十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

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十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
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朱鷺のすみか 飲み屋編

去年の暮に始めた朱鷺のすみかシリーズ。
何だかんだでもうそろそろ一周年です。
いや、ホント早いもんですね。


『朱鷺のすみか 居酒屋編』

朱鷺子、霖之助、ミスティア、妹紅










「ミスティアーこんばんは!」

「あ、朱鷺子ちゃん。いらっしゃい」

「こんばんは、ミスティア」

「香霖堂さんもいらっしゃい。仲がいいですね、お二人でご来店だなんて」

「色々有って最近朱鷺子に構ってやれなかったから、久々にこうしてね」

「ふふ、そうですか。楽しそうね朱鷺子ちゃん」

「うん、とっても楽しいよミスティア」

ミスティアの店はまだ混んでおらず、屋台に設置されたカウンターは勿論。
屋台の正面に二つ設置された長椅子と長机にも客の姿は無かった。

おそらく霖之助達が今日初めての客だろう。
ミスティアの店のお客は主に妖怪だ、それに飲み屋としての面が強い。
少なくとも日が沈んでそう時間の経っていないこの時間帯から店に来る輩は余りいないだろう。

朱鷺子に余り夜更かしをさせたくないが為にこの時間帯を選んだが、
それがいい方向に転がった。
この客入りなら最初から最後までゆっくり静かに朱鷺子と食事ができる。

「ご注文はどうしましょう? いまなら早くご用意できますよ」

カウンターの向こうで人好きのする笑顔を浮かべながら串に捌いたヤツメウナギを刺していたミスティアが、
幾分柔らかな口調で尋ねてきた。
小豆色の割烹着に白い三角巾を被っていて、普段の格好に比べるとずっと大人びて見える。

以前朱鷺子を通して割烹着の注文を承った事がある。
それ以降ミスティアとは会う度に世間話をするような間柄となった。

印象としてはまず公私の区別が判然としている子だという事。
それから公私関係なく素敵な笑顔を口元に浮かべているという事だ。

プライベートの彼女はなんてことのない普通の妖怪として生活をしている。
時々住処の近くを通る人間を鳥目にして脅かしたり。
自分の好きな歌を気ままに歌って宵を過ごす。

ただこうして商売をしている時は別だ。
混雑時には火の出る程忙しくなるというのに、彼女に文句が飛ぶことは少ない。
どんなに忙しくても注文を聞き逃す事はないし、忘れる事もない。
肝心な物事を何時も聞き逃してすぐ忘れる朱鷺子にも見習わせてやりたいぐらいだ。
ついでにお客に対する笑顔も決して忘れない。
余裕があれば鳥目にする力を抜いた歌を謳ったりもする。

そんな事もあってミスティアのお店は妖怪だけではなく人間にも大好評だ。
歌の上手くて美人の女将が居るというだけでそれを一目見ようと男達が殺到するのだ。

彼女自身告白される事は珍しくないようだ。
ただ告白されても何時もの笑顔でこんな事を言うらしい。

「ごめんなさい、貴方のお誘いをお受けする事は出来ないの。
 けれどその気持とっても嬉しいわ。だからこの鰻はサービスしておきますね。
 今後ともお店の方をご贔屓にしていただけると嬉しいかな」

これを言うとどんな男でも恥ずかしそうな顔をして「はい」と頷くそうだ。
仕事だけではなくこういった事態にも事を荒立たせずに回避する能力にも感心する。
だがこの対応では断るどころか余計に恋心を擽る結果になるのではないかと霖之助は思う。

