十四朗亭の出納帳

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十四朗

Author:十四朗
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四畳半慧霖-鍋パ編-

最近蓮子がアホの子化してきた気が。
本当は頭のいい子なのに。
このシリーズも折り返しを過ぎて、
ラストスパートを残すのみとなりました。

最初から最後まで慧霖だ!


『四畳半慧霖-鍋パ編-』


霖之助、慧音、メリー、蓮子







良し悪しはともかく、様々な出会いがあった夏が終わり、つかの間の秋がやって来た。
建物の合間から見える山は、赤や黄色等の紅葉に染まり初め、
このプラスチックな世界にも自然がまだ残っているのだと実感させてくれる。

定期的にだが、しつこくない程度の頻度で岡崎は香霖堂へとやって来て、
気に入ったものがあれば気前よく一括払いで商品を購入してゆく。
得体の知れないところを除けば、中々いい人物だ。

インテリジェンスに富んでいて、ユーモアのセンスもあり、
必要以上に騒がしくない。
もし霖之助が未婚だったのなら、彼女には女性として興味が湧いたかもしれない程に、
岡崎夢美という人物は魅力的でユニークだ。

それでも霖之助が、岡崎に気を許さないのは、
彼女の距離取りが穏やかな平生を装いつつ、
水面下で何を企んでいるか分からないところにあるのだろう。

日々、霖之助達に見せる態度が欺瞞でないという保証がどこにも見当たらない。
ほんの少しでも疑わしいというだけで、霖之助には距離をおく対象になる。
そういう点では、マエリベリーも心底親しくしているとは言いがたいのかもしれない。

だが霖之助の妻はマエリベリーの事を気に入っている。
平日の午後、一緒に料理を作ったり、夕食の献立を相談しあったり。
こちらに来てから人見知りがちだった慧音を変えてくれた一番の功労者という意味で、
霖之助はマエリベリーに深い感謝の意を寄せているのも事実だった。

今のところ、世界は恙無く回っている。

慧音が居て、蓮子が居て、マエリベリーが居て、自分が居る。
四人で夏祭りや市民プールに行き、
限り無く続く時間の中から見れば刹那に等しい夏を送り出した後でも、それは変わらない。

このまま自分達は残り僅かとなった滞在期間を過ごして、幻想郷へと帰る。
この世界の住人でない霖之助達が、こちらに長居できる道理はなく、
その時が来ればこちらで築き上げたもの全てを捨てて帰るしかない。

蓮子やマエリベリー、それから岡崎にも告げなくてはいけないのだろう。
勿論、事実をそのまま話す訳にもいかないので、
自分達が故郷に帰ってしまう事と、
もう二度と会えなくなる事を上手く説明しなくてはいけない。

聡明な彼女達がすんなりと、何の疑いもなく信用してくれるとは思わない。
なので霖之助には時間が必要だ。
三人をそれぞれ納得させる事の出来る、とびっきり上手い嘘を考えるための時間が。

嘘は良心が咎めるが、仕方がない。
その咎める良心が求めているものもまた嘘なのだから。









「肉は! 私のものだぁー!」

「ちょっと蓮子、あんまりお肉ばかり食べないでよね。
 誰が買ってきたと思ってるの?」

「メリーと慧音さん。けどお金は私達が働いたお金!
 誰のおかげで飯が食えると思ってるー! きゃほーい!」

四畳半の、四人が入って鍋を囲むには狭すぎる、慧音と霖之助の自室。
そこで缶ビール片手に一番はしゃいでいるのが蓮子。
それを止めようと、鋭い目付きで割って入いるのがマエリベリー。
霖之助の妻である慧音は、ニコニコしながら二人を見つめて、
すき焼き鍋に肉や豆腐などの具材を鍋に入れていた。

