十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

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十四朗

Author:十四朗
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趣味の守備範囲は日々拡大中
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四畳半慧霖-旅行編1-

少女が霖之助と一緒に外の世界に行くとしたら、どんな生活になるだろう。


紫が原因で起こしてしまった異変を、ひょんなことから解決してしまった霖之助。
彼女から報酬にと、霖之助が望んでいた外の世界へ行く権利を与えられる。

ただし、1年間という期限付き。
旅をするのもよし、一つ所に留まるもよし。
支度金と場所は紫が用意してくれるらしい。
必要なら仕事も紹介してくれる、と紫は言った。


それから1ヶ月間、霖之助は外の世界について勉強する。
そして……。


~ここまでテンプレ~

前回の続き今回から少し旅行編が入ります。
外の世界を舞台にする上でやっぱり秘封組は絡めたいところだったんですよねー

『四畳半慧霖-旅行編1-』


慧音、霖之助、蓮子、メリー









あの後旅行の話は驚く程スムーズに進んだ。
日々が質素な生活だっただけに蓄えはそれなりに有ったし、
旅行の行き先も二人の意見がぶつかること無く決まった。

目的地は広島県宮島。
慧音が旅行雑誌を広げている時に見つけて一目惚れしたようだ。

広告には沈む夕日をバックに、海上に浮かぶ厳島神社が映っていて中々幻想的だった。
ただ慧音の興味は神社よりも海の方にあるようだ。

そう言えば彼女は霖之助と違って生まれも育ちも幻想郷なので海という物を見た事がない。
霖之助も幼い頃一度だけ海を見ただけで久しく海という物を見ていなかった。

「ここにしよう」

霖之助が一言で全て決めると早速翌日には旅行代理店へ移動手段と宿泊施設の手配を依頼した。
手続きはごくあっさりしたもので、すぐに済んだ。
それどころかシーズンが外れていたと言う事もあって、
旅行の準備ほぼ全てがそれ程手間の掛かるものではなかった。

見知らぬ土地で、更に見知らぬ場所へと行こうとしている。
だが今度は自分の為ではない。

余計なお世話かもしれないが、これは彼女の為の行動だ。
言ってしまえば二人は役割だけの夫婦かもしれない。
だが、その役割としてでなく純粋に一人の男として夫の役目を果たそうと思う。











新幹線が動き出すまでにはまだ時間がある。
旅の前というのは何だか落ち着かないものだ。

今回二人が移動手段に選んだ新幹線と言う乗り物は、
高速鉄道と言って、普通の電車よりも速い速度でずっと長い距離を駆け抜ける物らしい。

その速度は日本の端から端まで行くのに一日も掛からないそうだ。
と言っても今はリニアモーターカーやその他の高速鉄道が主流となっていて、
すっかり影の薄くなってしまった路線らしい。

だが、その分車内は空いていて、
その他の鉄道に対抗する為に引き下げられた運賃によって安く利用する事が出来る。
ゆったりとした旅を望んでいた二人にとってこれ以上にない移動手段だ。

二人は発車予定時刻よりも随分と早い時間に乗り込み、
じっくりと旅の事を考えていた。

だが席に着いた後、妙に気が急いて何だか落ち着かなかった。
子供っぽいと笑われるかもしれないが、そう感じるものはそうなのだから仕方がない。

こちらの世界に来る前、幻想郷で過ごした最後の夜もそうだった。
月はとっくに隠れて、暗くなってしまった夜空に星々が瞬くだけになっても、
霖之助は中々寝付けずに布団から出て縁側と寝室を行ったり来たりしていた。

