十四朗亭の出納帳

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十四朗

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朱鷺のすみか 秋

朱鷺のすみかは定期的に続けようと思います。
多分月一ぐらいで。

この前まで夏だったし今回は秋で。


『朱鷺のすみか 秋』


朱鷺子、霖之助、鈴仙







今宵は旧暦の八月十五日。
いわゆる十五夜だ。
十五夜に月を鑑賞する歴史は古く、
日本から海を隔てて中国の方から伝来したと言う。

この他にも旧暦の九月十三日にお月見をする十三夜もあるが、
これは平安時代の貴族が集まって歌を詠み合った事とされる。
確かに満月ともなれば歌の題材に事欠かないだろう。

ぼぉうっと深い群青の夜空に明るく浮かぶ満月。
何もない夜空にただ満月が浮かんでいるだけでも絵になるし。
薄い雲の幕が掛かって霞月になっているのもまたいい。
月暈が掛かった夜などは心が弾む。

月が持つ表情の多面性。
霖之助は月のそういった所が気に入っていた。

「朱鷺子、もう少し丸に近づけられないものかな?」

「う……だ、だって団子が勝手に変な形になるんだもん!」

「君が力を入れすぎるからだよ。
 それに君のは大きさも不揃いじゃないか」

お月見と言えば月見団子。
そう考えるのはいささか即物的だろうか。

香霖堂の台所で朱鷺子と霖之助は月見団子を作っていた。
台所の中心に置かれた木製テーブルの上に古新聞を敷いて、
その上で団子を練ったり丸めたり。

お互いが向きあうようにして作業をしているが、
その成果は似ても似つかないものだった。

朱鷺子の作った団子は全体的に大きく、形も綺麗な丸とは言い難い。
どちらかと言えばジャガイモやサトイモと言う表現がしっくり来る。

一方霖之助の方はと言うと中々綺麗に出来ている。
サイズも均等で形も斜面に置けばそのまま転がってしまいそうな程丸い。
元々手先が器用な事もあってかこういう流れ作業は得意な方だ。

