十四朗亭の出納帳

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十四朗

Author:十四朗
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趣味の守備範囲は日々拡大中
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風邪をひいたなら

今回は趣向を変えて霊霖を書いてみました。
いや何となくね。


『風邪をひいたなら』



霊夢、霖之助






「寒いわ、霖之助さん」

「もう湯たんぽのお湯が冷えたのかい?
 分かった、今すぐ………」

「違うわ、嫌な寒気が止まらないの」

「風邪だから仕方のない事だよ。
 昼食が終わったら医者に行こう」

「寒いのは嫌よ? ケッホ! ケホッ!」

「分かってる、ちゃんと暖かい格好をしていこう」

季節が師走に入り、少し過ぎたころ。
霊夢が風邪をひいた。

今朝彼女が僕の店にやって来た頃には既に顔が赤く、
目がぼんやりとしていたので、
彼女の額に手を当てて体温を測ってみたところ凄い熱だった。

僕は急いで寝室に向い、
さっき畳んだばかりの布団を敷き直すと、そこに彼女を寝かせた。

毛布と布団の二枚重ねではまだ足りないと思って、
彼女にドテラを着せ、湯たんぽを布団に入れる。

これで十分温かい筈だが彼女はまだ寒いと言った。
医者に見せるのを少し急いだ方がいいのかもしれない。

僕は霊夢に「食欲はあるかい?」と聞くと霊夢は力なく頷いた。
横たわる彼女の体を起こし左腕で支える。
触れた彼女の体は想像以上に熱く、四肢には力が入って無かった。

持ってき土鍋の蓋を開け、レンゲに白粥をすくう。
それをフーフーと息で冷まし、霊夢の口元へと近づける。

ゆっくりと口を開けた霊夢が粥を口に含み小さく口を動かす。
小さな咀嚼を数回繰り返すと音もなく粥を飲み込んだ。

「もうちょっと塩気が欲しいわ」

「分かった、水は?」

「まだ要らないわ、欲しくなったら言うから」

「そうかい」

彼女を左腕で支えながら、
右手で梅干しを細かく千切り粥へと乗せる。

彼女いわく朝は食欲が無かったので食べていないらしい。

そんなに弱っているのによくここに来る気になったね、と聞いたら。

「気が付いたらここに来てたの。
 私でも分からない。
 でもこのお店の看板を見た時凄く安心したわ。
 それに霖之助さんの顔を見た時も」

ここを病院代わりにしないで欲しいと言おうと思ったが出鼻をくじかれた。
心底安心したような顔であんな事を云われると毒気を抜かれる。
結局、彼女の看病をする事になった。

