十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

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十四朗

Author:十四朗
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趣味の守備範囲は日々拡大中
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『朱鷺のすみか(終)-記念写真-』

百本目記念SS兼十万HIT記念SS兼朱鷺のすみか最終回!
クリスマスに誕生日の人よりも酷い兼ね方。

はい、とりあえず今回で朱鷺のすみか最終回です。
長かったですね、大体一年ちょっとやってましたし。
ともあれここで朱鷺のすみかは一区切り。
一度終了とさせていただきます。

でも一本ぐらいはエピローグやりたいですね。


『朱鷺のすみか(終)-記念写真-』


朱鷺子、慧音、霖之助、ミスティア、リグル、小悪魔、妹紅、お空
『しゃもじさん』に挿絵を描いていただきまいした。ありがとう!









「この眠そうな顔してるのがさとり様。
 別に眠くはないらしいけど、私にはいっつも眠そうにみえるの。
 それでこの赤いのがお燐。とっても力持ちで死体ぐらいならひょいひょい運ぶんだよ。
 このにこにこ笑ってるのはこいし様。
 さとり様の妹で、特に嬉しくない時でも笑顔なの」

言葉と共にお空の指が写真に写った人物を指差し、
それぞれの特徴を楽しそうに述べてゆく。

大きなお屋敷の前でお空を含め四人の少女が仲良く写る写真を、
朱鷺子は感動と羨望が入り交じった瞳で見つめていた。

お空と朱鷺子の傍らにはリグルとミスティアが落ち着き払った様子で二人を見つめている。
準備中にも関わらず騒がしい夜雀の屋台では、
大抵このメンバーが集まって何かをしている事が多い。

「わー凄い! お空の家族仲良い!」

「家族? 家族かなぁ。私とお燐はさとり様のペットだし、家族になるのかな。
 そもそも家族って何?」

「んー? 家族は家族じゃないの?
 一緒に暮らしてて、自分が相手の事を好きなら家族」

「こいし様は大抵地霊殿にいないよ。それでも家族?」

「ぐぁー分かんない」

ぽんやりとした口調で話す割にはやたらと哲学的な発言をするお空に、
朱鷺子も段々と頭が混乱してきた。
朱鷺子にとって家族とは一緒に居る仲の良い人物で、
寂しい時には思わず抱きつきたくなるような存在の事を言うが、
生憎朱鷺子はそれを上手く説明する言葉を持ち合わせていない。

「朝一番におはようを言って、
 夜一番最後におやすみを言える人物が家族なのよ、朱鷺子ちゃん」

疑問で頭をいっぱいにした朱鷺子を見かねてミスティアが助け舟を出した。
リグルはそれについてうんうんと肯く。
この二人の意見は概ね同じらしい。

「朱鷺子ちゃんは朝一番初めに誰におはようって言うの?」

「霖之助!」

間髪入れずに元気よく朱鷺子が答える。

「一番最後におやすみは?」

「霖之助!」

「あ、私はさとり様かお燐だよ!
 時々こいし様にも言うの」

「だったらそれが家族なのよ」

くすりと笑って頬杖をつくミスティアの仕草はやけに色っぽい。
年格好はリグルや朱鷺子と離れていないように見えるが、
漂う雰囲気や言語の発音に色を含んだ感じは飲み屋の女将に相応しい風格がある。

「ミスティアやリグルは誰に言うの?」

「私は夜のお客商売だからその時々で違うかな。
 妖怪のお客さんに言う事もあれば、人間のお客さんに言う事もあるし」

「私も決まってないかも。
 夜にふらりと出歩いて、その途中に出会った妖怪がおやすみを言う相手」

「リグルはミスティアはお客さんやそこら辺の妖怪が家族なの?」

「う、うーん。それはちょっと語弊があるかなぁ……」

あまりにも安直すぎる朱鷺子の考えにリグルが首を捻る。
素朴で混じりっ気のない疑問には答え難いのが難点だ。
朱鷺子の場合は特にそうで、言葉はまず鵜呑みにして考える素直が魅力であり難点でもある。

「お客様は神様だけどそれはちょっと違うわね」

「じゃあ家族が居ないんだ」

「今も昔も妖怪は大抵そう。
 夜の闇に一人ぼっちで好き勝手しているのが妖怪なのよ」

「私は夜中一人ぼっちは嫌かな……」

「あ、私も嫌。地霊殿の炎とさとり様やお燐が居ないなんて嫌」

「だから家族が居るっていうのはそういう事だと思うな。
 ミスティアや私は一人の夜には慣れてるけど、
 朱鷺子やお空は慣れてない。
 自分の弱くて脆い部分を補って、やがて克服させてくれるのが家族なんだよ、きっと」

