十四朗亭の出納帳

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朱鷺のすみか 7

遂に七日目です。

いやー早いものですね。
このシリーズは「企画でもやってみるかー」なんてノリから始まりました。

とりあえず長い話しは明日にでもしようと思います。

拍手やコメントをくれた方々!誠にありがとうございました!!


『 朱鷺のすみか 7 ~朱鷺子と日記と霖之助~ 』




朱鷺子、霖之助





アブラゼミが喧しい程に鳴く夏の幻想郷。

湿度の高い空気が体に纏わり付き、
夏の日差しは肌を焼く。

この日差しや気温を嫌う者もいるが、
夏は生命が一番栄える時期だ。

木々が青々と茂り、動物達は活発に野山を駆け回る。

夏はまさに命の季節と言っても過言ではない。

だがそんな季節であっても古道具屋『香霖堂』店主、
森近霖之助は自分の店で本を読んでいた。

魔法の森の入口にある香霖堂は夏の日差しが余り当たらず、
風が程良く入って来るので、
外よりも温度が若干低く過ごしやすい。

魔理沙や霊夢が来ると涼しいと言って何時までも居座っている。
お客として訪れる者達も同上の理由で居座ったりする。

霖之助としては居座られても騒がしくしない分には一向に構わないのだが、
最近はある少女のお陰で店内が少々騒がしい。

名無しの本読み妖怪、通称朱鷺子の事だ。

客が来ると真っ先に声を掛けて話を開始する彼女は、
すっかり香霖堂の看板娘になりつつある。

元々人見知りが激しく、
初対面の人物とは打ち解けるどころか会話すら危うい彼女だったが、
最近では霖之助と色んな場所に出かけて、
色んな人物と知り合ったので大分克服された。

霖之助と出会った頃の彼女に比べれば大きな進歩だ。

彼女がいる事で店の雰囲気が柔らかくなったと言う客も少なくない。
永遠亭の薬売りや冥界の庭師は、霖之助の雰囲気
そのものが柔らかになったとまで言っていた。

霖之助にその自覚は無い。
何時もの様に本を読んだり、
何時もの様に商品の説明をしているだけだ。

なのにその少女達は霖之助が変わったと言っている。

一応何処がどう変わったのかと考えてはみたが、
どれだけ考えても答えが出ないので彼女達の言う事をそのまま飲み込む事にした。

セミの鳴き声と、店の奥に設置された大きな柱時計が動く音だけが響く。
それと時々思い出したかのように静かに捲られる本のページが擦れる音。

まったくの無音と言う訳ではないが、
環境音しか耳に入ってこない店内は動くものを感じさせない静けさがあった。

今日は朱鷺子が朝から出かけているのでずっとこんな感じだ。

一応昼食をとりに香霖堂へ帰って来たが、
急いで昼食をとるとそのまま香霖堂を飛び出して行ってしまった。

最近友人が増えたらしいのでその子達と遊んでいる様だ。
この夏に入ってリグルと言う子と知り合ったし、
今日は屋台を営んでいるミスティアが一緒らしい。
彼女なら交友関係も広いし、他人との付き合いも上手いだろう。

今頃大勢でわいわい遊んでいるのかもしれない。

彼女がいないと読書が捗るし偶にはこんな日も悪くない。
彼女が香霖堂に来てからこんな時間は殆どなかった。

霖之助は心の中でそう思いながらも、
胸の内でどこか寂しさを感じた。

何時もならお客の居ないこの時間帯は、
朱鷺子と一緒に本を読んだり外の世界の道具について考えたりしている。

前まで一人でやっていた事だが朱鷺子がいる以上二人でやらざるを得ない。

本を読んでいるとページを捲るのが速いとか、
「この言葉の意味はなんなのか?」等と聞いてくるので読書が余り捗らない。

道具の考察も彼女がいると、
単純な発想やとんでもない発想、
異常なまでに飛躍しすぎた発想で調子を狂わされる。

彼女がいない方が読書も道具の考察も上手くいく。
なのに彼女がいないと、
本来香霖堂に有るべきものが無い様な気がして仕方ないのだ。

おかしな話だと思う。
この夏が始まる前はずっと自分一人の店だったのに。

彼女が香霖堂に居ないだけで、
読みかけの本のページがごっそり無くなっている様な感覚に襲われる。

霖之助がカウンターへ目をやると一冊の日記帳が目に入った。

朱鷺子、と丸めの可愛らしい文字で名前が書かれた簡素な日記帳。
グリーンの表紙にボタン式の簡素な留め具、
ただの紙に日記を書いていた朱鷺子を見かねた霖之助が彼女に贈ったものだ。

