十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

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十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
メッセ&スカイプは大歓迎です
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リンクはフリーなので
どなたでもどうぞ
もしご連絡いただければ高所から
イヤッホォォォォ!!します


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大体マルチ対応ゲームやってると思います。

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素直の秘訣 下

とりあえず先に謝罪。

魔理霖がマイジャスティスの方々、
本当に申し訳ない、次はちゃんとした魔理霖書きますから!
直下型砂糖爆弾を製作しますから!………多分。
『素直の秘訣 上』
とりあえず完成した下!アリスENDだと思う。


『素直の秘訣 下』


アリス、霖之助、魔理沙







霖之助が空になった二人分のティーカップを台所に持って行くと、
アリスがカチャカチャと音を立てながら皿を洗っていた。
彼女が持ってきてくれたシフォンケーキは何時も通り美味しかった。
軽い口当たりに程良い甘さ、
アクセントとしてバニラの香料が少し入っているのがポイントらしい。
霖之助は持ってきたティーカップ二組を流し台の脇へ置く。

「毎度思うんだが、別にそこまでしてくれなくてもいいんだけどね?」

「人の好意は素直に受けるものよ、それに今更遠慮するものじゃないわ」

「ふむ、世話焼きな所は相変わらずだ」

「貴方だって人の事言えないじゃない」

「まぁそう言われればそうだね」

後ろを振り向かずにアリスはそう答える。
上機嫌な声からして顔わ笑っているのだろう。

手を動かすたびに揺れる小さな背中。
アリス・マーガトロイドと言う少女の背中。

他人に対して素っ気ないように見えるが実は極度の世話焼きな少女。
最近霖之助が来店するのを心待ちにしている少女。

ずっと付き合いの良い常連客、もしくはご近所さんだと思っていた。
他愛のない世間話をしたり偶に魔法の事を語り合ったり、
彼女が料理をお裾分けしに来たたり、
霖之助がそのよしみで商品を値引いたりするぐらいの間柄だと思っていた。

だがあの嵐の夜にそうでない事を痛感してしまった。
自分はアリスを客としてもご近所さんとしても友人としてでもなく、
一人の女性として見ている。

あの日の夜、彼女の居る隣の部屋に意識が行ってロクに眠れなかった。
魔理沙や霊夢が泊る時にはそんな事はないのに、彼女の時だけ。
その時はきっと馴れない状況だからだと思った。
日が変わればきっとそんな感情はどこかへ飛んでゆくと思っていた。
だがその感情は変わる事が無かった。
それどころか日ごとに彼女に会うのが楽しみになって行く。

とっくにそんな感情は擦り切れたと思ったのに、枯れ果てたと思っていたのに。
気付けば霖之助は彼女に男女としての好意を抱いていた。

皿を洗うアリスが気になって霖之助は一歩アリスの背中へと近付く。
優しく小さな背中は相変わらず忙しなく動いている。
胸をくすぐる想い、思わずまた一歩彼女の背中へと近付く。
霖之助が近寄って来た事に気付いたのかアリスは「どうしたの?」なんて声を掛けてくた。

だが霖之助は言葉で答えず、代わりに後ろから彼女をそっと抱き締めた。

「っきゃ!」っと一言アリスの口から言葉が漏れる。
声の割には特に抵抗も無く腕を回す事が出来た。
彼女の体温と柔らかな感触。
鼻をくすぐる彼女の柔らかな金髪。
生物の温もりが脈々と伝わってくる。