明日からはこことは違う別の場所にいる。
自分が長年求めた場所に行くのだと思うと、鼓動が一段ずつ高くなった。

ただ同時に、それはとてつもない恐怖を含むものであった。
自分の進む一歩先が分からない。

それは誰かが側にいても同じ事。
結局見えないものは見えない。
だが、安心する事は出来た。

傍らに自分の事をよく知る人物が居るだけで、
自分は安心して立っていられる気がした。

目的と自分のルーツを見失わないでやってゆける自信がついた。
見知らぬ土地、見知らぬ文化の中で自己を保てる事程、強大な強みはない。

ただ自分がそうした強みを手にした一方で、
こちらに来てから余り他人と交流を深めようとしない慧音の事が気に掛かった。

幻想郷に居た頃は誰とでも別け隔てなく接する事の出来る彼女だったが、
どうもこちらでは人付き合いに苦戦しているらしい。

職場では同僚とも生徒とも上手くやっているとは聞いている。
だがご近所付き合いに関して上手くいっていないのは、
霖之助の目から見ても明らかだった。

この地に来て気になった事は色々ある。
心配事も幻想郷に居た頃に比べたら格段に増えた。

価値観、思想、文化、常識。
外の重圧は確かに重く、冷たい。

だが、慧音の浮かない表情に比べればそんな物は全てどうでもよく思えた。
何とかして慧音を外に慣れさせてやりたい。
その一心で持ちかけた旅行だが、
何時もと変わらず余所行きの表情を崩さない慧音に、
霖之助は早くも旅の道先に暗雲が立ち込めている様な気がした。

「あのう、少しよろしいですか?」

通路の方から声を掛けられた。
考え事に沈んでいた霖之助の思考が急に水面へと浮上する。

顔を上げ、声の主を確認した。
まだ若い女性の声だったのである程度予測はしていたが、
やはり霖之助に声を掛けたのは女性だった。

予想と違うのはその人物が二人組だったという事。
片方は黒い帽子に白く糊の効いたワイシャツに赤いネクタイ。
裾に白い模様のアクセントが入ったプリーツスカートを身につけたスレンダーな女性だ。

左房に纏めた黒髪を赤いリボンで結んでいる辺り女性らしいが、
切り取ったばかりの黒曜石みたいな瞳が凛としていて、少し逞しく見える。

もう片方も同じく若い女性で、年格好は黒髪の方と同じ位。
黒髪の方とは対照的に白い帽子を被っており、髪は金髪で長さは黒髪よりも少し長い程度。
紫色のツーピースで一見派手に見えるが、不思議と彼女の雰囲気に馴染んでいた。

瞳の色は紫で、黒髪に比べると随分穏やかな目付きをしている。
恐らく純粋な日本人でないのだろう、目鼻の彫りが深くそれが何処か異国的に思えた。

背丈は二人共女性にしては少し高いが、慧音よりは低い。
幻想郷の人物で例えるなら咲夜ぐらいだろうか。

どうやら声を掛けたのは黒髪の方らしい。
ニカッと笑うと「お向かいよろしいですか? 旅の道連れ、いうなれば話し相手にでも」

随分と突飛な提案だった。
要するに長旅の話し相手が欲しいと言う事なのだろう。
二人組なので話し相手には困っていなさそうだが、つまりは旅の話し相手が欲しいと言う事だろう。

霖之助は構わなかったが、この場合一番の心配は慧音だ。
彼女の顔を見て「構わないかな慧音?」と霖之助は慧音に聞くと。
慧音は少し悩んだ後、首を小さく縦に振って「構わない」と答えた。

慧音の了承と共に霖之助も了承の合図を二人組へ送る。
黒髪の方が小さくお辞儀をすると、
すぐに前の座席の留め具を弄りクルリと回転させ向かい合わせの席にした。

随分と便利な仕様になっているものだ。
確かにこれなら話しやすい。

黒髪と金髪は大きな荷物を網棚の上に置くと、そのまま向かい合わせの席に腰掛けた。

「どちらまで?」

質問をしたのは黒髪の方だった。
慧音と霖之助、どちらに尋ねたのかは分からないが、向こうも特に意識していないのだろう。
霖之助は初めての旅行で緊張している慧音に代わり黒髪の質問に答えた。

