十四朗亭の出納帳

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十四朗

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私達結婚しました

Twitterで発展した話題を元にSS書いてみたり。
最近慧霖ばっかり書いてる気がする。

幻想郷の結婚っていまだにお見合い結婚が主流な気がする。



『私達結婚しました』


慧音、霖之助










結婚等というものは自身にとってずっと遠い場所に有るものだと思っていたから、
時々霖之助は今の自分の状況が分からなくなる時がある。

五年前、霖之助はある女性と結婚をした。
何時までも独り身で居る事を見かねた霧雨の親父さんにお見合を勧められ、
当日まで相手を知らされず、半ば強制される形で見合い会場に行ってみたら、
そこに居たのは霖之助のよく知る人物だった。

見合い会場に居たのは上白沢慧音。
霖之助が霧雨の店で修行する以前からの知り合いだ。

慧音の方も会場に来るまで相手の顔を知らなかったらしく。
相手が自分のよく知る顔だと分かると少し驚いた後ほっと胸を撫で下ろした。
それから二人でどうやってこのお見合いをなかった事にするかを話し合った。

ただ、現在の状況が物語っている通りこのお見合いは無かった事にはならなかった。

何の気なしに霖之助が「まぁ、君とならそういうのも悪くないかもね」と言ったところから全てが変わってしまった。
先に言っておくとこの言葉は嘘でも冗談でもない。

慧音は古くからの知り合いだから知らない仲と言う訳でもない。
それに彼女は美人で器量が良くって家事も上手く博識だ。
彩色健美全てが揃った彼女を妻として迎え入れるのはそれなりに幸せな事なのだろう。

霖之助のその一言は本当に何気ない一言だったが、
その言葉に対して慧音は「何だそんな事を思っていたのか。私もそう考えていたとこだ」と言った。

「どうして?」

「別にお前を熱烈に愛しているという訳でもないんだ。
 お前だってそうだろう?」

「あぁ、そうだね。
 愛してるとかそんなんじゃなくて、君が妻として僕の側に居ても不都合なことはないし。
 何より君は良妻である条件を満たしていると思うんだ。あくまで僕の視点でだけど」

「私もそんな風に思っている」

「僕に良い夫の条件が揃っていると? 冗談が過ぎるよ慧音。
 僕はこの通り何よりも自分の行いを優先するような人物だ。
 家庭を持つには身勝手過ぎると思うけど」

「良い妻の条件と良い夫の条件は違う。とだけ言っておこう」

今でも彼女の言ったその言葉の意味が分からない。
だから霖之助は結婚して五年が過ぎた今でも自分が良い夫で有るなんてちっとも思っていない。

彼の認知している限りで、彼の生活は慧音が入って来たこと以外に特に変わりはないし、
店の経営だって五年前から横ばい状態だ。
つまるとこ霖之助は五年前から何も変わってない。
五年前どころか独立した当初から姿すら変わっていない。

その後二人は当初どうやってこの縁談を無かった事にする話ではなく、
結婚後の話を詳しく進めていった。

それは夢のなかで交わす言葉の様に現実感を欠いていて、
酷く軽いものだったように思える。

そしてその後二人は幾つかの段階を経て正式に夫婦となった。
霖之助は結婚式の時も自分が結婚をするのだという実感がまるでなかった。

ただ白い花嫁衣裳に身を包んで艶やかな化粧を施した慧音を見て「綺麗だよ」
と言った時妙に照れくさかった事だけは覚えている。

祝言から幾日が過ぎて、彼女の私物や花嫁道具が香霖堂に馴染み始めた頃、
ようやく霖之助は自分が結婚したのだという実感が持てた。

もうこの香霖堂は自分だけの店ではなく、自分と慧音の店だという事。
慧音が寺子屋や人里の行事以外で他人に名前を名乗る時に『森近』と言う性を使うと言う事。
朝起きたら隣におはようを言う人物が居るという事。

少し変化の有った日常を霖之助は大人しく飲み込んで自分のものとする。
悪くない。客観的に見れば十分幸せだと言える暮らしだ。

以前ずっと遠い所にあるものだと思っていた結婚と言うものは、
今の霖之助にとって最も近いもの。体の一部になった。

時々その体の一部に違和感を覚えるが、
それは稀な事だし今の生活を手放したいかと聞かれれば首を横に振るだろう。
あの日、慧音と霖之助は互いに「愛していない」とはっきり言った。

だが今はどうだろう。

男女の色恋と言った激しい熱こそ無いものの、
霖之助は慧音の事を大切な存在だと感じている。
今の自分の日常を構成する上で欠かすことの出来ない人物。

慧音の方もそう思ってくれていれば幸いなのだが、
今更面と向かってその事を聞くのは何だか気恥ずかしい。
あの日、花嫁衣裳を身に纏った慧音に「綺麗だよ」と言ったみたいに。








庭に植えられた松の木に蝉がとまっていた。
それも一匹や二匹ではない。
森中の蝉がとまっているのではないかと錯覚するぐらい沢山の蝉がとまっていた。

夏の強い日差しは縁側の屋根に遮られて霖之助のところまでは余り届かないが、
容赦なく日に焼かれている外を見ているとそんな気持ちも忘れてしまう。

木にとまった蝉達は短い生を謳歌する為に飽きもせず朝方から五月蝿く鳴いているので、
それも霖之助の暑いという気持ちに拍車を掛けた。

霖之助は胸元が大きく開いた甚平姿で縁側に腰掛け、
足元には冷たい井戸水で満たされたたらいが置いてあり、そこに素足を突っ込んでいた。
手に持った団扇を気だるげに振るが舞い込んでくるのはぬるい風だけだ。

