十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

プロフィール

十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
メッセ&スカイプは大歓迎です
SkypeID『Brassp905』


リンクはフリーなので
どなたでもどうぞ
もしご連絡いただければ高所から
イヤッホォォォォ!!します


PS3アカウント『auscam』
大体マルチ対応ゲームやってると思います。

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月光むらさき

書きあがるまで日記でだらだら繋いでた十四朗です
甘い甘い甘いを目指そうとした結果がこれだよ!!!
イミフ系になりました
今回は仲直りの話、神の宣告に等しいご意見を頂いたのですが
その貴重なご意見を生かせているかどうか


『月光むらさき』



霖之助、紫

その日、魔法の森の入口に店を構える古道具屋『香霖堂』の
店主森近霖之助が目を覚ましたのは昼前だった
昨日久しぶりに無縁塚に仕入れに行き夜もそこそこの時間に重たい道具を担いで帰ってきたので
昨夜は泥のように眠っってしまったのだ、霖之助はまだしっかり回らない頭を持ち上げると
洗面所にむかい顔を洗って寝癖を直しいつもの服に着替えほとんど昼食の時間に
簡単な朝食を済ませるとやっと店を開ける為の支度を始めた
まず店の窓を開けて回る、この時期は道具にとって湿気は天敵なのでこの時期これだけは欠かさない
次に香霖堂の玄関の鍵を開けようとするが玄関のカギはすでに開けられていた
そして玄関の間に紙が挟まっているのに気づいた、取り出してみてみると万年筆らしき筆跡で

―ドロドロに寝てるみたいだから書置きにしておく本を借りてくぜ
 一応書置きしたから勝手に持って行ったってことにはならないからな―
                          普通の魔法使い

バレバレの通り名で犯行証明が書かれてあった

(人に借りて行ったという意思を伝えるのは結構だが
 そこは僕が起きるのを待って出直すべきだろう)

そんな事を心の中でごねても当人はこの場所に影すらないのだ、愚痴を言うだけ無駄だ
何を借りて行ったのかと調べてみるとカガクハンノウや薬物
(内容はあまり分からなかったが爆発物に関する物らしい)
に関する本が数冊無くなっていた、その手の書物なら新しい魔法の実験だろう
最近の魔理沙は星だけに飽き足らず外のカガクを積極的に取り入れようとする
そういったチャレンジ精神は大いに結構だが外の爆発物の技術はその量に反して大きい
まぁその手の物の扱いに精通した彼女なら最悪の事態は無いと思われるが
どちらかと言えば借りていかれた本の中に
自分の読みかけの本が入っていたことが少々不服だった
彼女のこの手癖の悪さはそれこそ死ぬまで治らないのかもしれない、死んでも治る保証はないが
 
「まぁいいさ、今日の僕にはこれがある」

ゴチャゴチャした店内の中央、丁度冬にストーブが設置される場所に
昨日拾ってきた外の世界の道具の山が出来ていた
大きさは手の平サイズのものから霖之助の腰まであるものまで
様々な外の道具が積まれてある山の中から一つ手に取ってみる
その道具は土台の部分から首の様な物が生えその首の先は傘状になっていた

「名称は電気スタンド、用途は明かりを灯すか
 ……………残念ながら電気を使う時点で幻想郷では使えないな」

おまけにその電気スタンドとやらは傘状の中の電球と呼ばれるガラス玉が割れている
電球の用途を知っている霖之助にはこの道具がどうやっても使えないことが理解できた
そっと壊れた電気スタンドを自分の隣に置く

「出だしからこれか…………だがまだ始めたばかりだ」

そう言うと一人黙々と道具の鑑定を開始した
本人は自覚がないのかもしれないが道具を見つめながら一人ブツブツ自問自答する姿が
この店の客足を遠のかせる一因だということに





カウンターから西日が差しこむ時刻になってようやく全ての道具の鑑定が終わった
途中何人か客が来たが霖之助が取り込み中だと悟るとすぐ出て行った
残念なことに今日は彼自身が閑古鳥を進んで鳴かしていることに気づいていないらしい
結局そんな事をして見つかったまともな状態(であろう)の道具は1つしかなかった
当然ながら鑑定中に訪ねてきた客より少ない
だが彼自身は非常に満足していた、いや未知なる新たな道具に期待で胸を膨らましていた

「ヘッドフォン、用途は音を聞く………一見ただの耳あてにしか見えないが」

それは冬に頭につける防寒用の耳あてに似た形で左右の耳に当てる部分から
それぞれ線が延び、途中で一本に纏められその端には突起物がついてある

(耳あてのような部分の使い方はそのまま耳につけるとして
 問題はこの突起物だ、これを音のする場所に置いておくと耳あての部分から音が流れるのか?
 いや、それでは何のために突起上になっているのか分からない
 おそらく何かに刺すために突起上になっているのだろう)

