十四朗亭の出納帳

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愛々傘  上

以前スレに投下された小傘霖SSが凄くツボにハマったので、
それをリスペクトして私も小傘霖を書いてみた。

上下ぐらいの構成にしようかなぁ~と思ったら、
予想に反して上中下になりそうな予感がしてきた。

完成してから上げるもんですね、えぇ。


『愛々傘 上』


小傘、霖之助、魔理沙



最後に見たのが視界全体を埋め尽くす程の巨大な光だったと言う事は覚えている。
だがその巨大な光に飲み込まれてからどうなったのかは分からない。

多分気を失って、そのまま地面に落下したのだろう。
空中で相手の攻撃を受けて気を失ったのだからそれは当然だ。

下は確か森だったと思う。
鬱蒼とした緑の絨毯に、意識を手放した自分は落下して行った。

そうなれば当然目が覚めた時に、横たわっているべき場所は森の中と言う事になる。

だが現状は自らが予測していたものと大分違っていた。

まず自分が布団の上で寝かされている事。
そして体のあちらこちらに有った傷がしっかりと手当されていた事だ。
落下したときに木の枝などで切った傷は、清潔な包帯や綿紗で処置されているのが分かった。

それに着ている服も普段自分が着ている服とは違う。
茶色いブカブカのガウンを着ていた。
着替えた覚えはないので、恐らく手当をしてくれた人が着替させてくれたんだろう。
体にこれだけの傷を負えば当然服も所々が破れているに違いない。

