十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

プロフィール

十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
メッセ&スカイプは大歓迎です
SkypeID『Brassp905』


リンクはフリーなので
どなたでもどうぞ
もしご連絡いただければ高所から
イヤッホォォォォ!!します


PS3アカウント『auscam』
大体マルチ対応ゲームやってると思います。

バナー

Web拍手

Twitter

 

入店者

検索フォーム

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ゆかりちゃん7~9

ウェブ拍手のバックナンバーを纏めました。
ペドペドしい路線は変えずにいこうと思います

『ゆかりちゃん7~9』







『ゆかりちゃん7』






「りんのすけーぎゅー」

「ゆーかちゃん、ちょっと待ってくれ首が締まる。苦しい、割と本気で苦しい」

先程から霖之助の首元にぶら下がったままのゆーかは、
一向に力を緩めようとせずニコニコとした笑顔で首を締め付ける。

これは本当にマズいかもしれない。
子供なのに凄い腕力だ。自力で振りほどくのは無理だろう。

他にも方法は有るかもしれないがこんな幼い子供に手荒な真似はしたくない。
しかし、そう考えれば考える程彼女の拘束は強くなっていく。

次第に視界が霞み始めた。
呼吸が弱々しくなっていくのが自分でも分かる。
終わる、森近霖之助という物語が終わる。

「ごめんください。あの、少し訪ねたい事が……
 って、あぁ! 幽香ちゃん!」

「あ! めでぃー!」

「あ! じゃないでしょ本当にもう!
 いつも言ってるじゃない。お散歩に行く時は私から離れちゃ駄目だって」

状況はよく理解出来ない。
だが朦朧とする意識の中でも彼女が助け舟であると言う事は理解できた。

「うわぁ! 幽香ちゃんどうしたのその人!
 か、顔が土色になってるわよ」

「りんのすけにあそんでもらってるのー」

「遊んでない遊んでない! 幽香ちゃんそれ絶対遊んでないって!」

「りんのすけぎゅー!」

「駄目よ! 放しなさい! いいから放しなさい幽香ちゃん!
 す、すいません幽香ちゃんが……」

メディと呼ばれた少女が慌てて幽香を引き剥がすと、
霖之助は勢い良く噎せ返り、それが落ち着いたら大きく空気を吸った。

美味しい。普段吸っている空気がこんなにも美味しいものだったとは。

「ほ、本当に申し訳有りませんでした!
 うちの幽香ちゃんがその……あの……」

「気にする事は……いや、気にして欲しいけど大丈夫だよ。
 まだ小さな子供だけど随分力が強いんだね」

「はい、この子まだ力のコントロールが上手く出来なくって。
 すぐに強く力を込めちゃうんです。
 それはそうとお怪我は有りませんか?」

「あぁ、問題ない。えっと、君は?」

「申し遅れました。私はメディスン・メランコリーと申します。
 この子の保護者……役と言ったところです」

「僕は森近霖之助。この店、香霖堂の店主だ」

「ゆーか! ゆーかはゆーか!」

「…………とりあえず保護者が見つかってよかったよ」

「あ、はい。幽香ちゃんがご迷惑を掛けたかと」

「いや、そうでもないよ。元気が有って良い子だ」

殺されかけた事はあくまで口に出さない。
とりあえず全てを穏便に片付ける為、
霖之助はその事に関して口を噤んだ。

「そういう訳にも。後日またきちんとしたお詫びをさせていただきますね」

「本当にいいんだけれども……まぁ、そう言うのなら」

「ほら幽香ちゃん。店主さんにちゃんとさよなら言おうね」

「えーやだぁー! りんのすけとあそぶー!」

「ゆ、幽香ちゃん。あんまり我侭言わないで」

不服そうに頬を膨らませる幽香はメディの言葉など耳に入っていない様で、
トテトテと駆け出して霖之助の足元に抱きついた。

今度は脚を折られかけるかもしれないと警戒した霖之助だったが、
先程の強烈な力は伝わってこない。

代わりに幽香の体が小刻みに震えているのが分かった。

「やぁ! りんのすけとあそぶ!……うぅ」

「幽香ちゃん……」

「ふぅむ、参ったな。ねぇ、ゆーかちゃん」

「あそんでくれるの……」

顔を上げた幽香の目元に涙が溜まっている。
霖之助はそれを優しく拭ってやると、そっと抱き上げて頭を撫でた。

「僕も遊んでやりたいが、今日はもう無理なんだよ」

「やっぱりあそんでくれないんだ……」

「でも明日なら遊んであげられるよ。
 明日だけじゃない、明後日も明明後日も。
 僕はずっとここに居るから君がこの店に来れば遊んであげられる。
 だから今日は彼女の言う事をよく聞いて一緒に帰ってはくれないかな?
 良い子で居る君なら何時でも遊んであげるけど、悪い子とは遊びたくないな」