顎に手を当ていつものポーズで考え込む
頭の中で道具の使用用途を構築し自分の中の知識と照らし合わせる

(古来より地中には様々な者が流れているとされている
 地下を流れる地下水は勿論、風水的に考えれば龍脈もだ
 ひょっとすると地中にいるオオナマズの動きさえもこれで音を聞けば探れるかもしれない
 地中は地上からでは手が届かない未知の世界、そこを音で探る為の道具がこのヘッドフォンに違いない)

霖之助はしばらく考えた後これは地面に指すものだと結論付けた

「考えるより行動と言うのは僕の柄じゃないが…………試してみるか」

そう言ってヘッドフォンを掴んで玄関の取っ手に手を掛けようとした時
玄関が音もなく楕円形に裂けた……………正しくは玄関の空間が音もなく楕円形に裂けた
玄関の空間を不自然にゆがめた楕円形の裂け目の両端にはかわいらしい赤のリボンがあしらわれ
その中からは大小様々な目が霖之助を見つめていた
ある目は可笑しそうに、ある目は悲しそうに、ある目は妬ましそうに、ある目は楽しそうに
そんな風に見つめる裂け目から見える数十の目の中に一対のサファイヤの瞳が見えた

「ジャックを地面に突き刺すだなんて
 なんとか生きて幻想郷にたどり着いた道具を貴方は殺す気なのかしら?」

声の主は裂け目から優雅に半身を出すと霖之助の手元を見てそう言った
妖しく煌めく長い金髪と紫のサマードレス、不敵に笑う口元には笑窪が出来ている
宝石をはめ込んだ様な双眸と艶やかな肌は美人の条件をこれ以上にない程に満たしていた

「最後の道具を手に取った時の表情があんまりにも楽しそうでしたからつい黙って見てしまいましたわ」

そう言って彼女がその裂け目から一歩踏み出すと裂け目はピタッと閉じて元の玄関に戻った
別におかしい事はない、彼女………スキマ妖怪八雲紫のいつもの来店の仕方だ

「紫僕は君に毎回玄関を使えと言っているが」

「いいじゃないの入れれば、それに一応玄関を使ってますわ」

「………そうかい」

紫の屁理屈を霖之助はムスッとした様子で返した
自分が自信を持って考えた道具の使い方を一瞬で否定されたのがあまり気に入らないようだ
玄関からカウンターに戻ると不機嫌そうにドサッと腰をおろした

「………はぁ」

霖之助の口から残念そうな溜息が漏れる

「ふふ、そんなに気を落とさなくても私が教えて差し上げるのに」

「……………………それじゃぁ意味がないんだ」

彼のボソッとした声は紫には届かなかったようだ
紫はカウンターの上に投げ出されたヘッドフォンを手に取ると
懐から長方形の薄くて小さな板のようなものを取り出した
これは外の世界の道具でこの小さな板の中に膨大な数の音楽を入れて持ち運べるというものらしい
名称は携帯音楽プレイヤー
いつかの冬にストーブの燃料代として紫が香霖堂から持っていったものだ
彼女はプレイヤーの底の部分の穴にヘッドフォンの突起部分を差し込んで霖之助に見せた

「こうするといいのよ、これでいろんな音楽が独り占めできるの」

ヘッドフォンの説明のほかにも一緒に拾ってきた道具の説明を始めた
これは自分で計算しなくても数字を打ち込むと勝手に計算してくれる道具だとか
これは自分のいる位置を数字で教えてくれる道具だとか
これは自分の歩数を数えてくれる道具だとか
霖之助の曇った表情を気にせず矢次に説明を続けていく
その道具は霖之助がアレコレ試行錯誤しながら使用方法を考えるはっずだった道具で
たとえその答えが間違っていても
自分で考えたという時間と自分が導き出した使用方法と言うのが大切なのだ
故に霖之助の表情は曇ったままで何もしゃべらないのである
そんな霖之助の表情に気づいたのか紫が不思議そうに尋ねた

「ねぇ霖之助さんどうしたの?さっきから相槌一つ打ってくれないじゃない」

「どうもしないさ、別に」

言葉の内容とは違って言い方の一つ一つに棘がある
さっきまで楽しそうだった霖之助の面影はもうなく
ただ面白くないような顔を浮かべてカウンターに頬杖をついているだけだった

「だったら相槌くらい打ってくれてもいいじゃないの
 私がせっかく道具の使い方を説明してあげてるのに」

紫がカウンターにズズイッと身を寄せて来る
霖之助はそんな紫を払うように椅子を回転させて自分の後ろの窓に視線を移動させた

「僕が…………いつそんな事を頼んだんだい?」

「…………なんですって?」

「僕がいつ君に道具の説明を頼んだんだい?
 確かに君が説明してくれたのは君の親切心からだろう
 でも僕はそれを望んでいない、道具の使用方法と言うのは自分で考えてこそ意味があるんだ」