自信の体の一部である化傘も、しっかり修理された状態で小傘の横に寝かされていた。

誰かが助けてくれたと言うことだろうか………だとしたら一体誰が。
現状を飲み込みきれず、小傘は二、三度部屋全体を見渡した。

まず部屋の隅には大きな和箪笥。
その反対側には、執筆作業等をするための小さな机が置いてある。
そして机の近くには手元を照らすための行灯。

目立つ家具はそれだけだった。

質素な部屋だと小傘は思う。
本当に必要最低限の物しか置かれていない。

この部屋の主が元々質素な生活を好むのか、
それとも純粋に寝室としか使わないために置いてある物が少ないのか。

そのどちらにせよこういった生活をするのは、
老人か世捨て人と相場が決まっている。

小傘はゆっくりと布団から体を起こす。
少々傷口が痛んだが、体のいたる所に傷を負っているのでこの程度は仕方がない。

そして化傘を抱えると、小傘は部屋の襖を開けて廊下へと出た。

小傘の心にしっくりくる居心地の良い部屋だったが、何時までもこうしては居られない。

とりあえず会ってお礼を言わなければ。
手当と傘の修理、それから温かい寝床を用意してくれたこの家の主に。

まだふらつく足で小傘は廊下を進んで行く。
ブカブカのガウンを着ている状態なので余計に歩きづらい。

仕方が無いので裾をたくし上げ、余った裾を太股の辺りで結んで止める。
これで幾らか行動しやすくなった。

廊下を歩いている途中、台所や居間などを見つけたが、生憎誰も居なかった。

小傘は廊下を更に進む。
やがて小傘は廊下の一番奥へと辿り着いた。

ふぅ、と壁に寄りかかって一息つく。
寝室からここまで大した距離では無いのに、随分と歩いた気分だ。

怪我を負った体と見知らぬこの家がそう思わせるのだろう。
小傘は自身を落ち着けるために深呼吸を一つする。

湿っぽい空気と年季を含んだ香り。
この建物全体に漂うその香りは、何処か懐かしく暖かかった。

肺に空気を送り込む度に頭の中が透明に澄み渡って行く。
ここは本当に居心地がいい場所だ。









つい数時間程前の話になるが、霖之助は魔法の森上空で繰り広げられていた弾幕勝負を観戦していた。

無縁塚への仕入から帰宅する途中に偶々発見し、そのまま見入ってしまった。
弾幕を見る限りでは対峙している二人の内一人は魔理沙らしい。

もう一方の方には見覚えが無い。
水色の髪に、紫色をした大きな傘を持った少女。

ブン! とその少女が傘を振るとそこに弾幕が生まれ、魔理沙に向けて飛んで行く。
だが発射のタイミングが甘く、魔理沙はいとも簡単にそれをかわしてしまう。

魔理沙がお返しに弾幕を放つ。
星の形をした弾幕が次々とその少女へと飛んで行った。

いつか彼女と見た流星群を彷彿とさせるその弾幕は、
思い出の中にあるようにな綺麗に光るだけの物ではなく、
じわじわと相手を削り、袋小路へと追い込んで行く。

彼女も随分と理詰めな戦いが出来るようになったものだ。
ただ大きな攻撃を撃っているだけの昔に比べればその差は天と地ほどある。

霖之助は商品が満載された大八車に腰を掛けると、
空を見上げたまま煙管に刻み煙草を入れ、火を灯す。

魔理沙と戦っている相手が誰かは知らないが、
このままだと良くて数分持つかどうか。

派手な弾幕が好きな彼女の事だ。
恐らく止めは観ている者が感服する程派手な技で決めに掛かるだろう。

今の魔理沙はそうする為に確実に決められるタイミングを探している。

多分魔理沙の頭の中にある決着の図はマスタースパークによる一撃必殺だ。
確実に当てる為には左右上下への回避を封じた上でのスペルカード発動。
大技を当てるならこれしかない。

相手の弾幕が一直線に魔理沙へ向かう。
魔理沙は寸前でそれをかわすと、右方向へ鉄砲玉の様に勢い良く飛んだ。

魔理沙が飛んだ起動には星型の弾幕が設置され。
一斉に相手へと向かって行く。

「決まったかな」

霖之助はそう呟いて、煙管の灰を携帯用灰皿の中へ落とす。

相手の動きを見る限り相手はさほど戦闘は強くないと見える。
そしてそんな凡庸な輩がかわせる程、魔理沙のフィニッシュは甘くない。

流れ星となって相手に向かう弾幕は、
途中で全ての弾幕の速度が変わり、不規則な起動を描いて目標へと向かう。

全ての流れ星がランダムなタイミングで向かってくるので、避け辛く。
その囲むような起動は、その場所からの移動を完璧に封じる。

霖之助の予想通り、その対戦相手も見事に魔理沙の作戦に嵌っていた。
流れ星に纏わり付かれ、左右上下への回避を殺されている。

魔理沙はその隙を見逃さなかった。

彼女が小さなカードを頭上へと投げる。
そのカードは魔理沙の頭上で爆ぜ、彼女の真正面に魔法陣を作り出した。

その魔法陣に向けて魔理沙は、懐から取り出したミニ八卦炉を構える

不意に弾幕に囲まれていた相手が魔理沙の方へ顔を向けた。
だが、今から全てを理解してかわすには余りにも反応が遅かった。

魔理沙の目線と相手の目線が有った瞬間にミニ八卦炉が火を噴く。

極太の光が柱となって空中に轟き一瞬で相手を飲み込む。
何時見ても感服する威力だ。
ミニ八卦炉は霖之助が魔理沙に与えたものだが、
あそこまで完璧に使いこなされると道具屋冥利に尽きる。

