十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

プロフィール

十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
メッセ&スカイプは大歓迎です
SkypeID『Brassp905』


リンクはフリーなので
どなたでもどうぞ
もしご連絡いただければ高所から
イヤッホォォォォ!!します


PS3アカウント『auscam』
大体マルチ対応ゲームやってると思います。

バナー

Web拍手

Twitter

 

入店者

検索フォーム

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

素直の秘訣 上

長かったので二分割。
てか下はまだ完成してません。
今までのアリ霖モノの完璧な続き。
特に『嵐の最中の静けさ』の内容が濃いかも。

最初はリクから始まったアリ霖。
今ではすっかり私のジャスティスです。
アリ霖は霖之助wikiで読めるSSが良作ばかりで困る。


『素直の秘訣 上』



アリス、霖之助







霖之助は最近一人の少女が気になっていた。

その少女は魔法使いで、
霖之助が店を構える魔法の森の入口からしばらく入って行った場所に住んでいる。
いわゆるご近所さんと言うやつだ。
名をアリス・マーガトロイドと言う。
里では物静かで大人びた人形遣いと評判らしい。

彼女と知り合ったのは何時だったのかはあまり覚えていない。
確か店を構えてしばらく経ってから彼女と話をするようになった気がする。
そして特に親しくなったのはこの一年程の事だ。
最初は商談や店の事に着いて、次に最近何があったか、身の回りの事についての愚痴等。
最近はどんな料理が食べたいだとか、どんな服が着たいだとか。

どんどん身近な事について話をするようになった。

話だけではない、生活についても彼女はすっかり霖之助の日常に溶け込んだ。
例えば霖之助がそろそろお昼にしよう、
そんな事を考えながら読んでいた本を畳むと丁度いいタイミングにアリスが来店して。

「どうせお昼まだだと思ってサンドイッチを作って来たんだけど、食べる?」

なんて事を言ってサンドイッチが入ったバスケットを霖之助に渡す。
霖之助はありがたいと思う反面申し訳ないとも思うが、
彼女が笑顔で「お裾分けよ」と言うので無下に断れない。

いや、断りたくなかった。
何となく彼女の浮かない顔は見たくないと思うからだ。

彼女は香霖堂に居る時も物静かで大人びている。
だが暗いと言う訳ではない。
面白い事や嬉しい事があれば笑顔を見せ、
嫌な事や気に入らない事があればムスっとした顔をする。
霖之助とは冗談を言い合って笑ったり、意見の相違でむくれたり、
手料理を御馳走してくれたり、一緒に月を見ながら晩酌をしたり。

新作の人形が完成したとなればまず一番最初に見せてくれたりもする。
その時はとびきりの笑顔で彼女はこう言うのだ。

「今回も頑張ったでしょ?」

何時も見せる笑顔とは違う、こぼれんばかりの笑顔。
最近はそれを見るのがある種の楽しみになっている気がする。

いや、彼女と過ごす時間。
それが最近の霖之助の楽しみと言っても過言ではない。


こないだはアリスが香霖堂に一晩泊って行った事もあった。
勿論彼女とはそんな関係ではないので何事もなかったが、
その日の夜はロクに眠れなかった。
襖一つ挟んだ部屋に彼女がいると思うと、どうにも心の中でざわつく事があったからだ。

もう自分にそういう話は縁遠い物だと考えていたが、
どうやらそう簡単には終わらないものらしい。
多分霖之助はアリス・マーガトロイドに心惹かれている。

最初にお客、次に常連、次は友人、その次は一体………

何時もの様にカウンターで頬杖を突きながら何時もと違う事を考える。
そのとき不意に扉の開く音とカウベルの音が鳴った。

噂をすればなんとやらと言うが、最近では考えるだけでその人が来るらしい。




アリスには今、気になる男が一人いる。
魔法の森の入口で古道具屋を営んでいる森近霖之助と言う男だ。

周りからは偏屈で変人。
道具にのみ偏った愛を注ぎ、やたらと飛躍した話ばかりをする男。
なんて言われているがアリスはそうは思わない。

時折見せる彼の道具への愛は子供の様に真っ直ぐで、曇りがない。
普段は良く喋る方ではない彼も、道具の事となると途端に饒舌になる。
おまけに彼自身は表に出していないつもりだろうが、大の負けず嫌いと来たものだ。
この辺りは彼女の妹分である魔理沙が色濃く受け継いでいる。
彼女の場合はその負けず嫌いを隠そうともしないが。

彼とのきっかけは何だっただろうか。
初めにあったのはもうずっと前の事になる。
確か彼が自分の店を持ってしばらくしてからの事だった。
何か店が出来た事は知っていたが、
興味の範疇に全く入っていなかったのですぐに店を訪れようとは思わなかったのだ。

