十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

プロフィール

十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
メッセ&スカイプは大歓迎です
SkypeID『Brassp905』


リンクはフリーなので
どなたでもどうぞ
もしご連絡いただければ高所から
イヤッホォォォォ!!します


PS3アカウント『auscam』
大体マルチ対応ゲームやってると思います。

バナー

Web拍手

Twitter

 

入店者

検索フォーム

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

朱鷺のすみか バレンタイン

二日遅れでバレンタインSSでも。

慧霖に傾きつつあるような気がするけど、気にしない気にしない。
ホンマ慧音先生は恐ろしいで………



『朱鷺のすみか バレンタイン』




霖之助、朱鷺子、慧音






台所に漂う甘ったるいチョコレートの香り。
その香りは脳を芯から溶かすほど濃厚で味わい深い。

嗅いでいるだけで舌先にチョコの甘さが広がりそうだ。

今日は二月の十三日。
この日人里にある寺子屋の教、師上白沢慧音はチョコレートを作っていた。

理由は言うまでもなく明日、二月十四日バレンタインデーの為に。

元々幻想郷ではそれ程メジャーなイベントでは無かったが、
山の巫女が信仰と同時に外の世界の風習や行事を伝えたおかげで、
今ではすっかり人気のイベントとなっている。

もっとも、このバレンタインデー外の世界と同じく、
その本来の意味は随分と湾曲されてはいるが。

結局は楽しければ何でもよい。
幻想郷のそんな気質がそれを許しているのだろう。

幻想郷のそういった所は今に始まったことではない。
今更とやかく言うのも野暮と言うものだ。

湯煎をしたチョコレートをボウルの中で混ぜる慧音の眼前では、
エプロンに三角巾姿の朱鷺子が慧音と同じ様に溶かしたチョコを混ぜていた。

その混ぜ方はいささか乱暴で顔やエプロンに飛び散ったチョコが付着しているが、
表情はキラキラと輝いていて純粋にチョコ作りを楽しんでいるようだ。

「ほら、朱鷺子。頬にチョコが付いてるぞ」

「ん? どこどこ?」

「ほら動くんじゃない」

朱鷺子の頬を手拭いで拭いてやる。
頬を拭いてやると朱鷺子はくすぐったそうに笑った。

慧音は朱鷺子のこんな笑顔を見る度に、
自分もこうして笑えるといいなと思う。

彼女のこんな素直なところが羨ましい。

少なくとも慧音は朱鷺子の様に感情をおおっぴらに出来る程子供ではない。
多分、今朱鷺子に「霖之助は好きか?」と聞けば、
満面の笑みで「好き!」と返してくるだろう。

残念ながら慧音はそんな風に素直に自分の思いを言い表せるほど、幼くはない。
縺れに縺れた感情を口に出そうとすると舌まで縺れてしまう。

「どうしたの? 慧音。手が止まってるよ」

「ん、あぁ………すまない」

朱鷺子の言葉でハッと目の前の現実に引き戻される。
今はそんな事を考えている場合ではない。

目の前の作用に集中しなければ。

「ねぇねぇ次は? 次はどうするの?」

「えーっと、教本によれば………」

慧音はお菓子作りの教本を取り出し、チョコのページを捲る。

そこにはチョコレートを使ったクッキーやケーキが載っていたが、
今はそちらに用は無い。

最初に作るチョコを決める為にこの本を朱鷺子と一緒に読んだが、
まず一番に作るのを断念したのがクッキーやケーキと言った、
オーブンを使うお菓子だった。

紅魔館、いや魔法の森に住む人形遣いの家ならばオーブンぐらい設置してありそうだが、
ここは人里にある慧音の自宅だ。

台所の設備はしっかりされているものの、
純日本家屋である慧音宅にオーブン等と言う西洋的な設備は備わっていない。

結局作れないと言う理由で諦めてしまった。
これに関して朱鷺子は文句を言っていたが、
設備が無い事を説明するとすぐにわかってくれた。

割に聞き分けがいい子だ。
霖之助の教育が行き届いている証拠だろう。

そう言えばバレンタインの日に霖之助にチョコを渡そうと言って来たのは、
朱鷺子の方からだった。

偶々店に来ていた山の巫女に詳しく教えて貰ったらしい。

香霖堂からお菓子づくりの教本を持って、
慧音の自宅を訪れた時には少々驚いたが、
好奇心の強い彼女の事だと思って納得した。

他人から教えて貰った事を実践してみたい。
そういう年頃なんだろう。

その姿勢は悪くない。
チャレンジ精神は成長するための栄養剤だ。

「朱鷺子の作るクランクチョコレートはと………
 何々、湯煎をしたチョコレートにスライスアーモンドを加えて、
 一口サイズに纏めるだけで完成っか」

「あれ? 随分早くない? それに簡単」

「まぁ、要するにチョコにアーモンドを混ぜて固めただけだからな。
 作るのが簡単だから選んだんじゃないのか?」

「違うよ、美味しそうだったから」

「………そうか」

軽く溜息を着いて、朱鷺子にスライスアーモンドの入った小鉢を渡す。
朱鷺子はそれを笑顔で受け取った。

朱鷺子の笑顔は無邪気で明るく輝いていたが、
そんな笑顔を見ると慧音は朱鷺子を利用する形になっている自分に、
少々後ろめたさを感じずには居られない。

昨年のバレンタインデーの日、
慧音は今日と同じようにチョコを手作し霖之助に渡そうとした。

チョコを包んで意気揚々と香霖堂へ向かったものの、
いざ本人を目の前にするとどうすれば良いのか分からず、
適当にお茶を濁してチョコを渡さず仕舞いのまま帰ってしまった。

