十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

プロフィール

十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
メッセ&スカイプは大歓迎です
SkypeID『Brassp905』


リンクはフリーなので
どなたでもどうぞ
もしご連絡いただければ高所から
イヤッホォォォォ!!します


PS3アカウント『auscam』
大体マルチ対応ゲームやってると思います。

バナー

Web拍手

Twitter

 

入店者

検索フォーム

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『12ゲージのプレゼント』

ポンプアクションは音と動作のかっこ良さいいです。
対空機関砲の次ぐらいにかっこいい武器ですね。
次は機関銃で木を切り倒す話が書きたい。



『12ゲージのプレゼント』



霖之助、鈴仙、にとり









ショットガンというのは実にいいものだ。
その重さと大きさは逞しさと確かな威力をイメージさせ、
ポンプアクションの感触と作動音は熟練した愛撫の如く官能的で気分が昂ぶる。

現在鈴仙の腕に抱かれたショットガンは銃口から銃床の端までの長さがおよそ一メートル前後。
機関部から真っ直ぐ伸びた銃身とその下に並行して並んだチューブマガジン。
更にその先端付近にはバヨネットラックが備え付けてある。
これはつまりバヨネット、すなわち銃剣を装備出来るようになっているという事で、鈴仙はその点をいたく気に入っていた。
バヨネットラグには黒い艶消し塗装を施された銃剣が鎮座していて、鋭い刃で周囲を威嚇しているようだ。

ストックもグリップ付きフォアエンドも黒一色で統一されたこの銃は、大きなワタリガラスを思い起こさせる。
フォアエンドにグリップを追加させたのは鈴仙の案で、
修理したばかりで固いスプリングを引き易くする為と、発射時の安定性確保を見込んでの事だった。

発射の際の反動を余りある筋肉で押さえ込む事が出来るのなら、この改造は必要ないかもしれないが、
現在の鈴仙の体重は軽く、筋肉も月に居た頃に比べれば衰えているので、リコイルの制御に不安が残る。
その為、修復作業中のにとりに頼みフォアエンドにグリップを追加するよう打診したのだ。

「にとり、ショットガンというものは実にいいですね。実にいいです」

「二回も言わなくていいよ怖いから……。
 はぁ、霖之助が急用で出かけたばっかりにこんな三度の飯より銃が好きな女と試射をする羽目になるなんて」

「食事を抜きにして銃を撃つより、食事をとった方が良い結果が出ますよ。
 空腹とは精神を乱す要因ですし、何より栄養不足の体はポテンシャルの低下を招きます」

「冷静なご指摘どうも。まったく分かってないよこいつ……」

「ショットガンを見ていると婚前妊娠を思い浮かべますね。ショットガンマリッジ……」

「浮かべないよ、浮かばないよ。それってアンタだけだよ……多分」

「始めないのですか?」

「アンタが変な事をいうから始めるタイミングを見失ったの!
 あーでも、もう少し話を聞きたいかな。持ってみた感触とか、構えてみた感想とか」

「そうですね……」

鈴仙の感想は簡潔に述べるなら良い銃だった。
堅牢な作りのレシーバーに火傷防止用のヒートシールドは迅速かつ、
確実な使用と動作を求める思想がみられ、この銃が明確に軍用として製造された、
あるいは軍用に改修されたものだという事を如実に物語っていた。

装弾数は十二ゲージ弾を八発。
フォアエンドの後部から円柱状のチューブマガジンに押し込めるように装弾してゆく。
現在チューブマガジンには八発全弾が装填されており、鈴仙が薬室に弾を送り、引き金を引くだけで発射出来る状態にあった。
その為鈴仙は決してにとりや店の方角には銃口を向けず、
銃口は誰もいない木々の方向へ、しかもやや下方へ向けられている。

「良い銃です。基本に沿って作られている銃なのでこれといった特徴がないのが特徴ですね」

「何それ平凡。面白く無いなぁ」

「いえにとり。良い銃というのは長い歴史のノウハウに忠実でいつでもどこでも正確に作動する銃の事をいうのですよ」

「技術屋としてはあんまり面白くないの」

「銃後の人々程革新的で新しい物が好きなのですよ」

「銃後って……幻想郷には一番似合わない言葉だね。
 だってさ、戦争なんて意味ないし流行らないもん」

「だから趣味だけで銃が撃てる。良いものです。
 国家もイデオロギーも意味はなく、後ろから銃を突きつけられて銃を構える訳でもない。
 誰かの思想、思惑、謀略に関係なく銃を握れ、殺す為に銃を握る訳でもない。
 ただ撃ちたいから、興味があるから、壊れた銃を直したいから。
 その為だけに銃を見つけ、修理し、引き金を引くなんてこれ以上にない平和ですよ」