「大した言い方ね、自分一人では大半の道具の正しい使い道も分からないくせに」

この紫の一言が決定打だった、紫の振る舞いに我慢していた霖之助の心のダムが決壊した
そしてそのまま自分の思う事をすべて吐き出していく

「確かにそうだ、だがそれでも誰かにただ教えられるだけの道具の使い方では意味がないんだ
 考えるのを止めて誰かから知識だけを与えられるのでは意味がない
 道具は自分が導き出した答えをもってして使うというんだ
 考える事での喜びを知って初めてその道具は生き返るんだ!」

最後の方は殆ど独り言に近い叫びだった
紫のやった事はすべて親切で純粋に彼に教える為の行為だが
全てを知っている状態で道具の使い方のみを説明するのは
彼の道具屋としてのアイディンティティを根底から否定するようなものなのだ
一呼吸置いた霖之助は自分に対抗する声が無いので後ろを振り返ってみると
そこにはもう紫の姿はなく
ただヘッドフォンを指したままの携帯音楽プレイヤーがカウンターの上に置かれているだけだった





「香霖!今日の晩飯は鴨鍋だぞ!!って何で明かりがついてないんだ?」

日が完全に沈む直前に魔理沙が香霖堂のドアを勢いよく開けてやってきた
背中には背丈の半分くらいある大きな籠を背負い
中には野菜や絞めた鴨が入っているのがチラッと見えた
彼女の言うとおりもう薄暗い店内は明かりが灯されておらず
薄暗い陰険な店というイメージは(昼間は天窓などが付いているので意外と明るい)
現実のものとなっていた

「あぁ、魔理沙か急にどうしたんだい?」

当の霖之助はいつものようにカウンター本を読んでおらず
椅子の背もたれにもたれかかり天窓から暗くなってきた空を見つめているようだった

「いつもより変だぜ、まぁいいとにかく鍋だ鍋
 土鍋は台所のろ戸棚にしまってあったよな?」

「あぁ多分あるよ、でもいきなりどうしたんだい?
 朝目が覚めたら物を借りてくって書置きを残して外の世界の本を持っていったものだから
 今日から数日は家に籠ってると思ったんだが」

「あーあれか、本を借りってったまではよかったんだが前に借りた本と違って
 よく分かんなかったんだよ、分かんない本とにらめっこしてても楽しくないから
 気分転換に鍋でもしようかなって、私が取ってきたんだぜ?この鴨」

要するに借りるだけ借りといて内容は全く分からなかったようだ
内容を教えてくれとせがむ魔理沙を受け流し鍋を食べたいなら用意するようにと促す
そして自分はまた天窓から空を眺め始めた

「っちぇ、変って言うより気味悪いぜ、とにかく飯だけは食えよな」

「努力はするよ」

魔理沙は注意だけするととっとと奥へ消えていった
話しかけても生返事の霖之助がつまらなかったのだろう
その霖之助は昼間の事が引っ掛かって天窓から外を見つめ考え込むしかなかった

(………………紫はもう香霖堂に来ないのだろうか
 あれは曲りなりにも彼女の親切だったのかもしれないな
 道具に対する事で熱くなってたのかもしれないが今回の僕の言葉は少々大人げなかったか)

彼はふと天窓からカウンターの隅へ目線をやる、そこには三つの湯飲みが並べてあった
茶色の古ぼけたのが霊夢のその隣の緑色で縁が欠けたのが魔理沙の
そしてその隣に置いてある黒色でまだ新しく欠け一つない綺麗な湯のみが紫のものだ
お茶を飲むとき勝手に店の湯飲みを使うと霖之助が咎めるので彼女が自分で持ってきた物だった
この香霖堂ではまだ数回しか使ったことが無いのでいまだに新品同様の姿を保っている

(もし、もう来ないというのならこの湯呑みはどうしようか
 売り物にしてしまう訳にもいかないし、元々彼女のものだが片付けるのが無難か)

霖之助は無言でその湯呑みを手に取る
そしてそのまま自分の頭上へ掲げてみた
掲げられた湯呑みはもう昇り始めた月の光を受けてキラリと光った
それは太陽の光による眩しい光りではなく
底知れぬ闇夜をほんのりと照らす月明かりの様に見え
ほんの少しだけ紫が笑った顔を思い出させた