霖之助から日記帳を受け取ると大喜びで、
今までの分の日記を貰ったばかりの日記帳に書き写していた。

寝る前になると何時も何かを熱心に書きこんでいるので、
横から覗きこもうとすると顔を真っ赤にした朱鷺子に怒られた。

その朱鷺子は今、店留守にしている。

霖之助は朱鷺子の日記帳へと手を伸ばす。
悪いとは思ったが彼女が何を書いているのか気になる。

朱鷺子が日常をどんな風に感じ取っているのか、
毎日をどんな思いで過ごしているのか、それが気になって仕方が無かった。


パチン!と軽い音を立てて日記の留め具が外れる。
自由になった日記のページを一枚ずつ丁寧に捲って行く。

『霖之助の勧めで今日から日記を付ける事にする。
 今日は霖之助が紅魔館と言う大きなお屋敷にある、
 大きな図書館へと連れて行ってくれた。
 紅魔館には初めて会う人ばかりなので少し緊張した。
 でも門番の紅美鈴はいい人だった。
 ずっと優しい顔でニコニコしていて、
 初めて会う私にも優しい態度だったのでホッとした。
 妖怪だからいい妖怪と言った方が正しいかもしれない。
 紅魔館の地下にある図書館は凄く大きくて、
 私は開いた口が塞がらなかった。
 香霖堂にも沢山の本はあるけれど、あんなに沢山は無い。
 図書館ではパチュリーと小悪魔に出会った。
 パチュリーは図書館の主でボソボソ喋って暗い感じで怖かったけど、
 私に本を貸してくれたので悪い人ではないみたい。
 魔法使いらしいから、悪い魔法使いじゃないのかもしれない。
 きっといい魔法使いなんだろう。
 小悪魔は図書館の司書らしい。
 凄く丁寧でニコニコしながら図書館を案内してくれた。
 名前の通り小悪魔は悪魔らしい。
 悪って付いてるけど小悪魔は凄くいい悪魔だと思う。
 今日は初めて日記を付けたけど、日記ってこんなのでいいのかな?
 今度霖之助にでも聞いてみよう』

朱鷺子が日記を付け始めた日。
夏の初め辺りだったはずだ。

二人で図書館へ行き本を借りて来た。
あの頃の朱鷺子はまだ人見知りが激しかったので、
初めて誰かと会うたびに霖之助の背中に隠れていた。

いや、今でも紫辺りが来ると霖之助の背中に隠れてしまうが、
この頃に比べれば大分減った。

霖之助は次のページを捲る。

日記には、実に様々な事が書かれていた。

ゴムプールを膨らませて水浴びをした事。
ミスティアやお空と一緒に流し素麺をした事。
蛍を見た事。
慧音とお祭りに行った事。
雨の降る中外の世界の本を拾って来た事。

日記の中は色鮮やかな思い出で彩られ、
彼女の思い出が一つの花束の様に飾られていた。

全て読み終えると、霖之助は静かに日記を閉じる。
付属の金具を留めると元あった位置へそっと返した。

もう一度日記帳を見つめて穏やな笑みを浮かべる。
本当に優しく、幸せそうな笑みだ。
まるで朱鷺子の幸せが自分の幸せであるような顔だ。

霖之助は理解したのだ。

霖之助のした事で朱鷺子は喜んでいる、楽しんでいる。
あの子は自分と居て楽しいと言ってくれていると。

彼女がこの夏を満たされた想いで過ごしたように、
彼の胸の中も今、心地よい満足感で満たされていた。

今日は彼女の好物を用意してやらないと。
それにこれからもっともっと楽しい思い出を作ってやろう。

霖之助はこれからの事を考える。
夏が終わるまでに霖之助と朱鷺子は、
一体幾つの思い出を作る事が出来るのだろうか?






