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十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

プロフィール

十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
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大体マルチ対応ゲームやってると思います。

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『れーむちゃんあつめる』

ロリコンではありませんが幼女が好きです。
足の裏とかお腹が好きです。
脇とかちっちゃな指先が好きです。
でもほっぺたの方がもっと好きです。

上記の文に特に意味はありません。
れーむちゃんシリーズは書いてて楽しいですねー。
幼女強い強い。


『れーむちゃんあつめる』



霖之助、霊夢











「まつぼっくり」

そういって香霖堂のドアをそっと潜り、店内へと入ってきた霊夢のスカートの上にには大小様々なまつぼっくりが乗っかっていた。
巫女服の袴をたくし上げる格好でそろりそろりと香霖堂へやって来たものの、その姿は危なっかしい。
ドロワーズと白くて細い棒っきれのような脚は丸見えで、本人にそれを隠す気がないという事がなおさら危なっかしい。
少しは恥じらいとうものを覚えて欲しいものだ。

「ほほう、たくさん拾ってきたじゃないか。凄いね」

「大きいまつぼっくり」

「うん、大きいね。とても大きい」

霖之助が床に天狗の新聞を広げてそこへ広げるように言うと、霊夢は大人しくそれに従ってまつぼっくりを新聞の上へと広げた。
そしてその中から一際大きいまつぼっくり拾い上げ、霖之助に見せる。
大きさは霊夢の拳より少し大きい程度。霖之助の拳ならばすっぽりと覆い隠せる程だが、まつぼっくりにしてはそれなりに大きい。

「食べる」

「ちょっとこれは食べられないな」

「じゃあ小さいまつぼっくり」

食べられないと言うと霊夢は残念そうな顔をして、今度はそれよりもずっと小さいまつぼっくりを霖之助に差し出した。

「大きさの問題ではないよ」

食い気ばかりが優先事項のこの巫女にはもはや溜息すら出ない。

「まつぼっくりは外国の言葉でパインコーンって言うの」

「へぇー物知りだね」

「ひゃくしき」

「……博識?」

「そう博識」

語彙が豊かなようで時々意味の通らない間違いをする。
しかも本人がそれが正しいと思って覚えている事が大きく問題だ。
それにしても百式はない。百式は。

「しかしまつぼっくりか。君も子供らしくて可愛らしいところがあるじゃないか」

「食べられると思った」

分かりきっている事だがやはり彼女はこの大量のまつぼっくりを食用目的で集めていたらしい。

「その考えは可愛らしくないな。でもまぁ、まつぼっくりじゃなくてドングリなら食べられない事もなかったんだけどね。
 いや、まつぼっくりも中身の松の実は食べられるか……。でもまぁ、小さいものだしドングリの方が効率はいいよ」

「食べれるの? ドングリさん食べれるの?」

ドングリは食べられると言った瞬間にはもう霊夢にとってまつぼっくりは眼中にないようで、
手に持ったまつぼっくりを手放すと目を輝かせながら霖之助に質問した。

「食べられるよ。渋みが強いものもあるけど、中にはほんのり甘いものもあるし、
 渋みが強い物でもアク抜きをすれば食べられる」

「拾ってくる」

「食べ物に関する決断は早いな。まぁ思いつきをすぐに行動へ移せるのはいい事か」

「上手く行けば今夜はお腹いっぱいで幸せ。夜中にお腹が減って目が覚めない」

「……お米、もっとあげようか?」

「うん、欲しい。三食白米生卵と味噌汁付きが夢」

三食白米生卵と味噌汁付きという言葉がなんとも物悲しい。
もっと他にいいものはあるのだろうが、残念な事にそれが霊夢にとって最高の贅沢のようだ。

「いってくる」

「あぁ、待ちなさい籠をあげよう」

「邪魔ー」

「たくさん入るから結果的には君のお腹が膨れるよ」

「持っていく」

お腹が膨れるという単語が彼女の心を射止めたらしい。
霖之助から中くらいの編み籠を受け取ると、霊夢はそれを背中に背負った。
また近くの森にでも向かうのだろう。

森と言っても、魔法の森ではなくやや人里に近い普通の森。
そこならまつぼっくりもドングリもたくさん落ちている。
魔法の森に生えている植物は瘴気を多量に含んでいるので食用には適さない。
というより食用にしてはいけない。利用できてせいぜい薬物や魔術の実験に使用するぐらいだ。

