十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

プロフィール

十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
メッセ&スカイプは大歓迎です
SkypeID『Brassp905』


リンクはフリーなので
どなたでもどうぞ
もしご連絡いただければ高所から
イヤッホォォォォ!!します


PS3アカウント『auscam』
大体マルチ対応ゲームやってると思います。

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硝子玉の瞳

ホントアリ霖はジャスティスだぜ! ファハハハハーハァー!!!

アリスと言えば人形遣いだけど、
今までアリスが人形を使ってる姿を書いた事が無かった。

てな訳で上海を出してみよう! って風になりました。
アリ霖が一番中々進まない関係にやきもきって話を書ける気がするw



『硝子玉の瞳』



霖之助、上海、アリス




鉛色の雲が天井を覆い尽くし、日の光を遮る。

今年最後の日は決していい天気とは言えなかった。
冬の寒気を含んだ空からは今にも雪が降ってきそうだ。

冷たい冬の風が店の窓へぶつかるたびに、
ガタガタと音を立て店内の空気を濁らせる。

霊夢は神社で年末年始の行事を執り行い、
魔理沙もそれに付き合うようだ。

もっとも、魔理沙の場合は大晦日から正月に掛けて行われる、
宴会が目当てなのだろうが。

その他にも香霖堂の数少ない常連客達は新年を迎える準備等で忙しく、
香霖堂に訪れる事はなかった。

年末でも商いをしている店は香霖堂ぐらいだが、
年末年始に必要な物は香霖堂では手に入らない。

なので客が訪れる事は本当に稀だった。

だから今日は朝から誰とも顔を合わせていないし、口も聞いていない。
完全に一人だ。

その方が気楽でいい。
何事も終わりくらいは静かが一番だ。

夕食はシンプルに蕎麦だけで、その後に少し豪華な酒盛りを一人でして終いだ。
その後短めの睡眠を取り、夜明け直前に起きて博麗神社に向かう。
神社で初詣をし、おそらく酔い潰れているであろう魔理沙を介抱しつつ自宅に送る。

これが霖之助の大晦日から元日にかけてのスケジュールだ。
ここ数年、霖之助の年末年始はずっとこんな感じだ。

静かな終わりと賑やかな始まり。

ストーブの火がぼんやりと揺れた。
そろそろ燃料を補給する頃合いかもしれない。

霖之助は立ち上がる。

ふと目線を窓へ向けると魔法の森の林道を歩いている人物を見つけた。

輝く様な金髪と白いケープに青のロングスカート。

冬と言う事もあってか、ケープは厚手で。
首元にはマフラーと手にはミトンタイプの手袋。

七色の魔法使い、アリス・マーガトロイドだ。

横には妖精程の大きさをした人形が一人飛んでいる。
何故一人等という数え方をするのかと言うと、
二体だとか表現をすると彼女が怒るからだ。

「もっと言い方ってものが有るでしょう?
 この子達を数える時は一人、二人と数えなさい」

なんて注意された事がある。
普段冷静な彼女がそうやって怒るのが意外で、
霖之助が少し笑ったらすます怒らせてしまった。

彼女とはご近所(と言っても距離はそれなりにあるし、木々に視界が阻まれているせいで近所と言うには微妙な位置関係だが)
のよしみでよく晩のおかずをお裾分けしてもらう事がある。

アリス自身中々良識のある人物なので霖之助も彼女が気に入っていた。

だがやはり彼女の一番の特徴は人形作りの腕だろう。
彼女の人形は芸術品と言っても過言ではない。

超が付いてもおかしくない程の腕を誇る人形師。
それがアリス・マーガトロイドと言う少女だ。

もう一度外に目をやるとアリスはさっきよりも大分店に近付いていた。
彼女の吐く息が白い靄になって中に広がる。

どうやら香霖堂へ用があるらしい。
彼女の眼がハッキリと香霖堂を捉えている。

こんな時期にこの店を訪れるとは珍しい。

一応香霖堂は元日であろうと霖之助が店に居る限りは営業をしているが、
先程説明したように普段に比べて客は大分少ない。
普段の客足自体がそんなに多くないので、
その少なさと言ったら語るのが哀れに感じるほどだ。

