十四朗亭の出納帳

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十四朗

Author:十四朗
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四畳半慧霖-飲み会編-

慧音と霖之助が外の世界に行ったらシリーズ。
メリーと蓮子がレギュラー化しそうです。
と言っても今回は蓮子と霖之助しか出てきませんが。

秘封倶楽部結構楽しいかもしれない……



『四畳半慧霖-飲み会編-』

蓮子、霖之助







広島への旅行から一週間ばかりが過ぎた。
相変わらず霖之助と慧音は小さな部屋でささやかな生活を営み、ひっそりと生活している。
何も変わらない生活。けれども二人の間にあった小さなしこりは取り除かれ幾らから二人の仲は自然なものとなった。
旅行に出かける前は「結婚しているのか?」と聞かれると少し考えてから「一応しているよ」と答えていたが、
今では「あぁ、僕には奥さんがいるよ」と答えられる。

着慣れない服が自分の体にフィットしてきた感覚と似ている。
慧音と霖之助が夫婦であるという事は二人にとって自然なものとなりつつあった。
飲み干したアイスコーヒーのコップの底に溜まった氷をストローでかき混ぜながら霖之助はそんな事を思う。

見渡すと駅前通りのオープンカフェにはカップルや女性同士の客、サラリーマン風の男等様々な客達で埋まり始めていた。
実際店の方から「相席の方よろしいでしょうか?」と尋ねられる程この店は賑わっている。
一応霖之助はこのカフェで人を待っているので心底申し訳ないと思いながらその申し出を断らなければならなかった。

霖之助は小奇麗な黒のスラックスに糊とアイロンがしっかり効いた半袖のワイシャツを着て席に座っていた。
胸元には煙草のケース、ポケットには携帯電話と財布に名刺入れ。
多分、他の客には外回りのサラリーマンに見えるだろう。
確かにそれと余り変わりはないのかもしれない。

先程まで霖之助は部屋に合うアンティークを見繕って欲しいと言う顧客の家に居た。
店からは電車で四駅程離れた場所に住んでいて、いつも店を利用している常連からの紹介された客だ。
しっかりとした門に囲まれた洋風建築の一戸建てで、それなりに裕福なのが伺える。
出されたコーヒーもこの店のコーヒーより美味しかったし、物腰もよくいる俺はお客様なんだぞ、
と言った傲慢なところのない穏やかな客だった。

居間にアンティーク物のレコードプレーヤーを置きたいということで、何かいいものは無いかと言うのがそのお客の相談だった。
その事は事前に聞いていたので、店にある、もしくは取り寄せられるレコードプレイヤーの写真を何枚かコピー用紙に印刷して持っていった。
この場合この世界では携帯端末にデータとして写真を送り、それを相手にも送るのが一般的なやり方らしいが、
霖之助はそういったやり方がいまいち好きになれないのでこのようにアナログな手段を使っている。
といっても幻想郷からすれば十分ハイテクな方法なのかもしれない。

紙に纏められた資料を見て顧客は少し怪訝な顔をしていたが「アンティークですからこういった紙媒体の方が風情があるでしょう?」
と言うと納得してにこやかに「そうですね。聞いていたとおり風変わりな方だ」と言葉を返された。

結局取引の方は纏まりそうだが、どの機種がいいか選びたいということで、資料だけを置いてその家を後にした。
それが今日の一つ目の予定。

そして二つ目が今ここで待ち合わせている人物と会って、ある物を受け取るのが本日二つ目の予定だ。
一つ目は仕事としての、二つ目はその仕事とは違うプライベートな予定。
だからこうして待っている相手が待ち合わせの時間に三十分以上遅れていても怒ったりはしない。
いや、霖之助の場合仕事上でも余程の事がない限り時間の事で憤ったりはしない。

ただ少しだけ暇だ。運悪く禁煙席に通されたせいか煙草も吸えないし、
今日は生憎文庫本も持って来ていない。
通りを挟んで向かい側には書店があるが、今この席を離れる訳にもいかない。

だから今の霖之助には通りを歩く人々の暑そうな顔を眺めながら、
自分には日陰が有るけどあの人達は大変そうだなと思う事しか出来ない。
だがそれも段々飽きてきた。
通りを行く人々は暑そうだという表情はしているがどれも皆同じに見える。
多分殆ど同じような事を考えながらただ暑さに弱りつつ歩みを進めているだけだろう。

動いている景色でも同じものばかりでは飽きてしまう。
これならまだ香霖堂のカウンターで停滞した空気が漂う店内を見つめている方がマシだ。

とりあえず霖之助は気晴らしにコーヒーをもう一杯お代わりすることを決め、近くを歩いていたウェイターに声を掛けた。
「ご注文をどうぞ」と笑顔で尋ねるウェイターに「コーヒーのお代わりを」と言おうとした時、
視界の端にこの退屈を創りだした張本人が入って来た。