「ちょっとよく分からないな、私には。
 そこまで難しく考えた事もないし、これからその予定もない。
 つまり鈴仙が言いたいのはやりたくてやってるって事は最高に自由だって事でしょ?」

「えぇ、最高の自由です。銃を握る人間は大抵引き金を引きたくないと心底願っているのですから」

その言葉に嘘はなかった。
どんな英雄でも、名も無き前線の兵士でも、百発百中の狙撃兵でも、本当は引き金なんて引きたくない。
誰かに向かって引き金なんて引きたくない。

それは鈴仙にとっても同じ事だ。
誰に対しても本当は引き金なんて引きたくない。

けれどもそんな思いは戦争という大きな力の前では無きに等しく、
愛国心や母国を守るという使命感が震える腕に銃を握らせ、強張る指に引き金を引かせる。
大きな力が引き金を引かせるのは何も戦時下だけではない。

国家に仇なす者や反逆する者、テロリズムと犯罪に対してもその力が作用する。
大罪を犯しなお逃れようとする者には死を。
国家を転覆させ混迷をもたらそうとする者には死を。
名伏しがたいその力は容赦なく兵士に引き金を引かせる。

「にとり、銃が他人を殺すのではありませんよ。
 他人を殺すのは……いつだって武器を握っている者なのですから」

「鈴仙? どうかしたの」
 
堰を切って溢れ出した思考の波は鈴仙自身の意思では引かず、
にとりに諭される形で鈴仙の意識はこちら側へと戻ってきた。

「なんでも……なんでもありませんよ。
 ねぇにとり。霖之助さんってどんなものをプレゼントしたら喜びそうですかね?」

じわじわと蘇ってくる自身の記憶に蓋をするように、あるいはいつまでの鈴仙の背後を付け狙う過去の残滓を振り払うように、
鈴仙は違う話題を切り出した。

「ふぇ? どしたの急に」

「ほら、私達って日頃から霖之助さんのバックアップありきで銃の修復や試射をしている訳でしょう?」

「まぁそうだね」

「確かにこの行動は霖之助さんの意思もありますが、私達はこの状況を楽しんでいる。
 楽しんでいるのだったらその功労者に御礼をすべきだと思うのです」

「最近銃を直すのは私の仕事だから私が功労者な気も……」

「そこでです。何か贈り物をした方がいいと思いましてね」

違う話題を切り出したと言っても、一応は鈴仙が真剣に考えている事だ。
あの日、初めて香霖堂で銃を撃ってから今日に至るまで、鈴仙はずっと霖之助の世話になっていると言っても過言ではない。
彼は気にしていないかもしれないが、鈴仙自身世話になり続けるという状況に少なからず負い目のようなものを感じているのは事実だ。
出来れば形のあるものでお礼でもしたいと考えている。
自分らしい、鈴仙・優曇華院・イナバらしいお返しを一つしておきたい。

「無視かい……鈴仙が他人の話を聞かないのはいつもの事だから別にいいけどさ。
 でもその提案はいいと思うよ。私達霖之助の好意に甘えっぱなしだし、そろそろ恩返ししないとね」

「そうです、それは大切です。でも肝心のお礼が思いつかなくて」

「何でもいいんじゃないの? 霖之助は特に貰い物とかに気を使う質じゃないと思うし」

「そうですか。何でもですか……」

静かに鈴仙が木々が乱立する森に向かって銃を構える。
銃床を肩に当て、グリップ型のフォアエンドをしっかりと握り、グリップには人差し指を掛けず伸ばした状態で固定。
脚は肩幅よりも少し広くぐらいに開き、腰を僅かに落として重心を地面に合わせた。

「始めましょうか」

「はいよ。しっかり感想を頼むね」

発射体勢を取った鈴仙に対し、にとりはそれだけ言うと耳あて型の耳栓を装着して、
赤い塗料で着色されたフリスビーのような物を手に取った。
手の平よりも少し大きいフリスビーは数にして八枚。鈴仙の構えた銃の装弾数と同じ数だ。
フリスビーというもののその素材は粘土を焼いて成形したもので、厳密にはクレーと呼ぶのが正しい。