発射からやや遅れて衝撃波が霖之助元までやって来た。
木々の枝や葉が揺れ、霖之助の髪を弄ぶ。

やがて光が収縮し、先程まで対峙していた相手を吐き出した。
光の中から開放された相手は力を失いそのまま森へと落下して行く。

しばらく魔理沙は上空からその様子を伺っていたが、
地上で観戦している霖之助を見つけると、大きく手を振ってすぐに飛んで来た。

「よぉ香霖、勝ったぜ!」

箒から勢いよく飛び降りた魔理沙は、開口一番に笑顔でそう言った。

「あぁ、観てたから分るよ。
 以前より相手を追い込むのが上手くなったね」

「ははは、でもまだまだ駄目だ。霊夢には逃げられちまう。
 あんな戦法が通じるのはそこら辺に居る普通の妖怪ぐらいだ」

「それでも十分だと思うけどね」

「こんなもんで満足してらんないぜ。もっと作戦の研究をしないとな」

照れた様に後頭部を掻いて笑う魔理沙に調子を合わせて、霖之助も小さく笑った。

「そう言えば香霖はまたガラクタ拾いの帰りか?」

魔理沙が無縁塚で拾ってきた道具を満載した大八車を指さして言った。

「ガラクタじゃない宝の山だ。
 っと言うと君みたいな言訳になるな」

「なんだその言い方は。まるで私の言分が間違っているみたいじゃないか」
 
「いや僕は何も。とりあえず久しぶりに無縁塚に行ったものだから、
 随分と豊作で持ち帰るのが大変だったんだ。よかったら………」

「あぁ、そうだ紅魔館の図書館へ行く予定してたんだ。
 いやー残念だぜ、私も香霖のお手伝いがしたかったのに」

霖之助の言葉を聞くなり魔理沙はいそいそと箒に跨り、
早口で霖之助と目を合わせずに言った。

「もう少し表情を隠して言訳をすると言う事が出来ないものかな。
 まぁ、最初から期待はしてなかったよ」

箒に跨った魔理沙が地面を蹴る。
タン! っという短い音と共に魔理沙の体が中へ浮かんだ。

「あぁ、そうだ。さっきまで私と弾幕ごっこしてた奴なんだけど」

何かを思い出したように魔理沙が霖之助に声を掛ける。

「よかったら介抱してやってくれないか?」

「雨が降りそうだ」

「何だかすごく失礼な切り返しだぞ」

ジト目で睨む魔理沙をよそに霖之助は「何故?」と聞き返した。

「きっとお前なら興味を持って接しそうな妖怪だからだよ。それじゃーな!」

それだけ言うと魔理沙は地面から急上昇し、物凄い速さで飛んで行った。
彼女が居なくなった事で霖之助の元に静寂の波が押し寄せる。

「僕が興味を持つ………ねぇ」

先程魔理沙の言った一言が気になる。
自身が興味を持つ妖怪とは一体何なのだろうか。

本が好きな妖怪か、外の世界に詳しい妖怪なのか、
何故自分の興味を引く存在なのか皆目見当もつかない。

「助けてみるか」

魔理沙のアレは嘘を言っている風ではなかったし、
彼女にああ言われると興味が湧いて来た。

霖之助は大八車を林道の端っこへ停車させ、
魔理沙にやられた妖怪が落ちたであろう地点へと足を進めた。









森の中はまだ昼間だと言うのにうす暗く、じめじめとしていた。
背の高い木々が所狭しと乱立し、
その枝と葉によって緑の天井を作っている為に、日の光はあまり届かない。

足元にはシダ類の植物や魔力を含んだキノコが生え、
薄暗い森の中をより一層陰惨に見せている。
日の光が地面まで届かない為に、森の低いところにはそうした植物や菌類が繁殖するのだ。