いざ来店してみると、店の中は混沌としていて、
店主たる霖之助の態度も決していいものとは言えなかった。

第一印象はハッキリ言って最悪。
だが二つだけ良い所があった。

一つ目はアリスが人形や魔法の実験で使う特殊な素材などが割と安かった事。
二つ目は霖之助自身が少なからず魔法の知識を持っていた事。

一つ目は言うに及ばず、魔法使いと言えど不用意な金銭の無駄遣いは避けたい。
意外と魔法使いの台所事情は庶民派なのだ。

二つ目は初めて知ったとき少々面食らった。
目の前にいる半人半妖である事以外に何の取り柄も無さそうな男が、
魔法についての知識を有していたのだ。

それもアリスの専門とする人形作り、
と一部の知識を共有するマジックアイテムの作成が彼の専門だった。
アリスとはまた違う目線で魔法に関しての理論を組み、己の技術を培う。

そんな姿勢は嫌いじゃない。

初めは材料を買うついでに話を少々。
次は話をしている時間が長くなった。
その次は話をするために香霖堂へ出向くようになった。
お裾分けと称して何かサンドイッチや焼きたてのパイなんかも持って言った事がある。
服を安くしてもらった、新しい人形のアイディアを出してもらった、手料理を御馳走した、
月を見ながら晩酌をした、嵐の夜に泊めてもらった。

そして何時からだろう、もっと一緒の時間が欲しいと思いだしたのは。
何時からだろう、彼の隣には自分が居たいと感じる様になったのは。

ずぅっと昔だった気もするし、つい最近の様な気もする。
気がついたら香霖堂で夕食を取っている事がよくあるし、
誰か別の女性が彼の近くにいると不機嫌にもなる。

前に一度魔理沙が霖之助にミニ八卦炉を改造してほしいと、
腕を掴んでお願いして居た時なんかは一気に頭の中が加熱してしまった。

魔理沙が霖之助に対して一種の甘えをしている事も勿論の事だが、
彼のその嫌がる風でもない態度が気に入らなかった。

客である自分が目の前に居る時だと言うのに。
自分にはあんな表情をそいてくれた事が無い癖に。
嫌そうな顔をしながらも魔理沙のお願いだけは絶対に聞く癖に。

「何時も魔理沙ばっかり」

その時はそれだけ口にすると店を駆けだしてしまった。
何故そんな行動をしたかは分からない、ただ胸の中が痛かった。
出来るだけ他の女性の傍に居て欲しくない、自分と話をして笑っていてほしい。
そんな事を考えていたのかもしれない。

その後アリスが再び香霖堂を訪れるのは一週間も後の事だ。
あれから自宅で強烈な自己嫌悪に陥ったり、
どうしたらいいか考えに考え抜いた。
そんな事をしなくても何時も通りお店に行って。
いや、食べ物が入ったバスケットぐらい手に下げて行くべきか。

とにかく店に行って直接霖之助に会って。

「この前はごめんなさいね、私がどうにかしてたわ。
 でもアナタもお客がいる時はちゃんとお客に構わなきゃ駄目よ?」

ぐらい言えばすぐに丸く収まるはずなのに。
何故かそれが言えなかった。

自惚れではないが彼だって自分の事は嫌いではない筈だ、
それだけ言えばちゃんと何時もの二人に戻れる。
いや、彼はどうとも思ってないに違いない。
アリスがこの前の事を口にして初めて。

「あぁ、そう言えばそんな事もあったね」

なんて平然とした顔で言うのだろう。
気にしてないのは嬉しいが、記憶にないと言うのは少し嫌な気分だ。
まるで自分の事なんて微塵も気に掛けていない様で。

そんなのは嫌だ。
彼にとって自分は居てもいなくてもどうでもいい存在で、
ついこの間の事さえ記憶の片隅に追いやってしまう様なのは絶対に嫌だ。
なんとも複雑である。

アリスが自分の心の中にある悶々とした気持ちを整理するのに一週間掛った。
ようやく自分の気持ちを纏めるとアリスは早速、手土産のケーキの準備を始めた。
作るのはシンプルなチーズケーキ。
前に彼に御馳走して高評価を貰った自慢の一品だ。
だから全ての工程を丁寧に行い、
調理器具の準備から片付けまで自分の手でやった。

人形を使った方が早いし、合理的だが、
これだけは自分の手で最後までやる事にした。

自分から彼に対する贈り物だから。
自分で作らなければ意味がない。




香霖堂の店先は静として居て、活気が感じられない。
何時もの事だ。

香霖堂の扉を潜る前にアリスはスゥーっと深い深呼吸をする。
秋の冷たい空気が肺を満たして、今までの悶々とした気持ちを和らげてゆく。

(行こう)