世話焼きが好きな慧音にとって、
鍋のお世話はきっととんでもなく楽しい時間なのだろう。

既に酔が回り始めた蓮子と、
怒りの回転数が上がりっぱなしのマエリベリーがいがみ合う中で、
実に冷静な立ち回りをしている。

「大体私、今日は飲むなって言ったじゃない蓮子」

「知るかー! 缶ビールを開けたら中に入ってたのがビールだったんじゃーい!」

「当たり前じゃないの! どう考えても缶ビールの中身は缶ビールよ!」

「うぇっへっへ、失礼しましたー」

赤い顔でゲラゲラ笑う蓮子に、昼間のシックで大人びたスレンダーな女性の面影はない。
店に来るお客への対応も随分とさまになってきて、
お客からの信頼を徐々に勝ち得てきたとはいえ、根はやっぱり蓮子のままだ。

これを進歩していないと取るか、
かけがえのない個性と取るかは個人の判断に委ねられるところだろう。

少なくとも霖之助は、彼女のこういった部分に好意を感じているし、
彼女の側にマエリベリーがいる理由もそこだろう。
困った輩程、側に居てやりたくなる。
お人好しの考えだが、そういう連中と長く付き合っている身としては、
お人好しで結構、とすんなり思えてしまう。

「しかし本当に狭いですねこの部屋はー
 あぁ、慧音さんと霖之助さんでそれぞれ別の部屋を借りていて、
 普段は二つの部屋を使ってるんですね!」

「いや、この部屋で一緒に暮らしているけど」

「何だと? 夫婦か!」

「そうだけど」

「そうでした!」

知り合った当初はこんなにも間の抜けた娘ではなかったはずだ、
と霖之助は自分自身に疑問を投げかけたが、当然何の答えも返ってこない。

彼女達も霖之助や慧音と親しくするうえで、随分と認識を改めた部分もあるだろう。
だったらそれでおあいこだ。

「はい、霖之助。卵溶いてやったぞ」

にっこりと満面の笑みで溶き卵が入った器を慧音から渡されて、
少々霖之助はたじろぐ。
考え事をしている最中の不意打ちだったのが響いた。
だが、すぐにいつもの仏頂面を取り戻して、慧音から器を受け取る。

そういえばまだすき焼きを口にするどころか、卵すら溶いていなかった。
それに気がついた慧音が、霖之助の分の卵を溶いてくれたのだろう。

「ありがとう。君は何でも気が付くね」

「そうか? 私だって何にでも気が付くわけではないと思うぞ。
 教育者として、気付いてやれなかった事の方が多いくらいだ」

「世の中は認知されない事象の方が多い、という事かな?」

「そういう事だ。全ての事象を観測できる人物が居たとすれば、
 それは悪魔以外の何者でもないだろう?」

「違いない」

「んーラプラスの悪魔?」

ほろ酔いの蓮子が突然、会話に割り込んできた。

「ラプラスの悪魔……か」

「仮に全ての原子の位置と運動量を把握できる知性が存在するとすれば、
 それは現在、過去、未来、全てを知りうる存在だという、概念ね」

ほんのりと赤く染まった惚け面で、案外まともな事をいうのだと感心したが、
そこは腐っても物理学を専攻している現役の大学生だけの事はある。
ここ最近の彼女からは想像もつかない発言だ。

「けど、そんな神様にも等しいラプラスの悪魔は、
 二十世紀に入ってあっさり否定されちゃったのよねー
 否定に関する理論は色々あるけど、私が好きな理論は、
 一秒先の未来を知る為に一秒以上時間の掛かる計算をしていていたら、
 未来を計算した事にはならないっていう理論かな。
 要するに、ラプラスの悪魔は後出しジャンケンしかできないのよ」

「未来を知る事の出来る存在が後出しジャンケンか」

「可笑しいでしょー?」

「あぁ、可笑しい」

「現在、過去、未来、全てを知りうる存在なんて、
 その存在を仮定する事自体が腹立たしい行為なのよ。
 人は誰しも悪魔なんかよりも素晴らしいものを、心に宿している」

「それは?」

「それは神よ。人間だけが神を持つの。
 今を越える可能性という名の内なる神を!
 そう! 人は可能性の獣なのよ!」

グッと両手を握って、天井から吊るされた照明に向かって蓮子は熱く語っている。

やっぱりいつもの蓮子だった彼女の言葉を途中で無視して、
霖之助はすき焼き鍋から程良く赤身の残った肉を箸で摘まんで、
溶き卵にさっとくぐらせると、大きく口を開いて一口で口の中へと入れた。