多分彼女が今年最後のお客になるだろう。

霖之助は椅子に座り直すと、
何時彼女が店に入ってきてもいい様に、しっかりと店の入口を見据えた。










アリスが店内に入って来ると、
扉に設置したベルの音と共に、冬の冷たい空気が扉の隙間から舞い込んだ。
彼女はその風を追い出す様に急いで扉を閉める。

「いらっしゃい。
 外の様子はどうだい?」

「聞かなくても分かるでしょ。最悪よ」

けだるそうな彼女の口調は何時ものハキハキとした態度の彼女らしくなく、
何処か疲れているように見えた。

いや、実際疲れているのだろう。
瞼を重そうに上にこじ開けたアリスの瞳は、すぐにでも睡眠を欲している。
よく見れば眼の下に薄い隈が出来ていた。

アリスは睡眠や食事と言った生活リズムを何よりも重んじる。
そんな彼女がこんなになるまで睡眠を取らないとは。

よっぽどの事でもあったのだろうか。

「寝不足かい?」

「えぇ、まぁそんなとこよ。
 新しい人形のアイディアが浮かばなくって、
 師走の頭からずっと燻ってるの。
 最近は夜通しで案を考えてるのだけど、全然駄目ね」

「なるほど、合点がいったよ」

確かに師走の頭からアリスの姿を余り見なかった。
ここ一週間は完全に彼女に会っていない。

年の瀬だし何かと忙しいのだろうと思っていたが、
よもやスランプだったとは。

「ねぇ、霖之助さんは仕事納めとかしないの?」

「しようが、しようまいがこの店を訪れる客は気にしないよ。
 だから僕がこの店に居る限りは営業中さ」

「年末年始も仕事だなんて、寂しいわね」

「君も似たようなものじゃないか。
 この分だと神社の宴会には参加しないのだろう?」

「別に気にしてないわよ。
 酔っぱらった魔理沙に絡まれないと思うと清々するわ」

「そうかい、それはよかったじゃないか。
 でも君の場合は仕事って言うのかな。
 僕は趣味に近いと思うけどね」

「言うわよ。 むしろ貴方の方が趣味じゃないの?」

カウンターを挟んで言葉を交わす二人。
皮肉交じりに交す言葉には友人同士の気安さが見え隠れしていた。

アリスの隣を飛んでいた上海がカウンターの上へと腰掛ける。

じっと霖之助の顔を見上げるその眼は人工物で有る事を感じさせず、
血の通った生物で有るかのような錯覚を生み出す。

「何が要るんだい?」

「何時もここで買ってく素材全般をお願い。
 数量は全体的に多目で。他に買う物は自分で探すわ」

「あぁ、分かった。何かあったら聞いてくれ」

「言われなくてもそうするわ」

踵を返して洋服が陳列されている棚へアリスは向かう。

彼女が香霖堂で洋服を漁るのは日常茶飯事なので、
アリスの足取りは慣れたものだ。

服を買って行って自分で着るのではなく、
人形に着せる服のモデルにするそうだ。

霖之助はカウンターの上に腰掛ける上海へと目をやる。

愛らしい仕草で霖之助の顔を見つめる上海は、
先程からカウンターに座っている。

碧い瞳に腰まで届く柔らかそうな金髪。
数あるアリスの人形の中でも、
アリスがこの上海を好んで連れている姿をよく見る。

その動きは幼い子供が母親に着いて行く姿そっくりで、
上海と言う一個の生物で有るかのように錯覚させる。

だが魔理沙曰く、アリスの人形は全て彼女の操作によるもので、
彼女のさもしい一人芝居らしい。

一方で彼女の人形は半分自立していて、
ある程度ならアリスの操作を必要とせずに活動すると言う意見もある。

以前気になってアリスに聞いてみたところ、
上手い具合に話をはぐらかされて結局うやむやのままになっている。

アリスとしては魔法使い、ひいては人形遣いとしての底を知られるのが嫌なのだろう。

自律行動しているかしていないかでは、
半分とはいえ自立している方が良いに決まっている。

もし人形が自立していないのであれば、
それはただの操り人形しか造れないと言う事だ。

なら半自立人形なら公表してもいいのか?
となる。

答えはNoだ。

彼女の目的は完全な自立人形を作ると言う目標がある。

完全自立人形。
それは生物を創ると言う行為、神にも等しい行いだ。

そんな目的を持っている彼女は半自立人形と言う中途半端な功績で己を誇らない。
きっと彼女なら「そんな半端な事で満足していられないわ」なんて言って黙々と研究を続けるだろう。

