十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

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十四朗

Author:十四朗
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趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
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古びた道具屋の蓄音機

アリ霖は進展しない関係にやきもきしている姿がジャスティス!
いや待てよ、甘いのも見てみたい気が………

ただし今回は甘くないぞ!
自分で言ってる事と書いてるものは別なんです。



『古びた道具屋の蓄音機』



アリス、霖之助








「あら? こんなところに蓄音機なんて置いて有ったかしら?」

何時もと変わらぬ香霖堂で発見した何時もと微妙に違う物に、
七色の魔法使いアリス・マーガトロイドは不思議そうな顔をしてこの店の主に問いかけた。

この店の主である森近霖之助は読んでいた本に栞を挟み、
静かにカウンターへ置くとゆっくり口を開いた。

「倉庫の整理をしていたら偶然出てきたんだ。
 僕が店を始めて間もない頃に拾ってきたものだよ」

「どおりで年季が入ってる訳ね」

「そして僕が初めて自力で修理した外の世界の道具さ」

「ふ~ん、思い出深い品なのね」

その蓄音機はターンテーブル式のどっしりとした作りで、
ターンテーブルの横にはゼンマイを巻くための取っ手が付いている。

トーンアームとカードリッジの近くから、
ややくすんだ真鍮色のホーンがにゅうっと伸びている。
ホーンの先はユリの花のように外側へと広がっていた。

多くの年月を重ねてきたこの蓄音機はどこか古ぼけていて、
時代の流れから置いていかれた末に、
この幻想郷へ至ったのだろうと言う想像は容易に出来た。

この店に置いてある道具の大半はそんな境遇を辿っている。
店主である霖之助が拾ったと言うのなら、それはもうそういう事で間違いないだろう。

「思い出深くはあるけれど、いかんせん大きくてね。
 商品が増えるにつれて置き場所に困るようになったから、
 店の奥で眠ってもらっていたんだ」

「それが何故今頃になって? 何か大口の取引でも有ったのかしら」

そうアリスが尋ねると霖之助は苦い笑いを口元に浮かべ、人差し指で頬を掻いた。
目はアリスを捉えずに、店の中の適当な場所を行ったり来たりしている。
彼が余りよろしくない話をする時に見せる仕草だ。

のっそりとした普段の彼の印象に比べると、
どこか小動物的な印象を受ける。

秋になってドングリや胡桃を頬いっぱいに含んだリスが、
頬を押さえながらキョロキョロと辺りを見渡す姿に似ていた。

アリスはこんな彼の姿を見ていると、
堪らない気持ちで胸が一杯になる。

付き合いの長さで言えば霊夢や魔理沙に負けるアリスだが、
この店の常連客として店に通っている長さで言えば他の誰にも負ける気がしない。
そして異性としての付き合いの長さでも負ける気がしない。

「僕が八雲紫からストーブの燃料を貰っているのは知ってるね?」

「………えぇ、知ってるわ」

どこかムスッとした表情のアリス。
少し自分の感情が言葉に出掛けたが、それを喉元でぐっと飲み込む。

「勿論彼女の事だから燃料はタダじゃない。
 大体は僕の店の商品と交換なんだけど、
 彼女は交換する商品について僕から許可を取る程暇じゃなくてね。
 よく燃料代と称して商品を持って行かれるんだ」

「酷い話ね。同情しちゃうわ」

「ありがとう、心に染みるよ。
 それでまぁ、色々持っていかれた結果随分とスペースが空いてね」

確か今、蓄音機が置いてあるスペースには前まで、
外の世界の道具が山ほど置いて有ったはずだ。

置いて有った道具が全部持って行かれたと有れば結構な損害のはずなのに、
彼は困った表情はすれど怒った風は一切無い。

それがアリスの心を燻らせる。

「ねぇ、この蓄音機。
 修理したって言うぐらいなんだから当然聴けるわよね?

「ん? あぁ、問題ない。いささか年季を含んだ音だけど、十分聴けるよ」

「一曲聴かせてもらってもいいかしら?」

「どうぞ、レコードは近くの棚にあるから好きなのを選ぶといい」

「ありがとう」

少々我侭を言った気もするが瞼をニ、三回パチパチとさせそんな気分を追い払う。
この店に訪れる自分勝手な来訪者達に比べれば、
自分の我侭など彼にとって我侭の内にも入らないだろう。







