十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

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十四朗

Author:十四朗
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四畳半慧霖-紅い巨塔編-

浮気っぽくなってますが、霖之助の心は慧音一筋ですからね!
けど蓮子はそういう霖之助の思いとか、
二人の夫婦関係に遠慮しながらモジモジしてるといいと思う。

一方マエリベリーは自由キャラ街道爆走中。



『四畳半慧霖-紅い巨塔編-』



霖之助、蓮子、メリー、夢美、ちゆり







「宇佐美、手が止まっているわ」

意識の外から投げかけられた声が、宇佐見蓮子をあの日の繁華街から、大学の事務室へと引き戻す。
繁華街特有の料理や酒の匂い、人々の体臭はそこにはなく、冷房から静かに送り出される空気が、
肺から染みこみ、体へ浸透してゆくだけだ。

「すいません教授」

二、三回瞬きをし、蓮子は向い合ってパソコンに向かう岡崎夢美教授へ頭を下げた。
自称、他称共に平行世界から来た女で通っている岡崎は、鮮血よりも紅い髪の毛を背中の方で三つ編みにして、
その髪と同じ色の紅い服を身に纏った姿で、呆けっぱなしの蓮子を見つめていた。

「手を止めるのはいいけど、その分あなたの拘束時間が延びるだけよ。
 平均して五分に一回は手を止めているから、貴方の作業速度だと大体……」

「分かりました、分かりましたから! 大丈夫です、もう手は止めません」

「ならよろしい。本当はレポートを期限内に出す方がもっとよろしいんだけどね」

「耳が痛いです」

レポートの提出遅れ常習犯の宇佐見蓮子に対する罰。
という名目で蓮子が手伝わされているのは、
岡崎が受け持っている講義に関係した資料の纏めや、その他事務的な情報の纏めだ。

本来こういったものは全て各教授か、その助手が溜めない様に片付けるのだが、
岡崎はこうしたものを片付けるのが大の苦手で、
蓮子の様なレポートの期限を守らない学生や、
試験の成績が芳しくなかった学生を捕まえては手伝わせてる。

「それにしてもどうしたの宇佐美?
 いつもの貴方なら、レポートはやらない癖にこういった雑務をこなすのは早いじゃない。
 それがらしくもなく手なんて止めちゃって。
 これなら遊びまわっているちゆりを机に縛り付けて手伝わせた方が早いわ」

「はい、ちょっと具合が悪くて。
 お腹が痛いし、頭も痛いし、胃は荒れてるわ、腰痛も酷くって。
 あ、ついでに関節も痛むんです」

「それはまぁ、良く舌の回る病人ね。
 この仕事が終わったら医務室へ言ってきなさいな」

「出来れば今行かせて欲しいんですけど」

「それだけ喋れれば無問題よ。
 誰も戻ってこないブーメランを投げたりはしないわ」

皮肉めいた笑みを浮かべた岡崎は、
立ち上がって備え付けのコーヒーメーカーの所まで歩くと、
ドリッパーの中へ今時珍しい本物のコーヒー豆を投入した。

殆ど全ての食物が合成食物として生産されるこの時代において、
値段は張るながらも本物の食物を買い求める人物は存在する。
目の前の岡崎がそうであるし、その他に何名か同じ趣向の人間を知っている。

合成食料の何が気に入らないかは人それぞれだが、
このご時世、本物の食料だけで食い繋ぐのは大変な事だ。
幸い岡崎はそれ程熱心な本物主義ではないようで。
コーヒーと紅茶には拘るが、後は大学の食堂なり近くのレストラン等で食事を摂ったりしている。

そうでなければ、こうして集団の中で教鞭を取る事なんて出来る訳がない。

「それで、どうして手が止まるのかしら?」

「だから具合が悪いんですって」

「ふーん、そう。心の具合が悪いのね」

漂うコーヒーの香りと共に岡崎が運んできたのは、
蓮子の心の隙間をピンポイントに突く言葉だった。

どきりと一瞬鼓動が高くなり、嫌な感触が喉元を過ぎる。
妙なのは普段の物言いだけにして欲しいと思いながらも、
岡崎からコーヒーカップを受け取ると砂糖も入れずに口を付けた。

「図星ってとこかしら」

「大外れです。教授って絶対探偵になれませんよ」

「どちらも理で物事を明らかにするのは同じだと思うけれど」

「全然違います。それにやたらめったら科学で証明しようとする人は最初の方で殺されちゃいますよ」

「あら、なんでもかんでも科学で証明しようと思わないわ。
 例えば魔法とか。アレって科学で説明しようがないでしょう」

「教授の言う魔法って言うのは一般的な価値観と隔たりがあるんです。
 上手く説明できないけど、なんていうか教授は魔法そのものを否定しないじゃないですか」

「それはそうよ、だって魔法はあるもの」

「物理学者が言っていい言葉ですかそれ」

「いいのよ、だって私は比較的よく物理学者しているだけなんだし」

ため息をコーヒーカップに落としてまた一口、熱いコーヒーを啜る。
季節は真夏だが冷房に冷やされた体にはこのぐらいが丁度いい。

つくづく得体の知れない女性だ。
話せば話す程、正体というものが靄の中に消えてゆくようで、言い表せない不信感を募らせる。
もし同輩なら率先して関係を持ちたくないタイプだ。
得体が知れず、神出鬼没で、人を喰ったような話し方をして。
他人をここまで不安定にさせる性格もそうそう無いだろう。
もし仲良くしましょうなんて言われたら問答無用で首を横に振る。

