十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

プロフィール

十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
メッセ&スカイプは大歓迎です
SkypeID『Brassp905』


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大体マルチ対応ゲームやってると思います。

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『朱鷺のすみかおまけ-いつかの未来-』

朱鷺のすみかの後日談。
何年ぐらい後かは特に決めてないです。
これにて本当に朱鷺のすみかは終了。
長々とありがとうございました。

次回から『あの日見た朱鷺色妖怪の僕達はまだ知らない』が始まりません。
ハzLさんにラスト挿絵を描いていただきました!
感謝、感謝。









分厚い本や使用方法の分からない道具が雑多に積まれ、
もはやガラクタの王国としか形容できない惨状の中で、一人の女性が必死に何かを探していた。
背中には真っ赤な羽が二つ対になって生えており、毛先が残雪のように白い。
くるぶしまである黒のロングスカートに、細いウェストを強調する紺色のコルセット。
胸元は小ぶりの林檎ぐらいに膨れていて、スレンダーな女性という印象をあたえる。

リボンやフリルが多いゴシック・アンド・ロリータ風の服装をしているので、
一見幼い印象を受けるが、顔つきは二十歳そこそこの大人の女性なので酷くアンバランス極まりない。
慌ただしく動きまわる度に後頭部で一纏めにした長い髪が揺れ、落ち着かない様子を雄弁に物語っていた。
ハーフフレーム眼鏡から覗く視線は鋭く、一目見れば彼女が不機嫌な事は容易に予想できる。

「まったく、いきなり押しかけてきたと思えば怒鳴り散らして店の中をひっくり返す。
 昔となんら変わっていないな君は」

湯呑みを片手に、青年と言うには年季があり、
中年と言うには生き生きとした声をした男性が、女性に話しかけた。
少し頬の辺りに皺が寄り、目尻にもいくらから老いが認められるが、それでもまだまだ若い印象だ。

体つきはいたって普通で、たるんでる様子はない。
しいて言うなら少しだけ肩や腰のラインが細く、
以前の彼を知る者なら痩せたという印象を受ける事ぐらいだろうか。

「五月蝿い! 霖之助が教材を勝手にどっかへやっちゃうから、
 こうして貴重な昼休みを返上して探してるんでしょ!」

「怒ると昔の呼び方に戻る癖は地味に僕の心に効くんだぞ。
 大体、二日酔いの頭を抱えて仕事に行く奴があるか。
 少なくとも慧音はそんな事をした事は一度もなかったね。
 繰り返すが一度もなかったね」

「だったら止めてくれたっていいじゃないの。
 肝心なところでいつも甘いのは相変わらずよ」

「甘えるな。僕だっていつまでもおんぶに抱っこしてやるれる程若くないんだ。
 最近無縁塚に行くのさえ辛く感じて来たのに」

「昔っからお爺ちゃんみたいな生活してた癖に今更なにさ。
 まだまだ見かけは若いんだから頑張んなさいよ」

「最近は妹紅と一緒に歩いていると親子に間違えられるし、
 君と一緒に歩いていると恋人に間違えられるのが悩みだな」

「何いってんの。向こうも知っててやってるんだから、気にしてんじゃないの。
 あーもーどこよぉ! どこにあるのよぉ!」

「あ、そうそう。言い忘れていたが教材なら僕と慧音の寝室にあるよ。
 君が酔いつぶれた後無くしてはいけないと思って運んでおいたんだ」

「なんでそれを先に言わない訳!? このニブチンは!
 そんなんだから母さ……慧音と一緒になるまで時間掛かったんでしょ!」

「いやすまない、更年期障害かな。最近物物忘れが激しくて」

「昨日の夕食は?」

「君が作って失敗したロールキャベツ。
 中身ぐちゃぐちゃ、キャベツバラバラで、
 これではまるでロールシャッハだと思ったよ」

「しっかり覚えてるんじゃないわよ! 更年期障害が笑わせるわ!
 あぁ、そんな事言ってる場合じゃない! 教材教材!」

「あぁ、寺子屋に行ったら今日はおでんがいいと慧音に言っておいてくれ」

「知るかー!」

ひっちゃかめっちゃかな店内を放置し、
文字通り寝室へとすっ飛んでいった朱鷺子を見送り霖之助は湯呑みに茶のお代わりを注ぐ。
あれから随分色々な物事が緩やかに変化していったが、
根本的な部分は何も変わってはいない。