「よし、それでいい。じゃあ気を付けて、怪我のないようにね」

「怪我したら霖之助さんを退治する。か弱い子供に重労働で怪我をさせた罪で退治する」

「か弱い?」

「うん、か弱い」

「君がか弱い子供なものか。それにその罪は理不尽だ」

「巫女は眼鏡よりちょーつよい」

そんな言葉を残して霊夢は再び香霖堂の外へと消えて行った。
遅くはならないとは思うが、一応気をつけるように言っておくのが大人としての筋だろう。

窓から外の景色を見つめると、そこには以前よりも幾分柔らかな日差しの太陽が少し傾きかけた位置で地上を照らしていた。
もうすっかり秋らしい秋になってしまった。
確か霊夢と出会ったのが今年の春。この窓で彼女がひょっこり顔を出していたのを見つけたのが始まりだ。

それから夏を挟んではや半年以上。
色々言いたい事はあるが、今の生活には不満らしき不満はない。
霊夢と出会う前と出会ってからでは、圧倒的に今の方が充実した暮らしを送っているといえる。

霊夢は相変わらず出会った頃のままマイペースだが、霖之助には大なり小なり様々な変化を感じ取る事が出来た。
人当たりもいくらか良くなった気がするし、何よりこの日々に生きている楽しみのようなものを感じている。
多分、それは霊夢が居たから感じる事が出来るもの。

あの紅白巫女が運んできたささやかな贈り物なのかもしれない。










「ただいま」

霊夢が香霖堂へ戻ってきたのは、周囲一帯が夕日に赤く染め上げられ、赤とんぼが飛び交うような時間帯になってからだった。
余程夢中になってドングリを拾ったらしく、霖之助が渡した籠の中はドングリでいっぱいになっていた。

「おかえり。へぇ、結構拾ってきたじゃないか」

「何故かたくさん落ちてた。私が足元を見るとたくさん落ちてる」

「運がいいね」

「運がいい子供、略して運子」

「やめなさい、そういう下品な言葉遣いは」

「おばさんはそんな事で注意しなかった。お風呂上りにおっぱいお化けとかやってくれた」

「まったく、いったいぜんたい君のおばさんはなんなんだ」

「おっぱいお化けっていうのは」

「皆まで言わなくてもよろしい」

毎度恒例、霊夢のおばさん談義には相変わらず溜息がでる。
霊夢にとっては慕うべき心優しいおばさんなのかもしれないが、霖之助にとっては霊夢に変な事を吹き込む変な存在でしかない。
今回のこのおっぱいお化けの件でさらにその認識が深まった。
名前からして子供に見せるべきものではない。

「とはいえ残念な事にドングリは今すぐ食べるという訳にもいかないんだ。
 鍋で煮こんで殻を剥いて、そこから調理して。まぁ、結構手間が掛かるんだよ。
 だから今日は無理だな。夕食が作れない」

「食べる。食べる為に採ってきた」

霊夢は一歩も譲らない。一度食べると決めた時の決意は固いようだ。

「そんなに言うのなら一粒食べてみるといい。とても渋いから」

投げやりに言った霖之助の言葉をそのまま受け取り、霊夢は手近なドングリの殻を剥いて中の実を口へ含んだ。

「ザラザラ苦渋い……」

口に含んだと同時に眉間に皺が寄る。どうやら相当渋かったらしい。
明らかに口があまり動いていない。

「そういう事だ。アク抜きは僕がやっておくから、明日おやつにでも出してあげるよ。
 ほらっ吐き出しなさい。ぺっぺしなさい」

「嫌。だってこれも食べ物。食べて死なないものを口に含んだのなら飲み込まなきゃ失礼」

「そうか、だったら飲み込むんだね。まったく、変に頑固ときたものだ」

苦くて飲み込み辛いそれを霊夢は一生懸命いなってやっと喉へと流しこむ。
目にはうっすらと涙が溜まっているようだ。どうやら食に貪欲であっても悪食ではないらしい。

「にがぁ……口の中に変なの残ってる」

「水飲むかい?」

「のむー」

カウンターに常備してあるピッチャーから霊夢専用湯呑みに水を注いで霊夢に渡した。
霊夢はゴクゴクと音を立てて水を勢い良く飲み干した。
余程、その渋さが嫌だったとみえる。あれだけ食べると言っていたのに二つ目は口にしなかった。