アリスが香霖堂に貯蔵してあるレコードを一つ一つ棚から出し、
どれが今聴くに相応しいか吟味する。

貯蔵されているレコードの種類は実に様々で、
クラッシック、オペラ、ジャズ等から童謡や演歌、挙句の果てにはロックなんかもある。

アリスが知っている曲も有れば、まったく知らない曲も有った。
どちらかと言えば知らない曲の方が多いかもしれない。

だがそれは余り関係の無い事だ。

今香霖堂に彼が居て自分が居る。
そんな二人っきりの空間で自分が聴きたいレコードを選ぶ。

それが重要な事だ。

限りなくゆっくりと流れる時間の中で、
彼の行動を余す事なく堪能できる。

彼が本のページを捲る度に視線をそちらへ向けてしまう。
咳払いの音、体勢を変える音、衣擦れの音。

どれもが胸を高鳴らせ、心地よい満足感を運んできてくれる。

それはとても臆病な楽しみだが、今のアリスにはこれぐらいが限界だった。

よく魔理沙が霖之助の膝の上に座ったり、霊夢が霖之助の服を借りたりしているが、
そんなのはもっての他だ。
羨ましいと言う感情よりも羞恥心が先行してしまう。

ふと手に取ったレコードのジャケットに視線を戻す。
あまりジロジロ見ていて、もし彼が視線を上げた拍子に目が合ったりしたら具合が悪い。

アリス本人の自惚れでなければ霖之助は、
アリスに対して嫌悪感や苦手意識と言ったマイナス面の感情は持ち合わせていないだろう。

一人の常連、よく買い物をして行く良客、世話焼きなご近所さん。
この辺りが霖之助の中でのアリスの立ち位置だろう。

買い物以外でもアリスは香霖堂へ訪れて、
何かしらお裾分けや差し入れをする事がある。

何度か昼食や夕食を共にした。
晩酌を一緒にしたことも合った気がする。

でも霖之助と男女の中になるような事は今まで一度もなかった。
それは行為だけではなく会話でも。

好みのタイプや今付き合っている人はいるのか?
なんて話もした事はない。

結局はアリスは自分の立ち位置に甘んじていただけだった。
そこから一歩進みたい癖に、踏み出す勇気がない。

きっかけは幾らでも有るのに、それを掴めない。

だから霖之助との良好な隣人関係は心地よくもあり、心苦しくもある。
少なくとも自分が変わった行動さえしなければ今の関係は崩れないだろう。
前進もしないが。

「随分と悩んでいるようだね」

「………ごめんなさい、私の方から聴かせてなんて言ったのに、
 何が聴きたいか決めていなくって」

突然背後から掛けられた声で心臓鼓動がドキンと跳ね上がる。
考え事の最中に後ろから声を掛けるのは止めて欲しい。
驚きで変な声がでそうだ。

「アナタは普段何を聴くの? 
 イメージからしてクラッシクとか静かなジャズかしら」

「どちらもノーだよ。
 僕は普段音楽を聴かないんだ」

「そう、意外ね。蓄音機やレコードが置いてあるからてっきり音楽を聴くのが好きだと思って」

「正確には全く聴かないわけじゃないんだ。
 拾ってきたレコードは一応全部聴くから。
 でもそれっきり。それっきりその曲は自分から聴かない」

「どうして?」

「それが楽しい事に思えないからだよ」

「アナタにしては随分と感情的な答えね」

「そう言ってもらって結構。
 君は一人で音楽を聞く事が楽しい事だと思えるかい?」

「そうね、そう言う行為が趣味って訳ではないけれど、人並みには好きよ。
 たまに騒霊のコンサートにも出掛けるし。
 音楽を聴くと新しいアイディアを思い付く事があるから」

