十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

プロフィール

十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
メッセ&スカイプは大歓迎です
SkypeID『Brassp905』


リンクはフリーなので
どなたでもどうぞ
もしご連絡いただければ高所から
イヤッホォォォォ!!します


PS3アカウント『auscam』
大体マルチ対応ゲームやってると思います。

バナー

Web拍手

Twitter

 

入店者

検索フォーム

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『9mmの嫉妬』

久々に銃の描写があるからノリノリで書いてたら霖之助さん出て来なかった。
う、うん!でもまぁ鈴霖だと信じたい!
そう言えば短機関銃を出すのは初めてだったり。

次はアサルトライフルか狙撃銃か銃にまったく関係ない話にしようと思います。


『9mmの嫉妬』

にとり、鈴仙












「にとり」

「何、鈴仙?」

「にとり……」

「いや、だから何さ鈴仙?」

鈴仙はにとりの問いに答えず、ただそっとにとりの腕を掴み、自分の方へ引き寄せた。
鈴仙の手は一見すると細く靭やかだが、手の皮が樫の木のように硬くなっており、少しざらりとした。
おまけに擦り傷や小さな切り傷が幾つかあり、眼を凝らせば大きな古傷があるのが確認出来る。
これを逞しいと取るか荒々しいと取るかは個人の主観によるところが大きいだろう。

にとりにとってこの手は逞しいものに思える。
武器を扱う事と薬品を扱う事しか知らないこの手は確かに皮膚が硬くなって、
傷だらけの手かもしれないが、それは今までたくさんの苦難を乗り越えてきた逞しい手なのだ。
壊す為にではなく、守る為にあるようなそんな手。

その手がにとりの腕を掴み、そのまま身体を引き寄せる。
そして身体を引き寄せると思いきり下へと引っ張った。

「あだだだだだ! 外れる! 裂ける! もげる!」

突如万力のような力で腕を締め上げ、
下方へと引っ張られたにとりは殆ど脊髄反射の要領で悲鳴を上げて抵抗した。
投げ飛ばされるのにも、組み伏せられるのにも慣れていたが、腕を思い切り引っ張られるという体験は初めてだった。

「伸びない……にとり、河童の腕は引っ張ると伸びるのではないのですか?」

「伸びるわけねーだろ! 少しは生物の構造ってものを考えろ!
 河童舐めんなよ! かっぱ巻きにスッゾコラァー!」

「ふむ、引いても伸びない……あ、なるほど」

何かを閃いたのか、鈴仙はポンと手を叩く。
そしてまたにとりの腕を掴むと、今度は思い切り肩の方へと押し込んだ。

「あががががが! 軋む! 骨が軋む! 折れる! ゴリュ! ってなる!」

「押しても駄目……困りました」

「何で心底困ったような顔でしれっと困りましただよ! 困ってるのはこっちだよ! 
 びっくりするよ本当にもう! 河童馬鹿にしてると尻子玉抜くぞコラァー! すっぱ抜くぞコラァー!」

「どうすればアナタの腕は伸び縮みするのでしょうか」

「だから何でここに来て腕の伸び縮みに拘ってるのさぁ!
 今まで全然気にしてなかったじゃん!」

「悩みが出来ると目に付く日常の疑問点も増えるものですよ。
 同志にとりよ、アナタは誠に河童ですね」

「シャベルと火炎瓶で戦車に突っ込むか、おぉ?」

「スコップと火炎瓶は代表的な対戦車兵装です。特にスコップは伝統と信頼のある優れた武器です」

「じゃあ、銃は二人に一人だけ渡されて、銃が貰えなかった場合は弾だけ渡されて敵陣に突っ込めと命じられた場合は?」

「倒れた者から銃を奪って進めばいい」

「どうして鈴仙はこうも前のめりなのか……」

退かぬ、媚びぬ、省みぬの三拍子が揃ったこの兎は、どうも考えたらその通りにしか行動しない。
決意に揺るぎがないのは結構だが、その揺るぎない決意の被害者はいついかなる時でもにとりなので、
にとり本人としてはもう少し省みる心を持って欲しいというのが本音だ。