あが霖之助はそこまで感じで思う
「自分は何をしているんだ」っと

なぜ急にこんな事をしたんだ。
そんな会話の流れでも雰囲気でもなかった。
ただ二人が台所に居た、それだけの状況なのにどうしてこんな事を。

「ちょ、ちょっと!い、いきなりなんなのよ」

少し遅れて彼女の抗議の声、ほとんど頭に入らない。
霖之助の頭の中には何故自分がこんな事をしているのかと言う疑念だけが反響している。

襲おうだとかそんなやましい考えでこんな事をしたの訳ではない。
正確に言うと何か考えがあってこんな事をしたわけでもない。

あえて後付けで理由を説明するなら、
そうしたかったからそうしたとしか言い様がない。

ようやくアリスの声が聞こえる様になったのか、
霖之助は狼狽するアリスから手と体を離した。

離れると同時にアリスがパッと霖之助から飛び退く。
顔は耳まで赤く鋭い視線で霖之助を睨んでいる。

当然か、あんな事をしたのから。

「か、帰るわ。
 その、今日の処は」

「………すまない、さっきの事は忘れてくれ」

「………忘れられる訳ないじゃない!」

何時になく荒い声でアリスがそう言ったので霖之助はそれ以上何も言えなかった。

それきりお互い顔をまともに会話をしなかった。
アリスは急いで荷物を纏めると飛ぶ様に香霖堂を後にした。
いや実際空を飛んで帰って行ったのだが。

彼女が帰った後今日はこれ以上店を開ける気にもなれず、すぐに閉店の掛札を掛けた。
それから夕食も採らずにただカウンターの椅子に腰掛け今日の自分の行動の事を考えた。

明らかに今日の自分はおかしかったと思う。
どうにかしていた。
何時もの自分ならあんな事をするはずがない、しようと思った事も無い。

一体自分は何をやっているんだ。






自宅に帰ると手に下げていたバスケットを放り出し一目散に自室へ向かった。
乱暴にドアを開け素早くベットへと飛び込む。
布団を頭から被り枕を強く抱き締める。

彼にいきなり後ろから抱き締められた。

初めは何が何だか良く分からなかった。
でも自分が何をされたのか分かって来るにつれて急に恥ずかしくなった。
大きな彼の体と背中から回された彼の腕。
不思議と邪な意思は感じられなかった。
何処までも優しく、包み込むような彼の感覚。
正直嬉しかった、でもいきなりな彼の行動にビックリして…………

――――――「…………忘れられる訳ないじゃない!」

あんな反応をしてしまった。
さっきよりも少し頭が冷静になって来るとすぐに深い後悔がアリスを襲った。
何もかも考えなれなくなって香霖堂を飛び出してしまったが、
もっと違う対応の仕方があったはずだ。

例えば………自分の気持ちを伝えるとか。

彼の事は嫌いじゃない、むしろ好きだ。
嫌いだったらあの時、罵声と攻撃魔法で数発お返ししている。
というかそもそもお店に行かないし、お裾分けもしない。

今思えば彼のあの行動は絶好の好機なのに。
それを逃してしまった。

なんとも勿体なく歯痒い。

どうして自分はああも素直になれないのか。
彼に対してだけではない、
里で人形や魔法の事に関して褒められても。

「別にたいした事じゃないわ」
「これぐらい当然よ」

なんて風に突っぱねてしまう。
こんな言い方をされた方は良い気がする訳ないのに。

でも最近になって彼の前では素直で居られる気がしたのに。
料理を褒めてもらった時、新しい人形を褒めてもらった時。
心の底から素直な気持ちで「ありがとう」が言えたのに。

今日は駄目だった。
前に魔理沙に嫉妬して、一方的に店を飛び出した時と同じ自己嫌悪。
どうして自分はこうも素直じゃないのか。

自分がもっと素直ならこんな思いをしなくて済んだのに。




アリスとの一件から四日。
霖之助の生活は散々たるものだった。

まず店の事がまったく手につかない。
仕入れに行く気も起きないし、
客が持ってきた道具を鑑定する気も起きない。
と言うか客と接する気も起きない。

その事を店に来た咲夜や霊夢に指摘され二日ほど前から店を開けていない。
表には「準備中」の札ではなく「休業中」の札が掛けてある。
だが休業にしたからと言っても店を開けてる時と同じで何もしていない。
食事は時々思い出したように水を飲むくらいだし。
睡眠も気がついたら椅子に座ったまま寝ていた事があるくらいだ。