「霖之助ー注文していい?」

「いいよ、ただし注文しすぎないように」

「うん分かってるよ。貧乏だもんね」

「違う君が食べきれないからだ。言っておくけど僕は手伝わないよ」

「ぐぁー! 霖之助のケチ!」

横で反論する朱鷺子をよそに霖之助は最初に出されたお冷を一口だけ口に含む。
焼酎にヤツメウナギの蒲焼、基本的だが最初はこれだけでいいだろう。

「えーっとね、泥鰌の甘露煮とタニシの味噌煮でしょ。それからヤツメウナギ丼」

「僕は焼酎とヤツメウナギの蒲焼で」

「はい、今準備します」

元気よく返事してミスティアは先程串に刺したばかりのヤツメウナギを網の上に乗せた。

「朱鷺子」

「ん、何?」

「僕は手伝わないからね」

念の為もう一度釘を刺しておく。
霖之助の中で独自に設けたルールとして、
二回以上注意しても言う事を聞かなかったら叱るよう決めている。

注文する前に一回目の注意、そしえ今回の二回目の注意。
もし朱鷺子が食べ残した場合それなりに厳しいお叱りが待っているだろう。

「どうぞ、豚の角煮です」

「豚の角煮……ミスティア、僕も朱鷺子も豚の角煮は頼んでいないよ」

「はい、サービスです。この間香霖堂さんに安く圧力鍋を売っていただいたので、そのお礼に。
 あと新メニューの試食もお願いしようかなって」

「しっかりしてるよ。とはいえありがたく頂こうか」

霖之助は小鉢に練り辛子付きで盛りつけられた豚の角煮を箸で小さく切り取ってから口へと運ぶ。
甘く濃厚な味が肉の芯まで染み込んでいて噛むたびに旨みが溢れる。
肉は柔らかく程よい脂身とのバランスが絶妙だ。
率直な感想を述べるならば美味しい。

圧力鍋の力もあるが、純粋にミスティアの料理の腕が高いのもあって中々の一品だ。
これをメニューにすれば好評間違いなしだろう。

「うん、美味しい。お酒に合うように濃口だし食べやすい柔らかさだ。
 ただ一つ感想を述べるなら、やはりこの料理も甘い味付けだということかな。
 この店の主力で有るヤツメウナギの蒲焼が甘い味付だから、他の物も欲しいかもしれない。
 っと、これは料理とは無関係な感想だったね」

「いえ、参考になります。そっか、甘い味付けだけじゃ駄目ですよね」

「ただ辛子を側に添えるのは良い判断だったね」

今度は辛子を乗せて一口。
甘味に加えて辛子の風味と辛味が先程とは違った表情を覗かせる。

「ねーねー霖之助ー」

「なんだい朱鷺子?」

「私も食べていい?」

「……いいよ」

霖之助の袖を引っ張って上目遣いで問いかけてくる朱鷺子に、呆れ混じりの表情で返す。
まったくこの子は色気より食い気が強い子だ。
自分に正直と言えば正直だが、これでは余りにも素直過ぎはしないか。

「お、いいないいな。新メニュー? 女将さん、私もそれ欲しいんだけど」

背後から声がした。聞き慣れた声だ。
昔っからお節介焼きで通っている健康マニアの焼き鳥屋。
霖之助は振り返りもせずにその人物の名前を読んだ。

「妹紅か」

「そそ、妹紅さんよ。おっと、隣いい?」

「構わないよ。朱鷺子、少し席を詰めてあげてくれないか」

「うん。こんばんは妹紅」

「こんばんは朱鷺子。今日は霖之助と一緒で楽しそうね」

「楽しいよ。久しぶりに霖之助とお出かけだから」

「ふふふ~ホント可愛いなぁ」

妹紅は席に着くと朱鷺子の頭を優しく撫でた。
擽ったそうに「ぐぁ~」と声を上げ朱鷺子は身をよじる。

「慧音と上手くいってるみたいじゃないの。
 鈍感で他人の心なんて無関心なアンタにしては上出来じゃない」

「朱鷺子の前だ、あまりそんな話題を出すものじゃない。
 彼女とは……まだ元に戻っただけだよ。
 そう簡単に進めるほど僕達の間に横たわっている年月は短いものじゃないんだ」

「それが上出来だって事よ」

「よく分からない」

「アンタは長い間慧音をほったらかしにしておいた。
 別にアンタを一方的に責めるつもりはないけど、
 それでもその間慧音がその間に味わった思いを無しにすることは出来無い。
 けどさ、その辛さを幸せに変えてあげられるのはアンタだけなの」

