十四朗亭の出納帳

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十四朗

Author:十四朗
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春と共に去りぬ

随分前に頂いたリクのレティ霖です。
すんごい今更な気がビンビンするね。

あぁ~あったかい飲み物飲みたい。



『春と共に去りぬ』



レティ、霖之助







一滴、また一適と黒々とした珈琲がペーパーフィルターを浸透しサーバーへと落ちる。
湯気と共に立ち上がる香ばしい豆の匂いは霖之助の鼻を刺激し、
暖かい感触が脳にじんわりと広がった。

「相変わらず時間が掛るのね。
 まぁ、その分貴方の淹れる珈琲は美味しいけど」

目を瞑り、漂ってくる香りに嗅覚を委ねていた霖之助を邪魔するように、
白い少女レティ・ホワイトロックは口を開いた。

「待っている時間の間に香りを楽しむのが上手な珈琲の淹れ方さ」

「それ何度目かしら? いい加減聞き飽きたのだけれど」

炬燵に顎を乗せて暇そうに落ちてゆく珈琲の滴を眺めるレティ。
焦点は炬燵の上のコーヒーメーカーに向けられているが、
霖之助の様に珈琲が出来る過程を楽しむと言うよりは暇を潰しているだけの様だった。

「もう冬も終わりね。最近は大分寒さが緩んできたわ」

「それでも厳しい事には変わりないけどね」

「後一月半もすれば炬燵から出るのがさほど苦にならなくなるわよ」

「それは嬉しい事だな。良い情報をありがとう」

感謝の意が余り籠っていない気だるそうなお礼。

「どういたしまして」

レティはそのお礼に対して、
ごく短い返事をすると炬燵に突っ伏してしまった。







冬の妖怪レティ・ホワイトロックは冬になると突然やって来る。
特に何かを買って行く訳でもない、本当にやってくるだけだ。

断りもなく香霖堂にやってきて、
霖之助に珈琲を要求しそれに砂糖とミルクをたっぷり入れて飲む。
ただそれだけの事をしに彼女は香霖堂へとやってくる。

人が沢山いる人里のカフェよりも人が少ない香霖堂の方が珈琲が美味しく飲めるそうだ。

そんな事の為に香霖堂を利用しないでほしいと思う事も多々あるが、
言っても無駄なのでここ数年は嫌な顔をするだけで済ましている。

「貴方の淹れる珈琲もそろそろ飲み納めの時期ね」

「そうだね、実にありがたい事だ」

「最後は出来るだけ沢山通おうかしら。そしたら次の冬が来るまで眼が冴えると思うのだけれど」

「そんなので眼が冴えるのならあのスキマ妖怪は今頃カフェイン中毒者になってるよ」

「彼女もよくここで珈琲を飲んで行くの?」

レティは突っ伏した状態から上体を起こし霖之助の眼を真っ直ぐに見据える。

「あぁ、二年ほど前から冬になると偶に飲みに来るんだ。
 しかもそう言う時に限って誰も店に来ない」

「店に誰も来ないのは何時もの事だけれど………
 そう、彼女もここに来るのね。
 でもたかが二年ちょっとじゃ私に勝てないわ」

フン、と誇るように胸を張るレティ。
そんな小さな事で競っても不毛なだけだと思う。

「何を張り合ってるんだ君は」

「別に張り合ってないわ、ただちょっと悔しいだけ。
 でも残念ね、私ぐらいしかここをカフェ扱いしないと思ってたのに」

「そんな輩は君だけで十分だ」

「せっかく見つけた私の隠れ家的お店なのに………」

「はいはい、笑えるね」

先程よりもいっそう気だるげな霖之助が返事を返す。

彼女には何度も行っている事だが、ここはカフェではない。
立派な古道具屋だ、流行ってはいないが。

コーヒーメイカーに視線を向けると、
黒々とした珈琲が並々とサーバーに注がれていた。

そろそろいいだろう。
そう思い霖之助はサーバーの取っ手を掴み、
用意しておいた二つのマグカップへと熱々のコーヒーを注ぐ。

温かな湯気が頬をくすぐり、先程よりも強い珈琲の香りが鼻を刺激した。
やはり珈琲はこうでなくてはならない。
紅茶程香りが繊細ではなく、緑茶ほど細くもない。
別に紅茶や緑茶が嫌いな訳でもないが、
香りと言う一点において珈琲は他を寄せ付けない印象を持っていた。