「ゆーか……良い子にするよ」

「よし、ならメディの言う事も聞けるね?」

「うん」

胸の中で大きく頭を上下に振った幽香をもう一度撫でてやると、霖之助は彼女を地面へと降ろした。
幽香は地面に降りるとすぐにメディの方へ向い、彼女の手を握った。

「子供の扱いお上手なんですね」

「昔、いや今もかな。何故か小さな子供の面倒をよく見るんでね。
 これぐらい慣れっこさ」

「そうですか。何だか思ったより優しいですね」

思ったより、と言った彼女の言葉を追求してみたくなったが、
長くなりそうなので止めた。

「お世話になりました」と頭を下げるメディに「ばいばい!」
と手を振る幽香を見送って霖之助はもう一つ大事な事を頭の中心に据えた。

さて、次は紫の問題だ。
自分が泣かせてしまった彼女を慰めてやらないといけない。

まずは何処かへ行ってしまった紫を捜すところから始めなければ。




『ゆかりちゃん8』







幽香とメディスンを見送った後、霖之助は早速紫の捜索を開始した。
卓袱台の下、押入れの中、倉庫の中等々。
風呂桶の中は先程沸かしたばかりの湯がまだ残っているので捜索の範囲からは予め除外しておいた。

霖之助は僅かな隙間も見逃さずに隈なく探した。
だが家の中に紫の姿を見つけることは出来なかった。

霖之助は一旦今まで戻ると卓袱台の側へ胡座をかいて座り、
腕を組んで考えた。

まだ探していない場所で尚且つ彼女が隠れそうな場所。
しばしの沈黙の後にある場所が霖之助の頭に浮かび上がった。

この騒動のそもそもの始まりである場所――幽香を見つけた縁の下。

霖之助はすぐ立ち上がると靴も履かずに庭へと駆け出し、縁の下を除く。
縁の下の光景が霖之助の視界に飛び込んできた時、とりあえず彼はほっと胸を撫で下ろした。

本当にとりあえずでしかないのだが。

紫は薄暗く、煤だらけの空間で小さく声を漏らしながら泣いていた。
肩が小刻みに震えていて、長い金髪は煤がついたせいで所々煤けていた。

霖之助は彼女をこんな場所からだしてやろうと外から手を伸ばす。
紫も霖之助の存在には気付いていたようで、
赤く泣きはらした瞳を霖之助に向けるとあからさまな拒絶の意を見せてそれを拒んだ。

「なによおじさま……ずっと、ずっとあのことあそんでいればよかったのに」

「あの子は帰ったよ。保護者の人が迎に来たんだ」

「ふぅん、そう。ならそれでよかったじゃない。
 でもおじさまはざんねんそうね。かわいいゆーかちゃんがいなくなって」

「ゆかり、僕は君に……」

「ちゃんをつけて」

「ちゃんをつけると幽香と同じになるよ?」

「……ならいい」

「よろしい。では改めて。
 僕はね、君に謝ろうと思って君を探したんだよ」

「うそばっかり。おとなはうそばっかりいってゆかりをだまそうとするんだから」

「本当だよ。僕の行動で君は悲しい思いをしたんだろう? 
 僕の行動のせいで君を泣かせてしまったんだろう?」

「ゆかり……ないてなんかないもん!」

力強く紫が抗議した。
だが言葉の所々がまだ震えていて、
彼女の言葉とは裏腹に、それは霖之助に紫が泣いているのだと言う事を教えてくれる。

「赤い目をしていて、頬を涙が伝っている状況で泣いていないと言う言い訳は厳しいな。
 とにかくほら、そんな場所からはすぐに出てきなさい」

「やだ……おじさまはゆかりだけのおじさまじゃないからやだ」

「君だけの僕か。難しい事を言うね。
 人は結局誰の所有物にもなれないのに」

「だって、すきなんだもん……
 ゆかりはおじさまのことだいすきなんだもん!
 ずっとゆかりだけにやさしくしてほしいんだもん!」

また紫の目頭から大粒の涙が零れ落ちた。
それを今度は隠そうともせずに紫は続ける。

「いけないことなのおじさま?
 すきなひとのそばにずっといたいっておもうのは」

「いいや、悪いことじゃない。ごく自然な事だと思うね。
 それでいい、好きならばそう思うのは当然だ。
 でもそう思うのは当然でもそれに自分の中で境界線を敷かなきゃいけない時がある」