「しかし考え過ぎだよ鈴仙。二号は霖之助に手を出したりしないと思うけどなぁ。
 というかそもそも二号は霖之助の事何とも思っていないだろうし」

今日は鈴仙の訓練は休みで、座学もといい二号の悪筆を見かねた霖之助による悪筆矯正が行われている。
にとりは実際に二号の書いた文字を読んだ事は無いが、鈴仙いわく新種の暗号文に見えるそうだ。
ちなみに霖之助は二号の書いた文字を「まるでミミズと蛭が喧嘩してのた打ち回ったような文字だ」と評していた。

何故だかにとりはそんな二人の評価にすんなりと納得してしまう。
普段の二号が余りにも残念な失敗ばかり繰り返すだからだろうか。
彼女が地上へやって来て一月程になるが、にとりの知る限り、二号はとても優秀な兵士と呼べるものではなかった。

近接格闘では呆気無く投げ飛ばされ、射撃訓練では目の前の目標に対して弾が当たらず、
銃の分解清掃では分解は出来るものの組み立てが出来ずににとりや鈴仙に泣きつく。
よく今までクビにならず軍に置いてもらえたものだ。
月の都に百万の兵士が居たとして、二号は上から数えて百万人目なのかもしれない。
そう思える程、二号は軍人として余りにも弱かった。

「ですが考えてしまうものなのですよ。ひょっとしたら何かの拍子に間違いが起こるかもしれない。
 一寸先は地雷原なのですよにとり」

「幻想郷に対人地雷は埋まってないと思うよ、鈴仙」

「では対戦車地雷」

「地雷から離れろ! 何も埋まってないし、何かを埋める予定もない!」

にとりはこの少女は一体何と戦っているのかと問いたかった。
異次元からの侵略者なのか、地底から出現した地底人なのか、宇宙からの侵略者なのか。
彼女の発想と発言はどれもが物騒極まりなく、平和な幻想郷において、とてもまともとは言い難い。

「でもまぁ、一応教え子なんだし、信頼してるでしょ?」

「一応。しかしそう思いながらも少なからず疑念はあるのですよ」」

「どれぐらい?」

「自動拳銃でロシアンルーレットを行なって弾丸が発射される確率ぐらいには疑っています」

「殆ど十割じゃないの! 詰まらなきゃ出るよ! アンタの中にはどれだけ他人を疑う心が詰め込んであるの!?」

「銃弾だけに込めるですか。上手い事いいますね」

「うっさいわ!」

涼しい顔で心底納得した様子の鈴仙を一喝して、にとりは簡易作業台の上に乗せられた銃を組み上げ、鈴仙へと渡す。
銃を渡すと鈴仙の顔から和やかな雰囲気が消え、隙のない鋭い表情に変わった。

「さて、心温まる話はここまでにして、私達は私達で始めましょうか」

「りょーかい。気になるんならさっさと終わらせて様子でも見に行くといいよ」

「言われなくともそのつもりです。しかし、何ですかこの銃は」

「生産力とコストパフォーマンスの為の簡略化を突き詰めた銃ってところなのかな。
 弄ってみて分かったんだけど、とにかく単純な機構なんだよねー。
 というか、フォアグリップが省略されてるってどうなのさ」

「水道管にマガジンとトリガーとストックを付けてとりあえず銃の体裁を保っているようには見えます」

「とりあえずはね」

鈴仙が意見を述べるのも無理のない話だった。
簡易作業台の上に横たえられたその銃は、
円筒状のボルトを一回り大きい円筒状のレシーバーに収め、先端からは銃口が伸びている。
一見すると給水用のパイプに見えた。

そのボルトとレシーバーにトリガーやストックが付属し、
今は装着されていないがマガジンを装着する事によって一応銃火器らしい形となる。
更にマガジンは下から挿し込むのではなく、横から機関部へ差し込む形となっており、
それがより一層この銃の印象を奇異なものとしていた。

修復をしておいてこんな事をにとりが思うのも変な話ではあるが、とりあえず撃てる程度の銃としか思えない。
細い棒のようなストックや、鉄板に円形の穴を空けただけのグリップ。
省略されたフォアグリップを見ていると、お世辞にも使い勝手がよく、命中精度の高い中には見えなかった。

実際、にとりも調整を兼ねて何発か試射を行ったが、腕の中で暴れてとても扱いきれる代物ではなかった。
フォアグリップが省略されているという事もあり、跳ね上がりを抑えるのが非常に難しい出来になっている。