紺色のパンツに胸元を少し開けた白いブラウス姿。
肩には小さなショルダーバックを掛けていて、頭の上には初めて会った時と同じ帽子を乗せていた。

霖之助は注文をアイスコーヒー二つとショートケーキ二つに変えて、こちらに向かってくる待ち人に軽く手を振った。
待ち人もそれに応えて軽く手を振るとやや駆け足気味で霖之助が座っている席に近づいてきた。

「ごめんなさい霖之助さん。えっと、色々あって、うん」

「随分と待った気がするけど君を責めたところで時間は戻らないからいいよ。
 今コーヒーとケーキを頼んだ、出るまで少し時間が掛かるかもしれない。なにせ混んでいるから」

「お昼過ぎですもの。ここは場所がいいからこの時間帯は仕方ないわね。
 それよりこの席灰皿ないの?」

「運悪く禁煙席に通された」

「あらま。まぁ、お昼過ぎだから仕方ないわね」

同じ理由で彼女、宇佐見蓮子は納得するとバックから日焼け止めのクリームを取り出して腕や首元に塗った。

れんこn


「油断するとすぐ焼けちゃうから困りものよ」

「少しぐらい焼けた方が健康的だと思うよ」

「嫌よ。だって日焼けは将来シミになるから。
 皮膚科で取り除けない事もないけど、通う羽目になるより通わない状態で居るのが一番、一番」

蓮子は日焼け止めを塗り終えると今度はバックから少し厚みのある茶封筒を取り出した。
封はしていない。ただ軽く口の方を折ってあるだけだ。

「はい、この間の写真。ごめんなさいね、私がフィルムカメラ使ってるから現像するのに時間が掛かって」

「急ぎでもないから構わない。それに僕もフィルムカメラが好きだ。
 だからこうして手間隙かけて現像した写真も好きなんだよ」

「つくづく懐古な趣味よねぇー霖之助さんって」

「懐古趣味じゃなきゃ古道具屋なんてやらないよ」

「それもそうか」
 
喋っている間に先程注文したアイスコーヒーとショートケーキがテーブルにやって来た。
赤いイチゴが瑞々しいがこれを含めてこの世界の食物は殆ど合成食材か機械的に養殖された物が殆どらしい。
始めはその事実に抵抗があったが、味も食感も本物の食材と大差ないので今ではすっかり受け入れている。

ただ広島で食べた天然物の牡蠣はやはり美味しかった。
時々あんな贅沢をするぐらいならいいかもしれない。

蓮子はアイスコーヒーにガムシロップだけを入れてかき混ぜると、
一番初めにショートケーキのイチゴを口に入れた。

「慧音さんは元気?」

「あぁ、相変わらずだよ。少なくとも波風が立つような状態ではない。
 風の少ない日の入江みたいに穏やかだ」

「ふふーん、大変お仲がよろいいようで。
 と言っても一週間かそこらで何が変わるって訳でもないわね」

一口だけアイスコーヒーを口に含んで蓮子がそう言った。

「そう言えば慧音さんと霖之助さんって幼馴染らしいけど、昔はどんな風だったの?
 今みたいに霖之助さんは物静かで、慧音さんもしっかりした女性だった訳?」

「そうだね、僕の方はあまり変わっていないと思う。 
 昔から道具が好きで良く分解や組み立てをして楽しんでいた。
 本も昔から同じ様なペースで読んでる」

「慧音さんは?」

「信じられないと思うけど今よりも人見知りが激しく泣き虫だった」

「嘘」

「本当。いつも僕の後ろにいておずおずと周りの様子を伺ってた」

「へーあの慧音さんがね」

霖之助も蓮子を真似てショートケーキのイチゴを頬張る。
今の言葉に嘘はない。
出身も家族の話も大抵嘘だが、二人の関係や昔の二人について嘘は言っていない。
他人に嘘をついて平気で居られるほど霖之助は根っからのペテン師ではないし、
なんだか彼女にはこう言う事を話しても問題ないと思えたからだ。

「僕と慧音の話はしたから次は君とマエリベリーの話を聞かせてもらえるかな?」

「私とメリーの話かぁ。してもいいけど特に面白くもないわよ」

「僕と慧音の話だって特に面白くはなかっただろう」

「ううん、面白かった」

「そうかい」

ストローでアイスコーヒーを意味もなくかき混ぜながら、
瞳を閉じて記憶を探り始めた。
先程まで動いていた口が真一文字に結ばれて、不動のまま時が過ぎる。

やがて蓮子が瞳を開いて、真っ直ぐに霖之助を見つめた。

「そうね、アレは確か大学の入学式の日だったわ。 
 形式ばった退屈な式が終わった後、帰ろうと思って席を立ったらメリーを見つけたの。
 それでね、なんだかそのメリーの姿が凄く気になってね」

