十四朗亭の出納帳

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十四朗

Author:十四朗
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渦を巻いて

雛祭りは一日過ぎましたが、諦めない限り雛祭りです。
雛祭り記念に雛霖です。
私にとって雛霖はこんな感じ。


『渦を巻いて』


雛、霖之助







誰からも愛されないないという事は、とても残酷ではないだろうか。
生き物がいて、水があり、空気があり、大地があり、緑があり、山があり、空があり、生き物がいるこの世界で、
誰からも愛してもらえないという事は拷問に等しい。

これだけ言うと、まるで僕が恋愛至上主義者みたいに聞こえるが、
そんなつもりは毛頭ない。
そもそもこの愛というものは、恋愛以外にだって意味を持つ言葉だ。

ただ愛というだけで恋愛を思い浮かべるのは、
男女が二人並んで会話をしているだけで恋仲だと決め付けるのと同じぐらい浅はかな事だ。

僕が言っている愛の意味は勿論恋愛と言う意味を含んではいるけど、
それ以外の意味も当然含んでいる。

親類に抱く愛、友人に抱く愛、異性に抱く愛、隣人に抱く愛、尊敬する者に抱く愛。
もっと多く、広く愛は分布しているけど、主にはこんなとこか。

人も妖怪も、生きてゆくのなら愛を抱いたり、抱かれたりするのは当たり前で、
そこから関係性を作り出し、自分の世界を構成する。

「愛こそ全て」なんて言うと陳腐な響きしかしないが、
少なくとも誰かを愛そうともしない人間はまた誰からも愛されない。

けれど、人間を愛しているのに、人間から愛されない人物というのはどうだろうか。
その人物はずっとずっと昔から人間を愛して、人の為に辛い仕事を引き受けているというのに、
人々はそんな人物がいるという事すら殆ど知らずに日々を過している。

人が聞いたなら、そんな人物を知らなかった自分が許せないと言うかもしれない。
それとは逆に、そんな人物の事なんて知った事かと言うかもしれない。

だが僕の知るその人物は……彼女は、その事を知っても特に何も思わないだろう。
その程度の言葉で揺らぐ程、彼女の人に対する愛は脆弱なものではない。

深く、広く、大きな愛、その全てが人の為にある彼女にとって、
それは揺らがないたった一つの信念なのだろう。









今年も雛祭りの二日前に、鍵山雛は香霖堂へ厄を含んだ道具を引き取りに訪れた。
僕が一年掛けて集めた厄を含んだ道具は、
彼女が毎年雛祭りの日に行う、たった一人の流し雛で祓われて、緩やかな川の流れに流される。

初めて、雛が僕の集めた道具で流し雛を行った時から、
僕がその光景を見物するのが毎年の恒例になっていて、
僕はその恒例行事の事を『香霖堂流し雛』と呼んでいた。

人形以外の物も流される流し雛の事を、流し雛と呼んでいいのかどうかは疑問が上がるところだが、
鍵山雛の手によって行われる行為だから流し雛と呼んでいいのだろう。

使われなくなった盃の上に、蝋燭と道具を乗せて緩やかな川の上を流れてゆく。
雛が流し雛を行う川は、紅魔館の近くにある湖へと流れる川ではなく、
彼岸と此岸の境界線である三途の川で行われる。

雛とは一年を通して顔を合わせるのが稀で、
時々無縁塚に出向くと道に迷った幽霊相手に世間話をしているのを見かける程度だ。
言葉を持たない幽霊相手に話が通じるのかと思ったが、
雛に「神様ってそういう事ができるから神様なのよ」と言われて妙に納得した。

僕は雛と多くの話題を共有したという訳ではないけど、
それでも鍵山雛という人物がどんな人物なのかしっかり把握しているつもりだ。

紅茶よりも珈琲を好み、ジャズよりもクラッシクをよく聴き、ヘアバンドよりもリボンをよく着用する。
髪と肌と爪の手入れも丁寧で、言葉遣いも落ち着いていて上品な印象を与える彼女は、
切り取られた情報だけならば物静かな美女という言葉がぴったりと当てはまる。

だが、鍵山雛はそれだけではない。
鍵山雛はもっと深いものを、その腹の中に抱えている。
黒く、暗く、厄落としをした際に落としきれなかった蓄積した厄が長い時間を掛けて彼女と一つになったもの。
それに触れたのなら精神が腐り落ちて、狂ってしまってもおかしくないような代物を彼女は抱えているのだ。