いや、看病をする事にした。

暦が師走な事もあってか、
この店を訪れる物好きな連中も余り姿を見せない。

元々独り身の身分だ、少なくとも責務に追われて走り回るほど忙しいと言う訳でもない。

ちょっとぐらい休業にした所で問題はないだろう。

僕はそれから残りの粥をゆっくりと彼女に食べさせ、
彼女の食事を済ませた。

食後は彼女が水を要求したので、
コップに一杯の水を汲み、彼女に飲ませた。

抱き起こした彼女の唇にコップを当て、
ゆっくりと傾ける。
口の中から喉へ水が流れる度に彼女の喉元が小さく上下した。







食後、首周りや顔の汗を拭き取る。
ついでに頭にのせた濡れタオルも新しいものに変えた。

早く医者、もと言い永琳に見せた方がいい。
十分な栄養補給も済んだ事だ、そろそろ永遠亭に彼女を連れて行こう。

心配事と言えば、永遠亭に連れて行く途中に病状が悪化する事。
これだけは出来るだけ避けたい。

とりあえず寒さ対策だけはしっかりして行かなければ。
マフラーと手袋、頭には耳当て付きのニット帽。
上着はドテラの上から厚手のコートを着せよう。

頭の中で防寒対策の計画を練ると、
僕はそれらの防寒着を店内から引っぱり出し、
ちゃんと仕えるものか確認する。

穴も空いてないようだし問題ない。

引っ張りだした防寒着を抱え、
今度は霊夢が寝ている寝室へ向かった。

襖を開けると霊夢が目線だけでこちらを見つめた。

「何処行ってたの?」

「防寒着を用意してたんだ。
 とにかく医者に見てもらわないとね。
 永遠亭に行こう」

「どうやって行くの?、ゴホゴホ!
 私に一人で行けって?」

「食事の前に言っただろう?
 医者に行こうって。
 僕が抱えてでも連れて行くよ」

「………そう」

「自分で着られるかい?」

「しんどいわ」

「わかった、ほら腕を広げて」

僕がそう言って彼女を抱き起こすと、
彼女は無言で腕を左右に大きく広げた。

左右に広げられた腕にコートの袖を通し、
ボタンをキチンと一番上まで止める。

これで体が外気に触れる範囲を大分狭く出来るし、
外の気温で体温が失われるのをある程度緩和出来る。

次にマフラー、手袋、ニット帽を彼女に身に付けさせた。
ついでに風邪用のマスクを口に付けてみた。

本人は邪魔くさいと言っていたがこれも念の為だ。

霊夢の用意が整ったので、次は僕が仕度をする。
と言っても僕の仕度なんて彼女より幾分軽装な防寒着と財布ぐらいしかない。

準備中、外が気になって窓から見てみたが、
青い空の殆どを雲が覆い隠しているせいで、太陽の光が余り強くない。

冬場と言えど他生気温の上がる昼過ぎを選んだつもりだったが大きな誤算だ。
朝は晴れていたのだがいつの間にか雲が出て来たらしい。

「霊夢、外はかなり寒そうだよ」

「やぁね、こんな時に限って」

「冬の妖怪は少々意地悪らしいね」

「そうみたいね、今度会ったら退治しないと」

「でもまずは風邪を治す方が先だよ」

「ねぇ」

「ん?」

「さっき抱えてでも連れて行くって言ってたけど、本当?」

「無理にでも連れてくのは確かだよ。
 でも抱きかかえるのはちょっと辛いかな」

「そうね、重いとは言われたくないけど抱きかかえて連れて行くのは大変だわ」

「だから、背負って連れて行く事になるそうだ」

「………まぁ、当然そうなるわね」








背中から伝わる体温と彼女の柔らかさ。
首の方から回された腕は弱々しくも、ちゃんと僕を捕まえている。

重さは余り感じない。
背中に寄りかかるその重さは、
放り出せばそのまま飛んで行ってしまうんじゃないかと思うくらい軽かった。

霊夢の胸に密着した僕の背中から伝わる彼女の鼓動。
それが僕の歩みと時折重なり、奇妙なリズムを刻んでいた。

僕と彼女の刻むリズム。
凍えそうな空の下で不思議に同調し合う二つのリズム。

肩の辺りからマスク越しに伝わる彼女の息は熱く少々荒い。

「やっぱり霖之助さんって歩幅おっきわね」

「揺れるかい? なんならもう少しゆっくり歩こうか?」

「いいわ、このままで。 
 このぐらいの揺れの方がむしろ気持ちいいぐらいよ」

「そうかい、気に入ってもらえて何よりだ」

「えぇ、いい乗り心地よ霖之助さん」

クススクスと笑う霊夢。
辛そうな声だがどことなく彼女らしさが戻っている様な気がした。

「霊夢、一つ聞いておきたいんだが」

「なぁに、霖之助さん」

「君はどうして香霖堂、もと言い僕を頼って来たんだい?」

「あら、迷惑だった?」

「いや、そう言う意味で言ったんじゃない。
 君は知り合いが多いだろう?
