十四朗亭の出納帳

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十四朗

Author:十四朗
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真っ白なパズルと冬空

久しぶりに紫霖を書きました。
よくSSを書く前に本を読んだりするんですけど、
この内容だと直前に何を読んだかバレバレですね。



『真っ白なパズルと冬空』



紫、霖之助







パチっと何かが綺麗にはめ込まれる小気味の良い音が鳴った。
はめ込まれたのはパズルのピースだった。

模様は描かれていない。ただ白いだけのピースだ。
そのピースだけが白いというわけでもなく、
机の上に散らばったピースは全て例外なく白かった。

霖之助はパズルのピースが綺麗にはまった事に対して嬉しそうにするでもなく、
つまらなそうにするわけでもなく、
ただ黙々と次のピースを手に取って違う部分に形が適合するかどうかと言う作業を続けるだけだった。

パズルは端の方がほぼ全て完成していて、
徐々に中心へと白い領域を拡大している。

ジグソーパズル自体は暇潰しに何度か組んだ事があったが、
パズルに模様が描かれていないタイプの物を組むのは初めてだ。

模様から場所を特定しづらい、
おまけにピース一つ一つの形も、色が同じなせいか印象に残らない。

ピースの数自体は五百ピースで、
大きさもたいした事のないパズルのはずなのに、
昼過ぎから開始してまだこれだけしか進んでいないのは新記録だ。
勿論最遅の。

やっと埋まり始めた五百ピース用の額縁を見て、霖之助は一つため息をついた。
一歩一歩が遅すぎて気が遠くなるような作業だが、
普通のパズルよりは時間を忘れて没頭することが出来る。

先程まで夕日に照らされて茜色に染まっていたパズルは、
もう宵闇の濃い紺色に染まっていた。

流石に手元がよく見えなくなってきたので霖之助は少しだけ蝋燭が残ったキャンドルランプを取り出すと、
カバーを外しマッチで明かりを灯した。
蝋燭の残りに不安があったが、
どうせ夕食の準備を始めるまでの短い時間しか使わないのでそのまま使うことにした。

ぽぉうっとランプの周辺が淡いオレンジ色に照らされる。
柔らかさと温かさを含んだ蝋燭の灯は冬の始まりにはとても心地良く感じられた。

今度はオレンジ色に染まったパズルのピースを手にとろうとして……
霖之助の手は空を切った。

視線をピースが有った方へと向ける。
そこにはついさっきまで存在していたピースの山はなかった。

「ミルクパズルだなんて。インテリジェンスな玩具ですこと」

ぬっと何も無い空間から現れた細い腕が組みかけのパズルを額縁ごと持ち上げて、
空中でひっくり返した。

バラバラと組みかけのパズルは重力にしたがって下へ落ちる。
だが床にはぶつからなかった。

床にぶつかる手前でバラバラになったピースは何も無い空間に飲み込まれて消えていった。

「随分と時間がかかったんだけどね」

「あら何が?」

「僕がそこまで組み上げるのに」

霖之助は何も無い空間に向かって静かに口を開くと、
少し不機嫌な表情をした。

「それはまぁ、お気の毒様。何と言って慰めたらいいか……」

「慰めじゃないだろう紫。この場合は謝罪だと思うんだ」

カウンターの向かい側に大きな『スキマ』が開いて、
中から長い金髪の端々を紅いリボンで留めた妙齢の女性が現れた。
音もなく、気配さえもなかった。

キャンドルランプの光は元からこの場所に居た霖之助も、
突然やって来た客人も平等に照らした。

「まぁいい。君にそんなものを求めるのは意味のないことだ。
 それよりもどうして君がここに来たのかを聞こう。
 素直な君ならすんなりと教えてくれるよね?」

「勿論ですわ。素直な私は貴方にこの店へ来た理由をすんなりと教えます。
 霖之助さん。そろそろストーブの燃料が恋しくなる季節だと思わない?」

「思う。珍しく君の意見に同意するよ」

紫は会話を進めながらも、先程霖之助から奪ったパズルを組み始めた。
霖之助の手順とは逆に彼女は中心からパズルを組んでゆく。

まず一番最初に何も無い額縁の中へ白いピースを迷うことなく置いた。
次はその隣にスキマから取り出したピースをはめ込んだ。
一見無作為に選ばれたかに見えたピースはキチンと最初のピースに噛み合い、
そこに収まった。

その次も、その次の次も彼女は同じ様にピースを迷うことなくはめ込んでゆく。
彼女が間違ったピースを選択することは無かった。
尚且つ彼女がパズルを組む速度は恐ろしく早い。

