十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

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十四朗

Author:十四朗
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壊れやすい願いだけ

七夕を大幅にオーバーランしての七夕SS。
別にPortal2とかやってた訳じゃないです。
Portal2とアカツキ電光戦記やってただけです。

タイトルは某ガンダムの背中にX字が付いてる奴から。
クロスボーンじゃないよ!


『壊れやすい願いだけ』




霖之助、アリス











「壊れやすい願いだけ何故こんなにあるのかしらね」

アリスが赤い短冊を手に取って、そっとその表面を撫でる。
短冊には『お米 霊夢』とだけ書かれていた。
実に端的に、そして分かりやすく霊夢の願いを表していると言える。

「願いばかりあっても仕方ないと思わない? だって儚いもの」

「儚さは美しい事だよ。僕はそう思う」

「でも儚いばかりでは寂しいわ。きっととても寂しい」

アリスは他にも『大魔法使いになる 魔理沙』や『幻想郷一の新聞発行数 文』『対空火器の充実化 鈴仙』等といった短冊を見つめては、
憂い気な表情を浮かべて他の短冊へと手を伸ばしていった。
香霖堂の玄関付近に飾られた短冊には人妖様々な者達が寄せた己の願いが吊るされているが、
そこにこの少女、アリス・マーガトロイドの短冊は存在しない。

せっかくの行事だからと勧めてみたが、結局気が乗らないの一言で片付けられてしまった。
行事に関して別段冷めている訳ではないと霖之助は認知しているのだが、どうも今日の彼女は少し冷たく感じる。

「願い事って、一度願うと叶わないのはきっと残酷な事なのよ。
 私にだって願いがあるけれど、それが叶わないって思った時、私は怖くて仕方ないから。
 だから私は短冊なんてものに願い事を書いたしない」

「他人の信条に介入するつもりはないが、随分冷めているんだな」

「冷めているっていう訳ではないの。むしろ私はいたって情熱的よ。
 だからこそ情熱を絶やしたくない、そういう事なのよそれに……」

「それに?」

「願いは簡単に叶ってしまうとキリがない。
 例えば霊夢の願いだけれど、お米が手に入ったら彼女は何を願うのかしら」

「味噌、野菜、肉、酒……」

「ほら、欲望は限が無い。
 願いが簡単に叶うと人は欲を強くする。欲の強い人間なんてスマートじゃないわ。
 私はもっとスマートに生きていたいの。高い目標とそれを実現する為に日々前進を止めないスマートな生き方よ」

「ストイックで洗礼されているけど、そんな生き方で疲れないかい?
 時々腰を下ろして少し休んでみるのもいいんじゃないかな」

「駄目よそんなの。だって腰を下ろしたら立ち上がるのに時間が掛かるわ。
 そんなのは駄目なの。きっと私腰を降ろしたらそこで満足してしまうもの。
 今のままでいいじゃない。そうよ、今のままの生活を保てばいいじゃないって。
 そしたら今度は動き出すのが怖くなる。変わるのが怖くなるの。
 変わり続けない者にとって変化は死にも勝る恐怖よ」

すっぱりと言い切られてしまって、霖之助は次に返す言葉を見失ってしまった。
確かに、彼女の言う通り人というものは腰を降ろしてて休み始めたら中々立ち上がれない。
重たい腰は何時までもそこに居座り、やがて根が深く張ってしまう。

そうなるともうそこでその人物は動かなくなってしまうのだ。
考えもするし、意見も述べるが決して進みはしない。
両足が退化して遥か彼方へ歩くという行為を置き忘れてきてしまったかのように、進むのを止める。

「耳に痛い言葉だな」と霖之助は自嘲気味に笑った。
生憎、今の霖之助は他人を指さしてそう言える程日々歩き続けている人種とは言い難い。

「あら気にしちゃった?」

「金槌で頭を叩かれた気分だ」

「それはまぁ効くわね」

クスクスと上品に笑ってアリスが七夕から霖之助へと視線を向けた。
陶磁器のように透き通るような白色の肌は彼女の柔らかい金髪とよく合う。
そしてそれらを優しく包みこむ夕闇が霖之助の心を擽った。

「でもね、霖之助さんの事を言ったつもりは全然ないの。
 本当よ。本当にそんなつもりはないんだから。
 アナタは自分で考えもするし、歩みを止めている訳でもない。
 本当に腰を降ろしてしまった人達は何も考えないし何も感じない。
 思考が停滞してしまうの。石像みたいなものね」