「それはとてもいい事だ。君の研究の為にもなる」

「そう言ってくれるのに霖之助さんは音楽が嫌いなの?」

「いいや、嫌いではないよ。
 ただ一人で聴くのは好きじゃないんだ」

「なら誰かとならいいの?」

「それならいいよ、楽しそうだ」

一人で音楽を聴くのが楽しくない。
逆に誰かと音楽を聞くのは楽しい。

変わった意見だとアリスは思う。
それに一人で居る事が好きな彼からは予想も出来ない考えだ。

一人で読書をするのはいいらしい。
道具の考察も一人がいいようだ。
一人で夜空を見ながら晩酌をするのも好きだと聞いた。

でも一人で音楽を聴くのは楽しくない。

この違いがアリスにはよく分からない。

「分からないわ、アナタの考え」

「そうかな」

「そうよ、一人で音楽を聴きいてゆっくりしたいと思わないの?」

「ゆっくりならお客が来ない時に十分しているよ」

「ほぼ毎日ね」

「厳しいな」

「真実は時に残酷なの」

「まぁ、僕の時間が減るのも嫌だしこれぐらいでいいか」

本当にこの男は商売を何だと思っているのだろう。
商人と言うのは客に自らの時間を裂き、身を粉にして商いに勤しむものだと言うのに。

彼の師匠は免許皆伝のタイミングを見誤ったのか。
それとも彼のこの考えは誰の手に掛かっても端整不可なのだろうか。

いずれにしても商人失格と言わざるをえない。

「それで、どうして一人で音楽を聞くのが楽しくないのかしら?」

アリスが改めて霖之助に問いかける。
その問い掛けに対して、霖之助は逃げる訳でも誤魔化す訳でもなく、
ただ静かに口を開いた。

「以前は僕の多くの趣味がそうであるように、
 一人で音楽を聴くのも好きだったんだ」

「それがどうして?」

霖之助がふぅーと深く息を吐く。
その態度はどこか観念した様子が見て取れた。

「この店を訪れる騒がしい連中に比べれば一人で聴く音楽なんて物足りないく感じられてね」

「なんと言うか………予想してなかったわ」

「そうかい?」

「そうよ」

霖之助の口から出た意外な答えにアリスは心底驚いた。
表情には出ていないが、意外だと思う感情が頭の中を駆け巡る。

「シーンとした店内で機械が奏でる音だけを只々聴いている。
 僕以外に言葉を発する者はいない、物はいてもね。
 静かだと思わないかい?」

「静かね、とても。ぞっとするぐらい無機質で冷たいわ」

「同じ静かなら別に音楽なんてなくてもいいと思ってね。
 そう感じる様になってからレコードは遠慮するようになったんだ」

霖之助どこか遠い目でアリスの隣に置かれた蓄音機を見つめる。
一抹の寂しさを含んだその目は、
さっきまでまで霖之助が口にした言葉を全て纏め語っていた。

アリスは手に取っていたレコードを棚に戻し、
霖之助の目をしっかりと見つめ返した。

「ねぇ、霖之助さん」

「ん? なんだいアリス」

「この蓄音機を私が買うって言ったら売ってくれる?」

「そりゃあ、まぁ、売るには売るが………
 それなりのお代は頂くし、持って帰るのも大変だよ」

「そう………だったら」

すぅーっとアリスは静かに息を吸い込む。
年季の入った店の空気がアリスの肺を満たし、
頭の中の考えを綺麗に纏めてくれた。

「レコードだけ買って、聴きたくなったらここへ来ていいかしら?」

「ふむ、確かにそれなら安くつくし重たい蓄音機を担いで帰らなくて済む」

「駄目かしら?」

ハッキリ首を縦に振らない霖之助にやきもきして、
つい返事を催促してしまった。

「いや、構わないよ。
 君の頼みを無下に断る程僕も冷たくはないからね」

「そう、ありがとう。
 ごめんなさいね、少し無理を言ったかしら」

「いいや、構わないよ。
 さっきも言ったように他ならぬ君の要望だ。
 受けなければ商人としての器が知れる」

「君の頼み」「君の要望」その言葉をアリスは口の中で噛み締める。
年季の入ったワインを下で時間を掛けて味わう様に、
霖之助の言葉をゆっくりと心で感じた。

彼からすれば常連のお願いに付き合っているぐらいの感覚しか無いかもしれないが、
アリスからすれば自分の我侭を聞いてくれた事は飛び上がる程嬉しかった。
これでまた合理的に香霖堂へ訪れる理由が出来る。

「お礼に今度、アナタが食べたいと言う物を食べさせてあげる」

「ほう、それは楽しみだ。期待してもいいのかな?」

「勿論よ。七面鳥でもグラタンでもパスタでも、何でも好きなのを用意してあげる」

「君が支払う代価はアリス・マーガトロイドの好きな手料理が食べれる食事券か。
 いや、この場合は食事権かな」

「不服?」

「とんでもない、これ以上にないお礼だと思ってね」

「当然よ。でもちゃんと使ってよね?」

「あぁ。だけど迷うな。何を頼んでもいいと言われると選択肢が多くて」

「ふふふ、たっぷり悩んでね」

「一度っきりの権利だ、十分悩まさせてもらうよ」

その言葉に対してアリスは「別に何度だっていいのよ」と返そうとしたが、
喉から声が出ずにその会話は終わってしまった。

蓄音機の話に一段落がつき、霖之助がいれた紅茶を彼と向い合って飲みながら、
残りの時間は彼との他愛もない雑談で埋めて行く。

相変わらず彼の口から語られる蘊蓄は信憑性と確実性に欠くものだったが、
聞いてて飽きない。

こんな時間を過ごしているとまだ当面はこんな関係でいいと思えてくる。
それが逃げだと分かっていても、心地いいものは心地がいいので仕方がない。

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