「そっかー難しいんだね家族って」

「難しいんだよ家族って。
 どちらか片方だけが依存しているだけでもいけないし、
 かといって全く頼らないのであれば一緒に居る意味もない。
 お互いがお互いをバランスよく支えないと成り立たないのさ」

精神的にはミスティアに次いで年長者なリグルの教えに、
朱鷺子はただ口をぽかんと開けて肯くばかりだった。
ついでにお空の方は首を捻ったままで動かない。
どうやらよく理解していないらしい。

「ねぇねぇ、私も霖之助や慧音と写真撮りたい!
 家族の証拠が欲しい」

「いいアイディアじゃない。
 香霖堂さんならカメラぐらい持っているだろうし、
 朱鷺子ちゃんの頼みなら快く引き受けてくれるわよ」

「みんなも一緒!」

「いや、私達は必要ないと思うけど」

「家族じゃない?」

「むむむ、そうきっぱり質問されると答え難いなぁ。
 家族ではないけど、友達ではあると思うよ」

「友達も家族も一緒だよぉ! みんなも一緒に写真!」

「にゅ……写真? わぁ、いいなぁ写真! また私も写真撮りたい!
 この前は片手でピースだったから次は両手でピース」

ようやく意識が話題に追いついたお空はぱぁっと笑顔になって朱鷺子の提案に賛同した。
外見的にはこの中でもっとも大人に近い外見をしているというのに、
言動が最も幼い朱鷺子と同等なのは、もはや彼女の魅力だろう。

「でしょでしょ~お空は分かってる」

「いや、今ようやく理解し始めただけだと思うよ」

ミスティア程大人な訳でも、朱鷺子程子供な訳でも、
お空程知恵が回らない訳でもないリグルは静かにため息をついた。
朱鷺子はリグルがため息をついている事なんてお構いなしに写真について話を進めた。

日時は明日の昼過ぎ、
思いついた人物を集められるだけ集めて写真を撮る運びとなった。
勿論、現状で霖之助の許可は取っていない。

朱鷺子の行動に対する承認なんてものは常々後になってからやって来るものだ。








「それで僕に写真の準備をして欲しいと」

香霖堂へと帰ってくるなり。藪から棒に写真をせがまれたのには面食らったが、
朱鷺子の興味に一貫性がないのはいつもの事だと思うと割り切れる。

「ぐぁ! 写真描いて霖之助!」

「写真は描くものではないよ」

「えっ、違うの? だって写真って絵なんでしょ? だったら描くものじゃないの?」

写真をせがむ割には写真についてまるで分かっていないところがいかにも朱鷺子らしい。
時々この娘が大人になってから一匹の妖怪としてやっていけるのか酷く不安になる時がある。

「君に写真の原理を説明すると日が暮れて夜が明けてもまだ足りなさそうだから否定だけしておくよ。
 それで明日は誰が来るんだい?」

「えーっと、慧音と妹紅とミスティアとリグルとお空と小悪魔!
 パチュリーと美鈴は忙しいから来れないけど、代わりに小悪魔が来るんだよ!
 私小悪魔と本の話するの好きなんだぁ」

「ふーん、結構な大所帯だね。
 それだけの人数を僕の許可も無しに集めた訳か」

「きょ、許可なら今取ってる……」

「僕の許可も無しに、勝手にねぇ」

「ご、ごめんなさい!」

「まぁ今回は不問にするが、次から何かする時は事前に知らせてくれよ?
 準備なり支度なりしなくてはいけない訳だし、
 準備の種類によっては一日二日ではできないものもあるから」

「ぐぁー……分かりました」

「よし、よろしい。だったら君にお使いを一つ。
 今から倉庫に行ってカメラを取ってくるように」

「えーめんどくさい。それに私カメラがどんなのかよく知らないよ」

「黒くて一つ目で君からしたら少し重たい道具だよ。
 ほら、香霖堂によく来る天狗の新聞記者が首からぶら下げている物だ」

「あぁ! あの文姉ちゃんが持ってる道具ね!
 うん分かる! 分かる分かる! そっかーあれがカメラかー」

「カメラがどんなものか分かったところで早速倉庫へ行ってきなさい」

「おー!」

腕を振り上げて走り去る朱鷺子を見送ってようやく一段落といったところだ。
朱鷺子と一緒に居ると非常に体力を消費する。
元気というものがいくらでも湧いて出てくる子供と違い、
霖之助のような大人は一度元気を使うと中々湧いて出てこない。