「きょうかいせん?」

「あぁ、そうだよ。好きな人に好きだと言うのは結構だけど、
 時にはそれを我慢することも大事なんだ」

「むずかしいよぉう……むずかしいよおじさま。
 ゆかりはおじさまがゆかりいがいのおんなのことおはなしするのをみるとむねがくるしくなるの」

「じゃあその苦しさを堪えることから始めるんだ。
 それでその苦しさに堪えられたら……いつでも僕に甘えていい。
 分かったね?」

「うん」

「よし、じゃあそんな場所からは早く出てくるんだ」

紫はのそのそと縁の下から這い出るとそのまま霖之助の胸元に抱きついた。
腕に込められた力は強く、しばらくは離してくれ無さそうだ。

「おじさまぁ」

「案の定煤の匂いが酷いな」

「むぅ、おじさまそんなこというのー」

「分かった分かった、とりあえずお風呂に行こうか」

「おじさまとおふろ!」

泣き腫らした笑顔で笑う紫は何時もの彼女だ。

「ねぇ、おじさま」

「なんだい紫」

「なかなおりのね……えっとね……ちゅーして!」

「嫌だ」

「えぇー! なんで! あまえていいっていったじゃないの!」

「そでもそそれは嫌だ」

「ちゅー!」

「嫌だ」

「ちゅー! ゆかりとおじさまのしたからるの!」

「嫌ったら嫌だ」

腕の中でもがきながら抗議する紫を無視しながら、
霖之助は紫を抱えて風呂場へ向かう。

騒がしいけれど元通りになった二人の関係。
普段は煩わしく思うこともあるが、無くなったら無くなったで寂しいもの。

これはこれでいいのかもしれない。




『ゆかりちゃん9』







「おじさまあけましておーめーでーとう!」

玄関を開け放つ音が聞こえたと思うと次の瞬間には軽い衝撃が背中に訪れた。
いつも通りの小さな来訪者が新年の挨拶を携えてやって来たらしい。
とりあえず霖之助はそのままその来訪者をおぶさる形で受け止める。

「はい、明けましておめでとう紫。おっとっと、今日は晴着なのかい? 随分といい服を着ているね」

「うん、らんががみをむすんでおびをむすんで、それからそれから……」

「紫様、新年の挨拶は静かにするように言いましたよね?  
 それなのに香霖堂の前に来るなり走りだして」

「だってーおじさまとあうのひさしぶりなんだもん。 
 らんがずっとこうりんどうさんはいそがしいからあそびにいっちゃだめだっていうからー」

「師走は誰もが忙しいものですよ。
 改めて明けましておめでとうございます店主殿。ほら橙もしっかり挨拶をしなさい」

「えっと……あけましておめでとうございます森近小父様」

藍の大きな尻尾の影から小さい猫又の少女が顔を出した。
紫と同じくきらびやかな晴着に身を包んでいて、とても礼儀正しくお辞儀をした。

「おめでとう藍、それに橙。僕の方なら構わなかったんだけどね。
 どうせ独り身の年末なんてそんなに忙しくないし」

「そんな事を言うと紫様が甘えますのでお控えください」

「この時期の子供は誰かに甘えたい時期だよ」

「店主殿は子供に甘すぎます」

「よその子供っていうのには自然と甘く接してしまうものなんだ」

「本当、甘い半妖です貴方は」

藍軽くため息をついたが、心底呆れ返っているわけではないようだ。

「そうだおじさまおとしだまはー?」

「紫様、余り度が過ぎると私も怒りますよ」

「うぇ? だって、だって……」

「ちゃんと用意してあるよ、君の分も橙の分も。
 とりあえず上がったらどうだい? 立っ放しというのも何だし」

去年と変わらないやり取りを行っていると何だか今年も同じようにやっていけそうな気がする。
確証なんて何処にもない。あるのはそんな予感とそれが確かなものだと言える自信だけだ。
さて、新しい年をまた彼女達と始めよう。

Comment

管理者にだけメッセージを送る

Pagetop ]

Copyright (C) 十四朗亭の出納帳 All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。