林道から少し離れただけだというのに、
先程まで自分が歩いていた森とは、全く違う場所を歩いている感覚に陥る。

湿っぽい土の匂いに満ちた森は大きな口を開けて自身を誘っている様に思えた。

先程の妖怪少女は一体何処に墜落したのだろうか。
木々に視界が遮られて正確な距離は分からないが、
先程魔理沙と撃ち合っていたのは確かこの付近のはずだ。

「ん? これは………」

霖之助から数メートル先に何かがあるのを見つけた。
よく目を凝らしてみてみる。

それは傘だった。
大きな傘で全体が紫色をしている。

間違いない、さっきの妖怪少女が持っていたものだ。

「随分と綺麗に刺さっているな」

傘はまるで古いお話に出てくる伝説の剣の様に、深く地面に刺さっていた。
ただの傘でもこんな風に地面に刺さっていると結構様になる。

「とは言えこのままにしておくのも何だ、引き抜いてやるか」

霖之助は傘の柄に手を掛ける。
その瞬間、何か冷たい感触が腕に纏わり付いた。

思わず手を離して一歩後ろに飛び退く。

「………驚いた、化傘だったのか」

先程弾幕ごっこを観戦していた時には、遠過ぎてよく見えなかったが、
この傘には大きな目玉と有る。

間違いなく妖怪に分類される。
それも道具から妖怪へと転じた付喪神(ばけどうぐ)だ。

伝承や噂等で、その存在を知ってはいたがこうして本物に会うのは初めてだ。

「となると、あの子も付喪神と言う事になるな」

人形を取る付喪神の形態からして、それはまず間違いないだろう。

この道具と人形の関係は半霊と半人によく似ている。
どちらもその人物その物であり、同じ魂を分けた同一人物だからだ。

ここに来て霖之助は、魔理沙が言っていた言葉の意味を初めて理解した。
確かに道具から転じた付喪神に、霖之助が興味を抱かない訳がない。

「君の片割れは何処に居るのかな?
 素直に教えてくれれば地面から引っこ抜いてあげるし、
 君の修理と君の相棒の手当もしてあげよう」

化傘はその言葉を受けて、しばらく霖之助の顔をジロジロ見ていたが、
特に害は無いと判断したらしく、長い舌を上下に振って了承した。
 
霖之助は化傘の柄を握り、力を入れて地面から引き抜いてやる。

内部の受け骨が何本か折れているようだが、この程度なら大した手間もなく修理出来るだろう。

引き抜かれた化傘は必死になって大きな目玉と長い舌を上下させた。
お辞儀でもしているつもりなのだろうか。
まぁ、こうしてありがたいと言う気持ちを表に出されるのは嫌いではない。

「さて、次は君の相棒の番だよ。あの子は何処へ落ちたんだい?」

その言葉を聞くなり化傘はビーンと霖之助から見て、右方向へ舌を伸ばした。
その方向に彼女が居ると言う事だろうか。

それにしても大きな化傘が、
自らの舌を使って道案内をすると言うのは、些かシュールな光景だ。

とりあえず霖之助は化傘の道案内に従って、また森の中を進む。
そして倒木跨ぎ、草木を掻き分けて言った所に彼女は居た。

このじめじめとした森の地面に彼女は仰向けに倒れていた。
当然ながら意識はない。

ただ、規則正しく胸が上下に動いているところを見るとそこまで重症では無さそうだ。
流石妖怪の体と言ったところか。

だが大事には至っていないとは言え、
所々破れた彼女の衣服からは痛々しい切傷が幾つも顔を覗かせていた。

落下の際に木の枝で切ったのだろう。
彼女が落ちて来たと思われる頭上には、ぽっかりと木の天井が穴を開けていた。

心配そうな目で化傘が少女を見つめる。
そんな視線にいたたまれなくなった霖之助は化傘を少女の胸に抱かせ、
自分は少女を抱き上げ、大八車を停車させた場所へ彼女を抱えて戻った。

当たり前だが少女には体温が有り、小さな鼓動も感じられた。
やはり付喪神と言えど普通の妖怪と何ら変わりないようだ。










何かが動く気配と床が軋む音がしたので、霖之助は後ろを振り向いた。

振り向くとそこにはやはりと言うべきか、
ぶかぶかのガウンを着た少女が化傘を抱いて立っていた。

歩きにくかったのだろう。
ガウンの裾を太股の辺りで結んで歩き易くしている。

服を脱がせて怪我の手当をした後、手頃な衣服を探した結果、
商品として置いてあったガウンを彼女に着せたのだ。

空を思わせるような淡い水色の髪。
目を瞑っていたので分からなかったが、
髪と同じ色をした右目、それから右とは異なり赤い色をした左目。
それらが綺麗に収まっていた。

