十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

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十四朗

Author:十四朗
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朱鷺のすみか 4

ちょっと聞いてほしい。
これ上げてる現時点で最終回に当たる七話目が書けてないんだぜ?

凄い焦ってるw

下手すると上げる一日前に描き上がるとかね。
ははは、冗談に聞こえなくなってきた。

『 朱鷺のすみか 4 ~朱鷺子と昆虫採集とリグル~』




朱鷺子、霖之助、リグル





「霖之助ぇ~! 見て見て!」

夏の日の午後。
溶けてしまいそうな日差しの世界から朱鷺子が帰って来た。

手には虫取り網、腰には虫かごを下げている。
今朝霖之助が倉庫の整理をしていたら偶然見つけたものだ。

幾分古ぼけてはいたがまだ使えそうなので、
朱鷺子に貸し与えてみたところ、大興奮しながら外へ飛び出して行った。

なんでも昆虫の標本を作るらしい。
昨日遅くまで、ファーブル昆虫記を読んでいた彼女が目を輝かせて言った。

少々本の内容に影響され過ぎだとは思うが、
若いうちはそれぐらいがいいのかもしれない。

興味と好奇心が無くなれば何かを知る機会も無くなる。
何かを知る機会が無くなると言う事。

それは生物として、発展を止めるのも同然だ。

今日は日差しが特に強い日なので、
初めの内は霖之助も外へ行かせるのに迷ったが、
そんな事を思ったので結局行かせることにした。

勿論彼女が香霖堂を出て行く時には、
日焼け防止用に日焼け止めを塗って、
日よけの為に麦わら帽子を被せて外へ行かせた。

最初は大き麦わら帽が邪魔だとごねていたが、
今では摘んできた花なんかを乗せたりして、すっかりお気に入りのようだ。

「やぁ、何かいいものでも……」

そう言って霖之助が朱鷺子の腰に吊ってある虫かごを見る。
虫かごはブリキ製で紐によって肩から下げる事が出来る。

昔ながらの簡素な作りだが、その分多少乱暴に扱っても平気だ。

「ねぇ、どう? たくさん捕まえられたと思うんだけど」

「凄いね、よくもまぁ、こんなに捕まえられたものだ」

口ではこう言っているが、実際余り視界に納めておきたい光景ではない。
なんせ虫かごの中には、
セミ、バッタ、蝶、蛾、等が所狭しと蠢いている。

霖之助は虫が苦手と言う訳でもないが、
正直そんな光景を好んで見るような趣味は無い。

「でしょでしょ? 凄いでしょ? 美味しそうだよねぇ~」

それは無い。

「大体捕まえた昆虫は標本にするんだろう?」

「それは……まぁ、そうだけど。
 でもちょっと美味しそうかなーな、なんて」

確かにイナゴやはちのこの佃煮は料理として存在していて、
霖之助も口にした事があるが、生きている状態の虫を美味しそうだと思ったことはない。

この辺りが鳥の妖怪である朱鷺子と自分の違いか、等と考えたりする。
彼女が、台所に立ちたいなんて言った日には、とんでもない物を食べさせられそうだ。

彼女が台所に入ったら使う食材を逐一チェックしよう。
豪華絢爛蟲料理なんて物を食卓に出されては困るを通り越して、死活問題だ。

「どらぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

霖之助が胸の前で腕を組み、
目を瞑ってそんな事を考えていると、
何時もは静かな魔法の森に、突然何者かの怒号が響いた。

そして怒号の次に店のドアが吹き飛んだ。
ドアを固定していた金具が外れてドアが店内に倒れこむ。

全てがスローモーションに見えた。

怒号に気付いて振り返った朱鷺子は、
飛んできたドアが覆いかぶさり、
悲鳴を上げて床へと押し倒されていった。

ドアが吹き飛んだ衝撃で、
陳列してあった商品の一部が、吹き飛ぶ。

商品と一緒に外から入って来た土埃と、
元から店内に居座っていた古臭い埃が宙を舞った。

一瞬の出来事だったが、
霖之助はこの瞬間に起こった出来事全てを把握する事が出来た。

店の中がとんでもない事になっているのは確かだが、
彼は予想以上に自分の反射神経と状況把握術が高い事に感心していた。

「森の虫達がすっかり怯えかえってるから、
 何事かと思って聞いてみれば!
 自分達を驚異的な網裁きで、
 捕まえて回る輩がいるって聞いてここまで来たけど!!
 そいつはどこにいるの!!!」