そんな訳で霖之助は彼女の人形が、
ただの操り人形なのか半自立人形なのか知らない。

別に霖之助自身知りたいとは思わない。

彼女が喋りたくないのならそれでいい。
霖之助にだって自身の喋りたくない事の一つや二つある。

程度は違えど誰だってそんなものだ。
だから霖之助はこの件に関しては、考えはすれども余り深く突っ込まない事にている。

「アリス。少し上海を触ってもいいかい?」

洋服を品定めする彼女がカウンターの方へ顔を向ける。
手には子供が着るようなエプロンドレスを持ったままだ。

「どうしたの? 急に」

「何となくね」

「別に構わないけど、壊さないでね」

「あぁ、扱いには慣れてる」

「女の子の?」

「道具の………って言うと君は怒るね」

「そうよ、ちゃんと女の子扱いしてあげなさい。
 だから変な事しちゃダメよ」

皮肉交じりに笑うアリスから、許可をもらうと、
霖之助は上海に人差し指を差し出す。

差し出された人差し指を首を傾げて不思議そうに見つめると、
ゆっくりと小さな手の平で霖之助の指にそっと触れた。

指に伝わる冷たい感触。

血の通った生物でない事の証だが、
幼い子供の様な上海の仕草を見ていると、
その姿は生物の様あると言う印象を持たずにはいられない。

次は上海の頭に指を這わせる。
頭の上から下へ。
子供をあやす様な手付きで頭を撫でる。
柔らかな髪の感触が心地よい。

上海は頭を撫でられると目を閉じて霖之助に身を委ねた。
目を瞑ると言う行為が出来る程に作りこまれていると言う事に関心する。

目以外のパーツは動かないので感情の起伏は分からないが、
霖之助に身を委ねている時点で気を許しているのは確かだ。

こうして見ていると半分くらいは自分で考えて行動している様な気がする。

「ねぇ、なにしてるの?」

「彼女の観察」

「観察って普通は触れないものよね?」

「柔らかそうな髪の毛だなぁと思ってさ。
 実際柔らかいしね」

「そ、そう。でも私変な事しないでって言ったわよね?」

拗ねた風に唇を尖らせるアリス。

「変な事かい?」

「変よ! 絶対変! 貴方は柔らかそうって理由だけで女子の髪を触るの?」

「それは無いが………」

「上海は人形だから。なんて言い訳は認めないわよ。
 さっきも言ったように上海だって女の子なんだから」

「うーむ、上海本人は嫌がって無いようだが」

「嫌がってるわよ! 絶対嫌がってる!」

アリスがそう言って怒ると上海も霖之助の手から逃れるように離れた。
面白い動作だ。
こうしてアリスの感情に合わせて行動しているのを見ると彼女が操っているようにも見える。

「悪かったよアリス。
 次はもう何もしない」

「信用ならないわ」

「そんなに信用ならないのかい? 僕は」

「そりゃあ、信用してるかしてないかって聞かれたら信用してる方だけど………」

「なら別に問題ないじゃないか」

「大ありよ! ともかくこれから上海に触れるのは禁止! わかった?」

「………君がそう言うなら仕方ないね」

彼女が怒る理由が分からず若干不服な様子で、
アリスの言う事に首を縦に振た。








「また君の勝ちか、強いね」

無言で喜びの動作を表す上海を目の前に、
霖之助はトランプを組み直す。

さっきからずっと上海に負け越しだ。
中々理論的なプレイをする。
特にポーカーは表情が無いのでまったく手が読めない。

外見とは裏腹に妙な特技を持っているものだ。

上海とは、セブンブリッジ、ポーカー、ジン・ラミー、ババ抜き、7並べ、ブラックジャック等々。
アリスが服を選んでいる間にずっと上海相手にトランプをしていたが、
そろそろトランプで遊ぶと言う事に限界が来ている。

