十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

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十四朗

Author:十四朗
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『何が食べたい?』

『風邪をひいたなら』から続く一連の霊霖シリーズの続き。

甘々霊霖とかすっごく好きなんですよねー
二人共好きとかそんな事言わないくせに、甘い感じで。

どうでもいい話ですが、
舞茸を茶碗蒸しに入れる場合加熱処理をしないと茶碗蒸しが固まらないらしい。
ふと料理について調べていた時に知った事。


『何が食べたい?』

霊夢、霖之助






「霖之助さんって食いしん坊さんね」

「いきなり何を言うんだい」

「だってそうじゃない」

霖之助の青いお茶碗よりも一回り小さな、
赤色のお茶碗を持った霊夢は目線だけを動かして食卓を一瞥すると、
お茶碗の中に入った栗ご飯を一口含んで、もぐもぐと時間を掛けて咀嚼した。

自分から話を振っておいてマイペースに箸を進める辺り如何にも彼女らしい。
霖之助はそんな霊夢に憤慨する訳でも、
呆れる訳でもなくただ調子を合わせて自身も栗ご飯を口に含んだ。

「食べなくても生きて行ける癖に、たくさんの料理を作って食べてる。
 種類だって、一人で食べるには少し多いわ」

何時の間にか音もなく栗ご飯を飲み込んでいた霊夢は、
箸を止めて静かに霖之助にそう告げる。

一方の霖之助はまだ栗ご飯を咀嚼している最中なので言葉が返せずに、
ただ彼女の話を黙って聞くだけの形になってしまった。

「栗ご飯、きのこ汁、筑前煮、さつまいもの天ぷら、舞茸の茶碗蒸し。
 全部食べたらお腹いっぱいで動けなくなりそうよ」

「なら腹八分目で止しておけばいいじゃないか。
 まぁ、君のお腹が八分目で止められる程、慎み深いとは思わないけどね」

「酷い事言うんだから。
 私のこの行為は霖之助さんが作り過ぎちゃった料理を消費してあげるって言う目的が有るのよ」

「料理の匂いに釣られてきたくせに」

茶碗蒸しの茶碗を手に取り、
息を吹きかけながら口へ運ぶ霊夢は相変わらず霖之助の言葉などお構いなしと言った様子だ。

何時だって彼女は霖之助の言う事を聞かない。
止めろと言っても止めないし、やれと言ったら何もしない。

気ままな彼女は二十四時間何時だって自分のペースだし、
特に時間や都合に圧迫されるという事もない。

あらゆる人妖が暮らす幻想郷において、
彼女程自由な人間となると中々居ない。

一見自由に見える人間は皆が皆、それぞれ何らかの物(或いは者)に縛られている。
中には自由を演じている者だって存在する。

そんな中で彼女は博麗の巫女と言う肩書きと役職がありながら、
こうも自由に日々を過ごしている。

「しばらくね、台所の窓から中を覗いてたの。
 慌しく霖之助さんが料理を作ってる姿。
 普段ゆっくりしてる割に変な所でせっかちなんだから。
 料理ぐらい一品ずつ作ればいいじゃない」

「少し肌寒くなってきただろう。
 だから少しでも冷めない内に食事を始めたかったんだ」

「急ぎすぎて私の分の茶碗蒸し忘れかけてたじゃない」

「茶碗蒸しを蒸す直前になって出てきたのはそういう事か」

「嫌よ、私だけ一品少ないなんて」

「どっちが食いしん坊だ」

霊夢は茶碗蒸しを気に入ったようで、
自分の分を食べ終えると霖之助に「それ食べてもいいかしら?」と尋ね、
霖之助がまだ返事もしない内にひょいと手に取って食べ始めた。

参ったものだ、これでは誰の為に料理を作ったのか分からなくなってしまう。

この時期はお金や道具ではなく、
採れたての食材で対価を払う者が多いから食材がどうしても余ってしまう。

霖之助は「ちゃんとしたもので払ってくれ」と言うのだが、
お客達の言い分は「これもちゃんとした物だから問題なし」の一点張りだ。

支払いというよりも御裾分けついでに道具を一つ持っていくようなものかもしれない。

霖之助も毎年秋の始めはそうした抗議をするが、
段々とそれも億劫になって来て秋も中頃になってくるとそれもしなくなる。

何もしなくても秋の味覚が山のように手に入ると思えば案外割り切れるものだ。
普段余り食事に気を使わない分、この季節ぐらいはこうして食事に趣向を凝らすのも悪くない。

それに冬になればそんな贅沢も言っていられない。
美味しい食材は美味しい内に、食べられる内に食べておくのが得だ。

「そうして人の家にたかりに来るからちゃんとご飯食べてるかどうか心配されるんだよ」

「あら、霖之助さん私が心配?」

「君の倫理が心配だ。要するに頭の中だとか、人格だとか」

「酷いわ。大丈夫よご飯ぐらい食べてるし食うに困ってないわ」

「なら神社で食べてくればいいじゃないか」

「だって自炊するの面倒なんだもの」

柔らかな表情で、さも当然のようにそう言った彼女に、
うしろめたいだとか、遠慮しているといった様子は一切見受けられない。

気にしていないというよりは、
そういった感情が元から無いと言うのは少し彼女に失礼だろうか。

「それに、誰かと食べるのも悪く無いから。
 霖之助さんだって騒がしくなければ誰かと食べるのは嫌いじゃないでしょう?」

「最もらしい事を言う。そんな事を言われたら頷くしかないだろう。
 本当に一人が好きな輩でも無い限り誰かと静かに、
 あるいは他愛のない談笑を交わしながら食事をするのが嫌いな訳がないじゃないか」

「霖之助さんも一人で食べるより誰かと食べる方が好きなのね」

「僕の分を了承も無しに食べるような相手じゃない限りね」

「意地悪。大して怒ってない癖にそういう事言うんだから」

じーっと彼女の目が霖之助を見つめて、彼の箸を止めさせる。
言葉は無いが、決してそれは無表情な物ではない。

言葉で言い表しにくい、非常にデリケートな表情をしていた。
「やめてくれよ」と霖之助は言う。
そんな表情をされると彼の皮肉は枯れた井戸の様に何も出てこなくなる。

「はい霖之助さん」

霖之助が霊夢の表情にすっかり毒気を抜かれた頃、
霊夢は笑顔でさつま芋の天ぷらを箸で摘まんで霖之助の前へ差し出した。

「私の分の天ぷらあげるからもう意地悪な事言わないでね」

「何処が意地悪なもんか。それにその天ぷらだって元はと言えば」

「あーそんな事言うんだ。じゃあ私が食べちゃうわよ」

霖之助は急いで彼女の差し出した天ぷらを口の中へ入れて、
しっかりと噛み締める。

衣の軽い口当たりと、さつま芋の甘み。
自分で作った料理だが、よく出来ている。

「美味しい?」

「僕が作った物なのに、どうして君が僕に感想を求めるのかな」

「いいじゃない。だってそんな事は細かな事だもの。 
 ちっとも大切な事じゃないわ。そう、取るに足らない小さな事なのよ」

「君の価値観だとか、倫理って本当にこことは違う別の場所に有るんだね」

もう自然と霖之助の口元には笑しか浮かんでこなかった。
そして言葉とは裏腹に、彼女の言った「ちっぽけな事、取るに足らない事」
と言う言葉に心底同意している自分が居る。

芯の通った理屈など無いはずなのに、
何故か彼女が笑顔まじりでそう言うとそれで良いと思えた。

彼女がいいのなら、それでいいかもしれないと。

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