何と言う事だろう。

玄関そのものを取っ払うという大胆な発想により、
暗く閉塞的だった店内を開放的に見せ、
自然と足を店内に向けさせる事に成功した。

まさに匠の拘りとでも言いたいが、
そんな悠長な事を言っている場合ではない。

店の玄関に大改造劇的リフォームを施した本人が、
肩を怒らせて入って来た。

緑色のショートカットに頭からピコん、と出た触覚。
ワイシャツにマントと言った風貌は一見少年的に見えるが、
声の高さからして少女だろう。

「みんなにとっては今季限りの夏なのに!
 それを好き勝手に邪魔して!
 みんなを捕まえて回ってたのはあんたなの!」

「いや、残念ながら僕じゃない。
 虫を捕まえてた本人は今、ドアの下敷きになってるよ」

頭の触覚と虫の事で本気になって怒っているところから、
虫の妖怪らしい。

「あうぅ、ぬ、ぬりかべが私を…」

「落ち着け朱鷺子、それはぬりかべじゃない。
 ただのドアだよ」

倒れているドアの下から朱鷺子が這い出てくる。
体の事よりも、
服に着いた土埃を払い落している様子から、怪我はないようだ。

「アンタが! アンタがあんな事を!」

「るさいわねぇ! いきなり何よ!」

「捕まえたみんなを解放しなさい! じゃないと酷い事になるわよ!」

凄い剣幕で怒鳴り合う二人。
昆虫採集を根本から否定しかねない発言だが、
虫の妖怪からしたらそんなものは忌むべき文化なのだろう。

確かに人間や妖怪を殺して、
それを飾って楽しむなんてのは悪趣味にも程がある。

どちらも自分の半分は同族である霖之助にとっては、
気分の良いものとは言えない。

だがそれでも、とりあえずこの虫の妖怪に言わなくてはならない事がある。

「ちょっといいかな?」

「なに? 私は今この鳥妖怪と…」

「ここは僕の店で、さっき君が吹き飛ばしたドアは僕の店の一部なんだ。
 それにドアと一緒に吹き飛ばされた商品も何点か有る。
 主に君の足下とかにね」

虫妖怪の足元…
そこには香霖堂の道具がいくつか散らばり、
あるものは割れ、あるものは砕けたりしていた。

それらはすべて売り物だ。

そして買ってもいないそれらを壊したと言う事はつまり。

「ドアの修理代と商品の弁償代。
 一体どうするつもりでいるのかな?」

霖之助は普段作らない営業用のスマイルと、
その笑顔に不釣り合いなほど低い声で問いかけた。

笑顔だけでも十分怖いが、そこに声が混じると更に怖い。

普段怒らない人物が怒ると尚更だ。






「本当に申し訳ありませんでしたッ!」

霖之助の言葉で幾分頭が冷えて来たのか、
ほぼ90°の角度で頭を下げる虫妖怪の少女。

名前はリグル・ナイトバグと言うらしい。

先程まで怒り狂っていた勢いはすでになく、
萎れた花の様にシュンとした態度で謝るばかりだ。

「君の言う通り虫は全部逃がしたよ。
 朱鷺子が少し残念そうな顔をしてたけど」

「し、してないよ! 全然そんな顔してないよ!」

「はい、私の方の要求はこれで全部です。
 ………ですが」

「これだろう?」

霖之助の言葉と同時に、一同は床を覗く。
ブチ破られたドアとドアに付いていたガラスの破片。
それから商品も大分散らばっている。

「本当にすいません! あの時は頭の中がゴチャゴチャになってて。 
 ドアと壊れた商品は弁償しますから!」

またしても深く頭を下げるリグル。
これで何度目だろう。
5回目以降は数えていない。

「まぁ、確かに商品とドアの弁償代は払ってもらうつもりだが、
 持ち合わせはあるのかい?」

「そ、それは」

「無さそうだね。
 別に僕は構わないよ、金銭に余裕がある時か他のもので埋め合わせをしてくれれば」

「いいんですか?」

「元々うちの朱鷺子が迷惑をかけたみたいだしね。
 完璧に被害者面をしていられるような立場ではないのさ」

「うっ、やっぱり私なの……」

「当然だよ、少し興奮しすぎだ。
 これからは君に虫かごと虫取り網を持たせないつもりだから、いいね?」

少々強めの口調。
今回は話の通じる(結果的にだが)妖怪だからよかったが、
これが人の話を聞かない様な輩だった場合大変な事になっている。

だから彼女に対してはしっかりと叱る。
2度とこんな事が無いように。

「……ごめんなさい」