僕は常々、自分に感謝しないような連中の為に彼女がそこまで出来るのか? 
と疑問に思っている。疑問に思うだけでなく実際に質問したこともある。

すると彼女は決まって笑顔を浮かべ「好きな理由を言わせないで恥ずかしい」と、
実際には恥ずかしそうな素振りを見せずに言うのだ。

ますます分からない。僕には鍵山雛という女性が分からない。
分かろうとしているけど彼女の方からは何も教えてはくれない。
いや、ひょっとしたらもう教えてくれているのかもしれない。
僕が気づいていないだけで、彼女は僕に自分の何たるかを教えてくれているのかもしれない。

他人の評価によると僕は『鈍い』らしいから(まったくもって不本意だが)その可能性も捨てきれないけど、
はたしてあの謎多き厄神が他人に理解を求めるのか? というもの僕の疑問だった。

僕の中での彼女に対する感情は疑問で埋め尽くされていると言っていい。
ただ厄を含んだ道具を提供するだけの間柄なら、これでいいのかもしれないが、
困った事に僕は知りたいという事に対する衝動が先行してしまう質だ。

今年の雛祭りも雛は流し雛を行うようなので、例年通り僕も参加する事にした。
道具を纏めた大八車にはそれ程多くないにせよ、
厄を含んだ道具がべったりと肌に張り付く厄を放ちながら鎮座している。

青い空の下で吸う空気がこんなに美味しくないなんて。
先導する雛自身は平気な顔でケロッとしている辺りが彼女と僕の違いなのだろう。

僕達は無縁塚で休憩を取る事にすると、大きな岩の上に二人で座って持参した水筒から水を飲んだ。
雛は自家製のクッキーを持参していたらしく、
水と一緒に食べていたが、僕はそれを貰おうという気にはならなかった。
厄を溜め込んだ彼女から手渡しで食べ物を貰うなんて行為は、呆れを通り越して愚かな行為だとさえ感じる。

毒に例えるなら劇毒ともいっていいそれを体内に溜め込む勇気はない。
言っておくと僕は彼女の事を嫌っている訳ではないが、それとこれとは話が別だ。
雛の方もそれを分かっているらしく、僕にクッキーを勧めなかった。

「辛い? 厄を溜め込んだ物から発せられる空気を吸うのは」

丁度三つ目のクッキーを飲み込んだ雛が僕に尋ねた。

「それなりに。そういう風に出来ているから辛いかな。
 僕は食事をしなくてもいいけど、呼吸はしなきゃいけない。
 だから空気を吸うことは行われるべき行為だ。それがこうだと息苦しくもなる」

「人が水の中で呼吸できない様に、魚が陸で呼吸できないのと一緒ね。
 厄を含んだ空気の中でちゃんとした呼吸が出来る生物なんて稀だし。
 それでもこんなものを含んだ空気の中で平然としていられるなんて、それは利点じゃなくて欠点よ。
 厄を吸っても大丈夫じゃない事を誇っていいわ」

「その他大勢と同じ体質でもなんら誇りにならないよ。
 それにしても雛、君のその口ぶりだと君は厄が嫌いみたいだね」

「嫌いよ、当然じゃない」

これには驚いた。
普段厄を集め、人間以外から厄神と称される彼女自身が厄を嫌いだとは。
もっとも、厄神だから厄が好きだなんて浅はかな考えだったなと僕は思う。
当然か、珈琲とクラッシクとリボンと人間が好きな人物が厄なんて厄介なものを好むはずがない。
それは当然の事なのに、彼女が厄神というだけですっかり失念していた。

「厄自体それはそれは悍しく、恐ろしく、気持ちの悪いものよ。
 そんなもの私は好きでないわ。私はもっと明るいものが好きなの。ハートマークとか。
 けれど、それを集めるのは私の愛する人間の為。
 人間が笑い合って暮らせる為の行動なのよ」

「そこに君がいなくても?」

「えぇ、愛しているから無事に暮らしていればそれでいいの」

相変わらず分からない答えだ。
愛しているのなら、そばに居ればいいじゃないかと言いたくなる。
厄を集めている事をおおっぴらにして、
自分から積極的に人里で厄集めをすれば、雛は誰からも敬われる神になれるはずなのに。

彼女の中で、何がそれをよしとしないのか僕には理解しかねる。

「毎回聞くけど、君はどうして人間が好きなんだい?」

「本当に毎回聞くわね」

「毎回君が答えないからね」

「毎回答えてるじゃない。
 好きな理由を言わせないで恥ずかしい」

恥ずかしい様子もなく口に出される決まり切った文句が、僕を知りたいと駆り立てる。
けれど僕も彼女を見習って感情は表に出さない。
我慢の出来ない男というもの程みっともないものはないだろう。