そんな香霖堂に噂を聞きつけた人物がやって来た。
彼の事をよく知る人物、彼の妹分。
霧雨魔理沙だ。

魔理沙は「休業中」の札が掛けてある事などお構いなしに扉を開けてやって来た。
乱暴になるカウベルの音。
何時も以上に静寂一色だった香霖堂にしばらくぶりの騒音が響いた。

「歳食った犬みたいにボケっとしてるって聞いて来てやったぜ」

「………それはどうも。
 でも表の掛札に描いてある通り今は休業中なんだ。
 悪いけど帰ってくれないかな?」

魔理沙はそんな霖之助の言葉を無視して頭の帽子を取り箒を壁へ立て掛ける。

「私は香霖堂に用事があって来たんじゃない。
 香霖に用事があって来たんだ」

「それなら尚更だよ。
 僕の都合で店を休業にしているんだ、僕に対しての用事が通る訳ないじゃないか」

「相変わらずああ言えばこう言う。
 とんだ偏屈店主だぜ」

「そうれはどうも。
 さぁ、さっさと神社か図書館にでも行くんだね。
 ここに居て立って君が喜ぶような事は何もないよ」

「そうだなぁ、うーんそうするかなぁー」

腕を組んでわざとらしくうんうんと頷く魔理沙。
だが次に魔理沙が口にした言葉で霖之助は凍りつく事になる。

「それじゃアリスの家にでも行くか。
 アイツも最近元気ないみたいだし、ちょっくら見に行ってやろう」

アリスの………所へ。
彼女も最近元気がないらしい、
ひょっとしなくても自分のせいだと思ってしまう。

予想以上に堪えた顔をした霖之助に魔理沙はこう続けた。

「なぁ香霖。お前とアリスの間に何があったかは聞かないでおいてやる。
 でもさ、このままじゃいけない事ぐらい私にも分かるんだぜ?」

「魔理沙」

「お前等が良い雰囲気だって事ぐらいは前から私も知ってたんだ。
 ほら前に一度私の事ばっか構ってせいで、
 アリスが怒って店から出て行った事があっただろ?」

確かにそんな事があった。
あの時は確か丸一週間香霖堂に来てくれなかった。
ほぼ毎日店に来ていたアリスが急に来なくなると言うのは変な気分だった。
日常だった風景に所々虫食いが出来て調子が狂う。

「アリスが来なくなって様子がおかしい香霖を見て私思ったんだ、
 ひょっとして香霖はアリスの事が好きなんじゃないかって。
 そして、それと同じようにアリスも香霖の事が好きなんだろうって。
 じゃなきゃ、あんな風に怒って店を出て行かないもんな」

どうやらバレバレだったらしい。
何時までも子供だと思っていたが、
人の気持ちが読み取れるまでに成長していたとは。

彼女成長に驚くやら、自分の内心を見透かされて恥ずかしいやら。
困ったものだ。

「…………まいったな。まさか君にここまで感づかれてるとはね」

「恋の魔法使い霧雨魔理沙さんを甘く見るなよ?
 これぐらいはお手の物なんだぜ?」

得意げな顔で胸を張る魔理沙。
昔から彼女は褒められるとこんな風に胸を張る。

初めて折り紙で折鶴を上手に折った時とか、
九九の計算が暗算で出来る様になった時とか、
魔法使いとして独り立ちした時とか。

何時だって彼女はこうして笑いながら誇らしげに胸を張っていた。
その姿を見ると霖之助は自分の妹分がまた一つ成長した事を実感する。
今回彼女はまた成長したのだ、少女から一人の女性へと。
いや、霖之助が気付いていないだけで、ずっと前からそうだったのかもしれない。

