなりの距離感というものを大切にしているのさ」

「一晩だけは子供みたいに甘えてくれてもいいんだぞ?」

「遠慮しておく。男っていうのはね、
 一度弱い面を見せると二度と強い振りをする事が出来なくなるんだ。」

「可愛くないぞー! もっと可愛くなれー! 慧音にデレろー!」

「可愛くなくて結構。君にはデレない」

「お元気ですかー!」

「一応は」

「元気があればなんでも出来る!」

「はぁ……もう寝るんだ。寝床ぐらいは用意してやるから」

こうなったらもう何か事を起こす前に寝かしつけるのが得策だろう。
せめて痛みを知らず安らかに眠るがよい。

大体初めから嫌な予感はしていたんだ。
珍しく彼女が酒でも飲もうと提案してきた時点で、酔った彼女の介抱が面倒だと考えた。
結果は案の定厄介かつ面倒な事態が現在進行形で続いている。

昔馴染みだからといって惰性で返事をするものではないという教訓を得た。

「二人で二の字になって眠るのか!」

「いや、当然僕は隣の部屋で寝るけど」

「四の字か! それとも十文字」

「前者は画数が足りない。後者に至っては交差している」

「どっちが上だ? 慧音かそれとも……」

「慧音、君は一人で眠るんだよ」

「やぁ! 一緒に寝るー!」

「絶対にNO」

ここで妥協する訳にはいかない。
今妥協したら一晩中布団の中で慧音に暴れられるだろう。決して卑猥な意味ではなく。
文字通りの意味で慧音は暴れる。

僕の安眠を妨害されたくはないので、勿論布団と部屋は別々にするつもりだが、
このまま慧音のペースに引きこまれたらそのまま布団の中へ引きずり込まれるという事態にもなりかねない。

「さて、じゃあ行くよ」

「抱っこ!」

「自分で歩きなさい。君ももう大人だろう」

「抱っこだ霖之助! 慧音が抱っこと言ったら抱っこなんだ!」

「なんだその理論は。いや、理論ですらない気がする」

「さあ抱っこしろ!」

軽く慧音の頭を二回程叩いてやる。
流石は酔っ払っても知識人、鹿威しのような軽い音は鳴らず、
中身がずっしりと詰まった重い音が響いた。

「あた!」

「入ってますかー? と尋ねるまでもないな」

「ぎっしり詰まってるぞー」

「そうか……だが何故こうなった」

「げに恐ろしきは酒の力。
 酒の前では如何なる賢者も愚者となり、如何なる名君も暗君となる。
 酒が全て悪い」

「まぁ、飲み過ぎた君が悪いんだけどね」

「えへへぇーいい気分だぞ」

「明日どうなっても僕は知らないからな」

慧音は相変わらず両手を広げ抱っこのポーズで僕を見つめている。
仕方がない。運ぶぐらいはしてやろう。

彼女の背中と脚に手を回して、ゆっくりと持ち上げる。
慧音の体は意外な程に軽かった。
女性にしては背が高く、柔らかな体をしているものだからもう少々覚悟はしていたのだが、
これには思わず拍子抜けした。

「……軽いな」

「んー? どうかしたかぁ?」

「いや何でも。君も女だなと思っただけだよ」

「そうだぞー! 慧音は女なんだぞ! 忘れちゃいかん!」

「忘れてないよ、ただ改めてそう感じただけだ」

「慧音はいつでも霖之助の事を男だと思っているからな!」

「そうかそうか」

「霖之助は不愛想で、無精者で、どうしようもない与太郎だが、
 そんな霖之助の事を慧音は一番良く知っているんだぞ!」
 
「確かに、僕の事は君がよく知ってるからね」

「うむ! 全くもってその通りだ! 
 だからお前も慧音の事をよく知るんだぞ」

慧音は僕の首に両手を回すと相変わらずニコニコしながらそう言った。
相変わらず酒臭いし、生温かい体温だったが不思議と悪い気はしない。
それどころか何処か心地良い、ずっと触れていたくなるような感触で、僕の心はぐらりと揺れた。

「もう知ってるよ。君の事なら何でもね」

困惑を覆い隠すように強がりを言う。
けれどもその言葉に偽りはない。僕は彼女を知っている。

初めて出会った日の事を、人間を信用出来なかった僕に人を信じる事を教えてくれた事を、
生きる事を教えてくれた彼女の事を僕は知っている。

「本当か? 慧音の事を何でもよく知ってるのか?」

「あぁ、だって僕はずっと昔から君と共にあった。君という存在と共に僕はあった。
 だから君の事は自分の事のように知っている。
 君の感じている事、君の大切にしているものの事も。何でも知っているよ」

