十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

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十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
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大体マルチ対応ゲームやってると思います。

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孤食よりも誰かと

道草さんからのリク、アリ霖(のはず)です。
結構時間かかっちゃいましたよすません。

どうしても土日は昼食が一人になりがちなんですよね、
一人で静かで孤独で、インスタント食品とか啜ってるし。
だから鍋とか焼肉っていいですよね、メンバーの問題もありますけど。

「孤食よりも誰かと」


アリス、霖之助




森の木々が作り出す陽だまりの中に佇む一軒の店。

店主が自らの手で丸太から削りだしたという大きな看板が
『香霖堂』の三文字を刻み玄関の真上に設置され。
玄関の周りには腰程まである狸の置物や、新聞を届けに来る天狗が新聞を入れないポスト、
それから店主が商品として拾って来た物が大量に置いてあった。

そんな店を前にして小さくため息をつく少女が一人。
彼女の名前はアリス・マーガトロイド、人形作りが本職の魔法使いだ。

彼女が店先で溜息をついているのは何もこの店の外見を見ての事ではない、
そんなものは最初にこの店に来た時にこの店の店主、森近霖之助の性格を知って諦めている。
彼女が今悩んでいるのは彼女の右手に下げている
こんがりとしたいい匂いのするバスケットの処遇についてだ。

まず何故アリスがバスケットを下げてこんな所に居るかと言うと、簡単に言えばお礼のためだ。
先日この店で買い物をしたアリスだったが思った以上に出費がかさんでしまった、
しっかり者の彼女ならいつもはそんなミスをしない筈だが
その日はたまたま外の世界の珍しい生地が入荷してあったのだ。
当然日々人形の発展について余念のない彼女なら速攻で喰らいつく商品なのだが値段が少し高い。

それなりに裕福な暮らしを送っている彼女だが今月は新作の人形を作るために予算を割き過ぎた、
これ以上お金をかけるならしばらくは自分の生活費を切り詰めなくてはならない、
例えば紅茶代などだ。
三食+ティータイムに規則正しい生活をモットーとする彼女にどうしても避けたい事だった。

そこでそんな様子を見かねた霖之助がまず半額を払って
余裕のある時にもう半額払ってくれればいいと言う提案をしたのである。

勿論最初は断ったアリスだが二度と手に入らないかもしれない貴重な生地と店主の説得に押され
結局購入してしまった。
自宅に帰った後色々考えたアリスだったがどうにも借りを作ってしまいそうなので
早い内に返そうと思い立ち現在に至るわけである。

そしていざ手製のミートパイをバスケットに詰めてやって来たはいいが
中々上手い言い訳が思いつかない。

(おすそ分けってのも変よね、パイなんて面倒な物焼き過ぎるわけないし、
 やっぱり素直にお礼をしに来たって言った方がいいのかしら、だとしたら単刀直入に!)

意を決したのか首をブンブンと左右に振って真っ直ぐに香霖堂の玄関を見つめる。
そしてそのまま確りとドアに手をかけると騒がしくないようにゆっくりと手前に引いた。

「こんにちは、霖之助さん。実はこの間のお礼をしに来たの、つまらないものだけど…」

そこまで言ってアリスは店内のカウンターにこの店の主の姿が無い事に気が付く。
別にこの店で店主が店先に居ないのはしょっちゅうだが
今日はそれと同時に何かが焼けるような匂いがする。

「なにかしら……卵?お昼の準備かしら」

だとしたら悪い時間に来てしまったと後悔するアリス。

一応今朝からパイ生地を練って準備を初めて昼頃には間に合う様にしたつもりだったが、
香霖堂の昼食の時間は少し早かったらしい。

「少しお話でもしたかったけど仕方ないわね、渡すだけ渡してさっさと帰りましょう」

誰に言うでもなく一人呟くと、靴を脱いで店の奥へ上がった。

店の奥には何度か入った事があるので迷う事なく霖之助が居るであろう台所へ向かう。
案の定そこにはフライパンに悪戦苦闘する霖之助が居た。

フライ返しを使って中身をひっくり返そうとしている様がどうにも上手くいっていないようだった。
その後もフライパンを振ったり菜箸でいじくったりしているようだったが
上手くいっている様子は欠片もない。