 君には頼ろうと思ったらいくらでも頼れる人脈がある」

人脈と言っても大半は妖怪だが。

「続けて」

「そんな中で、どうして僕を選んだのかなって」

「………そうね、前に同じような事でお世話になったからかしら」

「確か、魔理沙と一緒に風邪をひいた時だったね」

「だからよ。香霖堂でも言ってたけど、
 気が付いたら霖之助さんのところに来てたの」

「よく分からないな、君は」

「私は博麗の巫女、あらゆるものに縛られないのだから当然よ」

僕が言葉を発するたびに、
口から漏れた息が白い靄になって流れる。

霊夢の吐く息は口に付けたマスクに阻まれて、
外に余り漏れなかった。

本当に寒い、こんな日に一日中外に居れば体が凍り付いてしまいそうだ。
分厚い鉛色の雲と言い、この寒さと言い。
少し早いが今夜辺り雪が降るかもしれない。

まいったな、冬への備えは万全だが、
雪への備えはまだ中途半端なままで出てきてしまった。
もし本当に降り出して積もったらかなり厄介だ。

「何考えてるの?」

僕の思考を遮って彼女が声を掛ける。
気取られたらしい。
流石は霊夢こんな状態でも感は鋭い。

「雪が降ったらどうしようかと思ってね。
 まだ雪への備えをしていなかったんだ」

「そう、大変ね」

「なに、そんな物は帰ってからいくらでも出来るさ」

そうだ、別の事を考えている暇はない。
そんな暇があるなら足を前に動かさなくては。

降るか降らないか分からない雪よりも、
今背中で荒い呼吸をしている少女の容態が重要だ。

僕は視線を水平に固定した。
もう空は見ないでおこう、別の事を考えてしまいそうだ。







結局、アレから永遠亭に到着したのは半刻後だった。
あの時の会話を最後に霊夢とは余り言葉を交していない。

疲れたのだろう。
僕としても彼女には余り体力を使わせるのを避けたい。

屋敷の戸を開け誰かいないのかと問いかけると、
すぐに頭に兎耳を付けた少女、鈴仙・優曇華院・イナバが顔を出した。

霊夢が高熱を出した事を伝えると、
すぐに彼女の師匠である八意永琳が診てくれる事になった。

僕達の前に戻って来た鈴仙に案内され診察室へと通される。

通された診察室には瓶詰の薬品や症状や患者別に分けられたカルテ、
診察用のベットに人体の標本などがあった。

鼻を刺激する薬品の匂い。
好ましい匂いと言う訳ではないが、
この匂いを嗅ぐと安心する。

病院の匂いと言うやつだ。
病人を抱えてる身としては医者ほどありがたい存在は居ない。

当の霊夢がどう思ってるかは知らない。
だが僕はここに来て心底安心したのだ。

やっと苦しそうな顔をする霊夢をどうにかしてやれる。

実に他人任せで勝手な発想だが何故か僕はそう感じずには居られなかった。

まず最初に部屋の真ん中に座る八意永琳に軽く一礼をした。

「ウドンゲからかなり酷い様子だって聞いてたけど、まったくもってその通りね。
 とりあえず椅子に座って。ウドンゲ、森近さんにも椅子を出してあげて」

霊夢を用意された椅子に座らせ、僕も鈴仙が出してきた椅子に腰掛ける。
白衣姿に聴診器を首から下げた診察スタイルの八意女史を見るのも久しぶりだ。

僕は普段から医者に掛る事が滅多にないので、
病院と言う場所自体随分とご無沙汰だった気がする。

八意女史は霊夢の喉を見たり、胸の辺りに聴診器を当てて心音を測ったりした。
彼女の喉を見ても、心音を聞いても、
八意女史は感情を一切表情に出さず、ただ淡々と診察を続けた。

やや機械的な印象を受けるが、それだけ手慣れていると言う事なのだろう。

「鼻づまりや頭痛、咳、倦怠感や発熱以外に何か症状は?」

「いくら体を温めても寒いの、それから体の関節が痛いわ。
 体の全体が重くって、それに食欲が出ないの。
 今日はお昼に霖之助さんが作ってくれたお粥を食べたぐらいよ」

「そう、この時期だから大体予想は付いていたけど、
 貴方の症状は流行性感冒、つまりインフルエンザよ」

「インフルエンザ………確か慧音が里でも流行していると言っていたな」

一週間ほど前の話だ。
偶々店に来ていた慧音がそう漏らしていた。
寺子屋でも子供達の大半が感染して授業どころではないらしい。

その時は「大変なものが流行っているんだな」程度の認知だったが、
いざ身近な人物が感染すると気が気でなくなる。

「そう、私とウドンゲもその治療でてんてこ舞いだったの。
 免疫の薄い子供や老人が感染すると、最悪の場合死に至る病気よ。
 まぁ、彼女の場合若いし普段の健康状態も良好だから、
 薬を飲んで数日安静にしていれば治るでしょう」

