十四朗亭の出納帳

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十四朗

Author:十四朗
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奇跡を見せてやろうじゃないか!

早苗さんは頭の緩い子ー
だから霖之助さんもつい父性が出てしまうような、そんな関係。
タイトルは奇跡を連発しまくった男、キンケドゥ・ナウの台詞から。
クロボンカッコイイよクロボン。


『奇跡を見せてやろうじゃないか!』



(早苗、霖之助)




「霖之助さん……私はもう疲れましたよ」

元気のない声と、覇気のない表情。
死んだ魚のような目をした東風谷早苗が香霖堂へとやって来た時、
霖之助は一瞬ぎょっとした。

それからすぐに冷静さを取り繕って、
「お茶でもどうだい?」とお茶を勧めながら着席を促した。

早苗がまともでないのは今に始まった事ではないが、
それでもこういった表情をして店へとやって来れば驚きはする。

早苗が外の道具や巫女服の修繕、信仰の押し売りを目的に香霖堂へやって来るのは珍しくない。
同じ年頃の霊夢や魔理沙に比べて、金銭を支払っての取引というものをしっかり行うので、中々の良客だ。
知り合った当初は生真面目な言動が多かったが、
ここ最近は幻想郷にそまりつつあり、中々常識外れな言動も目立つようになって来た。
色々な意味で知りあった当初の彼女は良かった。

「最近奇跡が枯れているんですよ」

「なんだ藪から棒に。それに奇跡は枯れるものなのか?」

「枯れます枯れます、もう凄く枯れます。
 みんな都合のいい奇跡を願うからすぐに枯渇しちゃうんです。
 不足しがちな奇跡のバランスを考えて欲しいですよ。
 無理に奇跡を起こすから私疲れてしまって」

「奇跡の力は信仰の力と比例する。
 信仰以上の奇跡を求めればバランスが崩れるのも頷けるが……」

どうやら早苗の疲れきった様子は奇跡の乱発によるものらしい。
強制的な力の行使が祟って一時的に体力を消耗しているだけのようだ。

「そこですそこ! そこが問題なんです!
 いいですか? そもそも信仰というのは叶えたい願いがあるから信仰するのではなく、
 信仰するから偶発的に願いが叶うのです。
 願いイコール信仰だなんて不純よ、不純!
 神様は便利屋じゃないんですから、そこのところ理解していただかないと」

「でも実際便利屋と言われても仕方ない程度に人間の願いを叶えているじゃないか」

「調子に乗りすぎました……無病息災、学業成就、恋愛祈願に安産祈願、商売繁盛。
 特に魔理沙さんのお父さんは私が人里に行くと必ずやって来て、商売繁盛の奇跡をお願いするんです」

「ははは……これ以上店を繁盛させる気なのかあの人は……元気だな」

やや引きつった笑いを浮かべずには居られなかった。
昔から豪快で商売繁盛を第一に考えてきた霧雨の親父さんらしい行動だ。
もう隠居を考えていい年齢になってもまだその野心は衰えない。

余りにも不純過ぎる信仰理由には思わず感心してしまう程だ。

「断ればいいんじゃないのか? 疲れるから簡単に奇跡は起こせないって」

「そ、それはーまぁ、そうだすけど……」

「一旦人々の願いを叶えた手前退くに退けないと」

「はい……安請け合いが過ぎたと反省しています」

早苗は湯呑みを覗き込むように項垂れて、静かに茶を啜る。

「願いが叶うハードルを上げた方がいいのでしょうか? 
 例えば飲むと健康になり、物事が上手くいく奇跡の水、守矢神水!
 これを有料で配る事によって、簡単に願いを叶えたいという考えを抑制する。
 あ、我ながらいい案ですね」

「よからぬ疑惑が浮上するから止めた方がいい。
 営利目的で動く信仰程信用できないものはないよ」

「むぅ……いい案だと思ったのにぃ」

「やはりここはつまらぬ小細工を用するよりもストレートに教えを説いてはどうだい?
 信仰の意味と願いの意味を真摯に説明するんだよ。
 元々信仰なんて心の在り方だからきちんと説明すれば分かってくれるだろう」