気になってフライパンの中身を見てみると中身はひどい物だった。

「お昼御飯はスクランブルエッグなのかしら?それとも炒り卵?どっちにしても失敗ね」

彼の背後から呆れたように尋ねるアリス。
無理もない、フライパンの中にはバラバラになった卵が激しく自己主張しているのだから。

「なんだ君か、すまないね店の方に居てなくって。
 それから今日の昼食はオムレツの予定だったんだ、洋食でも習得しようと思ってね」

アリスは皮肉を込めて言ったつもりだったが目の前の男に効いている様子はなかった。
それどころか平気な顔で昼食はオムレツだなんて言ってくるのだから大したものだ。

「へーそうなの、でも私はオムレツを作る時、半円形になるように作るわよ?
 でも料理って人によって味付けとか見た目が変わったりするから
 霖之助さんの所のオムレツはこんな形なのかしら?」

「そんな事は分かってるよ、卵焼きと同じ要領だと思っていたんだがどうにも上手くいかなくってね。
 それよりも何の用件かな?買い物ならもう少し待って欲しいんだが」

どう考えても修復不可能な元オムレツを掻き混ぜる霖之助、
どうやら昼食をスクランブルエッグにでも変更したらしい。

「いいのかしらそんな言い方しちゃって?
 私がせっかくこの間のお礼にと思ってミートパイを焼いてきてあげたのに、
 その調子だとお昼御飯は残念な結果になりそうだけどもう知らないわ」

「それはとても困るな、この分だと昼食は君の言うような結果だからね。
 それよりもこの前のお礼と言うと外の世界の生地の事かい?
 あれの事なら別に気にする必要は無いと言ったはずだが、結局は全額払ってもらうわけだし」

彼なりに申し訳ないという態度を必死に表す姿に思わず意地の悪い笑みがこぼれる。
本当に面白い人物だ。

「いいのよ何もしないままだったら借りを作っちゃうじゃない、私ツケとか嫌いなのよ」

「そうかい、その心がけがもう少しでもこの店の客に伝わるといいんだが」

「無理な話ね、恨むのなら妙な連中と仲良くなった事を恨むのね」

「どんな名刀でも縁は切れないものさ、
 そんな妙な連中でも付き合いがあればいい事があると僕は信じてるよ」

言っている事は強気だがフライパンの中身については諦めたようだ、
用意しておいた皿に出来たての『オムレツ』を盛っている。

卵がパラパラで一つ一つが分離しているオムレツなど見た事はないが。

「ホントに和食以外は駄目なのね、
 貸してみなさいオムレツを作れないようじゃ洋食なんて端から無理よ」

見かねたアリスが霖之助の手からフライパンを受け取る、
彼も観念したのか渡してほしい素振りを見せると素直に渡した。
まずはフライパンに付いた焦げ等を落とさなくてはいけない、
アリスは流し台に向かい水とたわしを使って傷が付かない程度に擦って落とす。
そこまで酷い焦げではなかったので数回水を流すと綺麗に落ちた。

「プレーンオムレツなら下味を付けた方がいいわ、それと牛乳は忘れちゃダメよ」

喋りながらもボウルを取り出し、
片手で卵を割って塩コショウに牛乳を入れてボウルの中身ををかき混ぜる。

「それに貴方のはしっかり焼き過ぎなのよ、個人の好みによるかもしれないけど、
 中心が固まりきってない半熟の状態が良いとされてるのよ」

その間にも熱したフライパンの上でバターを溶かし火加減も調節する。
霖之助はそうした一連の流れに対して全て熱心に観察しているようだ、
時々相槌を混ぜつつ質問などをして来る。
初めはたかがオムレツ如きでここまで真剣になるものかと内心笑ったが、
こうして熱心に技術を吸収しようという様は嫌いではない。
そして何よりいつもカウンターに座って本ばかり読んで
ロクに客の相手もしない何時もの彼とは違ってやけに行動的なのが可笑しかった。

バターが完璧に溶けきったところでアリスはフライパンの表面に手をかざして温度を確認する。
そして彼女が適した温度だと判断するとボウルの中身のとき卵を静かに熱したフライパンに注いだ。
ッジュ!っという物が焼ける音と共に卵がフライパンの表面に広がり、
表面の黒色を卵の黄色が覆い隠す。

