十四朗亭の出納帳

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十四朗

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二つの紅白

巫女は長生きするか早死するかのどちらかって、
中々オイシイ設定だと思う。
ちょっと思いついてカタカタ書いてみました。
結構巫女の設定は好きですよ。



『二つの紅白』

霖之助









「私って巫女である事を辞めてしまったら何が残るの?」

「何って、なんだい?」

「本当に何がって意味で? ただの女になって終わりなのかしら。
 本当にただそれだけでおしまいなのかしら。綺麗さっぱり何事も」

「そりゃあ、交友関係だって今と変わるだろうね。
 妖怪の友人達とは自然に会わなくなるだろうし、今よりも人間の知り合いが増えるだろう。
 でも、それでいいじゃないか。君は元々人間なのだから」

「私ってね、たくさん妖怪を殺したのよ?
 それはもうたくさん。その死体で山ができるんじゃないかってぐらい。
 そんな人物が普通の人間と同じ様に暮らせるのかって話」

「君らしくもなく、普通な疑問だね」

「普通になるのなら普通な疑問を抱くのが普通でしょう。
 アナタが思っている以上に博麗の巫女で無くなるというのは劇的な変化なの。
 住処を引っ越すとか引っ越さないとか、そんな同一境界線上の話じゃない。
 陰陽とか、プラスマイナスだとかもっとハッキリとした事なのよ」

「ハッキリとした変化が怖いのかい?」

「怖いというより不思議なの。
 それしか知らない人物が変われると思う?
 何事もなかったかのように普通の生活を享受できると思う?
 私は思わない。思わないからこうしてアナタに聞いているの。
 今まで一時も普通の規範に触れたことのないアナタに」

「僕の価値観が君に一致するとは思えない。
 半妖は常に半分半分で世界を見るから。
 僕の半分が君の半分に一致したとしても、それは半分でしか無い。
 半分だけ一致しても意味なんて無いじゃないか」

「それで構わないわ。半分だろうと全部だろうと、一つとそれ以下であるかの違いよ。
 一つで完全無欠に永遠なんてものは存在しないもの。
 私としては多分、私の心に最も近しいであろうアナタの意見を聞きたいの。
 簡単なことじゃない。何が残るか、何が残らないのか。それだけ言ってくれればいいんだから」

「簡単そうに思えるけどそれは僕に取ってとても難しい事だ。
 僕は巫女である君しか知らないから、君が巫女で無くなった時の事なんて想像できない。
 けれども、これは僕の希望的な意見だけど、君はそれ程変わらないんじゃないかと思う。
 巫女であろうとなかろうと、君はお茶を好み、晴天を愛し、星空を美しいと言う。
 そういった人間性ってものは役職に縛られないものだろう?」

「駄目よ、アナタ理解していないわ。
 根本的にアナタの思っている事と、私が思っている事は違うの。
 お茶を好み、晴天を愛し、星空を美しいと言ったのは博麗の巫女としての私なの。
 博麗の巫女で無くなってしまった私はもう、
 お茶を好まないし、晴天なんて嫌いだし、星空を美しいとも思わなくなる。
 きっとそうなの。そういう風に出来ているの」

「分からないな。君の言うことが」

「やっぱり、アナタも駄目ね」

「君は言動が天邪鬼すぎるんだ。
 ああ言えば反対の事を言うし、こう言えばまた反対の事を言って。
 今だって僕に賛同して欲しいのか否定して欲しいのか。
 よく分からない」

「分かって、それはとても簡単なことだから」

「どれくらい簡単なんだい?」

「満月が出ている雲一つない夜空で満月を探すぐらい簡単なことよ」

「……君は寂しいんだ」

「違うわ。全然とは言えないけど、半分ぐらい違うわ。
 半分って言うのはアナタのその言葉を聞いて私は寂しくなったから半分。
 ハーフって不思議ね。私を半分ぐらい寂しく出来るのだから」

「言ってくれよ全部。
 そうしたら僕は君を半分くらいは嬉しくさせることが出来るかもしれない。
 言わなければ分からないだろう。
 僕はその他大勢の人と同じく人間の心なんて読めやしないんだから。
 言葉で言ってくれないと分からないだろう」

「言葉ってものは思いの外不便なの。
 それだけで完璧に意思疎通ができるって思っているといつかしっぺ返しを喰らうわ。
 だから言わないでアナタが自分で分かるまで待たせてもらうわね」

言葉の終わりに彼女の長い髪が風に弄ばれた。
巫女服の裾や袖ががひらりひらりと舞い、視界に紅白が揺らめく。

僕は今まで話していたのにろくに顔も合わせていなかった事に気付き、
やっと彼女の顔をじっくりと見つめた。

僕よりも頭一つ分小さい背丈。
纏められること無く腰の当たりまで伸びた黒髪は、
陽の下にあってもその闇夜を讃えたような黒さを少しも失っておらず、
彼女の何者にも染まらない我を示しているようだった。