外見上の年齡は蓮子とそう変わらなさそうなのに、
教授という職に就いている岡崎の事を、蓮子は殆ど何も知らない。
正確な年齡も、住んでいる場所も、出身地も、家族構成も、好きな食べ物も。
唯一知っている事は合成でない、本物のコーヒー豆を使ったコーヒーを愛飲しているという事で、
おそらく赤色がが好きであろうという予測ぐらいだ。

それ以外にこの並行世界から来た女について知っていることはない。
特に知ろうとも思わない。
知ったところで蓮子に特はないし、岡崎について詳細が分かっても共感できる事なんて何一つ無いだろう。
そういう女なのだ、岡崎夢美という女は。

それはある意味、最も孤独であるという事を意味しているのかもしれない。
だが繰り返すようだが、彼女が孤独であってもそれから救い出す術を蓮子は知らない。
根本的な部分が自分達とは違う以上、自分達と同じ様に接するだけでは意味が無いだろう。

「まぁ、貴方が何でもないって言うのなら何でもないんでしょうね。
 それじゃあ、次は終わりまできちんとやってね」

「了解しました」

岡崎の言葉に押されて、キーボードを叩き始めたが頭の中にはあの日の感触がこびり付いて離れない。
温かくて、大きな背中。
遅くも早くもない歩みに体を揺らされて、ネオン煌く繁華街をぼんやりとした意識で運ばれたあの日の記憶。
規則正しく動く鼓動が自身の鼓動と重なって、胸がもやもやする。

この感情にはっきりとした答えはまだ出せていない。
それを自覚してからまだ日が浅いというのもあるが、
それに自覚してしまうと自分の中で決定的に何かが変わってしまいそうだから。

きっと自分はあの日以前の自分として慧音と霖之助に接することが出来なくなる。
この感情をうやむやのままにしておくのも嫌だが、
あの二人を友人として見れなくなるのはもっと嫌だ。

だからあの日の事はそっと胸の奥に締まっておこう。

今日は本来なら霖之助が経営している古道具屋へ遊びにいく予定だったが、
こんな気持ちではどんな顔をしていいのか分からない。
いつもはタイミングの悪い岡崎に、
この時ばかりはタイミングの悪さに感謝しながら手を動かし続けた。








「こんにちはー霖之助さん」

「こんにちはだぜ」

幻想郷で商売をした時から変わらない、静かな店の雰囲気を蹴破って、二人の女声が店内に入って来た。
片方はマエリベリー・ハーン。西洋風の優美な外見によく分からない内面を抱えた不思議な女性。
もう片方の背が小さく、金髪を両サイドで纏めた少女の方は霖之助の知らない人物だった。
水兵風の帽子とセーラー服。大きな金の瞳と、白い八重歯は低い身長と相まって随分と幼く見える。

「あぁ、いらっしゃい。蓮子は居ないみたいだね、それとそっちの娘は……」

「北白河ちゆりだぜ」

「です」

「いやさっぱりなんだけども。まぁ、いいか……」

「蓮子はちょっと用事ができて来れないみたいで」

「代わりに私が来てやったのだ。感謝するんだぜ、えっと」

「森近霖之助」

「そう、森近霖之助」

なんだか霖之助のよく知る人物と非常に口調が似ている。
その人物はここまで惚けてはいないが、
直情的な印象はどちらも似たようなものだ。

「それで、その娘とマエリベリーはどんな関係なんだい?
 予定では蓮子と一緒に来るはずだったんだろう」

「何に見えますか?」

「近所の子供のお守。もしくは親戚の子供のお守」

「どちらも外れですよ」

「霖之助は勘が鈍いのだぜ」

出会ってすぐの大人を気安く呼び捨てにする辺り、
この子は躾がなっていないなとぼんやり思ったが、そんな事を口に出せば話が違う方向へ向かってしまう。
とりあえずはこの子供が何処の誰なのかをはっきりさせなくてはならない。