僕達はそれから、少しだけ話し合うとまた三途の川へ向けて歩き出した。
まだ厄を含んだ空気には慣れなかったが、雛の言葉通り慣れないことがいい事だと思って我慢する。

程なくして三途の川が森の切れ目から見え始めてきた。
ここに到るまで幽霊以外とはすれ違っていない。
その幽霊も強い厄の気配を感じると、そそくさと何処かへ行ってしまった。
普段なら幽霊とお喋りを楽しむ雛も分かっているから特に引きとめようとしない。

河原に大八車を止め、嫌々ながら道具の入ったダンボールを用意すると、
雛の方は道具を乗せて流す為の盃に蝋燭をセットした。

大小合わせて盃の数はおよそ二十個。
当然ながら厄を含んだ道具の数も二十個。
それから二十一本の蝋燭に、紙で出来た人形二十枚。

何故蝋燭だけ一本多いのかというと、
盃に乗せた蝋燭へ火を灯す際に燭台に蝋燭を乗せて、そこから火を灯す為だ。

ここから先に僕が手伝える作業はない。
盃の上に道具を乗せるぐらいの事は出来るかもしれないが、
それは雛の手で行われなければならない事だ。

僕が手を出して彼女の流し雛を邪魔する訳にも行かないし、
正直厄を吸い込みすぎて気分が悪かったので、僕は河原にあった少し大きな石の上に腰掛けその様子を見つめた。

一つ一つの道具を杯に乗せ、人形を添えると蝋燭に火を灯して三途の川へと流す。
何も言わず。こちらをちらりとも見ずにただ淡々とその作業を繰り返す雛の姿は、
彼女が厄神たる事実を久々に思い起こすものだった。

流れの緩い三途の川では、水面に浮かべられた盃は中々流れず、
人が歩くよりも随分と遅い速度で緩かに川下へと流れて行った。

まだ昼間だというのに薄暗い三途の川には、蝋燭の灯がよく映える。
それを行う雛の雰囲気もあってか、流し雛は幻想的に見えた。
毎年見ている事なのに、毎回こう思ってしまう。
やがて流し雛はゆっくりと時間を掛けて最後の一つまで行われた。

「これが本当の厄介払いって言うのかな」

「なぁにその冗談」

「冗談はさておきご苦労様。
 これで君の分の厄も流れた訳だ」

「一応はね。けど完全ではないわ。
 澄んだ水で水浴びをして、塩で体を洗わないと」

「そこだけ聞くと魚の塩漬けを作っているみたいだ」

「私はお魚程美味しくはないよ」

微笑んだ彼女は普通の女性で、厄神だなんて事を忘れさせてくれる。
恥ずかしげもなく好きだと言う時の笑顔よりも、こっちの笑顔の方が好きだ。

「乗ってくかい?」

空になった大八車を指差して僕はそう言った。
見かけではなんてことない作業だったが、
厄を流すという行為は彼女にとって相当疲れる行為に違いない。

流し雛の最中は見ているぐらいしか僕には出来ないし、
やれる事といえばこんな事が関の山だ。
いつからかは覚えていないが、彼女の三途の川での流し雛を終えた後は、
こうして雛を乗せてゆくのが殆ど決まりみたいになっていた。

「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうわ。悪いわね、毎回」

「いいよ、店にある厄の溜まった道具を無料で供養してくれるのだから、これぐらいは安いものさ」

「商人的な言い方ね。
 もう少し気が効いたことは言えないの?」

「君は軽いから負担が掛からなくていい」

「それすっごく失礼よ」

「軽いって褒めてるじゃないか」

「褒めていてもよ」 

溜め息混じりの雛の心がよく分からない。
僕はちゃんと褒めたつもりだったが、雛はお気にめさないようだ。
まぁ、だったらそれでいい。
気に入らないものを気に入ったと無理して言われるよりはいい。

「そうだ、森近。貴方私が人を愛する理由を知りたがっていたわよね」

「知りたがっているよ。けど今まで君は話してくれなかったじゃないか」

「話してあげましょうか?今まで話さなかったけれど」

突然の申し出に僕は正直面食らった。
彼女が人を愛する理由を教えてもらうのはもっと劇的な事があってから知る事になるだろうと、
僕は考えていたからだ。

けれど現実はとてもあっさりしていた。真夏の夜明けよりもあっさりしていた。
だがそれは紛れもない、僕が知りたがっていた事柄。

「あんまりに急だよ雛。
 僕はもっと、散々もったいぶった事だから後になって言ってくれるのかと思った」

「後っていつ?」

「今際の際とか」

「なにそれ可笑しい。三途の川で今際の際だなんて」

くすくすと目を細めて笑う雛と一緒に僕も笑う。
穏やかだ。三途の川が近くにあるというのに穏やかなのもおかしな話だ。
けどこうして笑ってくれる部分は霖之助自身好ましく思う。

