十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

プロフィール

十四朗

Author:十四朗
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ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
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お菓子メイド

リクの咲霖ですよ~
リンク先の道草さんが咲夜さんはかなり天然の入った乙女。
っという訴えを続けられてるので私も便乗してみようかなと。
咲夜さんは乙女なんだよ!
でも肝心の天然が入ってない…………


『お菓子メイド』


霖之助、咲夜









今咲夜の手元にある服は先程までこの店の主、森近霖之助が着ていた物だ。
その服をよく見てみると腕の辺りの生地が破れている。

この破れは先程咲夜が見つけたもので、
今日買い物をした時に値引きをしてくれるのなら直してもいいという条件で引き受けたものだ。

椅子に座った咲夜の膝の上でペタンと力を失った服とそれを糸と針を使い直す咲夜。
店内に響く音は咲夜が腕を動かす度にする衣擦れの音だけ。
今日の香霖堂はいつも以上に静かだ。

それもその筈、時が止まっているのだから。
今店内の時間は昨夜と服を除いて完全に止まっている。
誰にも邪魔されず誰の介入も許さない。
完全に止まった状態の霖之助と静かに裁縫をする咲夜だけの二人の時間。
もっとも霖之助の時間は止まっているので二人の時間かどうかは疑問だが。
本人が満足していればいいのだろう。

時が止まった世界で時間が過ぎる、と言うと妙な言い方だが。
咲夜が時を止めておよそ10分、服の破れていた部分はすっかり塞がっていた。

服を頭の高さまで持ち上げて縫い目の部分を確認し、
一人うんうんと頭を上下に振って納得する、これなら大丈夫。

そう呟いて霖之助の服をしっかりと抱きしめた。

時が止まった世界では感じられるはずのない彼の温もりを
手繰り寄せる様に咲夜は霖之助の服を抱きしめ顔を埋める。

自分で何故こんな事をしているのかよく分からない。
初めはただ彼の服が破けていたから善意でそれを治してやろうと思っただけだ。
それは作業中も変わらない。

だが穴の修繕が終わって服を確かめた時、無性に抱きしめたくなったのだ。

普段は彼の腕が通されている場所、普段は彼の背中を覆っている場所、
普段は彼の胸板がある場所、そんな事を思うと急にそれらに触れたくなった。

抱きしめて頬を擦りよせて自分を彼の服へと擦り付ける。

本当の彼に顔を擦り寄せて甘えている訳ではない、これはただの服だ。
でもこれは彼がいつも着ている服だ、それだけで理由は十分にある。

願わくば自分の気が済むまでこうして居たい。
もっと欲を言うなら時の止まっていない世界で本物の彼とこうして居たい。

だが咲夜にはそのどちらも遠い。
何時までも時を止めたまま此処にいる訳にはいかないし、
本物の彼は咲夜に気が有るのかどうかすら分からない。
それに時を止めたままこの様な行動を続けているだけでは彼との距離も止まったままだ。

人と距離を縮めるには踏み出す覚悟と行動が必要なのだ。
お互いに見える範囲で。
そうしなければ相手が近付いて来るのが分からない。

咲夜は名残惜しそうに服から体を離すと綺麗に折りたたんでカウンターの上へと置いた。
そしてそのまま自分の能力を解除して時を進めさせる。

店の隅っこに設置された大きな柱時計が時が動き出したのを知らせるかの様に、
カチッカチッと音を立てて動き出すのが分かった。

「速かったね、と言っても時間が止まってては関係ないか」

「あら酷いわね店主さん。私は一生懸命急いで仕上げたつもりなんだけど」

「それはまぁどうも、小さな穴だったが気付いて治してくれた事に変わりはないからね。
 本当に君は細かな所に気がきくものだな、君は」

「本来メイドとはそう言う物ですわ」

スカートの両端を掴んで小さくお辞儀をする。
内心褒められた事が嬉しかったが、
完璧や瀟洒をモットーとする彼女には態度に出して喜ぶことが出来なかった。

そんな自分が少し恨めしい、本当なら満面の笑みで「ありがとう」と返したいのに。

「約束通りお得なお買い物をさせていただくわ」

「どうぞ、気持ち分だけ安くするよ」

咲夜は先ほど自分が治した上着を着る霖之助を横目で見て満足げに口元を綻ばせた。
そして少々彼女の頬が赤い。
時刻は夕方と言っていい時間帯だが今日は生憎の曇りなので夕日は出ていない。
したがって今の彼女の頬の赤みを夕日のせいにするのは無理な話だ。