「じゃあ正解は?」

「私が通っている大学の教授の助手」

「ほう。なら何で君が通っている大学の教授の助手が一緒に居るのかな」

「長いから助手でいいぜ」

「何でその助手が居るのかな」

「付いて来たんです、勝手に」

「勝手に付いて来たぜ」

「ところで君は何歳なんだい? 見たところかなり幼く見えるけど」

「女に年齡を聞くとは無粋な奴なんだぜ」

「じゃあ聞かないよ」

「もう遅い。そんなんじゃ嫁さんも貰えないな」

「あらちゆりさん。霖之助さんは結婚しているのよ?」

「なんと! 物好きが居たもんだな」

「あぁ、まったくね」

生意気な口に関しては諦めきったのか、
霖之助はそそくさと三人分のお茶を用意し始めた。

買っておいた饅頭の箱を開け、三つの湯呑みにそれぞれお茶を注いぐと、
店中に緑茶の繊細な香りが漂う。
茶葉が本物のお茶っ葉で無いことが残念だが、無い物ねだりをしても仕方がない。

霖之助は二人に着席と、お茶を勧めて自分も肩の力を抜いた。

「古道具屋だけあって色んな物が置いてありますね。
 どれも面白い作りをしていて、何と言うか心を擽られます」

「良い感性だね、マエリベリー」

「そうかー私は古臭く思えるぜ」

「君は現代っ子なんだよ」

「私は科学の発展に興味があるからな!」

えへんと無い胸を張って威張るちゆりの姿はとても微笑ましい。
口調といい性格といい、本当にどこかの誰かとよく似ている。

「あ、霖之助さん私お菓子用意してきたんですよ」

「悪いね。気を使わせてしまって。
 僕の方でも用意しておいたのに」

「いえ、お邪魔するんですからこれぐらいはしないと」

裏表なく笑うマエリベリーにあの日の面影は無い。
全てが冗談だったと思える程、今のマエリベリーからは不純なものを感じない。
いっそあの日見た事が全部霖之助の勘違いだったらこれほど嬉しい物はないのだが。

「ドーナッツをたくさん買ってきたんですよ」

「マジでいっぱいあるからなー凄くいっぱいあるんだぜ」

「もう、ちゆりさんったら。でも、お饅頭があるなら全部は食べられませんね。
 余ったら慧音さんへのお土産にでもしてあげてください」

そう言いながらマエリベリーは手に持った紙袋の中から、
ドーナッツ屋の箱を一つ、二つ、三つ、四つ、五つと取り出し積み重ねてゆく。
確かに彼女は『たくさん』とは言ったが、いくらなんでもこれは多すぎではないだろうか。
一つの箱にドーナッツが十個として、それが五箱……単純計算でその総数は五十個になる。

「あぁ、うん、慧音も喜ぶと思うよ」

「はい! 前に慧音さんと一緒に行って、
 慧音さんが美味しいって言ってくれたドーナッツ屋さんのドーナッツなんです」

「それはまた、気を使ってくれたようで」

「はい」と満面の笑みで返されても、このドーナッツの山がどうにかなる訳でもない。
慧音からマエリベリーは甘い物ならよく食べると聞いていたが、まさこれ程とは思っていなかった。

「そういえば蓮子の来れない理由ってなんなんだい?」

「提出物が遅れた罰に資料整理を手伝わされています」

「君は手伝わなかったのか」

「私は期限を守りましたから。そういうのって、遅れた人だけがやらないと意味ないでしょう。
 そうしないと不公平ですし、罰にもなりません。
 罰って言うのはその人の日常を乱すから罰になるんです」

「君は時々、蓮子に対して酷く冷たい時があるね」

「時々酷く冷たくなれるのが親友だと思いませんか?」

「分かる」

「なーマエリベリー霖之助ーお菓子食べてもいいか?」

お互い真剣な眼で真剣な話しをしていただけに、
ちゆりの言葉は溜まっていた肩の力が抜ける気分だった。
いや、肩だけではない。
マエリベリーに対して構えていた部分を丸々崩されたようだ。

霖之助は「いいよ」と言って、
自分もマエリベリーの持ってきたドーナッツの中からチョコレートドーナッツを取り出して、口にした。
程よい苦味と、しつこくない甘さが融け合う。

チョコレートを見ていると蓮子を思い出すなと霖之助は何となく思った。
カラーリング的なものもあるが、何よりも味から連想される特性が何となく宇佐見蓮子に似ている。
ビターなところもあるが、ところどころにロマンだとか夢だとか、そんな甘いものを含んでいる。

出来れば彼女もここに居ればよかったのに。
こちらに来てから初めて出来た、外の世界の友人。
それと会えないのは何となくだが寂しい。

「今日は道具とかに関するお話聞かせてもらっても?」

「聞きたいのなら話すけど」

「秘封倶楽部としては是非聞きたいです」

張り切った様子のマエリベリーは、霖之助が知っているマエリベリー・ハーンだった。
全てを見透かす様な気味の悪いあの目ではなく、澄んだアメジスト色をした瞳。
そうだ、こうでなくてはいけない。
重力が下に向かって働くように。マエリベリー・ハーンという人物はこうでなくてはならない。
決して彼女はそれ以外の何者でもあってはいけないのだ。

これで今日は肩の力を抜いて楽しくお茶ができる。
そしてこれからも。

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