十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

プロフィール

十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
メッセ&スカイプは大歓迎です
SkypeID『Brassp905』


リンクはフリーなので
どなたでもどうぞ
もしご連絡いただければ高所から
イヤッホォォォォ!!します


PS3アカウント『auscam』
大体マルチ対応ゲームやってると思います。

バナー

Web拍手

Twitter

 

入店者

検索フォーム

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

貴方の日常へ

ふらーりと書きたくなった霊霖です。
『風邪をひいたなら』『廻る季節』『桜きたる香霖堂』からの続き。
大分長くなって来ましたね。
霊霖は無意識で続くから怖い。

今回は短め~


『貴方の日常へ』



霊夢、霖之助




随分といい天気だ。

どこまで続いているのか予想も出来ない程に、
蒼く澄み渡った空にはふっくらとした形の良い雲が流れている。

降り注ぐ日差しも眩しい程に爽やかで、目が少し霞む。

日本の夏にしては珍しくカラッとした暑さだ。
こう言う暑さは余り不快感を感じさせない。

今日は風が余り無い日だったが、
湿度がそれ程高くないので縁側や窓を開けるだけで、十分快適に暮らせそうだ。

こんな日はむしむしとした暑さのせいで、
久しく忘れていた食欲が戻って来る。

とは言えせっかく涼しくなったのに、熱い物を食べるのは何だか気が引ける。
こんな時は冷たい食べ物でいいのだ、無理して熱々のものを食べる必要はない。

「霖之助さん麺つゆ取って頂戴」

「ん、ああ」

霖之助は食卓の上に置いてある麺つゆの瓶を、向かいに座っている霊夢に手渡す。
霊夢は麺つゆを受け取ると「ありがと」と礼を言い、自分の小鉢へ注いだ。

そして摩り下ろした生姜を加えて、優しく掻き混ぜる。

霖之助も霊夢と同様に、自分の小鉢へ麺つゆを注ぐと、
下ろした生姜ではなくミョウガを加えて掻き混ぜた。

食器を扱う音が、ちりんちりんと食卓へと響く。

良い音だな、と霖之助は思う。
外に耳を向ければ昼間の間は蝉の声が、夜間は蛙の声が聞こえ続けるこの季節。
耳の中へ響く涼し気な音は、確かな涼を心にもたらす。

「いや、しかし君は本当にいいタイミングで店に来るね」

「何がかしら?」

「惚けないでくれ。丁度冷麦を茹でようとした時に来たくせに」

「運がよかっただけよ」

「君は幸運の女神と親友か何かなのか」

「大げさねーちょっとタイミングが良かったぐらいで」

「よく言うよ、何時も君はタイミングがいいじゃないか」

「どこがよ」

霊夢は涼しげな顔で冷麦を啜る。
霖之助もこれ以上の会話は無駄だと判断して、冷麦を啜った。

最近よく彼女と食卓を囲む。

予期せず大量の食材が手に入った時や、
多人数で食卓を囲む料理が食べたいと思うときに限って、霊夢がやって来る。
まるでここにいるのが当たり前の様に。

霖之助もそれについては何も気にしていない。
それぐらいに彼女が居る光景が当たり前になっていたし、
その方が何かと安心する。

「美味しいわね、冷麦」

「正に夏、っと言った一品だよ」

「台所にまだ沢山置いて有ったけれど、誰かから貰ったものなのかしら?」

「霧雨の家からお中元として貰ったんだ」

「魔理沙の実家からねぇ………いい関係じゃない、こんな物まで貰って」

「勘弁してくれよ。お返しを考えるだけで頭が痛いんだから」

「財政が厳しいものね」

「こう言うのは気持ちだから、金銭面での苦楽は関係ないよ」

「嘘はいけないわ」

どうしてこうも的確に自分の考えを言い当ててくるのか。
霖之助は不思議でならない。

加工した黒曜石の様に澄んだ黒をした霊夢の目。

その目は何時も何処を捉えているのか皆目見当が着かない。
ただあの目で見られると、言葉や表情と言った物を抜きにして心を見透かされる気分だ。

その点ではあのスキマ妖怪、八雲紫とよく似ている。

だが彼女は心を見透かしている事を胡散臭い態度で顕示するのに対して、
霊夢のそれは随分と穏やかだ。

彼女になら自分の考えを見られても悪い気はしない。
もっと言うなら、彼女には自分の内面を見透かされても気にはならなかった。

隠し事が通用しないなら何をしても無駄だ、
と言う諦めも有ったが、どちらかと言えばその感情は限りなくプラスに近い。

彼女と本心だけで触れ合いたいと言った方がいいかもしれない。
現に霖之助は過去に何度か霊夢に自分の胸中を語った事がある。

正直あの時の事は忘れたい。

でもあの時、自らの胸中を告白した事は間違いでは無かった。
あの告白を切っ掛けに自分達の関係は、雪解け水が春風に誘われて溶け出すように、
ゆっくりと、だが確実に動きつつあった。