「早くしてね、ちょっと長くは待てないの」

酷く悲しそうな顔で彼女はそう言った。
僕は言葉の意味を飲み込むよりも、彼女の表情が気になってそれを分かろうとした。
けれども一向に僕の頭は理解しようとしない。
彼女の憂いが僕には分からない。どうして、彼女は今にも泣き出してしまいそうなのだろうか。

それが僕には理解し難いものとなってのしかかり、どうしようもなく頭の働きを鈍くしたので、
仕方無しに彼女の言葉を飲み込んだ。
それはそれで大変な意味を持つ言葉だったけれど、
僕には彼女の表情に隠された真意よりも重要な事に思えなかった。

「辞めるのかい? 巫女」

いきなりこんな話を持ち出してくるからまさかとは思ったが、やはりそういう事らしい。
正直な話僕はそんな事をこれまで考えたことも無かった。
巫女としての彼女が余りにも型にはまっていたから、
気付きもしないで僕は今まで過ごしていたのだ。

「時期だから、多分年内には。
 それで私は博麗じゃなくなるの。
 物心付いた時から博麗だった私は、初めて博麗以外の存在になるのよ」

「新しい自分を見つければいいじゃないか」

「見つかればね。 
 その新しい自分は妖怪の死体を作るよりも素敵な自分かしら」

「きっと素敵だと思う」

「どれぐらい?」

「幻想郷で一番高い場所から見下ろす風景よりも素敵だと思う」










「霖之助さん」

「なんだい霊夢?」

「私って巫女である事を辞めてしまったらどうなっちゃうのかしら?」

「どうって、どういう事だい?」

「つまり博麗霊夢がただの霊夢になったらどうなるのかなって。
 霊夢なんて勘のよさそうな名前が残ってそれだけなの?
 本当にただそれだけでおしまいなのかしら。綺麗さっぱり何事も」

「そりゃあ、交友関係だって今と変わるだろうね。
 妖怪の友人達とは自然に会わなくなるだろうし、今よりも人間の知り合いが増えるだろう。
 でも、それでいいじゃないか。君は元々人間なのだから」

「私ってね、たくさん妖怪を殺したのよ?
 それはもうたくさん。その死体で山ができるんじゃないかってぐらい。
 そんな人物が普通の人間と同じ様に暮らせるのかって話」

「霊夢」

僕はぴしゃりと霊夢の言葉を遮る。
これ以上先を言われたらまたあの時と、彼女と同じになってしまう。
それはまっぴらごめんだ。同じ過ちを繰り返すのは好きじゃない。

「それは随分と後の話だ」

「後と言ってもいつか来る時でしょ? 
 それが遅くても早くても変りないわ」

「ごもっともだ。けれど、その話題だけは好きになれない」

「どうして?」

「巫女で無くなったら、死んでしまいそうな言い方だからだ」

「死なないわよ、巫女を辞めたぐらいで」

「はてさてどうかね。僕にはそのように聞こえたけど」

「お酒と料理が美味しくて、目が見える内は死にはしないわ。
 まったく、しらけちゃったわ。
 この話はいいから何かお茶菓子をちょうだい」

「はいはい」

僕はため息混じりに笑いながら、立ち上がってお茶請けが入った戸棚を漁る。
戸棚の中から煎餅の入った缶を見つけると、それを霊夢の目の前へ置いて食べるよう促した。

「お煎餅がある内は好きよ」

「どれぐらい?」

「靄の掛かった満月ぐらいは。霞月って素敵よね」

「あぁ、いいね霞月」

カウンターを挟んで対面する形で座る霊夢の身長は僕よりも頭二つ分半は低い。
艶のある黒髪を赤いリボンで一纏めにしていて、一見活動的な印象を与えるが、
不思議と博麗霊夢が他人に与える印象に『活動的』という印象は無いらしい。

若い癖に怠惰な目付きをしているからだろうか。
確かによく他人をジト目で睨むし、一日の大半を退屈そうな目付きで過ごしている。

それでは他人に与える印象も良くないし、不良巫女と言われても仕方がない。

だが僕はそれでもいいと思っている。
多分この霊夢の特徴は巫女を辞めても残るだろう。
霊夢は巫女で有ることに自己を依存していない。
これならば、おそらく巫女でなくてもやっていけるだろう。

煎餅を頬張る霊夢を見て僕は胸の中でひっそりと誓を立てた。
この子には同じ道を歩ませない。この子は一人の人間として最後まで生きてもらうと。
多分それは僕自身に。
あの時失敗してしまった僕自身に立てた誓いだった。

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