その想いと共に香霖堂の扉へと手を掛ける。
扉はアリスの思いとは裏腹に軽い抵抗力だけを残してゆっくりと開いた。

静かな店内に鳴り響くカウベルの音。
真っ先に目をやるのは彼がいつも座っているカウンター。

予想通り彼はそこに居た。
何時もの様にカウンターに座り静かにそこに居る。

だが行動は何時もと違った。

何やら裁縫をしている。
材質から見て防寒着か何か、恐らくケープだろう。
作業はそろそろ終わる頃、完成まで四半刻も掛らない程度か。

デザインは白を基調として青色のライン入り。
シンプルだが気品があって中々良いデザインだとアリスは思う。
商品として売っていたら手にとっていたかもしれない。

もこもことした飾り布まで付いているので彼が身に付ける為の物ではないだろう。
恐らく魔理沙か誰かに頼まれたものか。

魔理沙…………また魔理沙のお願い。
魔理沙のお願いだから作っている。
また、また自分じゃなくて魔理沙の………

「………いらっしゃい、アリス。
 随分と久しぶりな気がするよ、ここの所顔を見せてくれなかったから」

「………えぇ、本当に。
 特に用事が無かったから来る事も無かっただけよ。
 そうじゃなければこんな店に進んでくることなんてないわ」

「随分な言いようだね」

「当然じゃない、店主の態度込みでマイナスよ」

「肝に命じておくよ。
 それで今日はどんな用件かな?」

「えっと、それは」

いけない、つい意地になって言いたくない様な事を言ってしまった。
違う、本当はこんな事を言いに来たんじゃない。
素直に謝りに来たんだ、ちゃんとごめんなさいって。

アリスの頭の中でそんな気持ちがグルグルと掻き混ざる。

「その、それが………ところでそのケープはどうしたの?
 また魔理沙にでも頼まれたのかしら?」

言いだせないので話を別方向へ変える。
いけないとは分かっていたが、言えないものは言えないのだ。

「いいや、違うよ。
 君に、っとでも思ってね」

「え?私………?」

いまいち意味がよく理解できなかった。
何故自分なんかに。
きっとアレは魔理沙に頼まれたものだと思ってた。
また魔理沙のお願いをきいてるものだと思ってた。

それが、自分に。

「この前はすまなかったね。
 お客である君が来ているのにロクに相手もしなくて。
 目の前のお客を蔑にするなんて、僕も商人としてもまだまだかな。
 だからまぁ、そのお詫びにどうかな、なんて思って」

自分の事を気に掛けてそんな事をしてくれた。
彼もあの日の事を少なからず悔いていたと言う事か。
その謝罪の現れがこの白いケープ。

「許してくれるの?」

「許す?おかしいな、謝っているのは僕の方なんだけどね」

良く見れば眼の下に隈がある。
もう何日もずっとこうしているに違いない。
半妖の彼は睡眠をあまり採らなくても平気らしいが、
何日もそうして居るのは流石にこたえるらしい。

まったく、とんだお人よしだ。
そんな事をされたら断れないではないか。

「…………ありがとう」

「?」

「ありがとう!霖之助さん!」

「あ、あぁどういたしまして」

この日、アリスは始めて笑った。
心の底からの満面の笑みで。

彼が自分の事を少なからず必要としてくれている、
その事が分かっただけで嬉しい。

予想外のアリスの反応に霖之助は若干戸惑ったが、
アリスが喜んでいると察すると寝不足の目を細めた。

その後「疲れには甘い物よ」と言って、
アリスが焼いて来たチーズケーキを霖之助に振舞う事になった。
この時の二人の姿にもうわだかまりはなかった。

結局、何時もの二人へと戻っていた訳だ。




「いらっしゃい」

店のドアを気遣う様にゆっくりと開ける開け方。
ややあって金髪の少女が入って来る。
開いた扉から一緒に入って来る木枯らしが、
彼女の髪と身に付けている白いケープをくすぐった。

「あら今日は愛想がいいのね。
 何時もは入ってきてもずっと本を読んでるのに」

「何となくお客が来そうな気がしてね。
 さぁ、今日はどんな用件かな?」

「ふふ、特にないわ。
 しいて言うならそろそろお茶の時間だと思ってお菓子を持ってきたの」

「ほほう、今日はなんなのかな?」

「シンプルにシフォンケーキよ。
 台所借りていいかしら?切り分けたいの」

「どうぞ、なら僕はお茶の方を淹れようかな」

「あら珍しい、練習でもしたの?」

「まぁそこそこね」

「そうね最近は結構美味しく淹れられる様になったみたいだし、期待してあげる」

彼女が靴を脱い店の奥へと上がる。
動く度に白いケープがふわふわと揺れた。
店の中に入ったんだから外せばいいのに、暑くないのだろうか。
自分がプレゼントした物を気に入ってもらえるのは実にありがたいが、何処となく気恥かしい。

それに言える訳がない。
まさか君を待ってたなんて。

Comment

管理者にだけメッセージを送る

Pagetop ]

Copyright (C) 十四朗亭の出納帳 All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。