「何を考えているの」

「特に何でも、しいて言うなら君の事」

「どんな?」

「本当に君は当然の様にウチで食事を摂っていくなあって」

「あら、そうだったかしら」

「うん、そう。 まあ昔っからそんなだからもう諦めたけどね」

「なら何も問題はないわ」

霊夢はまたつゆを冷麦に漬け、口へと運ぶ。
同じく霖之助もそれに続いた。

先程の会話で一体どれだけの考えを彼女に見透かされたか。
半分か、それとも全てなのか。

霊夢の瞳を見つめても、彼女の内面は一切伝わって来ない。
相変わらず不思議な瞳だ。

一体彼女の瞳にはこの世がどう写っているのだろうか。
知る術は無い。それもそうだろう。

博麗の巫女は孤高で唯一の存在。

その領域に踏み込めるものなど、皆無に等しいからだ。









昼食が終わった後、霊夢は縁側に出てお茶を啜った。
霖之助もそれに付き合って、霊夢の隣でお茶を啜る。

縁側から夏の青空を見つめていると何とも言えない気分になる。
吸い込まれそうな青空とはよく言ったものだ。

太陽に近い場所や太陽に遠い場所では色の濃淡が違い、
鮮やかなグラディエーションを描いている。

青い水面に浮かぶ雲にはどれ一つとして同じ形の物が無く、見ていて飽きない
空と言う大きなカンバスに描かれた光景は、
毎年の物なのにどうして何時も新鮮に感じるのだろうか。

「なぁ霊夢」

「何、霖之助さん」

「神社の方はいいのかい? ほったらかしにしていると色々まずいと思うんだが」

「平気よ。確かにこの店と違って訪ねてくる輩は多いかもしれないけど、
 私が留守だって分かったらすぐに別の暇潰しを探す為に何処かへ行っちゃうわ」

「この店って言葉が引っ掛かるな」

「事実じゃない」

「事実じゃないよ、人妖問わずお客は来るし、来る者は拒まない」

「だからお客が来ないじゃない」

「君が店に居る時だけ妙に客足が遠のくんだ。
 普段は冷やかし目的の客でもちょくちょく来るのに。
 君が店に来た途端に誰も来なくなる」

「随分酷い言い様ね。まるで私が、疫病神と貧乏神を合体させた存在みたいじゃない」

「違う、と面と向かって否定出来ないのが悲しい」

「否定しなさい、そんな事言われて一番悲しいのは私なのよ。
 それに疫病神や貧乏神なんて言われたのは初めてだわ」

「なんて事はない、物の例えだよ」

二人とも同じタイミングで茶を啜る。
平和な音が二人の間に響く。

客が来ないお陰でこうしてゆったりとした時間を遅れるなら、悪くないかもしれない。
だが客が全く来なくなっても困る。
せめて霊夢が店に来ている時ぐらいは二人っきりが良い。

そこまで考えて霖之助は随分と身勝手な理由だと苦笑した。

「いやねぇ、何を一人で笑ってるのかしら」

「何でも無いよ」

「一人でニヤニヤするのは助平の証拠よ。
 あぁ、怖い怖い。本当は霖之助さんも狼なのね、気を付けないと」

「仮に僕が狼だったとしても、牙は全部抜けてそうだ」

「舐め回す………」

「何か言ったかい?」

「いいえ何も」

軽い溜息を空気中に一つ落とす。
その溜息はすぐに夏の陽気に溶けて、何処かへ行ってしまった。

相変わらず強い日差しが外の世界を支配している。
まだ暫くは暑い日々が続きそうだ。

そして避暑地を求めて霊夢がやってくる。
特に香霖堂で何をする訳でもなく、一日中お茶を飲んだり喋り相手になったりの日々。

ドラマティックな出来事は到底望めそうにない日常だが、
何故か霖之助には宝石の様に輝いて見えた。

Comment

管理者にだけメッセージを送る

Pagetop ]

Copyright (C) 十四朗亭の出納帳 All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。