帰宅した紫は藍に今夜の夕食を断ると自分の部屋の前の縁側に酒を持ってくるように言いつけた
勿論藍は空の腹に酒は体によくないと止めたが
紫はそれなら軽食と一緒に持ってきなさいと言うとさっさと自室の縁側へと行ってしまった
軽食を作るように命令された藍は今台所で今夜の夕食になるはずだった
マスの押し寿司を皿に盛り付けている
藍は今日紫に何か有ったのだろうと思ったがそれ以上は詮索をしなかった
紫が藍に何も話さなかったという事は藍にはどうにも出来ない事なのだ
それは藍自身がよく知っている、例えそれがどんなに歯痒くても
最後の一貫を皿に載せ終えると汲んでおいた水で手を洗い
盛り終えた押し寿司と出してくるように命じられた酒をお盆に載せ
馴れた足取りで藍は紫の部屋へと向かった
そして紫の居る縁側へ着くとお盆を下ろし紫のぐい飲みに酒を注いだ
いつものならば紫は小さめの杯を使っているのだが
今日は藍に頼んで大きめのサイズのぐい飲みにしてもらったのだ
その事について特に藍は何も言わなかった
藍は紫が押し寿司を一貫ほど口に入れたところで立ち去ろうとしたが
まちなさいっという紫の声で足を止めた

「藍、貴方は橙に物事を教えることは楽しいかしら?」

「えぇ、楽しいです
 あの子は決して呑み込みの早い方ではありませんが
 態度が良いので教える方も気持ちがいいものです」 

「そう…………自分の式の事だもの楽しいに越した事はないわ」

「ありがとうございます、紫様」

早くも空になったぐい飲みに藍がおかわりを注ぐ
注がれている間紫は月を見上げていた、今日は丁度十三夜で
満月になる前の楕円形の月が夜の雲の切れ間を照らしていた

「ですが私は答えの近道を教えたりはしません
 考えた末の答えと言うものは間違っていてもその過程に意味があるのですから」

「貴方も同じような事を言うのね」

この言葉を聞いた瞬間藍は何か気を悪くするようなことを言ったかと思って紫の顔に目をやったが
その顔は怒りや嫌悪感を現す表情ではなくどこか寂しげなものだった

「それが分からない訳じゃないのだけれど
 いざ近道が目の前にあれば誰しもがそこに飛び込むものだと考えてたの
 でもそればかりではないのね、もう下がっていいわ藍」

今夜はもう寝ていいわ、飲み交わす相手はいらないから
そう付け加えてて再びぐい飲みに口をつける
紫の言った通りに藍はお盆を持って主の前から下がった
この時藍は紫の服に付いた匂いから彼女が香霖堂へ行っていた事を察し
彼女の様子から何があったか大体見当がついた
だから彼女は紫の言う通りに明日の朝食の下準備だけすると自室に戻り布団を敷いた
だが床には就かない、彼女はそのまま音もなく寝室を出ると家の裏口から静かに飛び立った
感の良い彼女の主なら半刻もしないうちに気づくだろう、いやもう気づいているかもしれない
だが藍はそんな事はお構いなしに夜風を切って飛び続ける
紫の問題は藍自身が解決することは出来なくても相手の問題なら何とかなるかもしれない
金色の式は飛び続ける
方角は魔法の森の方向、正確には香霖堂へ




食べるだけ食べ飲むだけ飲んだ魔理沙は机に突っ伏したまま
大いびきをかいて酔いつぶれていた
この年の少女が涎を垂らしながらいびきをかいて寝ているのは
かなりはしたない図だがこの家の家主の霖之助はどうせ何時もの事だと
別段気に止めている様子はなかった
机の上に置かれた土鍋は締めの雑炊をしたおかげで汁も残っておらず
その周りにはとっくりと杯が転がっていた、無論全て魔理沙の飲んだものだ
酒だけでなく鍋も殆ど魔理沙が食べたといっていい
霖之助があまりしゃべらなかったおかげで魔理沙が一人飲んではしゃぐ形になったのだ

「君がはしゃぐと後始末は僕の仕事になるんだよ魔理沙」

当然寝ている魔理沙からは返事が返ってこない
霖之助は困った顔を浮かべたが困っているだけでは解決しないので
とりあえず魔理沙を寝室に運ぶことにした
まず机の上の土鍋ととっくりを流し台に運び机を拭いた
魔理沙が座っていた方は酔いが回り行動がぼやけていた魔理沙のおかげで
酒やら鍋の汁やらがこぼれていて拭くのに少々手間取った
苦労して机を拭き終えると今度は寝室に布団の準備を始める
寝室は魔理沙と食事を共にした食堂兼居間の廊下を挟んだ斜向かいで
霖之助は文字通り寝る為にしか使っておらず私物は全くと言っていいほどない
部屋の真ん中に押し入れから出してきた柔らかい来客用布団を敷きその上から蚊帳を被せた
ついでにいつも使っている自分の布団も廊下の方へ出しておく、こちらはさほど柔らかくない

(これでいいか、後は魔理沙だな)