「まだちょっと変」

「これからは僕の忠告もしっかり聞くんだね」

「多分分かった」

「本当に?」

「霖之助さんの苦くて美味しく無い物は食べちゃだめ」

「撤回するんだ、今すぐに。誰がそんな事を言った。僕を幼児性愛者に仕立て上げられてもらっては困る。
 まぁ、これに懲りたら僕の言った食べてはいけないものは口にしない事だね」

文法と要点の抜き取り方を誤った日本語の意味はとても危うい。
これでは霖之助が変質者の烙印を押されてしまう。

「霖之助さんのいった苦くて美味しく無い物は食べちゃだめ?」

「その言い回しは何とかならないのか。というよりさっきよりも酷くなっているぞ」

日本語を誤った方向へ持っていくという才能に関して、時々霊夢は天才的な閃きを見せる。
ある意味この才能は賞賛したい程だが、賞賛しても被害者が霖之助である事には変わりないので、この才能は是非とも否定したいところだ。

「気のせい。私はそんなに酷い人間じゃない」

「僕を監視して脅迫して困らせるのに?」

「仕事。私もこころぐるしー」

「嘘を言うな。この頃はいとも容易く堂々と行われている気がするぞ」

「嘘は言ってない。だって霖之助さんが困ると私も困る。多分悲しい」

唇を尖らせて、霊夢が少し寂しそうな顔をした。
自分の言っている事が信じてもらえないという事はとても寂しい事だ。

霖之助は少し意地を張り過ぎたなと反省しながら霊夢に優しく語りかけた。

「まったく君はお世辞が上手いな。まったく、そう言われたら大人は子供に優しくするしかないだろう?」

霖之助はその大きな手で霊夢の小さな頭をわしゃわしゃと撫でた。
最近は殆ど毎日香霖堂でお風呂に入っているので、彼女の黒くて長い髪はとても艶やかで触り心地が良い。

霊夢の方も撫でられて嬉しいのか、目を細め身を捩りながらそれに応えた。
そして霖之助に甘えるように抱っこを要求してきたので、霖之助も素直にそれに応じて霊夢を抱き抱えた。
子供らしく大人よりも高い体温と、やわらかくぷにぷにとした腹の感触。
子供は大人よりも腹筋が発達していないので、内蔵などの内容物が重力に引かれてお腹へ下がりやすく、
痩せていてもぷっくりとしたお腹になる。

身長も伸び、健康状態が改善された為か少し体重の増えた霊夢だが、まだまだ霖之助からしてみれば軽いものだ。
手足も細く、胸も膨らんでいない。ほっぺたは柔らかそうに膨れていてほんのり赤く色づいているのが可愛らしく思えた。

「さっきのはお世辞違うの。霖之助さんが困っていると私はお風呂もご飯もありつけない」

「やっぱりそんなところか。現金な巫女め」

「りありすとー」

「エゴイストだ。とんでもない利己主義者だよ君は。まったく末恐ろしい」

外を見てみると、先程まで赤く大地を染め上げていた太陽は殆ど沈みかけていて、
夕暮れの赤よりも闇夜の群青色が世界に広がりつつあった。
そろそろ夕食と風呂の時間帯には丁度いい。

「霊夢、お風呂と夕食はどうする」

「どっちもありあり」

「遠慮は無いか……。まぁ、君には今更だね。
 分かった、お風呂を沸かしてやるから入ってきなさい。僕はその間に食事の準備をする」

「やー。霖之助さんも一緒にお風呂。髪の毛わしゃわしゃしてもらう」

「一人で出来るだろう。何時までも僕に髪を洗わせて。
 これから先どうするつもりだい」

「これから先も霖之助さんにわしゃわしゃしてもらう」

「それは難しいな。しばらくは大丈夫だけど、ずっとは無理だ」

「なんで? 霖之助さん死んじゃうから?」

「その発想がなんで? だよ。
 少なくとも僕は君よりも長く生きる。悲しい事に僕は君を見送らなきゃいけない。
 そういう生き物なんだよ、僕は。分かったかい?」

「全然」

あっさりと首を振って否定された。
もう少し理解というものを示してくれる心があってもいいくらいだが、霊夢にそんな気の利いた事を求めても無駄だろう。

「そうか。それでも別にいい。
 とりあえず君だって成長するんだ。いつまでも子供じゃない。
 だからずっと一緒にお風呂に入ってやれないし、髪も洗ってやれない」

「成長しても私は私。変わらない。霊夢は霊夢のまま。
 霖之助さんの事嫌いにならないし、お風呂も一緒に入れるし、髪も洗わせる。
 服も直してもらうし、ご飯も用意してもらう。ずっとそう。
 そうしないと退治する。人間を困らせる夜のケダモノは退治する」