「物は試しですかね」

「ちなみに外見で判断した感想は?」

「安かろう悪かろう」

「あーうん、同意見」

「とはいえ外見だけで判断するのは早計です。何事も触れてみなくては本質を見抜く事は出来ません。
 ひょっとしたらにとりのように、外見はアレですが中身は優秀なのかもしれませんし」

「おい今なんつった、この根暗トリガーハッピーウォーモンガーラビット」

「特に何も。気に触るような事は言っていないはずですが」

「触るわ! 物凄く気に触るわ!」

声を荒らげて抗議するにとりを無視して、鈴仙は手にとって短機関銃とを眺めると、二、三度頷き、
作業台の上に置いてあるマガジンを持って、射撃用のレーンへと向かった。
にとりも耳当て型の耳栓を装着して、その後を追う。

まず鈴仙は大きく深呼吸すると、長細いマガジンを左側面へと差し込み、ゆっくりボルトを後退させた。
薬室が解放されたままの状態でボルトは止まり、
鈴仙は側面から突き出たマガジンを支えにストックを右肩に当て、しっかりと構える。

この銃はオープンボルト・ファイア方式と呼ばれる発火方式で作動する銃で、
オープンという単語が示している通り、発射時に薬室は外部に対して解放された状態で固定される。
比較的簡単な機構で動作が完結し、部品数を少なく抑えられ、
噛み合う部品の少なさから来る故障の少なさが利点だろう。

反面、作動時にボルトが激しく前後するので銃本体がもたらす衝撃が大きくなる。
連続して伝わる衝撃は照準のブレを発生させ、射撃時に安定性を損なってしまうのが欠点だ。
元々、ストックやグリップ等の作りがお粗末としか言えない代物なので、
とりあえず前方に弾が飛べばいいぐらいにしか考えていないのか、射撃時の安定性は無いに等しいものだった。

更にもう一つ欠点がある。
マガジンを装着した状態だと、装着したマガジンが左側に突き出し、取っ手のようになるのだが、
その部分を握って射撃を行うと給弾不足になる可能性もあった。
給弾中に無理な力が加わるのが原因らしい。簡略化されすぎた設計の結果、多くの性能を犠牲にしている。
実際に手に取って修復をしたにとりの主観から下される評価は、決して高いものとは言えない。

とはいえ、ここまではにとりの評価だ。
いくらにとりが修復中に試射の為の試射を行なっているとはいえ、本番での試射で銃を撃ち、
感想を述べるのは鈴仙の役割だ。
今まで何度か鈴仙とは意見が食い違う事があったものの、
互いの分野では相手の技量から来る判断を尊重する事を念頭において、意見を交わしている。

つまり、銃の修復で鈴仙がにとりに口煩く意見する事も無ければ、
銃の扱いでにとりが鈴仙に口煩く意見する事もない。

互いが互いに最も得意とするところである事を本質的に理解しているから、相手の庭に土足で踏み入るような真似はしない。
相手の技量を信じるならば、その相手に対して不信感を抱く事はないのだから。

鈴仙は大きく息を吸っては吐き出し、吸っては吐き出しといった動作を三回繰り返した。
そして三回目で呼吸を止めると、迷うこと無く引き金を引く。
けたたましい発砲音がマズルフラッシュと共に連なり、耳栓越しに鼓膜を振動させる。

後退位置にあったボルトが前進して点火用の爆薬が収められた雷管を叩き、小さな爆発を発生させると、
今度はその小さな爆発が薬莢に内包された発射薬を発火させ、弾頭を燃焼しながら押し出す。
押し出された弾頭は発射薬がもたらすエネルギーを受けてバレル内で加速。螺旋の回転を描きながら前方へと飛んでゆく。

そんな連鎖反応が一瞬で繰り返され、ボルトは激しい前後運動を繰り返す。
役目を終えた薬莢は排莢口から無造作に吐き出され、鈴仙の足元に鈍い真鍮色の身体を横たえていた。

鈴仙から二十五メートル程先の地点には、木の板に赤と白のペンキで彩色された的があり、
その的は木屑をまき散らしながら、無言で銃撃を受けている。
見たところそれなりに命中しているようだ。発砲音がする度に木屑が舞い散り、虫食いのような穴が開いてゆくのが分かった。