左右で色の違う双眸が驚いた様子で店内を見渡す。

「やぁ、目が覚めたようだね」

霖之助はなるべく警戒させない為に、穏やかな声で彼女に呼び掛けた。

少女は声を掛けられると同時にビクリと体を震わせたが、
霖之助が自分をここへ運び、手当をしたのだと悟ったらしく、
ぺこりと頭を下げて言った。

「助けていただきありがとうございました。
 わた………わちきは付喪神(ばけどうぐ)の多々良小傘です」

「早めに目が覚めてよかったよ。
 僕は森近霖之助、この古道具屋香霖堂の店主をやっている」

小傘と名乗った付喪神の少女は、キョトンとした顔で霖之助の顔を見つめた。

「どうかしたのかな?」

「え? ううん、何でもない。
 ただお爺ちゃんでも無ければ、世捨て人でも無さそうだなぁって思って」 

「っむ、老人に見られていたとは………
 確かに遠目から見れば白髪に見えなくもないか」

霖之助は自身の髪を摘まんで、見つめる。
白の強い銀髪は昼下がりの気怠げな日光を反射して、気怠そうに輝いた。

「そういう意味じゃないんだけどなぁ………」

「まぁいい、体の具合はどうかな?」

「はい、とってもいいです。
 それにこの子もちゃんと直してもらって」

「気にする事は無いよ。どうせ魔理沙がした事だ。

 それに、君に興味が湧いたんでね」

「わた………わちきに興味?」

「そう、さっき君が言っていた様に、
 君は道具から転じた妖怪、付喪神だからね」
 
「ふーん、わた………わちきに興味だなんてすっごく物好き」

「さっきから気になっていたんだが、
 別に慣れない一人称を無理して使わなくてもいいんじゃないかな」

「別にキャラを作ってる訳じゃないよ。全然違うんだからね。
 でも言い易いからこれからは私って言うね」

「………あぁ、そうかい」

霖之助は小さな椅子をカウンターの前へと出し、小傘をそこへ手招きした。
小傘が用意した椅子に座るのを確認して、霖之助も自分の椅子へ座った。

「出来れば余り動いて欲しくなかったんだけどね。
 まだ全身の傷が塞がってないんだろう?」

「うん、まだちょっと痛い。でも、早くお礼が言いたくって。」

座ったままの状態でぺこりと頭を下げる小傘。
正直ここまで感謝されるとは思っていなかった。

いや、これが正常な反応か。
今まで相手にしてきた連中がおかしかったのだ。

「それにしても………ここは色々な道具で一杯ね」

小傘がキョロキョロと周囲を見渡す。
香霖堂に置かれた道具達は小傘にとって、どれもが懐かしく映るのだろうか。
まるで暫く会っていない兄弟達を身るような目をしている。

愛々傘_上


「どれも外の世界の古い道具だよ。と言っても稀に新しい物も入ってくるけどね。
 外の世界では技術の新陳代謝が激しいらしい。
 一見新しく見える道具も少し旧式になるだけで、すぐ幻想郷へ流れ着いて来る」