「広島まで。もっと言うならば宮島までですよ」

「まぁ、お二人もですか。ふふふ、偶然ですね。私達も広島、それも宮島まで行くんですよ」

パチンと両手の平を叩いた黒髪は心底楽しそうにそう言った。
それを金髪の方は「騒ぎすぎよ。迷惑じゃない」と言って嗜める。

「私達大学のサークル活動で日本中の神話や仏教、その他不思議な土地を回っているんです。
 それで、今回は宮島へ。あの、お二人は?」

どうやらこの二人は大学生らしい。
霖之助達よりも(外見年齢が)幾らか下ぐらいに思っていたが、どうやら当たりだったようだ。

「妻と二人で旅行です。
 こちらに越してきてから随分と忙しく家庭の時間が取れなかったもので」

「ご夫婦だったんですね。お若いようですからてっきり恋人かと」

「似たようなものです。結婚してまだ半年ですから」

「あら、新婚さん……同席を申し出ておいて今さらですがお邪魔ではありませんか?」

「いいえ、僕も妻もどちらかと言えば静かな方ですから。
 楽しくお話できる相手が居ると助かります」

『夫婦』と言う設定通り霖之助は黒髪との会話を続ける。
そう言えばまだこの二人の名前を聞いていなかった。
何時までも名前を名乗らないまま会話を続けるのは少々不便だ。

「失礼、まだ名前を名乗っていなかった。
 僕は森近霖之助、妻の名前は慧音。どうぞよろしく」

慧音は霖之助の言葉と共に軽く会釈をした。
表情からは緊張の色が伺える。
元々慧音は人見知りをする方ではないのだが、
こちらに来てからは上手く他人と喋れないでいるようだった。

職場では上手くやっているらしいが、
一歩職場と家庭から出るとこの調子な彼女を霖之助は心配していた。

慣れない環境にまだ戸惑っているのかも知れない。
霖之助の方からこっちに来ようと誘っただけに、
慧音のがそんな調子だと何処か悪い気がしてならなかった。

「いえ、失礼なのはこっちですよ。自己紹介も遅れてしまって。宇佐見蓮子です。
 こっちはマエリベリー・ハーン、長いのでメリーとでも」

「ちょっと蓮子、私に言わせてよ」

「あぁ、ごめんごめん」

「改めまして、マエリベリー・ハーンです。どうぞよろしく。
 あ、お二人共敬語は結構ですよ。
 私達の方が年下ですし、改まった話し方だとお邪魔している私達が変な気持ちになりますから」

「ふむそうかい。そう言うのなら遠慮無く」

マエリベリーと名乗った女性はニッコリと人好きのする笑顔でそう言うと、
膝の上に載せたショルダーバッグの中から袋詰めのクッキーを取り出して慧音と霖之助に差し出した。

