十四朗亭の出納帳

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十四朗

Author:十四朗
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恋人達

過去に書いたレティ霖SS『春と共に去りぬ』『夏のお届けもの』からの続きものだと思う。
冬場でも早咲きの菜の花は花をつけるらしいです。
なんか最近見たニュースでそんな事を言っていました。

レティ霖はカップルが似合うと思いますよ!



『恋人達』









ファインダー越しから見える風景から、
被写体が居る空間だけに焦点を合わせてシャッターを押す。
被写体は早咲きの菜の花畑を楽しそうに散策する冬の妖怪、レティ・ホワイトロックだ。

ふんわりとした雪色の髪の上に白い帽子を乗せ、
女性らしい胸の出っ張りと緩やかにくびれた体には必要以上の厚着はしておらず、
スカート姿で菜の花畑を歩く彼女を見ているとまるで本格的な春が到来したのかと錯覚してしまう。

実際はそんな事もなく、まだ冬は継続している。
霖之助はコートにマフラーといったいかにも冬らしい格好だし、
それを嘲笑うかの様に吹き抜ける風は冷たい。
紛れもなく今の季節は冬なのだ。枯れた風が吹く厳しい季節。

人々は家のドアや窓を硬く閉じて、
必要以上に外へは出歩かず体を小さくして雪解けと暖かい日差しを待ち望む。

殆ど誰もが早く過ぎ去って欲しいと願っている季節だろう。
厳しく、静かで、冷たい。冬というのは罪人を裁き慣れた閻魔のように緩みないものだ。

「霖之助はこっちへ来ないの? 外から眺めるのも綺麗だけど内側から眺めるのはもっと綺麗よ」

「今行くよ」

こちらに向かって手を差し伸べるレティに誘われて霖之助は菜の花が埋め尽くす花畑へと足を踏み入れる。
花畑の土は柔らかく、何度か足を取られそうになったが、
それでもなんとかレティのもとへと辿り着くことが出来た。

「ねぇ、写真ばっかり撮って楽しいの? 
 アナタさっきからずっと写真を撮ってばかりじゃない」

「そうかな」

「そうよ、ずーっとアナタの目じゃなくてカメラのレンズが私を見つめているの」

「楽しいか楽しくないかで言えば楽しいよ。
 流れる時間の中で自分が残しておきたいと思う一瞬を切り取るんだ。
 写真が綺麗に撮れているかは現像するときになってみないと分からないけど、
 かえってその方が楽しみがあるからいいだろう?」

「私には分からないわ、その楽しみ」

近くの菜の花にそっと手をやって、
愛おしげにその花弁を撫でるレティにいつもの飄々とした態度はない。

一人の女性として飾らない態度でそこに存在している姿しか、
霖之助の視界には映っていなかった。

首からぶら下げたカメラを構え、
またファインダーを覗くとピントを合わせてカシャリと一枚。

シャッターの音を聞いたレティは「もうやめてったら」
と言うと苦笑混じりの表情で霖之助の持ったカメラを取り上げた。

「こんな事の為にアナタを誘ったんじゃないわ。
 私が知っているとっておきの場所に連れてきてあげたんだからちょっとは気の利いた言葉を言いなさいよ。
 じゃないと私、今年の冬は何も言わずに居なくなっちゃうわよ」

「別に構わないよ、君がいつ居なくなるかなんてすぐ分かるし。
 君は眠りに付く前になるとぼんやりしていることが多くなる。
 それでもってとんでもなくナイーブになったり。
 かと思えば僕を酒の席に誘って大笑いしながら酒を飲んだり。
 気づかれていないつもりかもしれないけど僕は君のそういうとこをちゃんと知ってるんだよ」

「冬の間によく店を訪れてくれる大切なお得意様だから?」

「冬の間、頼んでもないのにちょっかいを出してくる迷惑な客じゃない客だから」

「いじわる……そういう事、あんまり言わないでったら」

ぷいとそっぽを向いて花畑の中を歩き出したレティを霖之助は追いかけた。
少しいじめ過ぎたかと反省してはいるが、
こうして激怒しない程度に怒らせるのも楽しいと思っている霖之助が確かに存在している。