居間に戻ると机を拭く時に床に寝かせた魔理沙が相変わらず気持ちよく眠っていた
霖之助はその魔理沙を抱えるように抱きかかえる
寝息とともに漏れる酒臭いにおいと服にしみついた薬品の匂い
それから彼女がいつも使っているシャンプーの香りがした
しゃがんだ状態から立ち上がるとそのまま寝室に向う
霖之助が抱えた魔理沙は軽い
だが彼には昔抱き上げた時よりも大きく感じられた、彼女には失礼だが
寝室に到着すると蚊帳をくぐり布団に寝かせる
布団は腰の辺りまでしか掛けない今夜は熱くなりそうだからだ
布団に寝かせてからしばらく彼女が寝苦しくないか確認するとそのまま部屋を出た
今夜の霖之助の寝床は居間になりそうだ、
その為には居間の机を片付け自分の布団を敷かなければいけない
霖之助が居間の机を部屋の端にやり自分の布団を敷こうとしたとき
コンコンっと控えめなノックが店の方からした、そしてそのノックに続いて若い女性の声で

「もし、もし、店主はおられるか?
 夜分遅くに訪れて申し訳ないがどうしても話がしたいこの扉を開けてはくれないだろうか?」

そう静かに言った、ここは幻想郷妖怪の住まう土地でしかも今の時間は夜だ
女性とは言え素性の分からぬ者に対して戸を開ける訳にはいかない

「失礼だが名を名乗ってはくれないか
 君がここを襲うつもりならとっくに戸を吹き飛ばしていると思うが
 もしかしたら君はそういう妖怪かもしれないからね」

そういう妖怪とは吸血鬼のように招かれた家にしか入れない妖怪や
出来るだけ相手を警戒させないために自分から招き入れさせようとするタイプ
だが前者の吸血鬼は幻想郷には紅魔館の主であるレミリア・スカーレットと
その妹のフランドール・スカーレットの二名しかいない
後者ならこうして霖之助が疑った時点で入るのは不可能に近いのでとっとと帰るはずだ
だがその女性らしき声の主はまだ玄関の向こうにいるようだ
そして霖之助の言葉に対してこう返した

「申し遅れた、私は八雲紫様の式八雲藍本日の事について貴方に話があって来た
 貴方がこの扉を開けるのが嫌と言うのならばこのままでも構わない
 だから少し時間をくれないだろうか?」

八雲紫という名前が出た時霖之助の表情は僅かに曇った
この藍と名乗る紫の式は今日の霖之助の行いを主から聞いて自分をどうにかしに来たのだろうか
そんな考えが彼の脳裏を一瞬掠めたがすぐに否定した
紫ならそんな回りくどい事をしなくても自分で手を下せる
だいいち紫はそんな事をしない、どんなに気に入らなくても幻想郷の者は殺さない
彼女が気に入る気に入らないで幻想郷の住人を痛めつけてしまえば確実にバランスは崩れる
紫が自分の事を気に入らないという者や
それをあからさまな態度に表す者に手を出さないのはそういう事だ
だがそれならば今扉越しに霖之助の前に立っている紫の式は何故ここにいるのだろう
紫に対する非礼の制裁と言うわけではない事は明らかなら彼女がここにいる理由は何なのだろうか
霖之助にはその理由が気がかりだそして

「ここは香霖堂だ店主は人妖来る者も人妖問わず
 だから君を断る道理はない、今鍵を開けるから入るといい」
 
今日の事もあり八雲と名のついた式をむざむざ帰す訳にもいかず霖之助は玄関の鍵を開けた






玄関を開けると肩にかからない程度の短い金髪の上に
奇妙な帽子を載せ九つの豊かな尻尾を蓄えた女性が姿を現した
先ほど藍と名乗ったその女性は扉を開けた霖之助に一礼すると店内へと歩みを進めた
霖之助は手ごろな椅子を彼女に進めると
奥に戻り来客用の湯呑みと急須を取り出してお茶の支度を始める
彼女は遠慮したが客を持て成さないのは不敬に当たると言って霖之助が咎めた
茶が入ると彼女の前に出し少し暗かったのでランプの火を少し大きくする
薄暗かった店内がカウンターを中心に少し明るくなった
一息ついたところで霖之助は彼女に用件を聞く

「っで藍だったかな、こんな時間に何の用件かな?」

「貴方ならば言わなくても分かっているのだろう?」

そう言われて霖之助は少し黙り込む
つい数時間前の事だが何日も前のような感覚がした

「今日の紫と僕の間で有った行き違いについてかな?
 この事を知っているという事は紫から聞いたのかい」

「紫様は今日の事については何も 
 ついでに言えば私がここに来たのも紫様の命令ではなく自身の独断だ」

「式なのにかい?」

「式だからこそだ」

もう一口、藍は湯呑みに口をつける

「紫様と貴方の行き違いがどちらが悪いかは知らない
 全面的に紫様に非があるかもしれないし貴方に非があるかもしれない
 そのどちらかだったとしても私は紫様に寂しげな顔で一人酒をしてほしくはないのだ」