「夜のが余計だ。お風呂と髪を洗う事以外はいいだろう……よくないか。
 とりあえずいずれ嫌になるんだ」

「ならない」

「なる」

「ならない」

「はぁ……まったく君は頑固だな。分かった、もしも将来君の気が変わらないのであれば風呂でも何でも付き合ってあげるよ」

「これでよい」

「随分と偉そうに」

「今日は働いたもの、偉いわよ。働くとその人はその日が終わるまで働いていない人より偉くなれる」

「ドングリ拾いが労働か。なんとも子どもらしいな。
 というよりその言い方だとまるで僕が働いていないみたいじゃないか」

「働いてない」

「働いてるよ、ほぼ毎日」

「一日中座って本を読んでる。働いてない、ふろーしょとく」

「不労所得か……用法は違うがよく知っているねそんな言葉」

「ひゃくしき」

「博識。博麗霊夢の博」

「博識。はくれーれーむのはく」

よしっと言って霊夢を下ろす。いつまでもこうして霊夢を抱き抱えている訳にもいかない。
お風呂は勝手に沸かないし、料理は勝手に出来上がらない。全て誰かがやらなくてはいけない事だ。
出来るなら甘えてくる限り霊夢に付き合っても良かったのだが、
あんまり霊夢を抱き上げて甘やかしているとそのまま霖之助の腕の中で眠りこけてしまう。

とりあえず生活習慣を維持させる為、なるべく風呂と食事は済ませてから眠るよう言ってはいるが、
いかんせん猫のように気まぐれな霊夢はそんな事などお構いなしで、どこでも眠ってしまう。
この前は庭先で遊んでいると思ったら、庭の真ん中で寝ていた。それぐらい彼女は自由気侭だ。

「風呂は一緒に入ってあげるけど、さすがに風呂に入ってから料理を作っていては効率が悪い。
 せめて米ぐらいは研いでおかないと。だから霊夢、君は風呂を沸かしておいてくれないか?
 僕はその間に米を研いで料理の下ごしらえをするから」

「お安い御用。お風呂とご飯の為なら働く」

「よし、じゃあさっそく取り掛かろう。薪は割ってあるものを使っていいから、火傷にだけは注意するんだよ」

「おー」

いつもの気怠そうなジト目とは裏腹に元気よく霊夢は風呂釜がある家の裏へと走っていった。
やれやれとその背中を見送る霖之助の表情は満足そうな笑顔で緩んでいた。
「所詮は自分も半分人の子という訳か」という自嘲気味な結論に至りつつも、それが満更でもない。

彼女はいい意味も悪い意味も込めて素直だ。
嫌な事は嫌と言うし、好きな事は好きと言う。大体の子供がそうあるものだが、霊夢はどこか違う。
物事のもっと奥深くを見透かして好きと嫌いの判断をしているような気がする。

直線的で先鋭化された直感が素早く物事の本質を見抜くような。
人間が抱く集団的な定義によって画一化された良し悪しとは別に、
自分の中で独立した善悪観を持っていると思う時が時々ある。

先程霖之助と風呂に入るか入らないかで言い争った時も、
霖之助の方にはまった考えとは違う、独自の考えで彼女は自分の意思を貫き通した。
他の誰とも違う、人間でも妖怪でもない存在。

死に装束の色、つまりは人ならざる者の白に、人間が生きている限り絶え間なく流れ続ける血潮の紅。
相反する二つの色が隣り合ってはいても、決して一つにはならない衣を纏った存在。

それは人ならざる者と人間が混じり合った霖之助とは似て非なる、まったく別のもの。
博麗の巫女は限りなく人間であり、また限りなく怪異に近い独立した概念。
半妖は妖怪と人間を均等に混ぜ合わせた怪異と人間が互いを喰らいあう生き物。