「もっとお互い素直になれよ。
 好きなら好きってアイツに伝えるんだ。
 お前達は回りくどいったらありゃしない」

「確かに、彼女に面と向かって自分の感情を伝えた事は無かったな」

「だろ?何でもいい、一発ドカンと言ってやれ!」

その言葉を合図に霖之助はこの数日間座りっぱなしだった椅子から立ち上がる。
決心はついた。
彼女の自宅に行って自分の想いを全て伝えよう。

霖之助はじっと自分を見据えたままの魔理沙を見つめ返す。
生気に満ちあふれた瞳と癖の強い金髪。
口元には笑みをたたえたその強気な顔は間違いなく霧雨魔理沙の表情だ。
この表情をこれほど頼もしいと思った事はない。

霖之助は感謝の意をこめて癖毛の金髪に手を置く。

「ありがとう、魔理沙。
 何時までも子供だと思ってたけど君はもう立派な大人だよ」

「っへ!何を今さら。
 それよりこんな事は最後にしろよ? 
 きっとアリスが見たら凄い嫉妬するからな」

ゆっくりと魔理沙の頭から手を離す。
準備は出来た、と言っても持って行くのは身一つだが。

「行ってくるよ魔理沙」

「あぁ行ってこい香霖。
 店番は親切にも私がしておいてやるから」

流石にこの状況で勝手に物を盗って行くなよ、なんて言えない。
いや別に構わないか、結果的に魔理沙には大きな恩が出来てしまった。
今度ミニ八卦炉をフルヒヒイロカネにでも改造してやろう。

そんな事を頭の隅で考え、
霖之助は自分からは滅多にくぐる事のない香霖堂のドアをくぐる。

四日ぶりの外の空気と直接浴びる日光。
アリスの自宅までは徒歩で数分、その間に自分の言いたい事を纏めなければ。





魔理沙は霖之助が魔法の森の奥へ消えていくのを見守ると、
店内に戻り何時も霖之助が腰かけている椅子へと座った。

行ってしまったか。
結局自分の事は何も言わないままだった。

霖之助に偉そうな事を言っておいて自分はこれだ。
結局、自分が一番素直じゃない。

アリスと霖之助が親しくなっているのは知っていた。
最初はただのご近所付き合いだと思ってた。

「アリスはあぁ見えて世話焼きだからな」

そんな甘さが自分に有ったから。
自分と彼の間には積み重ねて来た時間があるからと傲慢になっていた。
でも、アリスはそんな時間の壁を気にもせずに乗り越えた。

アリスと霖之助の距離が縮まっている事が目に見えて分かる頃にはすでに遅かった。
もう、自分が割り込めるスペースは無かったのである。

嘘だと思った。

自分が今まで生きて来た年数と同じだけの付き合いのある霖之助が、
親しくなったのはせいぜい一年ちょっとのアリスに盗られた事が。

異性として見られていない自覚は確かにあった。
だから料理を作ったり、偶には服を可愛らしく作るように言ってみたり。
精一杯女として見られる様に頑張った。

でも、アリスには勝てなかった。

以前アリスに対して見せつける様に霖之助に甘えた事がある。
その時は今回と同じようにしばらくの間アリスは香霖堂に来なくなった。
最初は少しやり過ぎたと思ったが、
これでしばら霖之助と二人っきりだと思うとアリスには悪いが胸が踊った。

でもそんな事が上手くいくはずもない事はすぐに分かった。
すぐに霖之助の様子が変になったのである。
妙に香霖堂のドアばかり気にするし、何処となくそわそしている。
おまけに魔理沙に対して「何かお詫びの品でも送ろうとおもうんだが、なにがいいと思う?」
なんて聞いてくる始末だ。

思わず泣きそうになった。

二人の心を離すためにこんな事をしたのに、
逆に霖之助の関心はアリスに近づいている。
それどころかアリスが居ない事が不満で仕方ないらしい。

ここまで来て魔理沙は自分の敗北を認めざるを得なかった。
完敗だ、見事なまでに。

霖之助には異性としての関心は自分に無かった。
そう、最初から無かったのだ。

霖之助は魔理沙に深い愛情を注いでいるが、アリスへのものとは種類が違う。
家族としての、兄妹としての愛。

魔理沙が我儘を言えば、
顔では嫌そうにしながらも「仕方ないな」の一言で我儘を聞いてしまう。
魔理沙が寂いしい時、悲しい時は一緒に居て気分が晴れるまでそうして居てくれる、