慧音と霖之助が夫婦となり、もう一人娘が増えても。
ミスティアが人里に店を構えるようになっても。
リグルが異変の中核を成すような大妖怪になっても。
小悪魔が図書館の全権を委任されるような敏腕司書になっても。
妹紅が人里に腰を落ち着けるようになっても。
お空が地底の大先輩として皆から信頼される妖怪になっても。

根っこの部分では何も変わってはいない。

相変わらず朱鷺子は朱鷺子らしい失敗を連発しているし。
ミスティアは妖美な歌声を響かせ、美味い酒と鰻を提供している。
リグルとお空は、今でも朱鷺子の一番親しい友人として付き合っているし。
小悪魔は時々香霖堂にやって来て、朱鷺子の為にお薦めの本を置いてゆく。
妹紅に至っては気まぐれに竹林へ出向いては、一月程里に帰って来ないのもよくある事だ。

皆が皆、あの時の自分をどこかに保って、そしてそれぞれの今を生きている。
人は変わり続けても、人ならざる者は簡単に変わりはしない。

それは朱鷺子も同じだった。
確かに彼女は変わった。数えきれない悩みを抱え、時に挫折し、
時に心折れる自体に幾度と無く出くわし、幼い頃の穢れを知らない純粋な少女では居られなくなった。
成長とは生きてゆく過程で汚れ、荒み、自分ではどうしようもない事を割り切る事だと霖之助は考えている。

大人になるという事は必然、リアリストになるという事なのだ。
夢のない現実主義者になり、都合のいい事実と現実にのみ耳を傾け目を見開く。
そして自身の口からは乾いた流行りの笑いと当たり障りの無い言葉を紡ぎ出す。

大人は汚い。床にこぼした牛乳を拭いた雑巾よりも汚い。
だがその汚さを子供にみせないのもまた汚い大人の作法だ。
これから汚れてゆくと知っていても、それだけは唯一汚れていない感情が許さない。

その感情になんと名前を付けるかは人それぞれだろう。
理性や常識、ルールなんて名前もいいかもしれない。
だが霖之助はこの感情にあえて愛と名前をつけた。

陳腐で口にするのも恥ずかしい言葉だが、これより他に思い当たる名前が見つからない。
現在、朱鷺子は人里の寺子屋で慧音と共に教鞭をとっている。
教育者としてはまだまだ青い新米教師だが、
それでも日々の働きから彼女が精一杯やっているという事は知っている。

来年からは霖之助と慧音の娘も寺子屋へ行く予定だ。
妹にはつくづく甘い朱鷺子だが、それでも大人として教師として公私の線引きぐらいはできるだろう。

完全な妖怪が人間の子供達に学問を教える時代。
それだけでなく妖怪と人間の子供が入り交じって学び、暮らしてゆく事が許容された時代。
自分を取り巻く変わらない人々の中で時代だけが変わってゆくのは不思議なものだ。

霖之助はそっとカウンターの上に置かれた写真立てを手に取ってその表面を指で撫でた。
そこには幼い日の朱鷺子を中心として、
今でも親交のある仲間達が笑顔で写っている。

自分の妻である女性の肩に手を置いて微笑む自分が少し気恥ずかしい。
だがすぐにそんな感情は消え失せ、まだ背丈が低かった朱鷺子の姿に目を奪われる。
あの頃は本当に色々な事をした。
毎日を少しでも楽しく、そして朱鷺子の為に有意義に過ごそうと必死で努力していた。