とりあえずは一服だと、霖之助は煙管を取り出し葉たばこを先端に詰め火をつけた。
朱鷺子に気を使って、朱鷺子の前では吸わないようにしているが、
時々こうして深く吸い込むと久々に摂取したたばこの成分に体の固い筋を解されてゆく気分を味わえる。

「朱鷺子の撮影会と聞いて来ました!」

せっかく訪れた静寂を破り捨てて、霖之助のよく知る人物が香霖堂へとやってきた。
こうも気が休まらないと何もかもがどうにでもなれと思えてくる。

やって来たのは藤原妹紅。よくみると妹紅の背後にはしっかり慧音が居るのが分かった。
なら別にいいかと、傾きかけた機嫌を水平に戻して、平静を取り繕う。

「帰ってくれ。慧音は残っても構わないが」

「クッ! いきなり拒否られた。
 霖之助、アンタちょっと朱鷺子に過保護気味じゃないの?
 ここ最近私には指一本触らせてくれないじゃないの。
 あと慧音に対して甘すぎ! この格差には流石の妹紅さんも泣くわよ」

「朱鷺子が君のコミュニケーションに怯えるんだよ。
 少しは加減をしてやって欲しい。
 それに慧音は慧音だから仕方がない」

「加減をするのは構わないけど、別に本気で可愛がっても構わないでしょう?」

「否、断じて否」

「私も霖之助に賛成だな。
 妹紅の接し方は子供に対して過剰過ぎる。
 長く生きた癖に人付き合いは何時まで経っても不器用そのものだ」

うんうん、と肯く慧音は全面的に霖之助の意見に賛成らしい。
こういう時、自分の意見を理解してくれる人物がいると非常に助かる。

「なぁ! 付き合いが不器用なのは慧音もじゃないの!
 霖之助とキスはしたのかしらぁ?」

「なっ! 妹紅! お前にも言って良い事と悪い事が!」

先程まで優位だった慧音の立ち位置が一気に崩れ落ちた。
こういった話題に慧音は非常に弱く脆い。
自分と慧音の波状攻撃で妹紅を沈める予定だったが、その計画の方が先に沈んでしまった。
機転の効く妹紅を相手取るのはやはり苦手だと霖之助は再認識した。