「私がどんな気持ちでアナタをここに連れてきたか分かる?」

「分かってるよ、その好意は嬉しく思う」

「だったらカメラのファインダー越しじゃなくて自分の眼で見て楽しんでよ。
 いっつもアナタは私の気持ちに気づかないで、ひゃあ!?」

足場の悪い場所で後ろへ視線をやりながら歩いていた為、
レティは足を取られ転んでしまった。
 
程よい湿気を含んだ土が体に付着しレティは悲痛な悲鳴をあげながらもまだ霖之助の方を睨んでいた。

「なによぉ、まさかこんな姿も写真に収めようって訳?」

「そこまで他人の神経を逆撫する才能を僕は持ち合わせていないよ。
 ほら、立てるかい?」

霖之助が手を差し伸べると土にまみれたレティの白い手がそれを掴んで立ち上がった。
男の体に比べて軽いレティのそれを支えて、
立ち上がったレティの頬についた土を霖之助は人差し指でぬぐってやる。

「悪かったね、あんまりにも無粋な事をして」

「謝るなんてらしくもない……でも、本当の事よ。
 今日はもうカメラは無しにしてね」

「分かった、今日はもうカメラは無しにする」

「じゃあ許してあげる」

そう言うとレティは両腕で霖之助の肩を思い切り押した。
当然霖之助はその力によって地面へ尻餅を付く形で倒れこんだ。

「のわ!?」と短く声が上がったが、
その声は冬の風が何処か遠くへ運んでいってしまった。

「これでね」

赤い舌を出してベーと片目を瞑って笑うレティはすっかり元の機嫌に戻っているようで、
それで安心した反面、本気でレティの機嫌を伺っていた自分に少し腹が立った。

先程の霖之助と同じ様に、
レティは手を差し伸べ起き上がるように諭す。

霖之助はその手を思い切り引っ張ってまたレティを転ばせ「油断しすぎだよ」と言った。
ほんのちょっぴりの出来心が生んだ、
子供らしい仕返しにレティがまんまと引っ掛かったのは意外だったが、
こんな事をする霖之助も霖之助だ。

「ちょっとぉ! 人がせっかく許してあげるって言ったのに何よその仕打ちは!
 アナタって本当に、本当に……本当に、ふふ……本当に子供っぽいわね」

怒りすら通り越して呆れ返ってしまったのか、
レティは腹を抱えて笑い始めた。

霖之助もそれに同調して同じ様に笑い始める。
本当に、可笑しくて仕方ない。

「ねぇ、店に帰ったらお風呂沸かしてくれる?
 着替えも欲しいし、アナタの淹れた珈琲も飲みたい」

「構わないよ」

「ねぇ、その構わないよって言うのも止めてよ。
 だってなんだか曖昧な返事じゃない。私の言う事にはハッキリとした言葉で返して」

「いいよ、お風呂も沸かしてあげるし着替えも用意してあげる。
 珈琲だってちゃんといつも通り淹れてあげるよ」

「それでよし」

二人で申し合わせたように立ち上がると、
花畑を後にして元きた道を引き返した。

土まみれの大人が二人、
冬空の下を歩くのはいささか滑稽な姿だったが、それも然程気にならない。

こうして彼女と過ごした冬もいずれは終わるだろう。
巡る季節が別れを運び、そしてまた冬と同時に再会を運んでくる。
決まりきった巡り合わせがこんなにも楽しいとは思わなかった。

とびっきりの楽しみが一つあるのなら苦手な冬も乗り切れそうだ。
忌々しく空に蓋をする分厚い冬の雲も、世界を閉ざしてしまう白い雪も、
彼女がやって来る前触れ程度に考えられるのならそれが何より幸運なことだ。

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