俯いた朱鷺子が消え入りそうなほど小さな声でそう呟いた。
反省はしている様だ、それと同時に落ち込んでいる。

叱られた事など殆ど無かったから無理もない。

「あの、とりあえずお財布の中にあった分だけでも置いて行きます。  
 全然足りないと思いますけど」

「いや、別に無理をする必要は無いが」

「それと今夜夕食後に出かける予定はありますか?」

「変わったことを聞くね。
 こんな辺鄙な所に住んでるから、そんな時間に出歩く事は無いと思うよ」

「分かりました。
 では夕食後、縁側へ出ていてください。
 代金をどうのこうのなんて考えてる訳ではありません。
 ただ、純粋にお詫びをしたいと思います」

リグルのこの言葉が引っかかったが、
霖之助はその申し出を受け入れた。

その後、僅かばかりの代金と別れの言葉を残してリグルは店を後にしていった。

残ったのは随分と開放的になった玄関と霖之助、
それから落ち込んだままの朱鷺子が残された。






夕食後、リグルが言っていた通り縁側へと出る。
せっかくなので晩酌用の酒と杯も一緒だ。

そして朱鷺子は相変わらず元気が無かった。

食事の方もそんなに進んでいなかったみたいだし、
何より霖之助が話しかけても生返事を返すだけだ。

どうやら本気で落ち込んでいるらしい。

霖之助に迷惑を掛けた事が情けないのだろう。
そして何より霖之助に叱られた事が、堪らなくショックな様だ。

そんな朱鷺子を見て霖之助は思わず杯を運ぶ手を止めてしまう。
こんな空気で飲む酒は美味しくもなんともない。

サラサラと昼間に比べて幾分冷えた風が二人の頬を撫でる。
この冷えた風は二人の胸の中にも吹いているようだった。

「冷えないかい?朱鷺子」

「……平気」

「そうかい、でも彼女が言ってたお詫びってなんだろうね」

「さぁ、私には分からないわ」

「はぁ、朱鷺子僕はね…」

続きを言いかけて霖之助は言葉を飲んだ。

ぽぉう、っと黄緑色の小さな光が目の前を横切ったからだ。

一つの光が横切ったのを皮切りに、どんどんその数は増えてゆく。
目で追っても正確な数が測れない。

気付いた頃には無数の光が香霖堂の周りを囲んでいた。

黄緑色の光の正体はホタルだろう。
彼女の言っていたお詫びとはこの事だったのだ。

縁側で夕涼みをしながらホタルを鑑賞する。
なんとも贅沢な事だ。

「あの子も随分と気がきいた事をするものだ。
 そう言えば今年に入ってからホタルを見るのは初めてだな」

霖之助は穏やかな顔で飛び交うホタルに目をやる。
一貫して規則性のない飛び方だが、それがいい。

「ねぇ。霖之助………怒ってないの?」

唐突に朱鷺子が口を開いた。
朱鷺子の方から話しかけてくるのは、
昼間彼女が帰って来た時以来いなので随分と久しく感じる。

まだ1日も経っていないと言うのに。

「だから言おうとしてたじゃないか。
 怒ってないってね」

「嘘、だって霖之助私の事叱ったじゃない」

「君は僕が叱った事で反省しただろう?」

「……それは、まぁ」

「だったら僕は怒ってないよ」

「なにそれ。クシュン!」

冷えた空気で体を冷やしたらしい、
朱鷺子が小さくくしゃみをした。

霖之助より体が小さい分、冷えるのが早いみたいだ。
このままでは風邪をひいてしまう。

夏風邪は厄介だ、何時までも長引く。

「しょうがないな、寒いんだったらこっちへおいで」

胡坐を組んだ足の上をポンポンと叩く。
昔よく霖之助の妹分が座っていた特等席だ。

お互い身を寄せ合えば体温の低下も防げるだろう。
何より縁側に直接座るよりは冷えずに済む。

「いいの?そっちへ行って」

「別に構わないよ、ただしお酒は飲ませない。
 君は飲むとすぐ寝てしまうからね」

「ちぇ、ケチ」

「まぁ、商人だから」

霖之助が言ったとおりに朱鷺子は彼の膝の上へ座った。
背中の羽が鼻の辺りに当たったりしてくすぐったい。

「んーちょとマシね。
 リクライニング機能でも付いていたら最高だったかしら」

「生憎型が古くてね、座れるだけでも良しとしてくれ」

尚も香霖堂の周囲を跳び続ける無数のホタル。
その光は香霖堂の庭先や縁側、二人の顔までよく照らしていた。

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