「そうか、よかった」

八意女史のその言葉にホッと胸を撫で下ろす。
とりあえず、大した事はないようだ。

すっかり弱り切った霊夢を見ていて、
僕も気が弱くなっていたらしい。
 
本当に力が抜ける思いだ。

「でも油断は禁物よ。
 インフルエンザは肺炎などの合併症を引き起こすから。
 念の為に二、三日入院してみたら?」

「ケッホ! コッホ! 必要ないわ。 
 帰って薬を飲んで寝てたら治るんでしょう?
 だったら………」

「お願いするよ八意女史」

「ちょっと霖之助さん、何言ってるの?
 診察も終わったんだし、薬をもらって帰るだけでいいじゃない」

このまま帰るなんてとんでもない。
帰って香霖堂でじっとして居るよりも、
ここに居て何時でも専門家の治療を受けられる方がいいに決まってる。

僕は霊夢の制止を聞かずに入院手続きの書類へとサインをした。

書類の内要は治療の方法について概ね同意する事や、
食費とベット代、それから治療代の明細が書かれていた。

同意の所へサインをし入院患者名に霊夢の名前を。
保護者の名前に僕の名前を書いた。

霊夢自身は入院する事が不服なのか、
僕が顔を向けても熱で赤い頬を膨らませてそっぽを向くだけだ。

その様子を見て八意女史がクスクスと笑った。

「ウドンゲ、二人を病室まで案内してあげて」

「分かりました」

「薬の方は処方出来たら持って行くわ。
 食事の方も霊夢と貴方の分で良いわね」

「ありがとう、世話を掛けるね」

「医者として当然の医療行為をしたまでよ」

カルテにスラスラとペンを走らせる八意女史は、
僕達に顔を向けずにそう言った。

僕は再び霊夢を背負うと、
案内を任された鈴仙の後に続いて診察室から出た。

霊夢が入る事になる病室は離れにあるらしく、
離れへの長い渡り廊下を鈴仙先導の元、渡って行く。

「ずっと霊夢を背負ってここまで来られたんですか?」

不意に鈴仙が問いかける。
診察室を出てからの長い沈黙が嫌になったのだろう。

思えばここに来てから余り口を開いていなかった。
鈴仙に診察してほしいと言う旨を伝えたのと、
八意女史に霊夢の容態について話したぐらいだ。

普段の僕も余り口数が多い方ではないが、
今日はそれ以上に少ない。

少々神経質になり過ぎていたか。

「あぁ、香霖堂からここまで背負ってきたんだ。
 そのまま店で寝かせてようかと思ったけど、
 随分と酷い熱でね、念の為にここに連れて来た」

「正しい判断ですよ。
 先程師匠が言っていたように、
 肺炎を拗らせたら完治するまでに時間がかかりますからね」

少々時間がかかったとはいえ、永遠亭に連れて来たのは正解だった。
医学は僕の専門外だ。
素人である僕の下手な看病よりも、
医者である彼女達の方が頼る相手としては理に適っている。

長い渡り廊下を渡り終え、僕達は離れに到着した。
鈴仙が部屋の戸を開け僕達を中へ招き入れる。

部屋は和室でそこそこ広い。
中央には布団が敷かれ、部屋の隅には火の点いていない火鉢が置かれていた。
その他には湯や水を張ったりする目的で置かれた洗面器等も置かれている。