それでも、そこまでの愛がありながらも愛の種類が違うが故にこんな悲しい事が起るのだ。

霖之助は自分をアリスと同じぐらい愛している。
それは分かる、例え伴侶として彼の隣に居られなくともその気持ちだけで嬉しい。

だから自分は応援する方に回る事にした。
といっても最近やっと気持の整理をした所のなので、
これが最初で最後の応援になりそうだが。

徐々に日が落ちて来た景色を見て魔理沙は昔を思い出す。
小さい頃は香霖堂へは行きは父親に送ってもらって、
霖之助に帰りは霖之助に送ってもらった事を。

まだ元気がある時は手をつないで。
疲れた時はおんぶか抱っこ。
どちらでもない時は肩車。

特に背の高い霖之助の肩車は壮観だった。
何時も見下ろされる側の大人を上から見下ろすのだ。
幼子頃には壮観の一言に尽きる。

いつかは自分の身長であの目線になってやると意気込んだが、
冷静に考えるとあの高さでは巨人だ。
少々無理がある目標だった。

そこまで思い出して魔理沙は思い出し笑いをしてしまう。
彼との懐かしい思いで、まだ彼を独占していた頃の自分。

「まったく、本当にへんな奴だぜ。
 子供の私に意味不明な昔話を言って聞かせるし、
 蘊蓄話だけは無駄に長いし」

誰もいない店内で一人呟く。
声は誰に返されるでもなく静かに消えた。

「本当に……本当に………へんな、うぅ。
 へんな奴だぜ、うぁぁ!!
 あんなへんな奴を………ひっく!好きになるなんて!うぅ。
 アリスも…たいがい……ぐす、へんな奴だぜ」

今まで散々我慢していた感情が一気に溢れた。
止まらない涙が頬を伝ってポロポロと服の上に落ちる。
それでも魔理沙は泣くのを止めなかった。

誰も居ない店内は思いっきり泣くのに好都合で、
心の底から声を出して泣いた。

この涙が枯れたら自分はあの二人の一番の理解者で居てやろう。
だから今だけは好きにする、アイツの事で泣くのはこれで最後だ。
そう胸に誓って。






第一声はなんて声を掛けよう。
そんな事をあれこれ迷っている内に何時の間にかアリスの自宅へ到着してしまった。

小さいながらも洋風建築の技巧を余す事無く使われた屋敷。
一人暮らしにはやや広いと思うが工房と兼用すると丁度良いらしい。
前に何度か訪問した事があるが、
内部もキチンと清掃が行き届いていて彼女の性格がよく表れていた。

香霖堂が霖之助を体現していると言うのなら、
この家も同じくアリスを体現していると言えよう。

霖之助は深く深呼吸をすると玄関を軽く二回ノックした。

ノックの後に走る長い沈黙。
そしてしばらくするとその沈黙を破って中から人が動く音がした。

「………はい、どなた?」

扉越しにだが、数日ぶりに聞くアリスの声。
だが霖之助と同じく元気はないらしい。
この状態で霖之助が尋ねて来たと知ったらどんな声になるのだろうか。

もしかしたら拒絶されるかもしれない

「僕だ、霖之助だよ」

「うそ、霖之助さん?
 ホントに霖之助さんなの!?」

どうやら嫌悪感は抱かれていないようだ。
これだけでさっきの数倍安心した。
とりあえずは話だけは聞いて貰えそうだ。

「あぁ紛れもなく僕だ。
 今日はちょっと伝えたい事があってね、そのままでいいから聞いてもらえないか?」

「私も、私も言いたい事が…」

「僕から先に言わせてくれないか?アリス」

何か言いたそうなアリスの声を遮る。
自分の気持ちを伝えようと思ってここまで来たんだ。
彼女には悪いがこの想いだけは先に伝えたい。

「僕はね、アリス。
 今日初めて、君の前で素直になろうと思う。
 僕がこれから話す事全てに納得して頷いてくれるなら、
 君の方からこのドアを開けて欲しい。いいかな?」