鈴仙は横に付き出したマガジン部分を強く握らず、下から軽く握り、
まるで銃を支えているかのような構え方で、細かく区切った発射を続ける。
反動で銃が暴れるのを小刻にトリガーを引く事である程度抑えながらも、
ストックを当てた肩で受け止め、反動を上手く制御している。

普段は啀み合い、口喧嘩をする事が多いものの、
改めて鈴仙のこうした姿を目にすると素直な感心を抱かずにはいられない。

銃火器を手足のように使用し、触れて発射する事でその中の長所と短所を的確に理解して、
その短所を補いつつ長所を少しでも生かせるように心がけ引き金を引く。
まず銃への理解があり、その理解が導きだす答えのままに銃を操っているようだった。

やがてマガジン内部の弾薬を全て撃ち尽くした鈴仙は、静かに銃を下ろし、深く息を吐いた。
先程までけたたましい発砲音が響いていた香霖堂裏の射撃場は、深く静まり返り、遠くの方で鳴く鳥の声だけが響く。

にとりは耳当てを外し、鈴仙の背後に近づくと「どうだった?」となるべく肩の力を抜いて尋ねた。

「悪くはないですね。
 際立って良い部分がある訳でもありませんが、
 奇っ怪な形と極端に簡略化された形状をしている割には動作に問題がある訳でもありません
 生産コストに見合った性能といったところでしょうか」

「ほほう。普段辛口の鈴仙が褒めるなんて珍しい」

「褒めていません。悪く無いと言っただけです。
 各種機構は極端なまでに簡略化されていますし、
 フロントサイトとリアサイトの作りもお粗末なので命中精度には些か問題があります。
 フォアグリップを省略しているので射撃時の安定は期待できませんし、
 オープンボルト方式の発火方式ですから当然ブレは大きい。
 その他にも幾つか気になる点はありますが、一応はそんなところです。
 ここまで簡略化された銃ならば生産コストは極端に安いでしょう。
 なのに引き金を引けば弾が前に飛ぶ。ちゃんと前方に飛ぶのです。
 これは素晴らしい事ですよ。とてもとても素晴らしい事です」

「ふむふむ、コストパフォーマンスを追求した設計にも関わらず弾が飛ぶって事に感心した訳ね」

「それに当てようと思えば当てられます」

「いや、それは個人の技量によると思うよ……」

にとりが試射を行った時は十メートル先の目標に当てるのも一苦労だった。
それを鈴仙は、倍以上の距離の目標に対して正確に命中させている。

やはり実際に銃を撃つという行為は鈴仙には遠く及ばないという事をにとりは改めて痛感した。
当てようと思えば目標に命中させる事の出来る鈴仙と、当てようと思っても目標に命中しないにとりではまるで勝負にならない。

適材適所。体を使う作業は鈴仙に任せておけという事だろう。
どのみちにとりに体を張った作業は向いていない。黙々と機械を弄っている方が性に合っている。

「さて、私からの評価はこんなものでしょうか」

「およよ? 今日は随分と早く試射を終えるんだね。いつもならもう少し撃ってから試射を終えるのに」

「もう十分理解かりましたから」

相変わらずの無表情でそう答える鈴仙だが、
にとりにはどうして今日はこんなに早く切り上げようとしているのか手に取るように分かる。
やはり二号の事が気になって仕方が無いようだ。

冗談に聞こえない冗談を口にしながらも、内心では二人きりでいるという事に我慢ならないらしい。

「あーはいはい。霖之助と二号の事がやっぱり気になるのねー」

「教官としてあの子を預かった以上、気にはなりますよ」

「ほほう、それで今二号の事をどんな風に思ってるの?」

「ピンを抜いた手榴弾」

「その心は?」

「手元から離れたらもう味方ではない」

「やっぱり殺伐としてるねー。もう少し心にゆとりと潤いを持とうよ」

「設計がタイトな銃程きちんと動作するものですよ」

「はぁ、最近鈴仙の言ってる言葉の意味が理解出来ている自分が嫌だ。
 とにかく、さっきも言ったけど気になるなら見に行ってくればいいじゃん。 
 私はここで作業と銃の掃除してるから、あとついでに後片付けもしておくよ」