夏のこういう日には飽き飽きする。
特に店の中でじっとしていると尚更そうだ。

だから店先に「庭に居ます。御用の方は庭まで」
と書いた書留をカウンターに残してここでなけなしの涼を堪能している訳だ。

「お茶が入ったぞ霖之助。まったく、商い中だというのに何だその体たらくは」

「いいじゃないか。これも僕なんだ」

振り返ると慧音が呆れた顔で佇んでいた。
手には麦茶の入ったコップが二つと、更に盛られたわらび餅。
予めきな粉が振られているようで、傍らに二つの爪楊枝が刺してあった。

「涼しい飲み物に、涼しいお菓子」

「買い物ついでに買ってきたんだ。丁度いいと思って」

「うん、とってもいい判断だ」

霖之助がにこやかに笑いかけると慧音も呆れ顔を止めにこやかに笑った。
それからお盆を縁側に置くと霖之助の右隣に腰掛け、彼と同じ様に水の張ったたらいへ足を入れた。

「お客さんは来たか?」

「いや全く。多分今日はもう来ないだろうね。
 きっとお得意さん達はみんな自分の家で自分の仕事に夢中なのか、暑さでバテてるかのどちらかだろう」

「そうか。じゃあ今日は静かだな」

「うーん、君がいる限りそうでもないかな」

「酷いな。私が口うるさい妻だと?」

「さぁてね」

霖之助は麦茶の入ったコップを手に取ると半分程一気に流しこむ。
それからわらび餅を爪楊枝で一つ頬張った。

上品なきな粉の味と口の中で震える触感。
わらび餅自体は何時でも食べられるが、その美味しさを強調する季節はやはり夏だと思う。

慧音も霖之助の言葉に対して特に追求する様子もなく、
霖之助と同じ様に麦茶を飲んでわらび餅を頬張った。

二人でこうして過ごしていると大した理由もなく満足な気持ちになる。
別に日常に刺激がある訳でもないが、その刺激の無さが嬉しく感じられる。

番の水鳥が静かに水面を泳いでいる光景を見ているみたいだ。

「夏も折り返しだね」

「そうだな。今年は台風や大雨が少ないせいか余り意識してなかったが、もうそんな時期か」

「騒がしい季節からまた静かな季節へ」

慧音が両足を動かしてぴちゃぴちゃと水面を揺らす。
普段の彼女らしくない子供っぽい仕草。

実際彼女はその印象とは裏腹に子供っぽい仕草をする事がよくある。
曇ったガラスに絵を描いたり、眠たい時に枕を抱きしめて布団から出てこなかったり。

殆ど無意識の行動だろうが、霖之助はそんな彼女を可笑しく思う。

慧音は飽きることなくその白くて細い足で水面を揺らし続けた。
霖之助はただ黙って、けれども表情はいくらか緩めて話を続ける。

「年が明ければ君とこうして暮らし始めて六年目だ。
 たいした事は出来ないけどまた二人で少し豪華な夕食もとろう」

「うん、いいかもな。お酒があると尚いいかもしれない」

「そうそう。寒いから熱燗がいいな」

慧音は霖之助の方に少し体を傾けた。
頭が霖之助の方に触れて、彼女の長い髪がさらりと垂れる。

霖之助も彼女の方に少し体を倒した。
まるで夫婦みたいだと自嘲気味に心の中で笑う。

夫婦そのものなのに、時々こうして触れ合うと改まってしまうのが可笑しいからだ。

霖之助は自身が彼女の言う『良い夫』になれただろうかどうかふと疑問に思った。
そしてそれを躊躇することなく慧音に尋ねる。

慧音は少し変な顔をしたが肩の方から上目遣いで霖之助を見つめて口を開いた。

「いい旦那様だよ霖之助は。
 私のする事に何でも堪えてくれるし、困った時は助けてくれる。
 何時でも店に居るから顔がみたくなったらその時にすぐ顔を合わせられる」

「だから時々意味もなく店の方に来るんだね」

「うん。霖之助は何時でも頼れる私の旦那様だから」

「そうか」

なんとなくあの時彼女の言っていた良い夫の条件と言うものが分かった気がする。

何時でも頼れる旦那様。

恥ずかしすぎて赤面してしまいそうな事を彼女は何ら躊躇わずに言ってのけた。
呆れ反面、誇らしくもある。
自分は彼女の旦那として不釣合だと思う事が何度もあったので、
そう彼女に言ってもらえると幸いだ。

霖之助は手の平を彼女の頭の手において霖之助は優しく髪を撫でる。
上から下へ、慧音の青みがかった銀髪を梳かすように丁寧に撫でた。

「なぁ霖之助」

擽ったそうに顔を綻ばせる慧音がそれを紛らわすために言った。

「ん、何だい?」

「そろそろ子供欲しいな」

「まだ早いよ」

子を成してそれを育てるのも悪い選択肢ではないかもしれない。
だが霖之助はまだそうして新しい家族を迎え入れる気にはなれなかった。
もう少しだけ夫婦水入らずと言うものを経験していたい。

せめて次の夏が来るまでは。

Comment

#No title
とても理想的でした。
熱烈な恋愛ではなく、穏やかに共に過ごす形の慧霖。
すばらしいです。
文章も2人の雰囲気に沿ってゆったりとしたテンポで心地よく読めました。
また読みます。
  • by:Meteoride
  •  | 2011/08/25/22:10:27
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すばらしい。
  • by:key
  •  | 2011/09/28/02:43:33
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#No title
この二人には健やかに日々を過ごしてほしいものです。
  • by:
  •  | 2012/03/04/00:28:33
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#No title
凄くほほえましいです
  • by:
  •  | 2012/03/19/17:29:46
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