真っ先に霊夢を布団に寝かすと、
火鉢に炭を入れ、火を起こし霊夢の隣に置いた。

ぽぉっと輝く焼けた炭が視界で揺れる。
オレンジ色に輝く焼けた炭の熱が僕達を包み込んだ。

「私何か温かい飲み物でも用意してきますね。
 霖之助さんもいかがですか?」

再び会話が途切れて、
居心地を悪くしたような声で鈴仙が声を掛けて来た。

僕が「頂くよ」と返事をすると、
鈴仙はなるべくスキマ風が入らない様に小さく戸を開け、
自分が出るとすぐに戸を閉めて母屋の方へ向かった。

これでまた僕達は二人だけになった。

「寒いわ、霖之助さん。とっても寒いの」

診察室で僕が強引に入院の手続きを済ませてから、
一度も口を開かなかった霊夢が唐突に口を開いた。

「今鈴仙が温かい飲み物を持って来てくれるそうだ。
 だからそれまで我慢できるかい?
 今は布団に入りたてだから寒く感じるかもしれにけど、
 そのうち布団の中も温かくなるよ」

幼子をあやす様に僕が声を掛けると、
霊夢は言葉を返す訳でも、頷く訳でもなく。
ただ無言で布団から手出し、それを僕に差し出した。

「霊夢?」

「手……握って頂戴。
 それから何処へも行かないで」

虚ろな目で僕を見て彼女はうわ言の様に呟いた。
熱で意識が朦朧としているのだろう。
その口調と内要は何時もの彼女らしさを微塵も感じさせず、
幼い子供が誰かに助けを求める姿に似ていた。

僕は無言で彼女の手を握り返す。
温かいと言うより熱い。

霊夢の手は僕に比べれば一回りも二回りも小さいので、
僕が握りしめるとすっぽりと僕の手の平に納まった。

「ひんやりしてて気持ちいいわね」

「君の体温が高いだけだよ」

「霖之助さん」

「ん?」

「ありがと」

おぼろげに見開かれた瞼がゆっくりと閉じる。
彼女は緩やかに眠りへとついた。
静かな寝息ととそれに伴って上下する胸。
沈黙の時間だけが機械的に積み重なって行く。

僕はただ彼女が差し出した手を握っているだけだ。
交わす言葉もなく、時折思い出したかのように火鉢の炭がパチッと音を鳴らした。

先程彼女が言った言葉。

手を握って何処へも行かないで。

今はそれを忠実に守ろう。
彼女が目覚めるまで手を握って彼女の隣に居よう。
何処へも行かずに彼女を見守って居よう。

鈴仙にすまない事をしたな、霊夢の分は無駄になりそうだ。
せっかく用意してもらったのに申し訳ない。

キチンと謝っておこう。

永琳は僕の分の夕食も用意すると言ったが、
夕食までに彼女が目覚めなければ無駄になりそうだ。

これも謝っておこう。

まったく、この調子だと僕は今日一日謝ってばかりだな。
面倒を掛けさせてくれる。

まぁ、こんなのは慣れっこだ。
生きてたら病気の一つや二つぐらいする。

僕が一番辛いのは、
こうして看病をする相手が居なくなる事だ。

世話を掛けたり、掛けられたり。
そう言う事をし合う人物が居なくなることが、
一等恐ろしい。

だから今日の僕は必死だったのかもしれない。
思い返してみると、
今日僕が霊夢に焼いた世話は少し過剰だった。

ずっと傍に居て彼女が強請るものを全て与えて、医者にも連れて来た。
僕と彼女に血の繋がりはない、親子でも兄弟でもなければ恋人でもない。

確かに彼女とは親しい間柄だ。
具合が悪いとあれば看病するのも吝かではない。

それでも今日の僕は何かおかしかった。

虚ろな目をして荒い呼吸を繰り返す彼女を見ていると、
自分が何かしなければいけない気がした。

今安らかに寝息を立てて眠る霊夢を見ていると、
彼女が辛そうな顔をしていた時にあった、
胸の中の暗雲が取り払われる気持だ。

どうして僕はこんな気持ちになったのだろう?

霊夢の寝顔を見つめる僕の頭の中では、
ただその言葉が無限に反復するだけだった。

Comment

#No title
普段弱さを感じさせない人の弱さを見ると
不安になりますよね。

病気で心が弱まってる描写が素晴らしかったです。
最初ヤンデレ作品と勘違いしてしまいました(笑)
霖之助が自分の気持ちに気づいてどんな行動をするかが
見ものですね。続きが楽しみです。
  • by:
  •  | 2010/01/02/18:24:09
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