十六夜咲夜が帰った後、霖之助は今日の売上(と言っても咲夜の買い物の代金ぐらいだが)
を帳面につけ店じまいをする。日はとっくに落ちているし、今日はもう客も来なさそうだからだ。
長い事こういう商売をしていると大体そう言う事が分かる。

今日咲夜が買って言った物は主に二つ。
シンプルな柄のティーカップに、月の意匠が盛り込まれたチョーカーだ。

ティーカップの方は屋敷で使うとしてチョーカーの方は彼女の私物だろう。
趣味が彼女の主向きではない。
良く言えば落ち着いた、
悪くいえば面白みのないデザインのアクセサリーは咲夜向けだと思ったからだ。

だが決して霖之助は咲夜の事を面白みのない女性と言いたい訳ではない、むしろその逆だ。
彼女はこの店を利用する客の中でも一、二を争うほど落ち着いている。

彼女は週に一度か二度ふらりとやってきては雑貨や珍しい物を見て行く。
香霖堂を利用する客にしては支払がキッチリとしているので霖之助も中々気に入っていた。

いきなり時を止めて店内に現れるのを除けば。

あと前に一度だけ商品を拝借された時がある。
まぁその時は事は後日バスケットに、
サンドイッチとポットに紅茶をいれてお詫びをしに来たかので不問としている。

その他に居る二大ブラックリストのこそ泥とツケ少女の様に買い物以外で来ないだけありがたい。

霖之助は先程咲夜が縫ってくれた服の部分を見直す。
縫い目があまり目立たず丁寧に仕上げられている、流石に上手い。
彼女はレミリアに忠誠を誓っている様だから嫁に行く何んて事は無いだろうが、
これなら何処へ出しても恥ずかしくない。
最近の娘は料理以外の家事にとんと無頓着なので尚更だろう。

彼女を一生傍に置いて居られる者は幸せ者に違いない。
もっとも現時点で一番の有力候補はやはり彼女の主であるレミリア・スカーレットの気がするが。

ッグ!っと両手を天井に向かって伸びをして今日一日の肩や腰の凝りをほぐす。
背骨や関節がポキポキとなって気持ちがいい。

その時、不意に霖之助の鼻を甘い香りがくすぐった。
お菓子作りに使うようバニラエッセンスやチョコレートにも似た甘い香り。

霖之助は香水やコロンなんて物は使用していない、だとするとこの香りは。

「咲夜のものになるのかな」

伸ばした手を眺めながら霖之助が呟いた。
彼女は頻繁にお菓子作りをするし今日この服に触ったのは咲夜ぐらいだ。
完璧で瀟洒な彼女に似つかわしくない甘ったるい香り。
その香りは意識しないと分からないくらい弱々しい物だったが霖之助にはハッキリと感じられた。

良い香りだ、そんな事を頭の中でポツリと呟く。

そして霖之助はまた両手を天井に向かって伸ばすと、今度は深く深呼吸をした。
鼻を通り抜けて肺へと満たされる甘い香り。

しばらくの間霖之助はその香りを楽しんだ。


人と距離を縮めるにはお互いが見える距離から歩み寄らなければならない。
お互いが仲良くなろうと言う事が眼に見えて分かるからだ。

だがお互いが見えない距離からでも少しづつ、
ゆっくりとでも歩いてゆけばその距離は徐々にだが縮んでいくのではないだろうか。

それはどちらかが止まっていたとしても。

Comment

#No title
誤字がありました。
冒頭の文の来ていた物は着ていた物。
服は治すではなく直すです。
いきなり時を止めて店内に現れるのを覗けばだが。
ここは除けばですね。

自分は咲夜さんは淑女時々乙女派です。
普段クールな人が赤面するのは非常に可愛い。
  • by:
  •  | 2009/09/30/11:57:24
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#主のコメントに共感
十四朗さんの考えには共感します。

Zun史のテキストだけだと、咲夜や幽香は非常に攻撃的な
とげのあるキャラクターに感じられます。

しかし、私と同じように咲夜や幽香を純粋で紳士的であると
認識している人は少なくはありません。

もしかすると作家たちの脳内補正なのかもしれませんが、
自分の抱くイメージと違うキャラクターに出会ったとき、
それをそのまま読んで受け入れさせるのが、
物書きの力というものなんでしょうね。
  • by:弾幕小会
  •  | 2010/11/19/08:59:56
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