俗世と遠い存在のせいか俗っぽい所がなく、それでいて冗談にはちゃんと付き合ってくれる。
ユーモアを笑ってくれるかどうかは問題ではない、ユーモアとは使いうかどうかの問題だ。
だからこうして付き合ってくれれば、それだけで話は発展するし、次の話へのクッションになる。

「でも話さなかったというけれど、本当の意味では既に話していたのよ?
 私は本当に人間が好きなだけなんだから」

「どうして好きかなんて言わなかったじゃないか」

「別に過去に人間と何かがあった訳ではないわ。私の過去は雛人形。
 祠に閉じ込められて、人に厄を溜めさせられるだけ溜めさせられた汚い雛人形。
 それが元々の私」

「そんな君がどうして人間を愛する?」

「確かに暗くて、黴っぽくて、空気が淀んでいて、ろくでもない場所だったわ。
 天地がひっくり返っても、私の頭がおかしくなってしまっても、それだけは確かよ。 
 でもね? 私がどうしてそんな場所に封印されたか分かる?」

「どうして?」

すぐに疑問を返すのは僕の柄じゃない、だがこの時ばかりは雛の言葉が気になって仕方なかった。
知りたい。知りたくて仕方がない。

「分からない? 怖かったのよ私が。
 厄を溜め込み始めた頃の私ってね、勝手に髪が延びるような人形だったの。
 それを怖がった人々は村の外れに祠を作って、そこに私を祀った。
 厄を吸い取る役目を私に担わせる為に。
 私が動けるようになったのは、それからずっとずっと先の事だけど、
 記憶だけならその頃からあるわ」

「つまりは君は初めの頃、人間が憎かったけどそれが変わって、人間への愛になった訳か」

「違うわ、全然違う。そんな考えでは百年経っても私の事なんて分からないわ。
 そうじゃないのよ森近。そうであるはずがないのよ。
 そんなネガティブな感情から愛は生まれないわ。
 そう思っているうちは私の事なんて指先一つ分かりっこない。
 私はね、その頃から人間が好きだったの。好きで好きで好きでしょうがなかったの」

訳がわからない。
僕には雛のいう事がさっぱり分からない。
過去にそんな仕打ちを与えた人間の事をその頃から愛しているなんて。

冗談でも、比喩でもなくさっぱり僕には理解出来ない。
僕だって昔は半妖だという理由で人間から迫害を受けた事がある。
当然、その頃は人間が憎かった。
それは幻想郷に流れ着いてからもそうだったが、
幻想郷の人々と触れ合うことによって人の温かさが分かった。

そうした流れがあるから、今の僕は人間に対して嫌な感情を抱いていない。
なのに鍵山雛にはそれがない。最初から今に到るまで、彼女は人間を愛していると言った。

何故愛せるのか? 仕打ちを受けて尚愛せるなんてマゾヒスティックにも程がある。

「人は不完全よ、未熟よ、未完成よ、出来そこないよ。
 無知で暴力的で排他的で都合の悪い事なんてすぐに忘れて、都合のいい事実のみに眼を向ける。
 生ぬるい明日を享受して、誰かを虐げた昨日を見送りもしない。
 大勢にとって気に入らなければ種族同士でも迫害する。
 意見と意見が違えば殺し合う。違いを認めない。
 何十年、何百年、何千年経っても人はそう。
 矮小で凡庸で白痴でみっともない存在。それが人間」

両手を広げて雛がくるりと回る。
恍惚にも似た表情は僕に言いようのない不安を突きつけた。
笑っているのだ鍵山雛は。

人のおおよそ美しくない部分を指摘して、狂り狂りと狂い舞いながら笑っている。
いや嗤っている。人間を嗤っている。

「けど、だからこそ人間は愛おしい。
 私を暗い祠に閉じ込めたのも私が怖いから。
 怖くて怖くて仕方がなかったから。
 だから閉じ込めたのよ、暗闇を怖がる子供みたいに。
 あぁ、なんて可愛いのかしら。なんて愛おしいのかしら。
 そんな単純な発想しか出来ないなんて。
 そんな不完全な方法しか思い浮かばないなんて。
 人間というのは神様が近くで助けてあげないと直立二足歩行も出来ないのよ。
 地べたを這いずるしか出来ない。だったら手を貸してあげたくなるじゃない?
 だから私は人間が好き。人間が大好き。人間を愛している。
 狂おしいぐらいに人間が好きなの」

僕には、鍵山雛に掛ける言葉が見当たらなかった。
彼女は僕の態度を気にすることもなく、両手を広げて回っている。

歪んだ愛だと思った。ほんの少しだけ。
それが厭で厭で仕方ない。ほんの少しだけしか歪んでいると思えない自分が厭だ。

なぜなら――この時僕の大部分は彼女に強く共感していたからだ。

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