「はいよろしくお願いしますそれでは」

「そういう言葉は目を見て誠意を込めて言え! というかせめて立ち止まってこっちぐらい見ろぉ!」

にとりにちらりとも視線を向けず、早口かつ早歩きで去ってゆく鈴仙を見てにとりが怒鳴った。
鈴仙は気にせず香霖堂の裏口から香霖堂へ入ると、そのまま見えなくなった。

溜息と共に肩を落とすと、にとりは先程まで鈴仙が撃っていた銃を分解して、清掃を始めた。
ストックを取り外し、内部からスプリングを取り出して、複数の部品の集合体である銃を、個々の部品へ分けてゆく。

各工程を注意深く、慎重に行いながらもにとりは仲間であり友人でもある鈴仙について考える。
互いに印象がこれ以上にない程最悪の状態で出会い、初めの内は顔を合わせれば口喧嘩をしていたあの頃。
それがいつしか冗談を口にし、互いを信頼し、相手の力量に対して信頼を置ける程の間柄になってしまった。

元々にとりも鈴仙のように実直で、やるべき事をしっかりとこなすタイプの人物が嫌いな訳ではない。
それは鈴仙の方も同じで、彼女もにとりのようなタイプの人物が嫌いな訳ではないのだろう。

しかし、だからこそにとりには分かる。
互いに気を使ってなぁなぁの関係で終わるような玉虫色の決着を鈴仙は望んでいないという事に。

鈴仙は霖之助を好いている。男性として、霖之助の事を好いている。
それはにとりも同じ事だ。だから初めて鈴仙と顔を合わせた時、にとりは鈴仙に良い印象を持たなかった。
警戒していたというべきだろうか。そして警戒すると同時に警告もしていた。

お前には無理だと。こちらの方が付き合いは長い。さっさと諦めて他所へ行け。
きっとそんな言葉を込めて鈴仙の事を睨んでいたはずだ。
しかし鈴仙はそんなにとりの視線に怯む様子さえ見せず、ただ黙ってにとりを見つめ返した。

「だからどうした?」と彼女は鈴仙に視線で投げ返した。
鈴仙にとって自らの道を塞ぐものとは壊すものでしかないのだ。
通せんぼを食らって足踏みする訳でもなく、迂回して無駄な時間を使う訳でもなく。

ただ壊して進むだけの存在でしかない。
結果に至る為にただ撃ち砕き、薙ぎ倒し、払い除けて最短距離を突き進む。
不器用なら不器用なりに突き進めばいいという事だ。

彼女はそうやって何かを犠牲にしてでも自分の欲する物を手に入れる手段を知っているし、
下手に何かを守ろうとすれば、守ろうとした物も、自分の欲する物も両方壊してしまう事も知っている。
だからこそ、鈴仙はいずれきっちりとした形でこの三角関係に幕を下ろしたいと考えているはずだ。

にとりには鈴仙のそうした強さが羨ましく思える。
にとりはそうやって何かを犠牲する強さもなければ、そうしてまで己の意志を貫徹する程の剛強な覚悟も無い。

技術屋としての性か、一から十まで歯車が噛み合い、
全てが正しく動作するような、そんな夢みたいに全てが上手くいく結果を求めてしまう。
そして最近では、自分が身を引けば全てが上手くいくのではないか、そんな事さえ思ってしまうのだ。

無論、それは自分の感情に蓋をして、勝負を放棄し、逃げ出すという事に他ならない。
始めから真正面からぶつかり合うのを避ける、臆病な選択なのだろう。

誰かが許してくれさえすれば。
友に華を譲る事が臆病な行為ではないと誰かが言ってくれれば、
にとりは今よりももっとずっと気楽に生きていけるのに。

香霖堂の方から二号の悲鳴が聴こえた。
何かを叩きつける音が悲鳴の後に続く。
また何かヘマをやらかして鈴仙に投げ飛ばされたのだろう。
相変わらず学習しない兎だ。

にとりは口元を緩め、やや苦笑するように笑った。
裏庭にはにとりの他に誰もいない。
分解され、個々のパーツに別けられた短機関銃が作業台の上に横たわっているだけだった。

Comment

管理者にだけメッセージを送る

Pagetop ]

Copyright (C) 十四朗亭の出納帳 All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。