その日は暗い気分で自分のチョコをつまんでいた記憶が有る。

そして今年もどうせ渡せないだろうと、
憂鬱な感情を胸の内で転がしながら迎えた二月初頭。

朱鷺子が慧音の自宅を訪れて「チョコの作り方教えて!」
と言ってくれなかったら、本当に憂鬱な感情のまま二月を過ごす事になっていたかもしれない。

切っ掛けを作ってくれた朱鷺子には感謝をしている。
言葉だけでは足りない程に。

でも朱鷺子の無邪気な好意を利用している自分が居ると思うと、
彼女の笑顔に面と向かって応える事が出来なかった。

「ねぇ、また手が止まってるよ」

「あ、あぁ、すこしボーッとしていたよ」

慧音はチョコにラム酒を入れ、またゆっくりとかき混ぜる。
ドロリとしたチョコレートはまるで慧音の胸の内を表しているようで、
見ていていい気がしなかった。

どうして自分はこんなに沈んだ気分でチョコを作っているのだろう。

どうせ今年も想いを伝えられないからか。
朱鷺子を利用する形でチョコを渡そうとしている自分に、嫌気が差しているからなのか。
何時まで経っても気づいてくれない彼に苛立を覚えているのか。
あるいは全部なのか。

煮詰まった感情は薄くなるどころか日を追うごとに熱く、赤く燃え上がる。
やがて自分の感情が心に焦げ付いて、黒い燃え滓になってしまうのが怖い。

言えない言葉が増えれば増える程、心の炎は大きく、強くなり、より一層慧音の身を焦がす。

「朱鷺子、霖之助の事は好きか?」

「うん! 大好き!」

無邪気な笑顔と元気な声。
恥らいが一切無いその表情は今の慧音には眩しく感じられた。

「そうか、だったら美味しいチョコを渡してあげないとな」

「うん!」

慧音は混ぜ合わせたチョコを長方形のバットへと流し込む。
後は冷やして切り分けた後にココアパウダーをまぶせば完成だ。

仕上げが済めばチョコを箱に入れ包装紙で包みリボンで飾る。
明日になってそれを朱鷺子が霖之助に渡せば今年のバレンタインは終りだ。

何ともあっさりしている。
だが慧音にはこのくらいが丁度よいのだ。
こんなにも心が揺れるのは準備をしている間だけでいい。

受け取った時の彼の顔を思い浮かべながら、
慧音は自分のチョコと朱鷺子のチョコを風通しの良い日陰へと移動させた。

チョコを自分で渡す勇気も無い癖に、
渡す時の事を考えている自分が酷く滑稽に感じられた。








二月十四日の朝。
起床した森近霖之助が何時もの様に、
隣の布団で寝ている朱鷺子を起こそうと朱鷺子に手を掛けた時には既に彼女の姿はなく。
抜け殻のように放置された朱鷺子の寝間着だけが布団の中に有った。

早起きしたはいいが、余りに朝の気温が低過ぎて布団から出れず、
布団の近くに置いてあった着替を布団の中へと引き込み、
温い布団の中でもぞもぞと着替えたと言うのが事の顛末だろう。

そう言う不精な事はなるべく控える様に言っているが、霖之助が見ていないとなるとすぐこれだ。
後でキッチりと注意しければいけない。

霖之助は寝床から起き上がり軽く体を伸ばす。

背骨がポキポキと良い音を立て、全身の筋肉が伸ばされるのが分かった。
自らの体を睡眠から引きずり出して着替えを済ませると、今度は洗面台へと向かう。

ピンッ!と張り詰めた冬の空気とすっかり冷えり込んだ板張りの廊下が、
起きたばかりの体には少し辛い。

洗面台へ着くと、桶に汲み置きしておいた水で顔を洗う。

この水は朝早く起きた方が外に有る井戸から汲んでくる決まりになっているが、
霖之助より朱鷺子が早く起きると言う事は滅多に無いので、
ほとんど霖之助の仕事となっていたのだが、今日は朱鷺子が水を汲んで置いてくれたらしい。