「僕はそうでないと言ってもらえて幸いだよ」

「だって霖之助さんはよく考えるもの。よく考えて、よく喋って、よく行動する。
 知ってた? 私って自分と霖之助さんは似た者同士だと思っているのよ」

「初耳だ」

先程とは別の意味で頭を殴られた気分だった。
ごく平然とした面持ちで似た者同士と言われたが、あまりにもあっさりしているのでよく気が付かなかった。
随分さばさばと物を言ってくれる。

そこが彼女の魅力ではあるが、
何か下手な事をいうと次の瞬間にはばっさりと切り捨てられてしまいそうな冷たささえ感じさせる。
浮かべた微笑も氷の微笑みと言われても仕方のないクールなものだ。

「同じではないけれど、私達は自分の目標に対して素直なのよ。
 お互いにそういった点は尊重しましょうよ。きっとそれは尊い事なのだから」

「僕の願いも、君の願いも等しく尊いか」

「願いだなんて言葉は止めて欲しいけれど、そうね。
 それでいいかもしれないわ。だったらそれが私の願い。
 今ある目標を尊ぶ。それが私の願いよ」

「なら僕もそれと同じで。自分の目標をもっと大切にしようじゃないか。
 君の言った壊れやすい願いではなく、もっと固く強固な願いとして」

またアリスの白い手がそっと笹の葉を撫でた。
今朝切り取ってきたばかりの瑞々しい笹の葉はそんなアリスの手を優しく受け止めて、窓から入ってくる夏の夜風に吹かれサラサラと揺れた。
様々な願いを乗せて、笹の葉が揺れる。霖之助も眼を閉じて流れる風を感じた。

湿り気と肥沃な土の香りがする夏の風。
昼は蒸し暑く不快なばかりだが、一旦日が落ちるとそうでもない。
どこか優しく、自然に涼を運んできてくれるのが心地良く感じられる。

「ねぇ、今夜暇?」

「だったら?」

「お酒でも付き合って。のんびりしながら飲みたくなってきちゃった」

「夜は大抵暇だよ。うん、大抵は」

「知ってるわよ。聞いてみたというスタンスなだけだから。
 アナタが夜のお誘いを断らないのは分かりきった事よ」

「では何故聞く? 無意味だろう、そんなの」

「アナタは阿呆なの? いいかしら。
 アナタは仮にもし私が、これは仮の話だけれど。
 もしも私が前置きもなく唐突に今夜飲むから酒を用意しろ、肴もだ! なんて言ってアナタは平気なのかしら?」

「驚くかな。とても驚くだろうね」

「でしょう。だからこうして聞いているのよ。アナタを驚かせない為に。
 アナタだってそんなデリカシーのない女と飲みたくなはないはずよ」

「どうして僕の言いたい事を先に言うかな。そんな事をされたら僕は何を言っていいやら」

「何も言わなくていいわよ。だってほら、今夜は七夕ですもの」

くるりとその場で一回転してアリスが天窓に向けて手を伸ばす。
ふわりと舞い上がったスカートが美しく、彼女の細くよく締まった脚が一瞬だけ顕になった。

「きっとお空がとてつもなく五月蝿いわ。彼と彼女が夜通し騒ぐんだもの。
 だったら地上に居る私達ぐらいは静かにしているのが道理でしょう?」

霖之助は静かに首を縦に振って肯定だけした。
そうだ、確かに今宵はうんと騒がしい。
空の上で、一組の男女が夜通し語り合うのだから。

彼と彼女は一年ぶりに会う時、いったいどんな話題で話を始めるのだろうか。
いますぐそばにいる彼女と出会う時にさえどんな話題で会話を始めればいいのか分からない霖之助には、到底考えも付かない事だった。

ただ一つ言える事は、どちらも会いたいという願いだけは同じなのだろう。
いまここにこうして二人でいるアリスと霖之助の願いが同じであるように。

Comment

#No title
読ませていただきました面白かったです。
クールなアリスいいっすね、大好物です。
最後の部分「きっとお空が・・・」の部分を「きっとおくうが・・・」と読んでしまった私はだめかもしれませんw
次回作楽しみにしています。
  • by:傀儡人形
  •  | 2011/07/12/03:15:51
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カップリンクに至らないふたりのやりとりがいいですね~。
会話のやりとりもテンポかよくて好きです。
お酒のお誘いが、台詞そのままの意味ではなく、またそのままの意味ではないことを言ってしまうのも実に東方の少女らしいw
  • by:Meteoride
  •  | 2011/07/13/08:01:16
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#No title
おお、その曲はCD持ってるくらい好きですー。
なんかいいなー、こういう会話…大人っぽい2人もいいですねー。三月精準拠でアリスにクールだったり大人っぽかったりといったイメージを持ってないんで、なんか新鮮でしたー
  • by:
  •  | 2011/07/13/09:36:12
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