九尾の式は静かのそう語る、藍のこの言葉に霖之助は切り返せなかった
今日の自分と紫の行き違いで紫が傷付き間接的に藍にまで被害を与えたからだ
いや藍だけではないおそらく魔理沙もいつもと様子の違う霖之助を心配していたに違いない
だからあんなに大酒を飲んで彼の気を紛らわそうとしたのだ、
そして何より霖之助自身も深い自己嫌悪の闇に囚われた
もし今こうして藍が紫の為に香霖堂に来ていなければ
紫と霖之助のわだかまりはそのままだったのかもしれない
藍がこの香霖堂に来た理由それは少しでも紫と霖之助のわだかまりを溶かそうとしての事だ
藍の気持ちを無言でくみ取ると
霖之助はカウンター端に置いてある黒塗りの湯飲みを手に取り藍に見せた

「これは……………以前紫様がどこかへ持っていかれた物と同じ湯呑み
 紫様はこの湯のみをここに?」
 
「あぁ、茶が飲みたいのなら湯呑みくらい持参しろと言ったら次から持ってきたものだよ
 さっきまでなら君に返そうとした所なんだが…………もう少し置かせてもらってもいいかな?」

一人懐かしむような笑みを浮かべる霖之助の申し出を藍は承諾した
そしてもう一つ彼女に頼みごとをした

「明日の夕方、日が沈む前がいいな
 その時間帯にここに来るよう紫に伝えておいてくれないかい?」

「夕食の誘いでも?」

「それもあるけど、少し話がしたいからね」

霖之助がそれだけ伝えると藍は再び夜分の訪問を詫び玄関の前で一礼して闇夜に飛び立っていった
それから霖之助は明日の夕食の献立を考えて眠りについた







昨日遅くまで飲んでいた紫は翌日の昼過ぎになって起きだした
そして起床後の身支度をした後、藍に余計な事をしてくれたわね
っと一言だけつぶやき食事を始めた、香霖堂に行った事はバレているようだ
食事中の紫は終始無言だったのでそれに伴い藍も無言になる
こうして会話をほとんど挟まない食事はいつもより大分早く終わった
藍は食器の後片付けを澄ますとまず昨夜の事を詫びた

「紫様、昨夜の命令に背いた勝手な行動申し訳ございませんでした」

「私はあなたに早く寝るように命じたの
 それがどうしてあの店に行くことになるのかしら?」

「それについてはどの言葉を用いても言い訳にしかなりません
 ですが私に処罰を下される前に香霖堂からの言伝をおききください」

「……………言伝?」

キッと紫が藍を睨みつける、目が内容を早く伝えるように命じている
その目線に藍は別段焦ることもなく霖之助から預かった言伝を伝えた

「今日の夕刻、日が沈む直前に店の方まで来てほしいと申しておりました」

言伝を聞いた紫は一瞬戸惑ったような表情を見せたがすぐにその表情を消すと
藍に命令違反の罰は帰ってから与えると言い
まだ昼過ぎだと言うのに出かける為の服の用意をさせた





日ごとに多くなる蛙の鳴き声が少しやかましい
店内に溜まった夕日のおかげで香霖堂はまた違った印象を受ける
棚や床に積まれた商品やカウンターの向かいに掛けられた柱時計
その全てが夕日に包まれ等しく時を止めていた
そしてそんな中唯一時の動いているこの店の主、森近霖之助は音楽を聴いている
音楽を聴くといってもゼンマイ式の大型蓄音器ではなく
超小型の薄型携帯音楽プレイヤーを首からぶら下げ
頭には今回の騒動の発端であるヘッドフォンを掛け音楽を聞いている
無論この道具は外の技術の固まりで普段なら霖之助に使える代物ではないが
昨日紫が置いて行った音楽プレイヤーをなんとなくいじっていたら
音楽が聞けたのでその様にしている、ついでに言うと止め方が分からない
っと言うよりか止めると二度と聴くまでの動作に持っていくことが出来なさそうだ
せっかく聞けたのだから紫が来るまでの間に中に入っている音楽を聞くことにした
肝心の音楽だがテンポが速く聞いた事のないような音や言葉が入り混じったものや
比較的緩やかなテンポでピアノやフォークギターの音色が入り混じる歌などがあり
霖之助はどちらかと言えば緩やかな方が好きだった
歌の内容は男女の関係を歌ったもの、友情を歌ったもの、思い出を歌ったもの
と実に様々な内容の歌詞で溢れかえっていた
わざわざ霖之助が紫の置き土産で音楽を聴いているのは
彼女が来た時に少しでも多くの言葉を紡ぐ為だ
昨日の晩は訪ねてきた藍に明日紫に来るように伝えるよう言ったが
いざその時になるとどんな言葉で彼女の機嫌を直そうか考えが及ばない
紫ならどんな言葉でも涼しい顔で返してきそうだからだ
そして店に置いてある自分の湯飲みを手に取って最後にさよならと言って二度と香霖堂に来なくなる
そんな最悪の事態は勘弁願いたかった
確かに霖之助は彼女の掴み所のない態度や度の過ぎた気まぐれ、
心の底を見透かされる言動が苦手だが
同時に風情を楽しむ心や物事の奇抜な発想、
そして何より日々の取り留めのない話をする時の純粋な目が好きだ
この香霖堂の日常においてもはや欠くことの出来なくなった彼女がこの店に来なくなるという事は
香霖堂の日常を傾けるという事になる
紫がこれまで香霖堂で過ごした時間は魔理沙や霊夢に比べれば数えるほどだが
これからなら魔理沙や霊夢が過ごした時間の方が数えるほどになりえるのだ
そしてあれだけ店の中に溜まっていた夕日が抜け落ちランプの光が必要になる頃
香霖堂のカウベルがリンリンっと客人の到着を知らせた