「まだだよなぁ! 結局付き合ってるのかそうでないのかはっきりしないさいよ」

「わ、私は教育者として男女の交際は健全な段階と時間を経て……」

「二十年待ったのにまだ時間が足りないと申すか」

「色々複雑なんだよ、僕と慧音は。
 絡まってもつれて、力任せにやろうとすると千切れてしまう」

「力任せに絡まってもつれてとな?」

「君との関係を向こう二十年程絶ってもいいんだぞ」

「すいませんでした」

しゅんと肩を落として落ち込む妹紅。
本来妹紅は霖之助と慧音よりも遥かに長い時間を生きてるはずだが、
言動や行動に年長者の気質が見られない。

もっとも、そこが妹紅の良いところで、
幻想郷では長く生きた妖怪ほど胡散臭くなるという法則があるが、それに当てはまらない妹紅は付き合易い。

「りーんのすけぇー! カメラ有ったよ!」

「お、朱鷺子ぉ!」

「げぇー妹紅! 何で居るの?」

妹紅を発見した朱鷺子の表情が一瞬で曇る。
苦い思い出ばかりが妹紅にある結果から導き出される当然の対応であろう。

「何その言い方……妹紅さん軽く傷ついたんだけど。
 拒否された、私拒否されたよ……」

「ご、ごめんなさい。でもこんなに早く来るとは思ってなかったから。
 だって写真撮るのは明日だよ?」

「まぁ、どうせなら前日に集合して宴会するってのもいいでしょ?
 だから慧音と二人でお酒や食料を持って来たのよ」

「妹紅の発案で、妹紅の行動だがな」

「ちょっと、何自分は無理やり連れてこられましたって言い方してるの。
 香霖堂へ行こうって言った時、嬉しそうにしてたじゃない」

「してない! してないぞ!」

「そうか……僕に会うのが嫌だったのか。
 そうだね、流石に二十年も自分を放置していた男と会うのはね……」

「だー! 違う! 違う! 本当に違うんだ!
 そういう意味ではなく、
 こんな時間からお前の所に押しかけては迷惑になるのではと思ってだな!」

「朱鷺子、見ておくのよ。あれが下手な照れ隠しってやつだから」

「うん、分かった」

「妹紅おくじょーだ。ちょっと指導してやる」

すっかり騒がしくなった店内を見渡しながらも、霖之助は心の底から心地いいと感じる。
幸せとは往々にして騒がしいものだ。
その騒がしさの中に自分が居られる事など、少し前までは考えもしなかった。
その資格が自分にある事さえ忘れていた。

「まぁ、なんだ。とりあえず少し早いが食事の準備でもしようか。
 見たところそれなりに食材はある訳だし、せっかくだから手間隙かけてみようじゃないか」

「なら私も手伝うぞ。これだけの量だ、二人で作った方が何かといいだろう」

「子作りもね」

こうして妹紅が真面目な顔で最低の茶々を入れるのにももう慣れた。
よくもまぁ、これだけ他人の神経を逆撫でする言葉が出るものだ。
まったく見習いたくもないが感心はする。

「帰るか妹紅?」

「朱鷺子の面倒みてます」

慧音の注意を受けてようやく妹紅が折れた。
朱鷺子を抱えるとそのままそそくさと表へと出て行く。
まだ過剰なスキンシップに発展していないせいか、抱えられた朱鷺子もご満悦だ。
その内あの抱き癖も何とかした方がいいのかもしれない。

「あの子がね、友達の家族写真を見て自分も写真を撮りたいと言い出したんだ」

嵐の過ぎ去った店内で霖之助がぽつりと切り出した。
誰に言うでもなく、独白のように淡々としたものだった。

「知ってる。誘いに来た朱鷺子から聞いたよ」

「僕はあの子の家族たる資格があるのか? と時々思うんだ。
 正直な話、僕はあの子の本当の名前や両親、妖怪としての種族さえ知らない。
 今の名前は朱鷺に似ているから朱鷺子。そんな安直な発想からだ。
 なのにあの子は僕を父親のように慕ってくれる。
 他人が見れば三文芝居の親子ごっこかもしれないけど、それが今の僕にとっては幸福なんだ」

「その家族ごっこには私も入っているのかな?」

「勿論。でも君だけじゃない。妹紅や、その他たくさんの人妖が僕達家族を支えている。
 僕一人でも無理だ。君だけでも駄目だ。
 僕らは、他人の善意によって家族という形態を維持できるんだよ」

隣に佇む慧音の肩にそっと手を置く。
今ならずっと胸の内に抱えていた言葉を慧音に伝えられそうだ。

「いつか、三人で一緒に暮らさないか。
 そう遠くない、けれども今すぐにでなくてもいい。
 今よりも少し本格的な家族ごっこを一緒にしてはくれないかな」

いつか言おうと思っていた言葉。
だが言い出すきっかけがなく、宙ぶらりんのまま持て余していた言葉。
自分と慧音の溝が埋まり、互いに手を取り合えるようになった今なら言える言葉だった。

この言葉にこれ以上のタイミングはなかったし、これ以上着飾る必要もない。
ただそれだけを伝えたいが為の言葉。

「霖之助……」

いつか慧音が見せてた歓喜に満ちた瞳が、肩口から霖之助を見上げる。

「まぁ戯言なんだけどね。けど、僕達にはこんな軽口がよく似合うとは思わないかい」

「あぁ思う。昔みたいに軽口を叩き合う関係がよく似合う」

表で遊ぶ妹紅と朱鷺子を見つめながら、二人はしばらくそのままでいた。
一度無かった事にまでなりかけた関係を繋いでくれた唯一無二の存在を見つめながら、
霖之助は慧音の肩にそっと手を置いたままで時間の許す限りそうしていた。









約一名、後先考えず飲み過ぎて二日酔いという自業自得の結果を招いた妹紅を除いて、
恙無く時は進んだ。

新品のシーツのように染み一つ無い雲が、
初夏の青い空を千切れ千切れに流れる風景は雄大で、心休まる。

そんな中、まず一番初めに香霖堂へとやって来たのは小悪魔だった。
朱鷺子ができるだけ普段の格好でと念を押していたらしく、
その言葉通り小悪魔の格好は黒のスカートとジャケットに、
白いブラウスと赤いネクタイのアクセントが効いた、霖之助が思い浮かべる小悪魔の姿だった。