「まいったね、君のご主人が品物を選ぶのが遅い所為でやる事が無くなってしまったよ」

「聞こえてるわよ。悪かったわね、遅くて」

「いやいや、ゆっくり選んで行くといいよ」

「そう言う態度が急かしてるようにしか見えないのよ」

「酷いなぁ、君のご主人は」

そう上海に声を掛けると、
上海は「そうかなぁ~」なんて言いたげに首を傾げた。

「ねぇ、霖之助さんは大晦日と年明けどうするの?」

「ん? どうしてそんな事聞くんだい?」

「いいから、答えてちょうだい」

「そうだね」

霖之助は顎に手を当てて薄い笑いを浮かべる。

「別に他人に自慢できるよな事はしないよ。
 蕎麦を自分で打って……」

「自分でそばを打つの? そんな事も出来るのね」

「意外かい?」

「えぇ、まぁ。
 貴方って無精者だからそんな手間のかかる事はしないと思ってた」

「失礼な。それぐらいはするさ」

「続けて」

コホンと霖之助が短い咳払いをする。

店内に入りこむ光が大分少なくなってきた。
日が傾いて来た証拠らしい。

「年越し蕎麦を食べ終えたら次は、
 少し良いお酒と少し豪華なおつまみで酒盛りをする。
 今年は鮭の燻製が手に入ったからそれが酒の肴だね」

「ふむふむ、それで?」

「年が変わるまで飲んで、それから少し睡眠を取る。
 夜明け前ぐらいに起きて博麗神社へ初詣に向かう。
 その時間に店を出ると綺麗な初日の出が見えるからね」

「そう言えば霖之助さんんて、
 毎年神社の宴会には参加しないけど初詣には来てたわね。
 それで確か……」

「酔いつぶれている魔理沙を背負って帰るて事さ」

「そうそう、確か去年もそんなだったわ」

「それくらいかな、僕の予定なんて。
 こんな事を聞いてもつまらないだろう?」

「そうかしら、素敵な過ごし方だと思うわ」

「初めて言われたよ、そんな事」

「私達なんて毎年ただ騒ぐだけだから」

「そうかな、少なくても君は落ち着いてるように見えるけどね」

「見えるだけよ」

アリスはハンガーに掛ったエプロンドレスをカウンターに置く。
古そうな服だが商品として並んであるだけあって、見栄えはいい。

どうやら今日はこれを買って行くらしい。

幼児用のサイズなのでアリスが着る事は出来ないだろうが、
人形の服を作るための資料用としては十分だろう。

アリスの表情にだけ一瞬目をやると、
すぐに算盤を取り出して無言で弾いた。

「………安いわね。値引きしてくれたの?」

「まぁ、ほんの気持程度には」

「嘘ばっかり」

弾き出された値段に対してアリスが反応した。
安すぎる事に対して不満があるらしい。

本来なら逆だろうが、彼女にとっては安すぎる方が気持がよろしくないらしい。

「どうしたの? 急に。
 いつもはよっぽどの事がない限り値引きなんてしてくれないじゃない」

「ただ何となくだよ。
 しいて言うなら、君の行動が珍しかったからかな」

「珍しい?」

「君がそうやってがむしゃらに自分の研究に取り組む姿が珍しいと思って。
 君は何時も計算尽くめの結果で満足してるみたいだからね。
 それが新鮮に感じたのさ」

「そ、そうかしら。
 今日の私そんなにみっともなかった?」