「ただいまー!」

茜色が滲んだ空を背景に朱鷺子が帰宅した。

背中が開いたワンピースに大きな麦わら帽子。

最初は嫌がっていた大きな麦わら帽子も今ではすっかり朱鷺子のお気に入りだ。
前に一度日焼けをして風呂に入る時が辛そうだったので、
今では日焼け止めのクリームを常備させている。
それでも不安なので日向には余り出ないように注意している。

それを朱鷺子が何処まで守っているかは知らないが。

「おかえり、朱鷺子」

優しさを込めた笑顔で朱鷺子を迎え入れる。
朱鷺子は一日中外で遊んだ後だと言うのに、
まだ元気が残っている様子だった。

「あのね霖之助! 今日はね! 今日はね!」

「分かった分かった、後で聞いてあげるから。
 取り合えずまずは夕食にしよう。
 準備は出来てるから手を洗っておいで」

「うん。今日はお夕飯なんなの?」

「君の好きなどじょう鍋」

やったー!と歓声を上げて洗面所へと駆けだす朱鷺子。
背後から転ぶよと注意をしたが、
そんな言葉をまったく聞かずに彼女ははしゃいでいた。

彼女が店の奥へ消えるのと当時に霖之助も台所へ向かう。
夕食の用意事態は主役であるどじょう鍋を除いて大体出来ているので、
後は鍋に豆腐とどじょうを入れて火に掛けるだけだ。