「こんにちは森近様。本日は……」

「あ、小悪魔こんにちは! ちゃんと来てくれたんだね!」

小悪魔の挨拶が終わる前に朱鷺子が割り込む。
挨拶ぐらいさせろと言って叱ってやってもよかったのだが、
どちらかと言えば小悪魔は朱鷺子と仲の良い人物なのでそのままにしておいた。

朱鷺子曰く、同じ名前が曖昧な者同士惹かれるものがあるらしい。
霖之助にはお互いに本が好きという共通点しか思い浮かばないが、
朱鷺子がそう思うのならそうなのだろう。朱鷺子の中では。

「はい、パチュリー様からも一日ぐらいなら休んでいいと言われましたので」

「意外に優しい」

「意外ではありませんよ。パチュリー様はそんなに悪い魔女ではありません。そんなに」

「眼が怖い……」

「確かに眼は怖いですね……」

「いや、君達。別に彼女はそんなに怖い人物ではないよ。眼は怖いけど」

フォローがフォローにならなかった。
だがいつも睨むような目付きで他人を見ているパチュリーにもそれなりの非はあるだろう。
他人に好感を抱かれるという現象に、彼女は余りにも遠すぎる。

そんな話題を挟みながらも次はお空とミスティアとリグルの三人が到着した。

「こんばんは香霖堂さん。私達が最後ですか?」

「そうだね、そうなる。けどそんなに遅れていないから気にしなくてもいよ」

「そうれはよかった。美味しい鰻をたくさん用意していたら時間が掛かってしまって。
 写真撮影が終わったらみんなで食べましょうね」

「これはこれは、こっちから呼び出したのに気を使わせてしまったな」

「いえ、好きでやっている事ですから」

相変わらず人好きのしそうな笑顔で笑う妖怪少女だ。
こんな笑顔を万人に振り撒ける人物はそうそう居ない。

「お空の方は久しぶり。相変わらず元気そうだ」

「元気元気、私は元気。おにーさんも元気そうで良かったです。
 ところでおにーさんの名前ってなんですか?」

こちらも相変わらず、少々物覚えの悪いままだ。
やや前向きに考えればそういった点がお空の魅力とも言える。

「森近霖之助。朱鷺子からよく話を聞いてると思うけど」

「あ、そうでした。名前と顔が一致しなくて分かりませんでした!」

頭の中で歯車が咬み合って相当すっきりしたのか、
挨拶した時よりも更に輝いた笑顔をみせてくれた。

「……まぁ、笑顔は大切だね。うん、その笑顔を大切にするんだよ。
 いやぁ、君のように笑顔が素敵だと写真も栄えるだろう」

「はい! 写真楽しみー! ダブルピース、ダブルピース!」

「アヘ顔」

「ダブルピース!」

さらりと割って入ってとんでもない発言をした妹紅には、
すぐさま慧音の頭突きがお見舞いされた。
こうした光景を見ていると、
トリックスター的な一面が過ぎると痛い目をみるのはいつの時代でも、
どんな物語でも変わらないという事を実感させてくれる。

「うーん、でもいざ写真を撮るとなると緊張しちゃうなー
 私そう言うの慣れてないから」

「そうかなぁ? 私は楽しみだよ」

腹を押さえて蹲っている妹紅を表面上は心配しながら見つめていると、
今度は視界の隅でリグルと朱鷺子が会話を始めた。

思えば初めて出会った時からは考えられない程、この二人も仲が良くなった。
恐らくリグルが香霖堂にやって来た日の事はそうそう忘れられないだろう。
ドアを蹴破ってやって来る客の事は商売的に考えても中々忘れたくはない。

かくいう朱鷺子もその一人だ。

「変な顔で写らなきゃいいけど……」

「大丈夫だよーリグルはハンサムだから」

「ハ、ハンサム言うな! 私は女の子なの!」

仮にも少女であるリグルにこの発言は酷いものだ。
意外な事かもしれないが、リグルの内面は朱鷺子よりよっぽど女の子らしい。

「さて、これで全員かな」

「うん、みんな揃ってるよ」

パタパタと腕を上下させて朱鷺子が楽しそうに答えた。
もう待ちきれないといった様子だ。
霖之助はそんな朱鷺子にとっておきの仕事を与えてやる。

「よし、じゃあ全員並んで写真を撮ろう。
 朱鷺子。セルフタイマーの設定は君に任せた」

「ぐ、ぐぁー!? 私がやるの?」

「君が言い出した事だろ。言い出しっぺの法則ってやつだ」

「が、がんばる」

朱鷺子はとことこと三脚で固定されたカメラへと近づいて、
必死に背伸びをしながらセルフタイマーの設定を行った。
途中、分からないところは霖之助に尋ね、
四苦八苦しながらも何とかセルフタイマーをセットできたようだ。