出された豚の角煮を妹紅は霖之助と同じように頬張る。

「お、これ美味しい! 美味しいよ女将さん。
 柔らかいし、お酒に合いそうな味だし」

少しだけ真面目な表情をしていた妹紅はすぐに表情をお気楽な笑顔に変えてミスティアに豚の角煮の感想を述べた。
緩急の切り替えがハッキリしているのは昔から変わらない。

妹紅との付き合いは慧音と同じぐらい長い。
確か慧音の紹介で知り合ったのが始まりだったと霖之助は記憶している。
「私の友人にとんでもなく辺鄙な奴がいるんだが、ちょっと付き合ってやってくれないか?」
と言って彼女と出会った。

お淑やかな外見とは裏腹にさっぱりとした性格で、思ったことを何でも素直に言った。
時々その言動に不快感を覚えることはあったが、
彼女がそうして何かを率直に述べる時と言うのは大抵誰かの為に言っているのだと気付いた時その不快感は湧いてこなくなった。

彼女は他人の為に身を盾にすることの出来る女性だ。
そして何より慧音を家族同然の様に大切に思っている。

「丼に、タニシの味噌煮、泥鰌の甘露煮、焼酎、蒲焼です。はいどうぞ」

少し長い思考を出来上がった料理とミスティアが遮った。
そうだ、今はこうしてしんみりと思い出を眺めている時ではない。

「わぁ、えっとどれから食べようかなぁ」

「迷い箸は行儀が悪いよ。どれか一つに絞って食べなさい」

「でもでも、霖之助。やっぱりたくさんあると迷っちゃうよ。
 みんなみんな美味しそうだからさ」

「ねえ朱鷺子。私にもちょっとだけ分けてよ。
 アンタだけじゃ全部食べきれないでしょ?」

「えーやだよぉ。全部私の」

「心配しなくていいよ妹紅。どうせ途中でお腹いっぱいになって余らせるから。
 半分ぐらいは食べても問題ない」

「全部食べれるの!」

「はいはい、分かった分かった。ミスティア、妹紅にも焼酎と蒲焼を。代金は僕が持つ」

「お、霖之助にしては珍しく気風がいい……怖い」

「なんだ君は他人の好意を」

「だってねぇー朱鷺子も霖之助が優しいと怖いでしょ?」

「そう? 霖之助は何時だって優しいよ」

口の中に泥鰌の甘露煮を詰め込んだ朱鷺子はしれっとそんな事を言う。
子供のこういった恥ずかし気の無いところは羨ましいと思う。

「やーん! もうホントに朱鷺子は良い子ね! 
 うりうり、なでなでさせろー」

「やぁー! りんのすけぇ! 助けてよぉ!」

頭をがっちりと抱き抱えて撫で回す妹紅と、霖之助に助けを求める。
だが霖之助は助けない。
自分と慧音の仲を取り持ってくれた大切な友人だ。少しぐらい朱鷺子を貸してやってもいいだろう。

「泣かせない程度に弄るのなら構わないよ」

「え、ホントに? やったやった! ほれほれうりうり!」

「う、裏切り者ぉ! 霖之助の裏切り者ぉ!」

「ミスティア、粉山椒はあるかい? ちょっと蒲焼に振り掛けようと思って」

「有りますよ」

「ちょっと、本当に助けてってば! ひゃあ!? 擽ったい!」

朱鷺子の悲鳴と共に夜はどんどん深みを増してゆく。
少しだけ幸福な夜に乾杯をしたくなったが、する相手が朱鷺子に夢中なので諦めた。
昔となにも変わらない妹紅と、色々有って昔と変わってしまった自分。
黒と白の対比の様にそれは対照的なものだが、自分達は不思議な事にまたこうして隣り合っている。

霖之助と朱鷺子と慧音と妹紅。
アンバランスな四人組だが、なるほど悪くない。

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