硬貨に描かれた絵柄のように、二つの存在は背中合わせで存在しており、そこを超える事の出来ない境界線が二分している。
霖之助と霊夢は近づく事はできても、決して同一線上の存在ではない。
彼女は今こうして霖之助を頼り、甘え、好いてくれていても、いずれは巫女という肩書きがそれを許さなくなる。
それは霖之助に限った話ではなく、彼女に関わる全てのものがそうなる宿命にある。

人間を守り、妖怪を殺し、殺すべき妖怪を存続させる為に幻想郷を守るという事はそういう事なのだ。
孤独の内に戦い、孤独の内に年老て、孤独の内に人々の記憶から消える。永久に。

人は心臓が止まった時に一度死に、人々から忘れ去られた時に二度目の死を迎えるが、
巫女にとってはその二度目の死が一度目の死となる。
まず巫女は誰からもその存在に関する人間的な部分を記憶される事はない。

巫女は巫女で無くなると同時に人々から忘れ去られ、どこかへ消える。
その巫女が居た事は記憶できても、その巫女がどんな人物だったかまでは思い出す事ができない。
それもそうだ、まず第一に記憶していないのだから。

そこまで考えて、霖之助は半ば自信の思考に引きずり込まれ掛けた自意識を慌てて思考の深みから引き上げた。
また霖之助の悪い癖だ。霖之助は一度何かを考え始めると、ずぶずぶと足を引きずり込まれるように思考の深みへと沈んでゆく。
何も聞こえなくなり、自信が考える光景しか目には見えなくなり、独りきりの世界で果てなき考察と理論の構築が行われる。

物事を深く探求し、考察を繰り返すのは霖之助の好むところだが、それをところ構わず行ってしまうのは悪い癖だと実感している。
他人と関わる仕事をしている以上、自分の中にだけ意識を向けた孤立無援な生き方をしている訳にもいかない。

大きく伸びをして、霖之助は台所え向かう準備をした。
カウンターの上を片付け、霊夢にから返してもらったドングリ満載の籠を抱える。
籠の中にはドングリだけでなく、霖之助が食用には向かないと言ったまつぼっくりもいくつか入っていた。

食料を集めるという目的にのみ貪欲なのかと思えば、このように興味の向いた物を集めてくる歳相応の子供じみた一面もある。
いつも睨みつけるような目付きで、無愛想な表情をしていうる霊夢にしては可愛気のある事だ。

一際大きなまつぼっくりを手に取り、それをじっくり眺める。
だが霖之助の目線はすぐにまつぼっくりとは違う別の物へと移っていた。
それと同時に鼻孔を擽る芳醇な香り。もしやこれはと霖之助はその物体を手に取った。

「これは……松茸か」

太く力強く傘に向かって伸びた茎に、あまり広がっていない丸みを帯びた傘。
全体的に茶色く地味な配色をしているが、その存在感を強烈に印象づける豊かで強烈な香り。
間違いない、その茸は間違いなく松茸だった。
まだ人里に居た頃、世話になっていた霧雨道具店の者達と何度かきのこ狩りに行った際一番人気だったあの松茸だ。

「まったく、つくづく運のいい子だ」

恐らく面白そうな茸があるので拾っていこうといった具合だったのだろうが、
霖之助にしてはありがたい気まぐれた。
よく籠の中を掻き分けて見てみると、その他にも何本かの松茸を発見する事が出来た。

特に面白みもない普通の夕食を考えていた霖之助だったが、これではその案も白紙に戻さなくてはいけないようだ。
とはいえこれは嬉しい誤算だ。彼女の幸運が招いた嬉しい誤算。

きっとそれは紅でも白でもない不思議な少女が無意識の内に霖之助へ行った恩返しなのかもしれない。

Comment

#No title
ロリコンではありませんがれーむちゃんはとてもかわいいと思います。
れーむちゃんの腋とか想像すると僕はもう。

どんぐりはパンとかまんじゅうとかに出来るらしいですね。
どんぐりと霊夢……とても似合うと思います。

次の話も期待させていただきますね!
  • by:道草
  •  | 2011/07/19/22:27:46
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おつぱいお化けと霖之助さんの会談はいつになるんだろうか。


れーむちゃんは運子
  • by:すかいはい
  •  | 2011/07/20/17:43:42
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#No title
れーむちゃんまじこあくまかてんし
れーむちゃんを膝の上にのっけてお風呂入れてたら霖之助さんだってペドに目覚めかねない……
  • by:くぅ
  •  | 2011/07/24/12:34:31
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