タイマーが作動し始めると慌てて皆の所へと戻った。

「良く出来ました」

「これぐらい朱鷺子さんには朝飯後ってやつよ」

「前な」

「お茶の子バッコイとも言う」

「さいさいな」

どうやら近い内に正しいことわざもしっかり教えておくべきかもしれない。
やらなければいけない事がこれからも山積みだ。
霖之助は内心苦笑しながらそんな事を考える。

写真の構図は、まず一番後ろの中心に背の高い霖之助が。
次に慧音が寄り添うようにして霖之助の隣に立ち、
その左右には妹紅と両手でピースサインをしたお空。
小悪魔とリグルとミスティアは少し広がりながら、
思い思いの表情やポーズで佇んでいる。
最後に一番元気の良い朱鷺子が期待に胸を踊らせながら、
今か今かとシャッターが降りるのを待っていた。

そんな朱鷺子を微笑ましく思い、霖之助は無意識の内に自身の左手を慧音の肩へと置く。
奇しくも昨日の昼間と同じ状況になってしまったが、
写真を撮る前という事もあり慧音は特に分かりやすい反応を返さなかった
このぐらいが丁度いい。霖之助と慧音にはこれぐらいが丁度いい。

分かりやすい結果でなくとも、もう十分に分かりあえている。
だから、もうこれ以上は望まない。
もし望むとしたらそれは……。

「はーい! ちーず!」

元気のいい朱鷺子の掛け声と共にシャッターが降りた。
機械的なシャッター音が響いて、その日その時の瞬間が切り取られる。

各々が思い思いに動き出すと、先程まで存在していた時間や光景は消え失せ、
皆が皆思い思いに振る舞い始めた。
霖之助はシャッターに遮られた思考を初夏の空を見つめながら再開する。

もしこれ以上を望むのなら、それは朱鷺子の今後についてだろう。
これから朱鷺子は少女から一人の独立した女性へと育ってゆく。
霖之助はただそれを見守り、時には助けてやりながらこれからの時間を過ごしてゆく事になる。
楽しい事や、楽な事ばかりではないだろう。
同じだけの苦難と困難が待ち受け、深く傷を負う事だってあるかもしれない。

けれども、だからこそ。
霖之助は朱鷺子に手を差し伸べる存在であり続けるべきなのだ。
それが霖之助と慧音に今を作り、未来を示してくれた少女に出来る唯一と言っていい恩返しなのだから。

見上げる太陽に雲が掛かって、風に流されて雲が退くとまた太陽が顔を出す。
いい天気だ。よく晴れた初夏の青空は文句のつけようのないぐらい素晴らしい。

また一匹の名無し妖怪とそれを取り巻く人妖に夏がやって来る。
たくさんの出会いや思い出を生んだ短くも鮮烈な夏がやって来る。

さて、一体今年の夏は何が起こるのだろうか。
きっとまた何か面白い出来事が起こって、素敵な出会いが待っている。
特に確証はないが、霖之助には確かにそんな気がした。

tokiko120cm).jpg

Comment

ああ、とうとう終わってしまったか…


にしても、この妹紅さんは下ネタが多いなあ
  • by:すかいはい
  •  | 2011/06/12/22:37:15
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#No title
「否、断じて否」でゼクスを思い出してしまった

これはいい家族だ・・・
  • by:お茶丸
  •  | 2011/06/13/11:14:31
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楽しみだったシリーズが一つ終了してしまった…
本当にお疲れ様でした。
番外編というか後日談みたいのはあるのでしょうか?


にしてもこの話の妹紅は自重しないですね
朱鷺子の教育に悪影響を及ばないか心配ですwww
  • by:ハリ
  •  | 2011/06/13/13:37:17
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#No title
100本目、100000Hit、そして朱鷺のすみか完結おめでとうございますー!霖之助の次に美鈴が好きな僕としては、美鈴が来られなかったのは残念ですが、この写真はすばらしい記念となったことでしょう。
これからも楽しみにしていますー!

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