先程ドアをノックした時と同じ長い沈黙。
了承の合図なのだろう。
霖之助はゆっくりと口を開く。

「アリス、僕と一緒になってくれないか?
 急にとは言わない、お互いが落ち着いてから一緒になれないかな?
 僕は何時までも待つつもりだ」

返事はない。
突然すぎる告白で呆れているのか、絶句しているのか。
それでも構わずに霖之助は続ける。

「まだ付き合いが短いって言うのなら、
 これからずっと一緒に居よう」

「……………」

「今までみたいな想いは絶対にさせない。
 だから、だから…」

霖之助が一番大切な所を言おうとしたその時。
大きな音を立てて玄関の扉が乱暴に開いた。

霖之助は喉まで出かかった言葉を思わず飲み込む。
何故ならそこには………

瞳に溢れんばかりの涙を溜めたアリスが立っていたから。
 
まだ霖之助は一番大切な部分を言っていない。
だが彼女はその言葉を待たずに扉を開けた。

クシャクシャになった顔と瞳いっぱいの涙。
そんなアリスの顔を見た瞬間、霖之助は最悪の答えが返って来るのを予想した。

だが返って来たのは言葉ではなかった。

軽い衝撃と柔らかな感触。
それとほんのり温かい彼女の体温。

あの日、あの時。
彼がアリスの質問に対して言葉ではなく抱擁で返したのと同じ様に。
彼女は今、霖之助の言葉に対して抱擁で返したのだ。

霖之助の背中に回された腕は固く結ばれ、中々離してくれそうにない。

これはつまり………

「………君の答えは」

「いいわよ………いいに決まってるじゃない!!」

腕に加わる力が更に強くなる。
アリスの声は殆ど泣き叫びに近かったが、悲しみを含んだものではなかった。

「狡わよ、一人だけ自分の気持ちに素直になっちゃって!
 私だって、私だって素直になりたかった!
 ずっとアナタに自分の思ってる事を伝えたかった!」

限りない喜び。
やっとお互いの気持ちがつながった事に対する限りない喜び。
そう言うのもが感じ取れた。

霖之助は彼女の背中に腕を回し彼女と同じように強く抱き締める。
自分の胸で泣く自分の愛しい女性をもう何処へもやってしまわないように。

「ありがとう、アリス。
 でもまだ僕の話は終わってないんだ。
 最後まで続けてもいいかな?」

「どうせ言う事は分かってるわ。
 無駄話は嫌いだけど、今日だけ特別に許してあげる」

霖之助の胸の中から惚ける様な声で答えが返ってきた。
確かに、今更言うような事でもないが形式と気持ちの問題だ。

霖之助は言葉を発する前に二回アリスの頭を撫でる。
気持の良い金髪が霖之助の指と指の間を抜けた。

「結婚してほしい、アリス・マーガトロイドさん」

彼にしてはらしくもなく頬を赤くしながら、何時になく丁寧な口調でそう言った。
何の捻りもない求婚の言葉。
言葉遊びや捻った表現が好きな彼らしくもない簡素で居て真っ直ぐな言葉。

言われたアリスの方も顔を赤くしながら答える。

「えぇ喜んで。森近霖之助さん」

それから二人はしばらくそのままだった。
動き出したのは日が完全に傾いてからだ。

これから色々忙しくなる。
式だって挙げなければならないし、アリスの魔法の研究の事もある。
結婚だなんて楽しそうな事に大人しくしている連中は居ないだろうし、これから大変だ。

まぁそんな事は二人でゆっくり決めればいい。
なんせこれからは一人で悩むと言う事をしなくてよいのだから。

Comment

えんだぁぁぁぁぁぁいやぁぁぁぁぁぁ

なんというハッピーエンド
  • by:すかいはい
  •  | 2011/01/11/02:27:59
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