「火の調整もミソと言うわけか、固まり始めたら火力は落とした方がいいみたいだね」

「そうそう、私が言わなくても分かってるじゃない、
 確かにスピードが要求される作業かもしれないけどだからと言って強火で焼くなんて論外よ」

クイッとアリスがフライパンを持った手を振るだけで
フライパンの中のオムレツは形を崩すことなくひっくり返る。
完成まじかのオムレツからすり匂いははバターと卵の焼ける匂いでとても食欲をくすぐる、
同じ物が焼ける匂いでも先ほど霖之助が焼いていた『オムレツ』とは大違いだった。

「流石に手慣れているね、僕もそのくらい出来るようになればいいんだが」

「最初から出来る訳じゃないわ、料理自体は出来ない訳じゃないんだから日々の積み重ねよ」

そう言っている間にもアリスは出来あがったオムレツを皿へと移す。
後はパセリを添えたりケチャップをかければ完成だ。
ご丁寧にパセリは沢山あり、ケチャップも大きめの瓶で置いてある。

「でも洋食をオムレツから始めようと考えたのはいい事ね、
 オムレツは熱の伝わり方、味付け、盛り付けのどれを取っても洋食の基本の塊なの。
 これが上手く焼ける頃にはある程度レベルは上昇しているわよ」

形の良いオムレツの上にスプーンでミートソースを掛けその上にパセリを載せる。

「ふむ、そうさせてもらうよ、でもすまないね昼食を作らせてしまって」

「いいのよ、お礼にミートパイを渡しに行くのから昼食を作ってあげる事に変わっただけだから」

「作るだけかい?」

「後片付けもして欲しい?残念だけど私は給仕じゃないの、それ位は…」

「いや、君の昼食はどうなっているのかと思ってね、まだなんだろう?」

「あらそっちなの?そうねまだ食べてないわ、帰ってから適当に仕度するつもりだけど」

「だったら君もどうかな?昼食」

思いがけない霖之助の言葉に内心驚くアリス。
まさかこの男に商品の値引き以外に人に親切にするとは思わなかったからだ。
正直な話霖之助に言われるまで自分の昼食の事などすっかり忘れていたのだ、
当然自分の分の昼食の食材を用意している訳が無い、
ここでお昼を厄介になれるというのなら中々ラッキーだった。

「どうかな?なんて言っても作るのは私でしょ?」

「それはそうなんだが……まぁ今度値引きをするという事で」

「なにそれ、まぁ別にかまわないわよ、
 今日はお礼をしに来た訳だし少しぐらい貴方に付き合ってあげてもいいわ」

言ってから少々棘が言い方をしてしまったと後悔する。
ここは昼食に誘ってくれた事に対して素直にお礼を言うべきところなのに、

「そうかい、それは良かった悪かったね引き止めるみたいで。
 僕はテーブルの用意でもしてくるよ、食材は好きにしてくれてかまわないから」

嫌な顔でもされると思ったアリスだったがとう霖之助は平気な顔をしていたのでほっとする。
それと同時に親切にされた時に素直になれない自分が恨めしい。
人里で人形を褒められた時もお茶会に誘われた時も服装をほめられた時も、
いつもいつもアリスは憎まれ口やつっけどんな態度で帰してしまう。
当然そうやって返された方は嫌な顔をするか言葉を濁すばかりだ。

「ありがとう霖之助さん、お昼ちゃんとしたものにするから」

霖之助が出て行き一人になった台所で誰に言うでもなくそう呟いた。
もしかしたらそれが彼女なりのお礼の言葉なのかもしれない。







二人分のオムレツにミートパイが向かい合って並び、中央にはキャベツのサラダが盛られてある。
あれから四半刻程で食事の準備が出来た。
野菜は台所のものを適当に使っただけだが中々新鮮だった。
気になって聞いてみたら店の裏にある畑で今朝とれたものらしい、中々良い出来だ。

「紅茶でよかったかな?君の好みなら紅茶を選ぶと思ったんだが」

今のテーブルの上へ配膳をし終えたアリスに霖之助が話しかける。
手に持ったトレーからは湯気が出ていて彼の言葉通り彼が紅茶をいれて来た事が分かった。

「えぇ、それで結構よ。でも紅茶ぐらいなら言ってくれれば私がいれたのに」

「流石に全部用意してもらうのは悪いからね、砂糖とミルクは?」

「要らないわ、いれた人の腕前が分からなくなるもの」

二人分の紅茶が食事の傍らに置かれると二人は向かい合って座る。
廊下に近い方に箸を持った霖之助が、奥の方にナイフとフォークを持ったアリスが向かい合う。
霖之助の箸はこのメニューには些か不似合いだが
こちらの方が使いやすいと本人が言うので仕方ないだろう。