表情を曇らせてそう尋ねるアリスに霖之助は思わず吹き出してしまう。
そんな霖之助を見てアリスは怒ったが、その仕草が更に霖之助の笑いを誘う。

「今日の君は精一杯頑張ってるじゃないか。
 それの何処が行けない事なんだい?」

「だって………恥ずかしいじゃない」

「分からないな、その気持ち」

顔を赤くしてそっぽを向くアリス。
自分が全力を出して努力する姿の何処が恥ずかしいのだろうか。

「自分の全力を出さずして偉業を成した人物は居ないよ?」

「そうだけど、私は人に知られたくないの」

「ふむ、やっぱりよく分からないな」

「いいから、早く包みなさいよね!」

「はいはい」

アリスに急かされるままに、
糸と布それから小さなエプロンドレスを包む。

何時もより多めの荷物は彼女一人が持って帰るには少々重荷に感じた。

「大丈夫かい?」

「大丈夫よ、これぐらい」

「自分の研究に熱心なのはいいけど、息抜きも偶には入れるといいよ」

「分かってるわよ、籠ってばっかりじゃ息が詰まるわ」

「少しゆっくりしていくかい?
 お茶でも出そう」

「ありがとう。手間を掛けるわね」

「いいや、苦ではないよ。
 君には普段世話になってるしね」

霖之助はお茶と茶菓子を求めて店の奥へと向かう。
確か饅頭が何個か有ったはずだ。

北風が香霖堂全体をガタガタと揺らし、
スキマ風がビュービューと吹き込む。

鉛色の空は相変わらず店全体を見下ろし、傾きかけの太陽を拝ませてくれない。
今にも雪が降り出してきそうな空だ。

こんな状況で雪が降れば確実に吹雪くだろう。








霖之助が居なくなった店内を見渡して、軽く溜息をつく。

ストーブの近くに腰を掛け上海を膝の上に座らせる。
店の外はあんなにも寒そうなのに、
今自分がいる店内はこんなにも暖かいのが不釣り合いに感じた。

「女の子が髪を触られて黙ってちゃ駄目よ?」

「?」

首を傾げて不思議そうにアリスの顔を見上げる上海。

愛くるしい仕草だが全て自分の一人芝居だと考えると、
アリスは寂しさを感じずにはいられない。

そんな寂しさを紛らわせるために、
彼と同じ様な手付きで上海の頭を優しく撫でる。

何故かあの時言葉が出た。
自分でなく上海に優しくする霖之助に対してだ。

上海の行動は全部自分が行っていると言うのに、
彼が上海そのものに優しくするのが我慢ならなかった。

酷く自分勝手なのは分かる。
上海に本物の心が有れば間違いなく不貞腐れた顔をしているだろう。

「どうしてあんな事言ったの!」なんて怒ったのかもしれない。

霖之助はアリスの事を褒めたり、感心したりした事は有っても、
あんなに優しい顔で、あんなに優しい仕草をしてくれた事は一度もない。

それはそうだろう。
あんな態度は幼い子供に対して行うものだ。

霖之助はアリスを一人の少女として、
一人の魔法使いとして認めているが故に感心したり褒めたりするのだ。

それは理解している。

彼に認められて褒められるのは嬉しいし胸が高鳴る。
でも、でも彼が上海に対して見せた優しさに自分は、
アリス・マーガトロイドとして触れられないと思うと胸が苦しいのだ。