慧音とマエリベリーが手作りした薄味の割り下に、
合成食品とはいえ、食材の旨みが染み込んでいて味覚を刺激した。
白いご飯をそのまま口に運びたくなる味わいだ。

肉に染み込んだ出汁と溶き卵が噛むたびに口の中で広がり、
それと一緒に肉自身の脂も丁度いい温度で染み出す。
溶き卵のおかげで絶妙な温度で口の中へ運ばる肉は、
やはりすき焼きの醍醐味なのだろう。

「ラプラスの悪魔か……」

ゆっくりと口の中の肉を咀嚼して、飲み込むと、そう呟いた。
確かに蓮子の言う通り、ラプラスの悪魔自体は否定された概念だ。
だが、霖之助はその存在に限り無く近い人物を知っている。

現在、過去、未来、森羅万象全てを見透かすような目をした存在。
霖之助達をこの世界に連れてきた、ある意味恩人とでもいうべき人物。

なのに、霖之助はその人物に心から信頼を置けないでいる。
それはその人物と出会った当時からずっと変わらないでいる気持ち。
何にでも境界線を創り、全てを二分する事が出来る癖に、
自分自身は良いも悪いも、善も悪も一緒くたにしてごちゃまぜにしたような、
そんな雰囲気を纏っている。

決して短くない森近霖之助の人生の中で、
あれ程強烈な拒否反応を他人に起こしたのは初めてだった。

そこまで考えて、箸が止まっている事を不思議に思った慧音が、声を掛けてきた。
霖之助は笑顔を取り繕い、「なんでもないよ。あんまりにも美味しいすき焼きだったから」と、
いつもの霖之助を演じて取り繕った。

良き妻である慧音と共に居る時は、自分も出来るだけ良き夫でありたい。
実際、霖之助には自分が良き夫であるのかどうか分からないし、
慧音も霖之助の事を夫としてどのように思っているのかも分からない。

だがそれでいい。

あの日。
宮島で互いの胸中を打ち明けて、本当の夫婦になったあの日。
あの日から、何があっても自分は慧音の夫であろうと固く心に誓った。

「私も作ったのに、なんだか慧音さん一人のお手柄になっちゃって悔しいなぁ」

十字に切り込みが入れられた椎茸を箸で摘まんで、
むくれたように笑うマエリベリーから皮肉が飛ぶ。

「すまないマエリベリー。君もよく頑張ってくれたね」

「私はー? 霖之助さん!」

「君も良く働いてくれる。留守も任せられるし大助かりだ」

「そうよ、一家に一人蓮子さんなのよぉー」

「もう、蓮子はこれ以上お酒飲むのを禁止!
 支離滅裂じゃないの」

「ノンノン、まだまだ宵の口だからこれぐらい何とも」

「ラプラスの悪魔について説明しなさい」

「なみのり!」

「ごめんなさい蓮子、意味が分からないわ」

「まきますか? まきませんかー!」

いつもの蓮子に戻ってしまったようだ。
ゼンマイを巻き直さなくてはいけないのかもしれない。

騒がしい日常。
どことなくこの騒がしさが懐かしい。
昔という程でもないのに、何故か幻想郷に居た頃がとんでもなく昔の事に感じられた。

あと半年もしない内に、霖之助と慧音は幻想郷へ帰る。
その為に、こちらで得たもの全てを捨てなくてはいけないという事実が胸に刺さる。
無くしたり、失ったりする事には慣れているが、捨てる事には慣れていない。

けど、今の霖之助の状況ならば大抵の人物が捨てるのを戸惑うだろう。
妻、友人、自分の夢。この三拍子が揃った生活を捨てるだなんてとんでもない。

それを捨てるだなんてとんでもない。

Comment

なみのりで吹いてしまったwww


霖之助は幸せもんだなあ
  • by:すかいはい
  •  | 2011/04/06/21:57:57
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#No title
蓮子かわいすぎる!


「気のおけない」と言う表現が出てきますが、文脈からして、よくある誤用をしてしまっていますね。
  • by:
  •  | 2011/04/07/18:29:03
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