「どういう風に?」

「どういう風にって聞かれると答えに困るなぁ。
 とにかくメリーが目についたの。ほら、メリーの容姿って目立つでしょう」

「確かに、どちらかと言えば目立つ方だね」

幻想郷ではメリー様な容姿はごく一般的な姿だが、こちらの世界ではそうもいかない。
長い金髪とどこか異国的な服装は嫌でも人の目を引く。
霖之助や慧音もそれなりに人の目を引く姿をしているので、そうした視線が向けられるのはよく分かる。

「上京したばかりで知り合いなんて居なかったから、特に入学式が終わってからの予定なんて無かったの。
 だから思い切ってその時にメリーに声を掛けたわ。
 マエリベリー・ハーンさん、こんにちは宇佐見蓮子よ。唐突なお誘いだけどもし良かったら食事でも行かない? ってね」

「どうして名前が?」

「自分の名前が書いた名札を胸に付けていたからよ。
 そしたらメリーは少し怪訝な顔をしたけど、了承してくれたわ。
 その後は二人で食事をしてお互いの事を話し合ったの」

「順序が逆だと思う」

「私自身そうだと思っているわよ。
 けどね、霖之助さん。私達には他の出会い方は無かったと思うわ。
 もしこの時私が声を掛け無かったら私達に次はなかったの。
 秘封倶楽部なんてサークルが立ち上がる事もなかった。
 霖之助さんと慧音さんに新幹線の中で出会う事もなかった。
 あの時私が声を掛けたのは歯車をはめ込むためなの。
 今こうして回っている日常を動かす為の歯車をね」

一息ついてコップに残ったアイスコーヒーを一気に流し込む。
蓮子の眼は楽しそうだった。
霖之助はこんな目を過去に何度か見たことがある。
自分の興味や楽しい事について語るときの眼だ。

「メリーの面白いところはね。何をしていてもおかしくないし、何もしてなくてもおかしくないところなの」

口元に笑みを浮かべて蓮子が言った。

「例えばメリーは毎朝ジョギングをしている。
 なんて私が言ったら霖之助さんはどう思う?」

「何となくだけど毎朝ジョギングをしているように思える。
 君の言葉だから信用する訳じゃなくて、彼女のイメージから想像するにという意味でだけど」

「本当はジョギングなんてしてない。
 でも私が今してないって言っても特に不思議には思わないでしょう」

「思わないね、気味の悪いぐらいに」

蓮子が口元に浮かべた笑みが悪戯に成功した子供の笑みに変わりつつある。
しかし言われてみれば本当にそうだ。
マエリベリーは何でもやっていそうで、何もやっていなさそうな存在。
限りなく無色に近い色をしている癖にしっかりとした自分の特色を持った人物。

霖之助の中でそれに思い当たる人物が一人見つかったが、余り思い出したくないので深く考えるのを止めた。

「でも僕は君もそのマエリベリーと同じ様に思えるよ」

「ん、私が?」

「君だって何かをしていそうで何もしていなさそうな存在だ。
 僕は君が毎朝ジョギングをしていてもしていなくても驚かないよ」

「ちなみにどっちだと思う?」

「していない」

「残念。私太りやすい体質だから毎朝走ってるの。
 アパートを出てすぐ近くを流れる河を川上に向かって走って、しばらく行くとUターンして来た道を戻る」

「ふぅん、通りで足回りの肉付きがいい訳だ」

「セクハラよそれ。しかも何、私の足が太いって言いたいの?」

「違うよ、健康的だって言いたいだけさ」

「まぁいいわ。霖之助さんの場合セクハラにもならなさそうだし」

彼女は元気な笑顔でケラケラと笑った。
釣られて霖之助も少し声を出して笑う。

面白い女性だ。
外の世界の住人らしく妙にさっぱりしたところがある癖に、考え方は幻想郷の住民と非常に似通っている。
マエリベリーもそうだが、こちらに来てから出会ったことのないタイプ。

「そうだ、今度四人でどこかに飲みに行きましょうよ。
 私よくメリーと飲みに行くから居酒屋は結構詳しいの」

「へぇ、ならご一緒させてもらおうかな」

「いつがいい?」

「いつでも。僕達は大抵夜は暇だから」

「じゃあ今晩とか」

「構わないよ」

「ホントに! うん、じゃあメリーに連絡するから霖之助さんは慧音さんに連絡してちょうだい」

やったー! と二つの腕を振り上げて蓮子は喜んだ。
それからすぐに携帯電話を取り出して、メリーへと電話を掛ける。

霖之助はそんな蓮子から目をそらしてまた大通りへ目を向けた。
相変わらず大通りは同じ顔をした人々が暑そうな表情を浮かべて、行ったり来たりしている。
その中に、少なくとも霖之助の見える範囲にメリーと蓮子の様な人物は居ない。

彼女達のように面白おかしい存在はどこにも居ない。

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