カップに珈琲を注ぎ終えたら、
次は角砂糖が入ったシュガーポットの蓋を開け角砂糖を二つ取りだす。

まず一つ目をレティのマグカップへと落とす。
黒い水面に小さな波紋が走り、水面に映った天井が揺れた。

更にもう一つ、今度は手で二つに割って片方だけマグカップの中へと入れる。
もう片方は霖之助のカップに入れた。

ティースプーンを使ってクルクルと混ぜる。
スプーンがカップに当たる度にチリン、チリンと音が鳴った。

黒くてカップの底が見えないので、
砂糖が完全に溶けたかどうかは目視で確認できないが、
大体これだけ混ぜれば十分だろう。

一旦スプーンから手を離し、ミルクの入った小瓶を手に取る。

白濁とした液体で満たされた瓶の中身をゆっくりとマグカップの中へ垂らす。
ミルクが注がれた瞬間のにカップの中は削ったばかりの黒曜石に似た黒から、
やや白味の強い茶色へと変わった。

「出来たよ、何時も通り砂糖とミルクありありで」

「ありがとう、やっぱりこれよね」

霖之助からマグカップを受け取ると、
レティは包み込むような手付きでマグカップを持つ。

すぐに飲もうとはせず、珈琲の温かさを楽しむのが彼女流らしい。
何故楽しむのが香りではなく温かさなのかと言えば、
彼女いわく。

「香りは触れなくても分かるじゃない。でも温かさは触れてみないと分からないわ」

と言う事らしい。

レティはしばらくうっとりとした表情で、
自分のマグカップに注がれた珈琲を見つめていたが、
しばらくすると短く息を吐いてゆっくりとカップに口を付けた。

霖之助はそんな彼女を自分の珈琲をかき混ぜながら見ていたが、
彼女がカップに口を付けるとそれに続いて自分のカップに口を付けた。

口内に広がる熱さ。
最初は苦味が下を通り、次に僅かな甘味がやってくる。
鼻の奥から外へ抜ける珈琲の香りと喉を通る熱さ。

炬燵があるとはいえまだまだ寒い季節だ、
こうして温かいコーヒーを飲んでゆっくりする時間は格別と言える。

胸を満たす温かさと充実感。
温かさはともかく、この胸の充実感は人里のカフェでは堪能できない。

「ねぇ、霖之助」

「なんだい?」

「今年も良い冬だったわ」

「………そうか」

不意に彼女がマグカップを手に持ったまま、遠い目で虚空を見つめそんな事を呟いた。
溜息をつく様な喋り方とどこか割り切ったような声色。

この時期になると彼女はいつも寂しそうな顔でこう漏らす。

それは決まって霖之助の淹れたコーヒーを一口飲んだ時だった。
この時ばかりは普段彼女と皮肉を交し合う霖之助も、
ただ真っ直ぐな視線を彼女に送る事しか出来ない。

毎年の事だしそろそろだろうと予測はしていたが、
何度この時期が来ても彼女のこの表情には慣れない。

また半年以上楽しく珈琲を飲みながら喋る相手が居なくなると思うと、
珈琲の苦味がより一層口の中に浸み渡る。

「おやすみ、レティ。次会う時は何かお土産でも持ってきてほしいね」

「努力するわ。次も美味しい珈琲を淹れてちょうだい」

また黙りこんで二人同時にカップに口を付ける。
まだ熱さを失っていない珈琲は喉元を過ぎる度に余韻を残して行った。

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