「とかく私のお団子はコレでいいの」

「はぁ、何時まで経っても君の家事の腕が上達しない事に僕は感動を覚えるよ」

「ぐ、ぐぁ~」

実際朱鷺子の家事能力は散々たるものだった。

炊事に洗濯に掃除。
この三つの中で彼女が霖之助の手助け無しに完遂できたものは何一つ無い。

炊事はご飯がおかゆになっていたし。
洗濯は洗濯桶がひっくり返り、一面が泡と水だらけになった。
掃除はする前より散らかった気がする。

彼女には基礎の基礎から教え込まなければいけない。
嫁入り修行ぐらいさせておいた方がいいだろう。

カランカラン、カランカラン。

「あのーすいませーん! 霖之助さーん? 居ますかー!」

店の玄関に設置したベルが鳴る音に少し間を置いて響き渡る女性の声。
透明感のあるその声は霖之助のよく知る人物の声だった。

永遠亭に住む藥師の弟子。
長く萎びた様な耳と綺麗なミディアムパープルのロングヘアーを持つ少女。
来訪者の正体は鈴仙・優曇華院・イナバだ。

霖之助は朱鷺子に大人しくしているように告げると、
手に付いた粉を水で洗い落とし店の方へ向かった。






店内には予想通り鈴仙・優曇華院・イナバが立っていた。
背中には大きな薬箱。恐らく人里に薬を売りに行った帰りなのだろう。

「いらっしゃい。背中に背負っているものを見る限り薬の補充かな?」

「はい、救急箱を出してもらえますか?」

「あぁ、丁度よかったよ。今消毒液と包帯が減ってきたと思ってたんだ」

霖之助がカウンターの裏から赤い十字が描かれた救急箱を取り出し、
鈴仙の前に差し出す。

「? 珍しいですね、霖之助さんが怪我をするなんて」

「いや、僕じゃないんだ。ちょと朱鷺子がね」

「朱鷺子ちゃんが?」

「外で遊び回っては膝や肘を擦りむいて帰ってくるもんだから、
 いくら包帯や消毒液があっても足りないくらいだよ」

「可愛気があっていいじゃありませんか。
 変に悪知恵ばかり働かせてイタズラをするよりずっといいですよ」

「そんなものかな」

「ふふふ、そんなものですよ」

鈴仙は慣れた手付きで救急箱に包帯と消毒液を補充すると、
その他に数が減っている薬なども新たに追加して行く。

「そう言えば霖之助さん」

「ん?」

「袖なんて捲ってどうしたんですか? 何か作業でも?」

「今日は十五夜だろう。だから月見団子を朱鷺子と作っていたんだ」

「なるほど、今夜は香霖堂でもお月見をされるんですね。
 永遠亭でも今夜ちょっとした宴会があるんですよ」

「ほぉう、よさそうじゃないか」

「騒がしいだけですよ。私なんて毎年餅つきをさせられて………」

「大体誰の発案か分かるよ」

「お察しありがとうございます」

その時店の奥の方からトタトタと軽い足音が聞こえた。
足音は軽やかにこちらへ向かってくる。

今の香霖堂に居る人物といえば一人しか居ない。

「霖之助ぇ~遅いんだけど~」

髪と服を粉で真っ白にした朱鷺子が店の奥から出てきた。
当然足元にもポロポロと白い粉が落ちている。

台所と台所周辺の廊下がどうなっているのかは考えたくもない。
少なくとも季節外れの雪化粧が施されているのは間違いないだろう。

基本的に霖之助は朱鷺子に甘い。
霖之助自身は甘くしているつもりはないが、
他から見れば甘過ぎるとよく言われる。

特に人里に居る半獣の上白沢慧音からは度々注意を受けた。
一応教育のプロである慧音の意見を尊重して、
適度に躾と呼べる程の事はするようにしている。

こういう場合は特に。

「朱鷺子」

霖之助は自身のメガネを薬指でクイっと上げる。
光の角度によってメガネのレンズがギラリと光った。

それは刀が光を反射する様子によく似ている。

「………ぐ、ぐぁう。な、何霖之助?」

霖之助の不穏な気配を感じ取ったのか、
声が浮つく朱鷺子。

頭と背中の羽がピンと張り、目線があらぬ方向へと泳ぐ。
一瞬だけ霖之助の側に居る鈴仙に縋るような目線を送ったが、
残念な事に鈴仙は気まずさに耐えかねて目を逸らしてしまった。

「掃除をしなさい」

ドスの効いた低い声。
普段なら滅多に聞くことの無い声。

朱鷺子の表情は今すぐにでも泣き出してしまいそうだ。

「は、はぃ」

朱鷺子はもう一度潤んだ瞳で鈴仙の方を見たが、
鈴仙はあからさまに違う方向を向いていた。

現実は非常としか言い様がない。







涙目になりながら白く染まった床を掃除する朱鷺子を視界の片隅に、
今度は鈴仙と向い合って団子を作る。

「すまない、手伝わせる形になってしまって」

「いえ、月見団子を作るなんて慣れっこですから。問題ありませんよ」

「しかし………早いな」

いつも着ているブレザーを脱いで、
ブラウスの袖を捲った鈴仙は物凄い速さで団子を量産して行く。

その速さは霖之助の倍ほどで、形も大きさも完璧に近いものだった。

霖之助も慣れているとは思っていたが、まさかこれ程とは予想していなかった。
流石は幻想郷でも五本の指に入る女傑、
八意永琳女史の弟子だけの事はある。

こう言った医学関係以外のスキルも申し分ない。

「そうですか? 師匠にはまだまだ遅いって言われますけど………」

「いや、比べる対象が悪いと思うよ僕は」

こうしている間にも鈴仙の手は素早く動き次々と真ん丸な団子を量産して行く。
それは熟練の陶芸家が粘土の塊から、一瞬にして見事な器を創造する姿に似ていた。
繊細でいて無駄が無い。
だが決して臆病ではなく、ある種の大胆さがその手捌きに見え隠れする。

「そ、そうだ。朱鷺子ちゃんはいいんですか? 
 なんだか目に涙を貯めていたような………」

霖之助の熱い視線が気になるのか、
鈴仙は少し照れた様に霖之助から目を背け話題を他の事に移す。

「いいんだよ、彼女はあのままで。
 なんて言うと君は僕の事を冷たい男だと思うかな」

「いいえ。えっと、これが霖之助さんなりの優しさ何ですか?」

「あぁ、そういう事だよ。では、何故そう思ったんだい?」

「その、優しさと甘さは違うからです」

「そう、その通り」

霖之助は深く頷く。

「優しさとはその人が常により良い状態であって欲しいと想う心なんだよ」

「常に………より良い」

「あぁ、ここで叱れば次は同じ過ちをしない。
 ここで注意すれば次に生かせる。
 ここで止めさせれば取り返しがつく。
 その人を想う人物が居るからこそ優しさを持って叱ってくれるんだ」

「朱鷺子ちゃんにとってはそれが霖之助さんなんですね」

にっこり笑って鈴仙はそう霖之助に言った。
そんな風に言われると霖之助も照れる。

他人の言葉で自覚させられると、途端に気恥しさが湧いてくる。

「いや、まぁ、彼女がどう思ってるかは知らないけどね」

「ふふふ、またまた。朱鷺子ちゃんは霖之助さんの事を好いていてくれますよ。
 霖之助さんももっと自信を持ってください。
 自慢の看板娘じゃありませんか」

「あの子が看板娘ねぇ………なんだか危なっかしいな」

「そんなこと言っても顔は緩んでますよ」

「っむ、これは、まぁ………違うよ」

何が違うのかは霖之助にも分からなかった。
ただ、鈴仙が小さな声で「親子みたいで可愛いですよ」
と言ったのを聞いて妙に納得してしまった。

親子、そんなのも良いかもしれない。

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