「まだ使えるのに捨てちゃうの?」

小傘が捨てるの部分を少し強調して言った。

「そう、新しい道具が出来れば古い道具はお役御免なんだ」

「寂しいね、まだ訳に立てるのに捨てられちゃうなんて」

また捨てると言う部分を強調して言った。
出来るだけそんな事は、意識の外にやってしまいたいと言った感情が見受けられる。

「あぁ、とても寂しい」

「でも貴方がこの子達をまた役に立ててもらえるようにしてるんでしょ?」

「あぁ、一旦役目を終えた道具達が、
 次の持ち主を見つける為に過ごす場所、それが香霖堂さ」

「次のご主人を見つける場所………かぁ」

小傘は霖之助の言葉を自分の口で繰り返した。
何か思う事が有ったのだろうか、憂いを含んだ様な表情で黙り込んでしまった。

重苦しい沈黙が店内を圧迫する。
彼女の胸中もこんな風に沈んでいるのだろうか。

だとしたら彼女と出会ったばかりの自分に掛けてやる言葉なんて存在しないだろう。
彼女の事を殆ど知らない霖之助が、彼女に何かを言える義理は持ち合わせていない。

「ねぇ、ここの子達は上手く次のご主人を見つけられるの?」

「見つけられる道具も有れば、そうでない道具も有る。
 お客が求める道具とその道具が咬み合わなければ、
 ずっとその道具はここで待つ事になるんだよ」

「もうずっと待ってる子も居るの?」

「居る。この店が開店した当初から、
 ずっと新しい主を待っている道具も当然居るよ」

「長いのね」

「長いよ、でも道具の時間だから道具は気にしていないと思う」

「うん、私もご主人が居た時間より、
 ご主人が居なかった時間の方がずっと長いから分かる」

にへらと笑ってそう言った小傘だったが、
本心からの笑顔で無いと言う事は火を見るより明らかだった。

「ねぇ、店主さん」

「なんだい?」

「お願いが有るの。出会ってまだ少ししか経っていないのに、
 少々厚かましいお願いになると思うけど」

「言ってみるといい」

スゥーっと小傘が息を大きく吸い込む。
まるでこの店の空気を堪能しているようだ。

やがて大きな深呼吸を終えた小傘がゆっくりと口を開いた。

「私をこの店の商品として置いていただけませんか」

「断る。この店の商品は道具だ。
 生き物を取り扱う事は自らの生業を穢す事になる」

道具であれば古今東西、良し悪しや、
曰く付きを問わずに扱うのが香霖堂の主義だが、
生き物を取り扱うと言うボーダーラインは決して超えない。

それが香霖堂店、森近霖之助がまず最初に自らに課せた掟だからだ。

「うぅ、即答されちゃった。
 やっぱり私みたいなデザインの悪い傘はダメかぁ………」

「誤解が無い様に言っておくと。君のデザインは関係ないよ。
 僕が断ったのは僕の、ひいてはこの店のポリシーに関わる事だからだよ。
 生き物に価値は付けない、それを破りたくはないんでね」

「どうして? 私は道具だよ。
 ご主人がずっとそこに居ろって言われれば、
 何時まででもそこで待ってるし、どれだけ待たされても嫌な顔一つしないよ」

「いや、生き物だ。言われてそうするのならそれはもう生き物さ」

「分からないよ、店主さんの言ってる言葉の意味が」

「それで結構」

小傘は視線を落とし店内の床を見つめた。
ここに置いて貰う事を断られて、少し気持ちが沈んでいるのだろう。

だが同時にその表情には諦めの色も見える。

霖之助は深く溜息をつく。
いっそ悪態でも吐いてくれた方が追い出す理由も出来て対処しやすいというのに。

こう言う相手が一番厄介だ。
これでは冷たく突き放すことも出来ない。

仕方がない、本当に仕方がない。

「まぁ………君が新しいご主人を見つけるまで、
 ここに居させて上げるのは吝かではないよ」

「え?」

「少しの間ならここに居ても構わないって事さ。
 僕の商売の邪魔をしない程度には、ここの客に自分を売り込んくれて構わない」

「えっと、その………本当にいいの?」

「ただしこの店の商品として自分を売り込むのは禁止する。
 君が新しいご主人を見つけても、僕はその人物から対価を受け取らない。
 あくまで多々良小傘の新しいご主人探しを手伝ってあげるだけだ」

「うん! ありがとう店主さん!」

小傘と化傘が一緒に笑った。
その笑顔は雨が降った後に雲の切れ間から見える太陽の様に明るく、晴れ晴れとしていた。

傘の付喪神の割には太陽がよく似合いそうな子だ。

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