取り出すピースはどれも彼女の運ぶ位置にピッタリとはまり、
そこで次にはめ込まれるピースを待った。

無地のパズルを、それも中心から組み上げるのは恐ろしく難易度の高い組み方だ。
速度も先程までの霖之助に比べれば倍以上違う。

霖之助は心の中で感心していた。
だがその感情とは裏腹に特に驚いてはいなかった。

多分無意識の内に「紫だからこれぐらい出来るだろう」と思っているからだろう。
少しだけ霖之助は喋るのを止め、床にこぼした牛乳の様に広がり続けるジグソーパズルを見た。

「どうしたの? 急に黙りこんでしまって」

「いや、随分と手際がいいなと思ってね。
 さっきまで組んでいたから分かるんだけど、無地のパズルというものはどうも組みづらい。
 僕もあれだけ組むのにかなりの時間が掛かった。
 このパズルを持ってきたのは魔理沙だが、彼女は四隅が組み終わる前に諦めたそうだよ」

「あらあら随分と短気なのね」

尚もパズルを組みながら紫は言った。

「色が同じだからって形まで同じではないわ。
 形が違えば……正確に言うとそれが個々であるのなら、
 そこには必ず境界が生まれるのよ」

「要するに君の専門分野か」

「そうね。そうなるわね」

それからは本当に無言が続いた。
定期的に紫がピースをはめ込む音が響いたが、本当にそれ以外は何も聞こえなかった。

視覚的な変化は先程と同じく寸分の狂いなく完成してゆくパズルと、
残りの蝋が少ない為に、ユラユラと慌しく動きまわるキャンドルランプの灯りだけだった。

霖之助は何気なしに窓の外、それも空へと目をやる。
濃紺の絨毯には冬の星達と半分に欠けた月が輝いていて、霖之助はそれを指でなぞった。

輝く星々の中である星だけが酷く虚ろに揺れている。
丁度今霖之助の側で揺れているキャンドルランプの灯りの様に。

霖之助にはそれが遠い遠い星から送られてくる何かのメッセージに見えた。
実際そんな事はないのかもしれないが、今の霖之助には何だかそんな風に思えた。

そんな中でふと霖之助は何気なしにある事を思いつく。
この星空をジグソーパズルにしたら面白そうかもしれない。

一瞬その想像は膨らみかけた。
だがすぐに萎んでぺしゃんこになってしまった。

意味が無い、ジグソーパズルでは意味が無い。
ジグソーパズルでは星々の揺らぎを完璧に描くことはできない。
完璧な夜空を伝えることなんて出来無い。
そう思った瞬間彼の考えはそこでストップしてしまった。

「今年も月に一度何かめぼしい物を燃料代として支払うという事でいいかしら」

冬の夜空へと意識をやっていた霖之助を紫の声が地上へ呼び戻した。
もう彼の意識は星空をふわふわと漂っていない。

しっかりと重力が地上へと縛り付けている。
何かに縛り付けられるのは真っ平御免のはずなのに、
自分は今重力に縛られていると思うと何だか心の底から安心した。

「構わない。構わないよ。
 僕が許可する範囲で好きな物を持って行っていい。
 そして君は一月分の燃料を僕に提供する」

「急に追加が欲しくなった時は藍に言って同じ様に物で追加分の対価を払う」

「なんて事ない。何時もと同じ取り決めさ」

「そうね毎年同じ」

紫が最後のピースをはめ込むのと、蝋燭の灯りが消えるのはほぼ同時だった。
一瞬にして店の中は闇に飲まれ、急に暗くなったせいで霖之助は少しの間何も見えなくなった。
だが月の灯りが比較的強いと言う事も有ってかすぐにぼんやりとながらも視界が開けた。

「同じだからこそ確認の余地がある。
 変わってしまっていないかどうか、それを確かめる余地が」

「どういう意味だい」

「貴方は人間程変わりやすくないのかもしれない。
 けれども妖怪よりはずっと変わりやすい。
 だから私は貴方が変わっていないかどうか確かめる為にこんな決まりきった会話を毎年交わす」

「急にどうしたんだい?」

「ほんの冗談よ」

「八雲紫は薄気味悪い、趣味の悪い冗談を口にはするけど意味の通らない冗談は口にしない」

返事はなかった。

霖之助は引き出しの中から予備の蝋燭を取り出すと、
キャンドルランプの蓋を開け、蝋燭の残りかすを捨てて新しい蝋燭を設置した。

慣れた手つきで霖之助がマッチを擦る。
蝋燭よりはいくらか弱い灯りが先程までと同じ様にカウンターの周辺を照らした。

そこに八雲紫は居ない。
ただそこには完成した白一色のジグソーパズルが置いてあるだけだった。

無言の内に彼女が帰ったのだということを理解した霖之助はマッチの火を消して、
夕食の準備の為台所へと向かった。

誰も居なくなった店内には本当の静寂と染み一つない真っ白なジグソーパズルだけが残った。

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