「そんなもんですかー?」

「そんなもんだよ」

いまいち怪訝そうな顔で霖之助の言った事を信用しない早苗だったが、
霖之助がお茶のお代わりと、お茶請けに饅頭を用意したら、そんな事も忘れて笑顔になった。
まったく、コロコロと表情を変えて忙しい娘だ。

開け放たれた窓やドアからは心地の良い初夏の風が舞い込んでくる。
頭上から見下ろす太陽が、遥か彼方に屹立する山脈へ雲の影を切り取り、
雄大に流れ行く様子を見るのは心休まる。

広大な自然の営みを見つめていると全ての悩みがちっぽけに思えてくる。
東風谷早苗が抱えている悩みは特に。

「そうだ!」

雲と一緒に遊覧飛行していた霖之助の意識は早苗の声によって香霖堂の店内へと呼び戻された。
もう少しで新たな境地が開けそうな気がしていたのに間の悪い事この上ない。

「どうした早苗」

「閃きましたよ、良いアイディア!」

「ほう、言ってみるといい」

「ボランティアですよ! ボランティア!
 願いを叶える条件はボランティアなんです!
 無償の奉仕活動、博愛主義による愛の手!
 信仰とボランティア精神によって磨かれた清い心を持つ者は救われる。
 信じる心と献身の心。その二つが融和する者こそ神が救うべき存在」

言葉を無くした。
感心したのではなく、呆れて物も言えないというのが正しい。
やや暴走してカルトな方面へ行ってしまったのが残念だ。

「どう思いますか?」

「命蓮寺の主義に似ているね」

「あ……あぁぁぁ!? 言われてみれば確かに……
 あの尼! やっぱりあの時魔界に永久封印しておけばよかったんですよ!
 くぅー! 私の夢! 私の理想!」

「落ち着くんだ早苗。彼女は尼僧だがその言い方だと失礼だぞ」

「おっといけません。こんなに取り乱してはいけませんね。
 はぅ……とことん駄目ですね。何で上手くいかないんだろう」

茶と茶菓子のお代わりを差し出して、霖之助は宥めるように話題を切り出す。

「無理に変えようとするからだよ。
 人間無理に変わろうとすると歪が生まれる」

「神です、私は神様、現人神。
 人間よりも気高く、尊く、咲いて散る魂、現人神」

「その考えは後々直すとして。
 少しきついかもしれないが、当分願いは今まで通り叶える。
 けれどその間に君が少しずつ優しくなればいい。
 貪欲に信仰を集めるのではなく、
 対価なんか無くったって守矢神社を信仰したくなるような、
 そんな巫女になればいいじゃないか」

「時間が掛かりますよ。
 それにもしそれで上手くいかなければ骨折り損のくたびれ儲けです。
 前よりも奇跡の注文が増えるじゃないですか」

「だから君はその考えを直すのを優先しなさい。
 現人神と言っておいて人間臭い事この上ないぞ」

「でもでも信仰がー」

「霊夢はあれでいて結構人里の人達に好かれているよ」

早苗の表情が固まった。その表情を見てニヤリと霖之助が笑う。
早苗は霊夢に対して妙な対抗心を持っているせいか、
そこを突くと加熱したり大人しくなったりし易い。

この場合は自分のライバル(勝手に認定)が、
自分よりも優位な立場にいた事に対する驚愕によって固まったのだろう。

「意外かもしれないが霊夢は子供に好かれるんだよ。
 人里に行くと霊夢は子供達に遊んで遊んでとせがまれて大人気だ。
 何でか分かるかい? いつでも遊んでくれるからだよ。
 大人達が忙しい時でも、霊夢は子供と遊んでいたりする」