「いただきます」

「はいどうぞ、残さないでね」

まず最初に霖之助はオムレツの方に手をつける。
半熟なので箸では持ちにくいのか皿の方に顔を近づけて一口一口、口へ運んでいる。

「フォークとかスプーンの方が使いやすいのに、それでどうかしら?味は」

「あぁ美味しいよ、熱の通り具合が絶妙で不思議な触感を醸し出してる、流石だよアリス」

「ふふ、ちゃんと他のも食べてね、特にミートパイは朝早くから作った力作なんだから」

普段なら外の世界の道具を説明と長ったらし
蘊蓄以外にあまりよく動く方でない舌がよく回っているようだ。
一口、口にしては感想等を言ってくる、それも嬉しそう顔でだ。
作った方にとって作った料理を無視して会話に走られるより作った料理について会話してくれる方が断然嬉しい。

「貴方ってホント変ってるわ、何時もは本ばっかり読んでたり
 訳の分からない理論や無駄に長い蘊蓄を語ったりする癖にこんな時は子供みたいね」

「誰だって美味しい料理には子供になるさ」

「聞いたことないわよそんな事、ホントに変わってるわ貴方」

呆れながらも口元は緩んでいる、こういうのも悪くないのだろう。
アリスは霖之助がいれてくれた紅茶のカップを手に取りそのまま口へと運ぶ。

(あれ?………美味しいじゃない、前はあんなに……)

紅茶を一口、口に入れた時点ですぐに異変に気づいた。
そうその紅茶が美味しいのだ、それも凄く。

「気に入ってもらえたかな?」

「え、えぇ。思った以上に美味しいじゃない、前はあんなだったのに」

あんなとは以前の霖之助がいれた紅茶の事だ。
以前人形についての議論で長話した時に一度彼のいれた紅茶を飲んだ事が
あったがあまり美味しくなかった。
いやハッキリ言って不味かったのだ。
茶葉を入れる時間が長いせいで渋みが強く味も濃過ぎた。

「練習したんだ、紅魔館のメイド長なんかが詳しいから教えてもらったよ
 どうも緑茶と違って熱いお湯を使った方がいいみたいだね、それと時間も重要らしいね」

「はぁ、意外と負けず嫌いなのね」

呆れたような口調だが本心は美味しい紅茶の事もあり本気で彼に呆れているわけではない。

「そうでもないよ、ただ紅茶ぐらいいれられなきゃと思ってね」

「そう言うのが負けず嫌いなのよ」

今度は切り分けたミートパイ手を出し始めた霖之助を上目で見ながら
自分も同じようにミートパイを口にする。
家で味見した時と同じ味だが自然と頬が緩む、目の前の霖之助も同じようだ。

思えば最近料理を誰かに御馳走した事なんてあまりなかった気がする。
一人で作って一人で食べ一人で片付ける、そんな言葉かり繰り返していた。
別に人形達との生活が空しい訳ではない、
もしアリスの生活を空しいと言う者がいればそれは彼女にとって大いに失礼だ。

今日は連れてこなかったが、朝起きる時も外へ出かける時も夜寝る時も、
彼女の人形達はいつも一緒だ。
人形一つ一つが彼女の家族であり親友なのだ、だがその家族達も一つだけ出来ない事がある。

それが食事だった。

(他人と食事するなんてどれくらいかしら、案外悪くないものね)

美味しい物を食べればどんな捻くれ者でも心が緩む。
誰かととる食事は張り詰めていた物を一気に洗い流し
その日の疲れを洗い流せる気が今のアリスにはした。

「ふふ、美味しいかしら?霖之助さん」

「さっきも味の事は言ったが美味しいよ、洋食で君に追い付くのは当面無理そうだね」

「じゃぁもっと料理を研究してみる?」

「どうやって?里に行けば洋食屋ぐらいはあると思うが…」

「そうじゃないわ」

ぶんぶんと首を横に振る、どうやら彼は気づいていないようだ。

「今晩何が食べたいかって事よ」

彼女に新しい楽しみが出来かけている事に。


あとがき
あぁ次はチル霖だ……
やっぱりハードル高い!!

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