まだ一人では高くも遠くへも飛べない雛鳥を育てるように、
霖之助は日々悩み、試行錯誤を繰り返した。
その過程で今の仲間達と出会い、現在妻となった女性との仲も深いものとなった。

朱鷺子は気づいていないかもしれないが、
彼女と過ごして一番救われたのは紛れもない森近霖之助その人である事は変えようのない事実だ。
だから一人でも高く遠くへ飛んでいけるようになった朱鷺子に、
霖之助は今でも優しく、家族として接している。

あの日、この写真を撮影した時には不確かだった未来はこうして形あるものとして存在し、
また次の形ない未来へ繋がってゆく。
漠然とした感覚に霖之助一人では気が滅入ってしまいそうだ。

方向を見失い、自分が今何処に居るのか分からなくなって幽鬼のように力なく進んでゆく。
間違ってもそんな未来は願い下げだ。そんな孤独に執り憑かれた未来は嫌だ。
手を伸ばせば愛しい人物の温もりが感じられる暮らしを一度でも手に入れた霖之助にとって、
それは地獄に落ちるのと同意義といえる。

「あったー! あった! あった!」

騒がしく居住スペースの方から飛び出してきた朱鷺子の手には、一冊の分厚い本が握られていた。
タイトルは『非ノイマン型計算機の未来』
ずっと昔、朱鷺子と霖之助が出会う切っ掛けになった本だ。

先程までご機嫌斜めだった朱鷺子の機嫌が、自分の思い通りになった途端に良くなったのも、
昔を知る霖之助からしたら慣れっこの出来事でしかない。

「思っていたんだが、そんなもの教材になるのかい?
 コンピューターの本なんて、幻想郷では活用の方法がないよ」

「いいのよ、今日の授業のテーマは自分が一番好きな本なんだから。
 だから生徒達に一番好きな本を持って来させたんだけど……」

「肝心の君が本を忘れたと」

「ぐ、ぐぁー……ま、まぁ、私と霖之助双方の過失って事で」

「僕は悪くない」

「まぁまぁ、じゃあ私急ぐから!
 お礼に今夜はおでんにしてあげるね」

「君の手作り以外で頼む」

「言ってくれちゃって」

ばさりと赤い羽根に白い羽根が残雪のように混じった翼を玄関の前で広げる。
ふわりと優しく、大きく羽ばたいた次の瞬間には朱鷺子の体は浮いていた。

火の朱鷺-休憩-INTERMISSION


「行ってきます父さん!」

「行ってらっしゃい。気をつけてね」

あっという間に加速と上昇をして朱鷺子は霖之助から見えなくなってしまった。
後に残されたのは玄関の前に散らばる赤と白の羽根に、
朱鷺子が散々荒らし回った店内だけだ。

最後の最後で機嫌が良くなったのか、朱鷺子は霖之助の事をお父さんと呼んで出て行った。
その言葉ににやりと笑いながらも、
湯呑みのお茶を喉へと流しこみ、ゆっくりと重たい腰を上げる。
流石に店内をこのままにしておく訳にもいかない。
ここはもう霖之助一人だけの場所ではないのだから。
いつまでも気楽な独身貴族のねぐらではない。

現在のこの場所は、毎朝朱鷺が飛び立ち、夕暮れには朱鷺が降り立つ場所。
ここは幻想郷に住む、特別な朱鷺の為に用意された朱鷺のすみかなのだから。

Comment

霖之助さんと慧音の子どもが気になるぜ


にしても、大人の例えが印象強かったな。尾崎豊を思い出す。
  • by:すかいはい
  •  | 2011/06/19/00:03:57
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#No title
これで本当に完結かー。お疲れさまです!
汚い部分を子供に見せることだけはしない部分…僕ならなんと呼ぶんでしょうねー…
これで完結ですか~。
心にグッとくるおまけでした。
とても良いものを読ませていただいてありがとうございました。
  • by:見習い
  •  | 2011/07/20/23:37:03
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