「いっくよー!」

声と共ににとりの手からクレーが放たれ緩やかな揚力と共にクレーが空中へ舞い上がる。
風を切りながら飛行するクレーに対し、鈴仙は瞬時に照準を合わせると迷わず引き金を引いた。
薬室の中で爆発が発生し、跳ね上がりそうになる上半身を全身で抑えつけ衝撃を大地へと流す。
放たれた散弾は拡散しきる前にクレーを捉え、赤いクレーは原型を留めない程破砕され空中に赤い塵となって消えた。

小銃よりも重く、押し返されるような反動。
やはりいつ撃ってもショットガンの反動は強烈だ。覚悟をしていても容易く押し返されそうになる。
鈍ったなと自身を嘲笑いつつも、鈴仙はフォアエンドを引いて次弾を薬室へと送り込む。

フォアエンドの後退と共に閉ざされていた排莢孔が開かれ、
空になったショットシェルが弾き出されて新しいショットシェルが薬室へと収まる。
タイトな駆動部が噛みあう作動音とショットシェルが地面に転がる軽快な音が小気味よい。

先程とは別の、心地良さからこぼれ出た笑を浮かべたまま、鈴仙は二枚目のクレーに照準を合わせ引き金を引いた。
またしても空中に赤い霧が生まれ、それが風に流されて掻き消えていった。

ショットガン、漢字に表すと散弾銃と呼ばれるカテゴリーの銃は、通常小さな球体状の球を一斉に発射し前面に対して範囲攻撃を行う銃火器だ。
ショットシェルと呼ばれる専用の弾薬に詰め込まれた弾丸は銃身から飛び出すと同時に拡散して目標へと襲いかかる。
一度に多数の弾丸を撃ち出す故に、その威力は凄まじい物があり、至近距離で被弾すれば致命傷は必至で、ある程度距離を置いても負傷は免れない。

「次は二枚連続で。連射時の使い勝手を検証してみて」

再び掛け声と共ににとりの手からクレーが投げられる。
だが今度は二つのクレーが極めて短い間隔で、一投目に対して二投目が追従する形だ。
焦らず冷静に。だが素早くフォアエンドを引いて排莢と装填を行うと、一投目のクレーに対して銃口を向け迷わず引き金を引いた。

砕け散り、粉々になった赤い破片が宙を舞う。
二投目のクレーは赤い粉塵に飲み込まれ肉眼での捕捉が困難になったが、鈴仙はそれでも臆する事無く視界を遮る粉塵に向かって引き金を引いた。
空気を叩き体を揺さぶる発砲音と衝撃、そして直後には粘土製のクレーが砕け散る甲高い音が続いた。

吸い込んだ息を吐き出しながら排莢と装填。
拡散する散弾を使っているのだからこれぐらいは出来て当然と思いつつも、久しぶりのショットガンでよくやったものだと自分に感心する。
幸いな事にこの長い隠遁生活で体力が落ち、直感が鈍っても技術までは錆びつかなかったようだ。

あまり自慢出来る技術では無いにしろ、一時期は必死になって習得した技術だ。
簡単に忘れてしまっては寂しいものがある。

持ち前の技術と確かに戻りつつある直感を頼りに、鈴仙は引き金を引き、排莢と装弾を繰り返す動作を四回続けた。
今のクレーと、次にクレーが飛んであろうコースにのみ意識を傾け、素早い対処を心がける。

横に動いてゆく目標というものは思っている以上に厄介な存在だ。
正確には、視界の正面以外からやって来る物体に対して人形生物の目は御世辞にも有効と言える場所に位置していない。
風景や現象を正確にして鮮明に捉える事に掛けては、脳の情報処理も相まって高いポテンシャルを発揮するのに比べ、
生存競争に必要な『視野の確保』という観点ではまるで意識していないかのような配置だ。

鈴仙の場合、振り向かずとも波長を三百六十度全ての方向に向けて飛ばし、
その波長が跳ね返ってくる距離と速さで目標の位置と大きさを感じ取る事は出来るが、
クレーのように小さい物となると少々勝手が違ってくる。

あまりに目標が小さすぎるし、何より移動運動を続けている事が厄介だ。
人間程度の大きさなら走っていようが飛んでいようがさして問題はないのだが、
そこに運動が加わると捕捉精度は極端に落ちる。
結局、能力があれど細かいところは技量で補わなくてはいけない。