どじょうは生きたものをそのまま使う。

出汁が熱くなってくると、
ドジョウが暑さから逃れようと豆腐の中へ逃げ込むが、
結局は加熱されてどじょう入りの豆腐が出来あがると言う鍋だ。

実際はそこまで上手くはいかず、
どじょうが頭を突っ込むだけで終わったり、
突っ込む暇もなく煮え上がるだけの方が多い。

地獄鍋と言われるこの鍋は少々残酷な調理法であるきもするが、
朱鷺子はこのタイプのどじょう鍋が一番好きらしい。

夏に鍋とはどうかと思ったが、
朱鷺子の好物だし、滋養強壮のあるどじょうは、
夏バテ防止にぴったりなので結局鍋にした。

鍋に火を掛け鍋の中のどじょう達が暴れ出す頃、
手を洗った朱鷺子が待ちきれない様子で台所へやって来た。

霖之助はそんな朱鷺子を「もうすぐ準備ができる」と言って宥め、
居間で待っているように伝えた。







夕食中の朱鷺子はずっと喋りっぱなしだった。
今日はアレをしたこれをした、等と目を輝かせながら霖之助に言って聞かせる。

本来ならこうして食事中に喋るのは余り行儀がいいとは言えないが、
今日ぐらいは大目に見よう。

甘いだけが彼女の為ならない事は分かっているが、
今ぐらいはいいだろうと心の中で片付けてしまう。

躾に関しては今度慧音にでも教わりに行けばいい。
彼女なら子供の心を掴むのが上手い。

なんせ人見知りの激しかった朱鷺子を出会って数時間で懐かせたのだ。
子供の心を掴む事に関して、彼女の右に出るものはそうそう居ないだろう。

思えば慧音と出会ってから朱鷺子は他人にも心を開くようになった気がする。

彼女から人との接し方をしっかり学んだようだ。
一緒に過ごすだけでそんな事まで教えてしまうとは、
慧音にとって教師は天職らしい。

霖之助がそんな事を考えている横で、
朱鷺子は食後のお茶を堪能している。

まだ熱いらしく、フーフーと可愛らしく息を吹きかけて冷まそうとしている。

「んー? なぁに、霖之助」

「お茶を飲み終えたら庭に出てくれないかい?」

「? いいけど、なんで?」

「お楽しみさ」

不思議そうに首を傾げる朱鷺子。
霖之助はその頭に自分の手を乗せて、
クシャクシャと撫でてやる。

頭を撫でると朱鷺子は目を細めて「ぐぁ~」っと気持ち良さそうに声を上げた。
しばらく彼女の頭を撫でると、霖之助は準備を始める為に立ち上がって店の方へ向かった。






霖之助が用意した物は、
水の入ったバケツと蝋燭にマッチ、
それから外の世界の花火だった。

以前お祭りの時に朱鷺子達と見た花火とは違い、
この花火は手に持って行う。

幻想郷で一般的に知られる花火に比べると地味かもしれないが、
この花火は少人数でも楽しむ事が出来る。

花火の着火に特別な技術は必要ないし、
爆発の危険も打ち上げ花火に比べれば微々たるものだ。

霖之助が庭の方へ向かうと、
既に朱鷺子が縁側に座り待っていた。

暇そうに両足をプラプラさせて居たが、
霖之助見つけるとすぐに駆け寄って来た。

「なぁにそれ?」

「花火さ、外の世界のね」

「花火? あのお祭りで見たやつ?」

「あぁ、そうだよ」

「あんなにおっきな光になるのに、
 随分と小さいのね」

「これは大きな花火じゃ無いからね。
 大きな花火は打ち上げる時に筒を使うのさ。
 君がすっぽりと入ってしまうぐらいのね」

「私が………すっぽり」

「まぁ、今回はそれに比べると大分可愛らしいものだけどね」

霖之助は手持ち花火を一つ手に取ると、
蝋燭に火を付け地面に立てる。

今日は風が無いので火は簡単に点いた。

花火の先端を蝋燭の火に近づけると、
軽い発火音と共に花火に火が付いた。

火薬が燃える音と共に咲く火花。
それは赤や青へと姿を変えて暗い夜の中で輝く。

「わぁ!」っと言う歓声と共に翼をパタパタと動かし、
食い入るように花火を見つめる朱鷺子。

掴みは上々らしい。
霖之助は自分の花火が燃え尽きるのを見守ると、
朱鷺子に新しい花火を渡した。

朱鷺子は目を輝かせながら自分の花火へと火を付ける。

朱鷺子の花火に火が付くと、
彼女はまた「わぁ!」と歓声を上げて喜んだ。

霖之助も次の花火に手を出す。

種類によっては赤にも青にも黄色にも輝く花火。
湿気っている物も少なからず有ったが、
それもあまり気にならずに二人だけの花火大会は進んだ。






「最後、これだけになっちゃったね」

「あぁ」

アレから半刻ほど。
大量にあった花火は数本の線香花火を残して全て燃え尽きてしまた。

先程まで青や赤、黄色の光に包まれていた庭先は、
ただ蝋燭の光が揺らめくばかりだ。

線香花火を二人で分け合い、
二人同時に火を付ける。

花火の先端に火が付くと、
小さな丸い火の玉になってパチパチと弾けだした。

ぼんやりとした光が弾ける度に、
火の玉が揺れオレンジ色の火花を散らす。

優雅で居て儚げな光の花は、
決して強い自己主張をせずに悠然と自らの輝きを満喫している。

そして時間がたてば自らの役目に満足して、
地面へとその身を落とした。

霖之助はこの様子に強烈な哀愁を感じずにはいられなかった。

輝くだけ輝いて消えてゆく線香花火。
花火なら全てその運命を辿るが、
何故か線香花火だけはそれを強く印象付ける。

弱々しくも確かな輝きが彼にそう思わせるのか。

やがて二人で分け合った線香花火も全て無くなった。

先程まで無風だったのに少し夜風が吹いて来た。
蝋燭の小さな炎を夜風がさらい、掻き消す。

庭先は夜の闇とと静寂に包まれた。
新月である今日は月の光が無く、
先程まで目の前に居た朱鷺子の姿も、
目を凝らさなければ見えないほどだった。

「終わっちゃったね、全部」

「寂しいけど、花火が無くなってしまったから仕方ない」

「すっごく楽しかったよ、霖之助」

「どうも、そう言われると僕としてもありがたい」

「ねぇ、霖之助」

「なんだい?」

暗闇の中の朱鷺子が霖之助に一歩近付く。

「まだ夏は終わってないよね?」

暦上はまだ夏真っ盛りの季節。
まだまだ暑い日とはお別れできそうにない。

「あぁ、まだ終わって無いよ。
 そうだ、お盆になったらまた人里へ行こう。
 慧音や親父さん達にまた会えるよ」

「うん、また会いたい」

「だからあんまり危ない事はするんじゃないよ?
 怪我をして家から出れなくなったら、
 お盆だけじゃなくて残りの夏全部を棒に振る事になるから」

「分かった、危ない事はしないよ」

「よし、良い子だ」

そう言って居間の時と同じ様に朱鷺子頭をクシャクシャと撫でる。
朱鷺子は先程と同じように「ぐぁ~」と声をあげ、
気持ち良さそうに笑った。

楽しい時間はまだまだある。

やがてこの夏が終わっても次は秋が、冬が、春が、
そしてまた夏がやって来る。

それぞれの四季にそれぞれの思い出を作れば、
彼女もきっといい方向に進むだろう。

それにはまず明日からの事を考えなくては。

他にも夏の風物詩は沢山ある。

次は彼女に何を見せてやろうか。

ここ最近、霖之助はそんな事ばかり考えていた。

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