一礼した後、二人はクッキーを受け取り口の中へと放り込んだ。
外の世界の食品にしては珍しく、化学薬品の味が余りしない美味しいクッキーだった。

「二人共若そうなのに随分と渋い場所をチョイスしましたね」

先程よりも幾分砕けた口調の蓮子がそう言った。

「妻も僕も余り騒がしい場所は苦手でね。
 騒がしい娯楽施設に行く気にはどうしてもなれなかったんだよ。
 それに慧音が海を見たそうな顔をしていたからね」

「なっ……霖之助、私はそんな顔をしていたか?」

「あぁ、してたよ。目が輝いてて子供みたいだった」

「むぅ、してないぞ。絶対にそんな表情はしてない」

「新婚さんだけあって何と言うかまぁ……」

「仲がよろしいんですね」

「ッッッ!? わ、私は飲み物でも買ってくる……」

ニヤニヤしながら茶々を入れる二人の態度が恥ずかしかったのか、
慧音は真っ赤な顔で席から立ち上がり、ホームにある自販機へと駆けていった。

ため息混じりの苦笑と共に霖之助は彼女を見送り、内心からかい過ぎたかと反省する。
だが慧音が自宅以外であんなに感情的な表情を見せるのは稀だ。

これが良い方向に向かってくれるといいが。

「慧音さん……怒らせちゃったかしら」

「いや、そんなにも怒っている訳ではないと思うよ。
 彼女は赤面症持ちで、すぐに照れるから」

「照れるぐらいお互いの事意識してるなんて、本当に熱々なんですねぇ」

「当然だよ。彼女は僕の妻で、僕は彼女の夫なんだから」

特に恥ずかしがる様子もなく霖之助がそう言うと、
恥ずかしそうな表情をしたのは蓮子とマエリベリーの方だった。

お互いに肩を叩き合いながら耳元で何かを囁き合っている。
しばらくは二人がこの状態から戻らなそうなので霖之助は窓から外の景色を見つめた。

横に敷かれた二本線に、短い縦線が等間隔に並んだ線路。
それが視界の端までずっと続いている。

これから自分達の向かおうとしている場所はこの線路の先に有るのかと思うと、
何だが不思議な気持ちになった。

どうにもこれがそんなずっと先まで続いているようには思えない。
何処か途中で途切れて、そこからは自分で歩かなければならないような気がした。

それはただ単にこう言った物に馴れていないだけだと行ってしまえばそれまでだが、
霖之助の中にはもっと別の物事が蠢いていた。

例えば、これから先の二人の行く末だとか。
そんな線路通りにならない物事が。

「奥さん気が効いて美人だし、何だか絵に描いた良妻って感じですね」

霖之助の思考を遮って蓮子の声が飛び込んできた。
表情は最初に会話した時の凛々とした表情に戻っていて、
一応は冷静さを取り戻しているようだ。

「その言葉は本人に言ってあげるととても喜ぶと思うよ。
 まぁ、確かに彼女は人として良く出来てる。
 僕には勿体無いお相手かもしれないね」

「あの、そういう時はいえいえ、うちのはとんだ愚妻で……とか言って遠慮する物じゃないの?」

「そう言うのは自信のない輩が言うものさ。
 残念ながら僕には彼女が良く出来た女性だと言い切る自信が有るんでね」

「ほへー何だか森近さんって変わってるかも」

「蓮子、だから失礼だって……」

「うーむ恐るべし美男美女夫婦」

何の事だかさっぱりと霖之助が首を振ると、
丁度慧音が買ってきたばかりの飲み物を抱えて戻ってきた。

オレンジジュースが二本と霖之助用のブラックコーヒーが一本。
それから慧音用のミルクココアが一本だ。

マエリベリーと蓮子の二人はそれぞれ礼を言ってジュースを受け取る。
霖之助も慧音にありがとうと言って缶コーヒーを受け取った。

「慧音さんの話をしてたんですよ」

「私の?」

席に戻った慧音に、蓮子が楽しそうに声を掛ける。

「えぇ、良い奥さんだって。森近さん……えっと、霖之助さんもそう言ってましたよ」

『森近さん』だと区別がつかないと思ったのだろう、
蓮子は霖之助の呼び方を『霖之助さん』に変えて呼んだ。

「なぁっ! り、霖之助! お前はまたそうやって口からでまかせを!」

「いやまぁ、本心を言っただけだからでまかせって訳じゃないけど……」

「だったとしてもよそでそんな事を言うなぁ!」

わなわなと拳を震わせて赤い顔で言う彼女に何時もの冷静さは無い。
彼女の行動が面白く思わず笑ってしまうが、それが余計彼女を刺激するらしい。
頬を思い切り抓られ左右上下へと引っ張られた。
割と痛い。

執拗に頬への攻撃を続ける慧音を適当にあしらっていると、車内に発車アナウンスが流れた。
それから少しして出入口である扉の閉まる音が聞こえ、ゆっくりと車両が動き始めた。

ゆったりとした加速感が体に伝わって、
段々と窓の外から見える景色が速く後方へと流れて、自分達はこの地を離れてゆく。

旅の始めは思ったよりも悪くない。
この旅ではしかめっ面をしている時間よりも、笑顔でいる時間が多くなるように努めよう。

今まで慧音が自身の支えであったように、
今度は自分が慧音の支えになってやろう。

霖之助のそんな気持ちと共に、列車はどんどん進んでゆく。
見知らぬ世界の見知らぬ土地へと。

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