「わぁ! すごいね鈴仙! 全部命中だよ!」

にとりが耳あてを放り投げかねない勢いで興奮しながら鈴仙に歩み寄った。
毎度の事でもう慣れたが、彼女は本当に自分が直した道具の動く姿を見るのが好きらしい。

「危ういところはありましたよ。私自身、ショットガンの射撃なんて久々ですから」

「でも当たったじゃん」

「まぁ、技術が根づいていたという事で」

「それで使い心地はどうだった? 良かった?」

やや熱っぽく、鈴仙に迫る勢いでにとりが質問を波のように押し付ける。
給弾に不備はなかったか? 射撃時の反動はどうか? 命中精度は良いのか? 重さや引き金の軽さに不満はないか?
実に様々な質問が鈴仙に向けられ、その質問一つ一つを受け取るのでさえ大変な苦労だった。

「落ち着いてくださいにとり。私の耳は大きいですが、一度に多くの質問は聞き取れませんし答えられませんよ」

「あ、そっか……ごめん」

「結論から言うと文句や不満はありません。
 実に堅実でよく働いてくれる銃ですね。良い仕事をしましたよにとり」

「へへーん、にとりさんの仕事だもんねー。不備なんてある訳ないじゃん」

「フォアエンドにグリップを装着した以外に変な改造を加えなかったのも高評価です」

「んーそう? 私としてはもっとこう連結して同時に撃てたりする方がいいと思ったんだけど」

「必要ありません」

「そうかなー? だってたくさん撃てたら強いじゃん」

「必要ありません」

本当にフォアエンドの改造だけで済んで良かった。
ポンプアクション式ショットガンを連結した擬似水平二連式ショットガン等という馬鹿げた代物は考えたくもない。
技術はあるのだがその分好き勝手な改造を施そうとするのがにとりの欠点だ。
しかもその改造が使い勝手を無視したものばかりとくれば、ある意味彼女を改造の天才と思わずにはいられなくなる。

「そういえば鈴仙がさっき言ってた霖之助へのプレゼントって本気で考えてるの」

「えぇ、一応。男性はどういった物を受け取ったら喜ぶのかよく分からなくて。
 ヌードポスターやヌード雑誌なんかが喜ばれるのでしょうか?」

「いや、普通の男なら喜ぶと思うけどさ……。霖之助はそれで喜ばないと思うよ」

「女性の裸に、女性に興味が無いのでしょうか? では男性のヌードの方が……」

「そっちもないよ! ……多分」

何故か顔を真赤にして否定するにとりの考えが読めず、鈴仙はきょとんと首を傾げてしまった。
月に居た頃に聞いた別の部隊所属の男性隊員の話だと、男性は女性の裸や中途半端に脱ぎかけの状態に喜びを感じるらしいのだが、
どうも霖之助は女性の裸では喜ばないらしい。

「も、もっとこうさ。身につける物とか……ほら、アクセサリーなんかがいいと思うよ」

「アクセサリーですか」

「そうそう。霖之助はあんまり装飾品に頓着しないだろうけど、それでも貰って迷惑なんて事はないと思うよ」

「確かに、アクセサリーは重要ですね。
 ダットサイトやサーマルスコープ、グレネードやマスターキーなんかも魅力的ですし。
 あ、フラッシュライト等も魅力的ですね」

「はい?」

「アクセサリーとは銃に取り付ける後付パーツの事ではないのですか?
 アクセサリー、つまりは銃に取り付ける付属装備」

「違うに決まってるでしょ! まったく、アンタは何と戦ってるのさ!」

「戦ってません、専守防衛です」

「アンタの防衛は侵略行為。迎撃の用意じゃなくて侵略の用意が見え隠れしてるよ」

溜息をついて肩を落とすにとりの意図がまったくもって鈴仙には伝わってこない。
一体何がいけなかったのだろうか? ひょっとしたらにとりはグレネードやマスターキーが嫌いなのかもしれない。
確かに何も考えず、ただ追加装備を取り付けただけの銃は却って使いにくいものだ。
重量も増え、最悪の場合行動に支障をきたす。

「私が言いたいのはそういう物騒なものじゃなくて、もっと普通の……例えばネックレスとか指輪とか。
 まぁ、霖之助が喜ぶアクセサリーなんてのも想像つかないけど、とりあえずそんなの。
 とにかく銃じゃないからね」