「貴方ばっかりずるいわよ、上海」

「?」

「なにが?」なんて言いたげな仕草を見せる上海に、アリスは更に続ける。

「とぼけたってだめ。あんなに気持ち良さそうな顔しちゃって。
 よかったわね、柔らかくて気持ちがいい髪だって言ってたわよ?」

コクコクと頷く上海を見てアリスは微笑む。

彼としたトランプは楽しかった。
彼は一見冷静な様だけどすぐに熱くなる。
負ける度に本当に苦そうな笑いを浮かべるのだ。

そしてこちらがわざと負けると凄く嬉しそうな笑みを浮かべる。
彼自身はポーカーフェイスのつもりだろうがまったく隠せていない。

思わずアリスの方も口元が笑ってしまった。

それを必死に隠しながら彼と上海を通してトランプをしていたので、
少々品定めに時間が掛ってしまった。

「今度暇が出来たら、髪を梳いてあげようか?」

パタパタと両手を動かして喜びを表現する上海。
自分もこう素直で居られればいいのだが。

アリスは自身の髪に触れる。
肩に掛るくらいのややウェーブが入ったセミショート。

色は上海と同じく眩しい程の金だ。
その髪を自分で触りながら彼女は呟く。

「私も貴女みたいに髪を伸ばそうかな。
 そしたら、彼も柔らかそうな髪なんて言ってくれるのかしら?」

上海は言葉で答えない。
その代りに体全体を使って肯定の表現をした。

例え寂しい一人芝居だとしても、こうして肯定してもらえると勇気が出る。

アリスは窓の外へと視線を向ける。

ビュービューと吹く風に混じって白い物体が外を舞っていた。
雪だ。雪が降り出したのだ。

風が強く吹く度に雪は激しく舞い踊り、
香霖堂の窓に叩きつけられる。

もう少し早めに切り上げていれば降り出す前に帰れたかもしれない。
だがアリスは不思議と嫌な感じはしなかった。

もしかしたら、彼なら吹雪が止むまでここに居てもいいと言ってくれるかもしれない。
渋ったのなら「貴方が引き止めるからこうなったんでしょ?」とでも言えばいい。

と言ってもそんな発言は出来るだけしたくない。
仕方ないから居てもいいよなんて関係は真っ平ごめんだ。
贅沢かもしれないが。

アリスのここに居たいと言う気持ちに答えるように、
窓の外の雪はどんどん激しくなる。

「遅いわね、本当に。
 これじゃ帰れないじゃないの。ねぇ、上海」

アリスの言葉を受けて上海は二回首程首を上下にして肯定の意を告げる。
何故か操作をしていないのにもう一度頷きかけたように見えたが、気のせいだろう。

アリスは目線を窓の外から室内のストーブへと移す。

ぽぉっと輝くオレンジの光は先程から近くに座っているアリスの全身を包み込み、
しばらく感じていなかった眠気を頭の奥底から引き上げる。

ちゃんと寝たのは何時以来だろうか?

最近はずっとソファーで数時間仮眠を取るだけの生活が板に付いて来た気がする。
今アリスが座っているのは背もたれ付きの木の椅子だが、
それでも何故か家のソファーで寝るよりは上等に感じられた。