「ごきげんよう、霖之助さん」

扉を開けたのはまさしく八雲紫本人
紫にしては珍しく自身の能力を使わず自らの出て玄関を開けて来たので霖之助は少々戸惑った
今日の彼女は腰に届くほどの金の髪を一つに結いあげ
洒落た細工の利いたかんざしで止めている
それに合わせて来ているものはドレスタイプの洋服ではなく
裾や袖から中心に掛けて次第に淡い色合いになるようにグラディエーションの施された紫の浴衣で
帯は先ほどまでの夕日と同じ赤色だった

「いらっしゃい、待っていたよ珍しいね君が浴衣だなんて始めて見るかな」

「だって今日は夕涼みのお誘いでしょう?この格好の方がいいと思って
 変だったかしら?」

「いや、そんな事はないよく似合っているよ」

「そう、ありがとう」

霖之助の返答に紫はぎこちなく微笑んだ、それにつられて霖之助もぎこちなく微笑む
どことなく奇妙なわだかまりのある挨拶で今日の二人は出会った
本当はお互いはもうとっくにお互いを許し合っているのに
お互いがお互いの事をまだ根に持っているのではないかと勘ぐってしまう
事実それから数回言葉をやる取りした後すっかり無言になってしまった
これではまずいと思ったのか霖之助はあの湯呑みにお茶を入れて差し出す
お茶を受け取った紫は軽く礼だけ言うと湯呑みの水面をじっと見つめた
店内にまた深い沈黙のとばりが下りる
やがて紫が茶を飲み終える頃になって決心のついた霖之助がこう切り出した

「紫、少し外を歩かないか?少し行った小川で蛍が見られるんだ」

「いいんじゃないかしらでも
 歩くよりも私の能力を使った方が早いわよ?」

「少し話がしたくてね、だから今日はゆっくり歩きたいんだ」

その旨を伝えると紫も同意した、そしてややあって行燈を用意すると
二人連れだって外へ出た





宵闇の中を行燈の光のみが照らす
紫と霖之助はお互いの肩と肩がこぶし一つ分ほど開く程度の間隔で並んで歩いていた
歩くたびに紫の下駄の音がカランコロンと闇に響く
彼女が一緒にいいるせいか妖怪はおろか獣すら寄ってこない
その姿を見て寄って来ないというよりは存在そのものが元々ない様なほど静かだった
それは夜道を歩くうえでは便利かもしれないが
見方を変えればとても寂しいものだと霖之助は思う
紫とこうして夜道を歩くのは彼にとって初めての事だがこの調子なら
昼間でも彼女の周りには好んで寄ってくる妖怪は少ないだろう
そういう報われない孤独を紫自身が辛いと感じているかどうかは別だが
こういう事をまじまじと見せつけられた霖之助には少々いたたまれない気持ちになった
彼女は自分に寄って来る者がいないから
自分から幻想郷のあちこちに出没するのではないだろうか?
彼には幻想郷の母である紫に幻想郷での居場所が少なく思えた
霖之助は母の顔を覚えていないし共に過ごした思い出も覚えていない
ただ一人だったが孤独はなかったそれにある程度なら人のコミュニティにも入れたし
幻想郷に来てからは皆が別け隔てなく接してくれた、だが彼女はどうだろう?
幻想郷の母であるはずの彼女を好き好んで接する人物はあまりに少なすぎないだろうか
霖之助の周りに紫の事を別段苦手ではないと言う者は片手で足りるが
苦手だという者は全ての指を足してもまだ足りない
妖怪たちの居場所を造るために、妖怪にとってよりよい居場所にしようとして幻想郷を造った
そんな彼女に対する居場所はあまりにも少ないのではないのだろうか?
そして昨日自分はその僅かな居場所でありえたであろう場所を奪おうとした
そう思うと昨日よりも深い自己嫌悪が胸の中に焼付いた

「霖之助さん、いい月ね」

「ん、あぁ満月には一夜足りないが薄雲が掛っていて中々興がある」

深い思考の中へ落ちていた最中にいきなり声を掛けられたので反応が少し遅れてしまった
見上げるとまだ丸に成りきれていない小望月が薄い雲のかかった空に浮かんでいるのが見える
明るさは満月と同じくらいだが前途の通り薄い雲がかかっているのでその光は少々弱々しく見えた