「そうですか……」

「何で残念そうなのさ」

「いえ、決して残念では。決して……」

今まで考えた中でも一番自信のあった案だったが、あっさり却下されて結局は振り出しに戻ってしまった。
どうにも自分の案は中々他人に認めてもらえないものだなと思いつつ地面に目をやるとある物が目についた。

「これは……」

「どしたの鈴仙?」

急に何かを思いついた表情をして固まった鈴仙ににとりが声を掛けた。
それから「またろくでもない発想をしたの?」と続ける。

「いえ、銃以外でプレゼントが思いつきました」

「本当に? 何々? 聞かせてよ」

「はい」

鈴仙はしゃがんで、地面に転がったそれを手に取る。
それはオレンジ色で、まだ熱を帯びていたが触れない程ではない。

「えーと、何?」

「ですからこれです?」

「いや、これって……」

「銃ではありませんよ」

「そうだけどさ……これでどうするの?」

鈴仙の手にあるそれは先程撃っていたショットガンの空薬莢。つまりはショットシェルだった。
オレンジ色で円柱型のショットシェルからは燃え尽きたばかりの火薬の匂いがする。

「贈り物ですよ。弾は詰まっていないけど、心のこもった贈り物」

心底楽しそうに鈴仙は笑って、空のショットシェルを上着のポケットへとしまった。
にとりが何だっていいと言うのなら、自分らしく彼にプレゼントをしよう。
大切な人に、大切な思いを込めた物を。










「うおーい、にとりさんだよー」

「はいはい、いらっしゃい」

「うわ、冷たい。何だって私にそんな態度を」

「今忙しいんだよ。最近君に任せっぱなしで僕は何一つ技術屋的な事をしていなかったしね」

「ふーん。一応その辺りの意地はあるんだ」

自分が来てやったというのに顔も上げず、おまけに気のない返事で迎え入れた事を腹立たしく思いつつも、
にとりはカウンターの上で作業をしている霖之助に一応の挨拶をした。

「それで? 今日は何の用かな」

「近くに寄ったから何の気なしにね。次はどんな銃を実験するのかって予定も相談する為に御機嫌伺いってところかな」

「僕の機嫌なんて伺わなくても僕は気にしないのに」

「お世辞だよ」

「そうか」

店に入ってから一度もこちらを見ようとしない霖之助にいい加減うんざりし始めたところだったが、
その時霖之助の首元に見慣れないものがぶら下がっているのが分かった。

「霖之助、何それ?」

「これかい? これは僕が人里の稗田家倉庫で壊れたまま眠っていた物を格安で買取り……」

「そっちじゃやなくて、いやそっちも気になるけどそうじゃない。首元のそれ」

「ん、あぁこっちか。鈴仙から貰ったものだよ」

ようやく顔を上げた霖之助の首筋にはにとりも見慣れた物がぶら下がっていた。
オレンジ色をした円柱型の物体。
雷管が取り付けられてた底の部分は金属製で、弾丸の入っていた部分は樹脂で構成されているその物体をにとりは知っている。
あの日鈴仙と試射をしたショットガンのショットシェルだ。
その上部に穴が開け、そこにチェーンを通す事で首飾りとしての体裁を一応は取り繕っている。

あの日、空のショットシェルを見つめて何か思いついたような顔をしていたが、どうやら思いついたのはこれだったようだ。
相変わらず発想があさっての方向にズレているところを見るに、やはり鈴仙としか言いようがなかった。

「それ、ショットガンのショットシェルじゃん。なんでそんな物を首からぶら下げてるの?」

「鈴仙が弾除けのお守りだと言ってね」

「お守り……お守りかなぁそれ……。
 まだ守矢神社で売ってる怪しいお札とお守りと神の力が宿るらしい水の方が効果があると思うよ」

「お守りなんて物は気持ちだよ。気持ちがこもっていればそれで十分さ」

「そうだけど……」

「まぁ、鈴仙らしいと言えば鈴仙らしいね」

「そうだけどさ。まったく呆れて何も言えないよ」

何でもいいとは言ったが空のショットシェルをプレゼントしてもいいと言った覚えはない。
それでも霖之助が喜んでいる辺り、よっぽど素直な気持ちで渡したのだろうか。

「ねぇ、霖之助にとって鈴仙って何?」

「何と言われてもね。仕事仲間……違うな。友人でもない……」

「こ、恋人とかじゃないよね? よね!?」

「うーむ、それでもない」

「良かった……」

「そうだな……しいて言えば」

「言えば?」

「同じ事仲間かな。ありきたりな回答だけどね。
 僕と君と鈴仙の三人でやりたい事をやって、各々が適した役割を担う。
 決して得になる事をやっている訳ではないけど、損得抜きで行動出来るのは仲間って事にならないかな?」