「それは結構! 慧音は満足だ! 良い良い!」

「さて、満足したところで今日はもう眠るんだね」

慧音と言葉を交わしながら寝室へ到着すると、一度慧音を畳の上に寝かせて、押入れから布団を出した。
布団を敷くともう一度慧音を抱きかかえて今度は布団の上に寝かせる。
この時点でもう慧音は微睡んでいた。

「霖之助の匂いだ」

布団に入った慧音は目を細めてそんな事を言った。
この布団は僕が毎日使っている物なので僕の匂いが移っていても仕方がない。
ただ改めてそんな事を言われると妙な気分になる。

「嫌だったかな?」

「そんな事はない! 私の大好きな匂いだぞ!」

「素直になり過ぎだ」

満足気に笑う慧音の額に手を当てて、髪を撫でる。
蒼銀の長い髪は絹糸のように細く、艶やかだった。
こうして慧音に触れ、彼女を直に感じるのは何時以来だろうか。

もうずっと彼女とは昔馴染みのままで居たから、思い出せない。
ある時から僕と慧音は互いの道に生きるようになって、
お互いの事も見ているだけの存在になってしまい。
実際の距離よりもずっと遠くに慧音が居るような気がした。

人里で子供達に勉学を教えている姿を見る度に、
彼女の夢が叶った事に対する安堵と、出所不明の諦観が僕の胸を満たした。
それは多分、慧音は僕よりもずっと有意義な人生を送れるのだから、
僕の側に居るよりも自分の事の為に時間を使った方が正しい選択だと僕が思っていたからに違いない。

「どうかしたのか霖之助?」

「ん、いや……なんでもないよ」

「そうか。ならいいんだ。霖之助の手は大きいな。慧音の手よりもずっと大きいぞ」

「僕は男だから。君よりは骨格も含めて大きくなるのは生物学上仕方がない事だよ」

「でも中身は昔っから何も変わっていないと思う。いつまで経っても霖之助は霖之助だ」

慧音の言葉とは裏腹に、僕自身は変わってしまったと思っている。
もう昔のままの僕ではないし、慧音も酔いが醒めれば『いつもの』慧音に戻るだろう。
これは夢のようなもの。酔った慧音が見る夢。

けれども僕は慧音の言葉を嬉しく思う。
例えよった慧音が口にする寝言のような言葉でも、
僕にとっては安堵出来る心地よい言葉だ。

「君はそう言ってくれるんだね」

「そうだとも! 慧音が保証する。霖之助は昔と何も変わっていないぞ!」

「ありがとう慧音」

慧音の手を握る。
温かい。血行が良くなっているせいか随分と温かい掌だ。
昔はこの手に握られていろんな場所へ赴いた。
いつの間にか手を引くのは慧音から僕に代わり、そして大人になった僕は慧音の手を離した。

慧音の為だと、彼女の夢を邪魔しないようにと言い聞かせて。
だが今思えば、彼女の手を離した理由はもっと他の場所にあったのかもしれない。
それを僕は彼女のせいにして、面の向かう事から逃げて……。

「私が寝るまでこうしていてくれるか?」

慧音の言葉に僕の意識が浮かび上がる。
これ以上はいけない。
いずれ向きあうべき事かもしれないが、今は目の前の彼女に意識を向けなくては。
せめてこのままでいられる間は。

「君が望むなら」

「うむ」

満足気に慧音が笑顔で頷く。この笑顔は昔から変わらない。
相手に甘えるのが上手な笑顔だ。
僕の歴史からは失われてしまったとばかり思っていた笑顔。

「おやすみ慧音」

「うん! おやすみ霖之助!」

慧音が瞳を閉じる。
今まで騒がしかったのが嘘のように静まり返った。
目が覚めると慧音は酔っていた時の事を忘れ、
僕の布団で眠っていた事実に気付くと激しく狼狽するだろう。

今宵の事など全て忘れて、明日になれば全て無かった事になる。
刻まれる事のない歴史となる。

今この瞬間さえも。

Comment

エ の字で寝た後、川 で寝られたら素敵ですね。
いや、他意はないんですよ。

ところで、アリス編は(ry
  • by:
  •  | 2011/11/25/23:00:18
  •  | URL
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天狗D「昨夜はお楽しみでしたね」
  • by:すかいはい
  •  | 2011/11/26/17:24:18
  •  | URL
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#No title
何だこのアホの子な慧音ww
  • by:くぅ
  •  | 2011/12/09/14:33:09
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