「だが今日の本命は空の月じゃなくて地上のホタルだ
 今からい向かう場所は人里から離れているからあまり人に知られていない秘境だよ」

「そんな場所を教えてもらっていいのかしら?それともお代は別料金なの?」

「とんでもない、生き物は僕の店では取り扱っていないんだ自然は生き物だからね」

はじめは口数が少なかった二人も歩くにつれて徐々に口数が増していった
お互いが面と向かって謝る謝罪こそ無いものの冗談の言い合いや軽い皮肉の言い合いで
それとなく自分の意を伝えあう
あの道具の使い道は君に先を越されたが次は君が来る前に必ずといてみせる、だとか
もう頼まれてもヒントぐらいしか教えてあげないわ、だとか
そんな風にお互いが許し合っているのが分かって二人で呆れて笑った
そして話に花が咲くころになって目的地の小川へと着いた

「いいものね、星が目の前にあるみたいよ」

小川に出た時、紫はただ感嘆しその言葉を漏らした
妖怪の賢者を納得させたその光景は一言に表せないものだった
小川のせせらぎが聞こえる中で暗闇の中を無数の光の粒がついたり消えたり
ゆらゆらと飛んだりするものやただ葉っぱに止まりじっとしているもの
夜を照らす月光と比べれば弱々しく見えるかもしれないが
暗闇に自分の居場所を告げるその光は命の光であり蛍の生命の全てを語っていた

「喜んでいただけると僕の冥利に尽きるね」

蛍が逃げてしまわないように行燈の火を消す
彼らが精一杯の光を見せる中で行燈の明かりは失礼だ

「商売もこの調子ならもう少しはまともなのにねぇ」

「商売もこんな調子さ、気に入った客には手厚いサービスをね」

そういうと店の時と同じ様に再び笑みがこぼれた
だが先ほどの様なぎこちないものではなくお互いの心の底からのものだ
紫と霖之助は小川の土手に沿って歩き始める
ここに来るまでより少し遅めに歩き今夜の食事の話をした

「今晩は天ぷらを揚げようと思ってね
 それも揚げたのを置いておくのではなく揚げたてを塩で食べるのがいいと思うんだ」

「あら、普段食事なんて片手間程度にしか取らないのに今日は随分と手が込んでるのね」

「片手間じゃないさ、偶にこういった趣向を凝らした料理を嗜むから
 普段は質素なだけなんだよ」

「ならお酒の方もちゃんと趣向を凝らしたんでしょうね?」

「抜かりはないよ、なんせ今日の昼間を返上して蔵から探し出した名酒を用意したからね」

「ふふふ、飲むのがもったいないわね」

「道具は使われなくては意味がない、酒は飲まれなくては酒本来の意味を成さないものだよ」

小川の土手に沿って歩いて来た二人だったが
半刻ほど歩いたところで蛍は一匹、二匹を数えて居なくなってしまった

「この辺りで帰ろう、君も夕食が恋しいころだろう?」

「淑女に失礼な質問ですわ、でも確かに食事が恋しい時間ね」

再び行燈に火をつけ土手を下りる
今日の所は蛍の光は見納めだが来る時に紫が言った月を見ながら帰るのも悪くない
霖之助がそう思って彼女を先導しようとしたとき

「やっぱり駄目ね、馴れない下駄で歩くのは」

「足でも痛めたのかい?」

「そこまで大袈裟じゃないのだけれど、ちょっと足が疲れたわ
 みっともない話だけれど手を貸してくれないかしら?」

「あぁ、どうぞ」

霖之助は紫に手を差し出したが紫が握ったのは腕全体だった
正しく言うなら腕を組んで来たのだ
そして体の重心を霖之助の方向に少し傾けている

「…………紫、手を貸してほしいと君は言ったね?」

「えぇ、言ったわだからこうして手を借りてるじゃないの」

確かにこれなら少々遅くなっても紫には負担があまりかからない
もたれかかった紫の体から伝わる柔らかな感触と温かい体温
それは浮世離れした八雲紫と言う大妖怪が一つの生き物であり
また彼女が幻想郷に住まう少女達と何ら変わりない事の表れだった

(元々彼女との関係を悪化させないための取り計らいだったんだが 
 これでは昨日より親しくなっているんじゃないか?)

だが悪くないかもしれない、霖之助はそう思う
彼女の数少ない幻想郷での居場所になってやるのも悪くないと
香霖堂は全てを拒まない、そこに例外はない例え比類なき大妖怪の八雲紫でも
霖之助は紫を支えたまま空を見上げる
空には来た時と同じように小望月、別名幾望が薄い雲のヴェールをまとっていた
少々おこがましいが願わくば自分は彼女の居場所を作る希望でありたいと
そんな事を頭の片隅に願った

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