「同志よ我が子らよ。母なる祖国の為に戦うのだ! ってヤツ?」

「いや、多分違うと思うけどな」

「っま、恋人じゃないのならいいんだけどね」

「どうしてだい?」

「どうしても! なぁなぁで決められて私だけ置いてけぼりは嫌なの。まったく」

鈴仙といい霖之助といい、他人の感情をズレた目線で見るのが得意な連中ばかりだ。
かろうじて他人の話は聞いているが、聞いた話を自分の中で纏める頃には別の話題になってしまっている。
他人の話をしっかり聞く自分を少しは見習って欲しいものだと思っているのがにとりの本音だ。

「ところでさ、霖之助。その首飾りはもういいとして、もう一つ気になる物があるんだ」

「これかい?」

「そうそれ」

霖之助とにとりが視線を向けたのは同じ場所だった。
香霖堂のカウンターの上、先程まで霖之助が弄っていた新たな道具、改め新たな銃。

作業台として使用する為に広々と余裕を持って設置されたカウンターの上にどっしりと身構え、
その巨体でカウンターの上を占領している黒い塊。
所々傷が目立ち、錆や泥も付着しているがその威圧感は少しも失われてはいない。

「なんて言ったらいいのかな。
 それは銃と言うにはあまりにも大きすぎた。大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。それはまさに鉄塊だった。
 とでも言えばいいのかな」

「大きく、分厚く、重いのは認めるが作りは大雑把とは程遠い、精巧にして精密なものだよ。
 その癖構成はシンプルで乱雑な扱いにも耐えうる剛性を有している。
 といったものの、流石に元から壊れていたものが無縁塚に野ざらしになっていたのだから、そう簡単にはいかないね」

分厚い鉄に覆われた長方形型の機関部から太く長い銃身が伸びており、根元には排熱用と見られる穴がいくつか開けられていた。
本体とは別に、壁には銃を固定する為の三脚が立てかけてあり、その三脚も銃に負けず劣らず重厚なものだった。

「何だって壊せそうだよ霖之助」

「あぁ、僕もそう思う。武器にはある程度の恐怖を持って接しているつもりだが、この銃に関しては特に恐怖を感じたね。
 いつも鈴仙が撃っている銃の何倍も大きく重たい。使用する弾薬だってライフル銃なんかよりもずっと大きい」

「何に使うんだろうねこんなの」

「さぁね。ただ人間よりも固く大きい物を撃つ銃だというのは確かだ。
 僕の目にはこの銃の用途が『相手を黙らせる』と見えるしね。
 外の世界では機械で動く乗り物も戦争で使われるそうだから、それを撃つんじゃないかな」

「あ、私それ知ってる。戦車とか装甲車ってヤツだよね?
 他にもいろいろ有るらしいけど、知ってるのはそれぐらいかな。
 まぁ、何にせよ幻想郷には戦車も装甲車もないから無用の長物だね」

「まったくもってその通りだ」

「でも直すんでしょ?」

「勿論」

「そうでないと!」とにとりが興奮気味に返事を返して霖之助の作業へと加わった。
鈴仙に出来なくて、にとりに出来る事があるのならそれで勝負すればいい。
そして勝負するだけではなく、時には助けたり助けられたり。
三人がそれぞれ異なった技能を持っているのだから、そうやって支えあってゆけばいいのだ。

そしていずれは、正々堂々とした形で決着をつける。
お互いに悔いも後悔もない、綺麗な形で終わらせてまた明日同じ目的の為に笑い合えるように。

Comment

ショットガンはゲームでお世話になります


にしても、鈴仙はよくできるこだなあ(ミリタリー的に
  • by:すかいはい
  •  | 2011/07/10/01:59:57
  •  | URL
  •  | Edit
ショットガンはポンプならスパス、マガジンならAA-12かサイガがお気に入りですね~(´∀`)

にしてもこの話の鈴仙とはいいウォッカが飲めそうだ
グッドハンティンスタルカー
  • by:ハリ
  •  | 2011/07/10/14:37:41
  •  | URL
  •  | Edit

管理者にだけメッセージを送る

Pagetop ]

Copyright (C) 十四朗亭の出納帳 All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。