「将来の信仰を確保する為に?」

「いいや、断言していいが彼女にその気はないだろうね。
 きっと遊んで欲しいと言われたから遊んでやっている。ただそれだけだよ。
 買出しなんかで忙しい時は子供を引き連れて里で買い物をしたり、
 口ずさむだけで楽しくなるような童謡を教えたり。
 そんな事を彼女は自然とやっているんだ」

ぶっきらぼうで愛想なし。
独自の価値観を持ち、
常に超然とした態度を取り続けているという印象が強い霊夢にそのような一面がある事を知って、
早苗はここ最近で最も衝撃を受けた事だろう。

話聞く顔つきは真剣そのもので、いつもの早苗にありがちな茶々入れは全く無い。

「里の人達もそんな霊夢の事を知っているから、
 自然と霊夢に対して好意的に接する。
 野菜を贈ったり、日用品の無料修繕を承ったり。
 人里にある茶屋では殆どの茶屋が無償で霊夢にお茶を出すよ。
 それぐらい彼女は人里で人気者なんだ」

更に押し黙る早苗。
きっと自分の頭の中で今まで自分がどのように里の人達と接してきたのか回想しているのだろう。
あるいはもう回想は終わっていて、
自分が少しでも霊夢のように行動できていたか照らし合わせているところか。

「信頼と言う名の信仰……。
 信じるという定義の中でも最も温かく、最も壊れやすく、最も易しいもの。
 霊夢さんはみんなから信頼されているんですね」

やがてゆっくりと早苗の口が開かれた。
自分の至らなかった点を認めつつも、どこかその口調は満足気だ。

「あぁ。だから博麗神社の賽銭箱が万年空っぽでも、彼女は食料に困らない」

「なるほど。霊夢さんと知り合って以来の謎が一つ解けました」

言葉の後に、白い歯を見せて笑顔を一つ。
アドバイスをくれた霖之助に対するお礼とも受け取れる気持ちのいい笑みだった。

「だからまぁ、君ももっと欲を捨てて里の人達と接してみたらどうだい?
 僕が言うのも何だが、悪い連中は一人も居ないから、
 きっといつかは君の頑張りを認めてくれるよ」

「簡単に言ってくれちゃって。
 でもまぁ? 霊夢さんに負けっぱなしというのも癪に触りますし?
 ちょっと私が本気を出して博麗神社の立場を脅かしてやるのも悪くはないですねぇ~。
 誰が神様か今一度教えてあげないと。
 神はそう! この私東風谷早苗! とその他二柱」

「少し期待してるよ」

「大きく期待していてください。
 その内幻想郷を管理するのは守矢神社になりますので」

「全く期待しないでいるよ」 

ガッツポーズを決めて意気込みを新たにする早苗に、
霖之助の向けた笑顔は柔らかなものだった。

少女の成長を見守る立場は慣れている。
霊夢と魔理沙、それ以外にもかつて幻想郷に存在した可能性を宿した少女達。
その可能性を見届け、ある時はそれが潰える瞬間を目撃してきた霖之助にとって、
今の早苗にしてやれるのは手向けとして、柔らかな笑みを浮かべてお茶を淹れてやるぐらいだ。

果たして彼女の名は幻想郷の歴史に刻まれるだろうか。
奇怪な出来事と、変わり者の偉人には事欠かない幻想郷の歴史に、彼女は自らを刻めるだろうか。

それは現状では判断できない。
歴史を刻むも隠すもそれは人間の意思。
酷く移ろい易く、脆くて儚い人間の意思が決める事だ。

そしてその意思が、人間の総意が早苗を偉人として認めるにはまだ少し掛かる。
いつでも変わらずにそこへ存在する霖之助が、
変わってしまった少女達を見届けるまで、結果は分からない。

Comment

いや、優しいですね、霖之助。

それにしても、子供に人気な霊夢…なんて素晴らしい。想定外でした。
しかしなぜ霖之助はそれを知ってるんでしょう。里に出かけたときに霊夢をみかけて微笑んでるとかだったら私は悶えざるを得ない。
  • by:Meteoride
  •  | 2011/05/30/18:19:36
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