意識が徐々に深くへと沈んで行く。
引き上げようと言う気すら起こらない。

風が窓を叩く音が子守唄にさえ聴こえるほどだ。

ここ最近ずっと頑張ったんだ、今ぐらい力を抜いてもいいだろう。
適度に息抜きをした方がいいと先程彼も言っていた。

自分が寝ている事に気付いた霖之助が、
布団を敷いてくれてそこまで運んでくれるかもしれない。

九割方そんな事は無いだろうが、
それでもそんな淡い期待を抱いてしまうのは眠気の所為だろう。

「…………ばか」

その言葉を最後にアリスは睡魔に全身を委ねた。






霖之助がおぼんにお茶とお茶請けの饅頭を乗せ店の方に戻ろうとした頃。
不意に誰かが霖之助の肩を叩いた。

店のカウベルは鳴っていないし、台所にある勝手口から誰かが入って来た訳でも無い。
大体この寒い中勝手口が開いたら嫌でも気付く。

だから必然的にこの肩を叩いたのは、
今客として香霖堂を訪れているアリスしか居ないのだが。

「なんだ、君だったのか」

霖之助の肩を叩いていたのは上海だった。
小さな体を一生懸命に動かして、霖之助の肩を揺らそうとしている。

だが残念な事に彼女がいくら頑張ろうと霖之助の肩は一向に揺れなかった。

「どうしたんだい? お茶ならもう用意できたが」

霖之助がそう言うと、上海は霖之助の肩を引っ張った。
着いて来いと言う事らしい。

上海が求めるがまま霖之助が店の方へ向かうと、
ストーブの近くの椅子でアリスが座ったまま眠っていた。

「これを伝えたかったんだね?」

上海はコクコクと無言で頷く。

「ありがとう、毛布でも掛けてあげないとね」

その言葉に上海はブンブンと首を横に振った。
「違う」と言う意味らしい。

「違うのかい? なら………横にするが正解かな?」

その答えに対して今度はジェスチャーを交えて意見を返した。
うんうんと頷いた後にすぐブンブンと首を横に振った。
半分肯定で、半分違うらしい。

「うーむ、それじゃあ……布団に運ぶ。かな?
 流石にそれは無いと思うが………」

霖之助の口からその言葉が出ると上海は首を大きく上下に振った。
驚いた事にこれが正解らしい。

「おいおい、本当にそれが正解なのかい?
 もし違っていたら変な噂が立つのは僕なんだよ」

そう霖之助が言うと上海は霖之助の頬をペチペチと叩いた。
早くしろと言いたげな態度だ。

仕方なく霖之助は客間へ向かうと、
来客用の布団を出して丁寧に敷いた。

次に店の方に戻ると悪いとは思いながらも、
寝ているアリスを抱きかかえて客間へと移動させる。

予想以上に軽い彼女の体。
彼女を抱き上げると前々から柔らかそうだと思っていた金髪が手に触れ気持ちがよかった。

そのまま優しくアリスを客間まで運ぶとそっと布団の中へ潜り込ませる。

「これで満足かい?」

ペコリとお辞儀をしてお礼をする上海。
礼儀は弁えているらしい。関心だ。

「ところで上海」

「?」

「君、自分で動けるんじゃないか。
 アリスはこの事を知ってるのかい?」

その言葉に対して上海は人差し指を口の前で立てて霖之助に見せた。
俗に言う「シー」のポーズだ。

どうやらアリスは知らないらしい。

「言ってあげると彼女は喜ぶと思うよ?
 まぁ、君には君なりの事情ってものがるんだけれど」

上海は俯いたままで何の反応も返さない。
それはつまりそう言う事なんだろう。

アリスには自分の事は秘密にしておいて欲しいようだ。

「そうかい。まぁ、君がそう思うのなら僕の方からは何も言わないよ」

ゆっくりと上海が顔を上げ霖之助の顔を覗きこむ。

「僕はこれから蕎麦の用意をするよ。
 今年は二人分を作らなきゃいけなさそうだから。
 君もいるかい?」

フルフルと首を横に振って否定の意を告げる。
当たり前だろうが蕎麦は要らないらしい。

「そうかい、それじゃ」

客間から出て行こうとする霖之助を上海の小さな手が引き止めた。

「まだ何か?」

そう言った瞬間に頬に触れる冷たい感触。
上海の唇だ。

人形の体なので当然唇は固く、
血が通っていないので冷たいが、何故か霖之助には温かさと柔らかさが感じられた。

頬から唇を離した上海の頭を霖之助は撫でる。

「お礼のつもりだったのかい?
 でもそう言うのは気安くするものじゃないよ」

先刻と同じように上海の頭を撫でる。
やはり柔らかく気持のよい髪だ。
創造者によく似ている。

この髪の感触は好きかもしれない。

外は相変わらず吹雪いている様だ。
この調子だと夜通し降る事になるかもしれない。

まぁ、一晩ぐらいなら別にいいだろう。
どうせ暇な大晦日だ、今更一人、二人増えた所で別に問題はない。

Comment

#No title
大好きなアリ霖にいてもたってもいられず、初コメ失礼しますっ!

何回読んでも十四朗さんのアリ霖は堪りませんなぁ…。

2人の絶妙な距離感と気配り上手な上海が…もうっ!!

いやはや、アリ霖もっと流行ればいいのに。

みんな目覚めればいいのに。

ステキSSありがとうございましたっ!



  • by:鳥威
  •  | 2010/01/12/02:17:56
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#No title
上海の行動がアリスの抑えている感情によるものだと
妄想したら更にアリスが可愛く見える。
  • by:
  •  | 2010/01/15/20:40:24
  •  | URL
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#No title
上霖もいいかも・・・。
  • by:
  •  | 2010/04/18/14:46:03
  •  | URL
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#なにこれ素敵
うおぉ、何この可愛い上海。
霖之助さんは上海に人形用のアクセサリーとか贈ってアリスに焼きもち焼かれるといいよ。
  • by:廻り風
  •  | 2011/07/17/00:32:32
  •  | URL
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#No title
「言ってあげると彼女は喜ぶと思うよ?
 まぁ、君には君なりの事情ってものがるんだけれど」

ものがるって誤字ですよね。

アリ霖最高です、甘甘なSSありがとうございました!
  • by:名無しさん
  •  | 2012/04/02/08:58:30
  •  | URL
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