これは後で褒めてやろう。
悪い事をすれば叱り、良い事をすればちゃんと褒める。

人里で寺子屋の教師をやっている半獣、上白沢慧音の教えだ。
彼女には朱鷺子の事で大分世話になっている。
いつか礼でもした方がいいのかもしれない。

そんな事を考えながら今度は居間へと向かう。

冷たい水で顔を洗ったので、もうすっかり頭も体も目覚めた。
一歩廊下を歩く度に深く息を吸い込み、そしてゆっくりと吐き出す。

とりあえず今朝の献立と午前中に整理すべき商品のリストを頭の中でまとめ上げ、
居間へ顔を出した。

「あ、霖之助おはよう」

「おはよう朱鷺子」

予想通り朱鷺子が火を入れた掘り炬燵に入って、本を読んでいた。
そして霖之助の姿を見つけると、すぐに栞を挟んで朝の挨拶をした。

「ねぇねぇ、霖之助。今日が何の日か……」

「何時も言っているだろう朱鷺子、布団の中で着替えるんじゃない。
 それに脱いだ衣類は洗濯籠に入れるようにって何時も言っているだろう?
 まさか忘れたとは言わせないよ」

朱鷺子が何か言おうとしていたがそれを遮って霖之助が会話を始める。

「ぐ、ぐぁ~ご、ごめんなさい。お布団の外が寒くって………」

「まったく………それで? 君はさっき何て言おうとしたんだい?」

「え? もうお説教は終りなの?」

きょとんとした顔で霖之助に尋ねる朱鷺子。
他にも何かを言われると思っていたのだろう、
少々警戒しながら上目遣いで怖ず怖ずと霖之助を見つめている。

「そんなに構えなくてもいいよ、お説教はもう終りだ。
 それで? さっきの続きはなんなんだい?」

霖之助は朱鷺子に優しく言葉を掛けながら炬燵へと入る。

「うん! えっとね、これ!」

ぱぁっと笑顔になった朱鷺子が霖之助に綺麗な包装紙でラッピングされた二つの箱を手渡した。
赤色の包装紙にピンクのリボンが飾られた箱と、
緑色の包装紙にブラウンのリボンで飾られた箱だ。

「ほぉう、バレンタインデーのプレゼントか」

「知ってるの?」

「あぁ、本来の意味でのバレンタインデイなら、
 山の巫女が今の形でバレンタインを幻想郷に伝える前からね」

「本来の意味?」

「元々、バレンタインデーは元々聖ヴァレンティヌスに………」

「やっぱり長くなりそうだしいいや」

「………………」

何とも歯切れが悪い。
だがニコニコしながらこちらを見つめてくる朱鷺子を見ていたら、
それもどうでもよく感じてきた。

「赤い方が私のチョコ、緑色の方が慧音のチョコ。
 昨日二人で作ったんだよ」

「そうか、それで昨日は出かけていたのか」

「お菓子作りの本を見ながら作ったの」

「その本はどこから?」

「…………えっと、えっとね」

「僕に断り無しに商品で有る本を持っていったんだね?」

「か、勝手に持っていってごめんなさい。
 でも本は汚してないし、ちゃんと返しておいたから許して」

「はぁ、まったく仕方がないな。今回だけだよ?」

「うん! ありがとう霖之助!」

相変わらず萎れたり、元気になったりが激しい子だ。
まぁ、切り替えが早く物事を何時までも引きずらないと言うのは、長所と言えば長所だが。

「そう言えば朱鷺子、これは義理なのかい? 本命なのかい?」

「ぎり? ほんめい? 門番さん?」

頭にハテナマークを大量生産している様子からして本気で知らないらしい。
よくそれでバレンタインのチョコを送る気になったものだ。

「違う、義理チョコなのか本命チョコなのかだよ」

「どう違うの?」

「本当に大切に思っている人に上げるのが本命。
 付き合いだけの関係の人に送るのが義理だよ」

「なら本命!」

おくびもなく霖之助にそう言い放つ朱鷺子。
もう少し恥らいを持ってもらいたいが、
多分朱鷺子が霖之助に抱いている感情は男女の感情とは、
おおよそ縁遠いところにある物なので、問題は無いだろう。

「そう言えば慧音の方も有るんだったね」

「うん、一緒にチョコを作ったよ」

「お礼は言ったかい?」

「言ったよ、ちゃんと」

「よし、上出来だ」

思えば彼女には朱鷺子の事で世話になりぱっぱなしだった。

「今度お礼に慧音を夕食にでも誘おうか?」

「うん、きっと慧音も喜ぶよ」

「喜んでいるのは君の方だと思うけどな」

嬉しそうに笑う朱鷺子と二つの箱を見つめて霖之助はそう呟いた。
よく見てみると朱鷺子のチョコレートが入っている箱は所々包装が不恰好だ。
だが決してそれを咎めたりはしない。
彼女が一生懸命になって自分で包んだ結果だ、それを馬鹿に出来る訳がない。

「本命が一個に義理が一個か………なるほどバランスがいい」

「ん? 何言ってるの霖之助?」

朱鷺子が不思議そうに口を開いた。
霖之助が何を言っているのか分からないと言った様子だ。

「何って、慧音からのチョコは義理だろう?」

「違うよ、慧音からのチョコはね………」

また朱鷺子が霖之助の顔をみてニッコリと笑った
花の様な笑顔とはこういう事を言うのだろう。

「きっと本命だよ!」

Comment

管理者にだけメッセージを送る

Pagetop ]

Copyright (C) 十四朗亭の出納帳 All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。