十四朗亭の出納帳

アニメの感想、ゲームホビーの感想など 作品のジャンルにこだわらず書いていく予定です,SSとか書いてます

プロフィール

十四朗

Author:十四朗
(じゅうしろう)と読みます
ロボとか好き東方も好き
趣味の守備範囲は日々拡大中
東方の霖之助SSが主流です
一応現役の遊戯王プレイヤー
メッセ&スカイプは大歓迎です
SkypeID『Brassp905』


リンクはフリーなので
どなたでもどうぞ
もしご連絡いただければ高所から
イヤッホォォォォ!!します


PS3アカウント『auscam』
大体マルチ対応ゲームやってると思います。

バナー

Web拍手

Twitter

 

入店者

検索フォーム

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

天狗の贈り物

はい今回は文霖ですXキィィィック!!!

今回もリクの方と同時進行で書いていたのですが、
道草さんの文霖見てたら燃料を投下されてこっちの方が速く出来ちゃいました。

リク→自分が書きたいの→リク→自分が書きたいの

そんなサイクルになりつつあるような。

『天狗の贈り物』


文、霖之助




一面が白銀に塗り潰された世界を、黒い翼をはためかせて射命丸文は飛ぶ。
今年も雪がよく積もった、先ほど人里の方へ新聞を配りに行ったが、
民家の前では子供達が雪達磨やかまくらを作ったり雪合戦を楽しんだりしていた。
どの子供達も防寒着に身を包み寒さなどお構いなしにキャキャとはしゃいでいる様子だった。

かく言う文も今はすっかり冬の装いだ。
紅葉をあしらったマフラーを口元が隠れるぐらいに深く巻き、
眼には照返しから眼を保護するためのゴーグルを装備、
外装には明るいブラウンのダッフルコートを着て。
手にはミトンタイプの手袋を、肩からには新聞を入れる為のバック。
新聞の配達の方はつい先ほどある一軒を除いて配り終えたばかりだ。

ある一軒とは魔法の森の入口に存在する古道具屋、香霖堂の事だ。
何時もは新聞が出来れば最初に届けに行くのだが今日は違った。
ある理由のせいで少し照れくさかったので一番最後にする事にしたのだ。

「もうあそこ以外は配り終えてしまったのね、速い自分が恨めしいわ。」

文はバッグの反対側に抱えた小包に目をやる。
茶色の包装紙に包まれたその小包、宛先は香霖堂店主の森近霖之助である。
もっとも文は新聞記者兼配達員であって運送屋ではない。
これは文から霖之助への個人的なプレゼントなのだ。

今日は新聞を届けるついでにこの小包を渡そうと張り切って家を出たのだが、
彼は受け取って貰えるだろうか?などと考えると自然と香霖堂から足が遠のいてしまった。

こんな事はありえないだろうが。
もし、霖之助がこの小包を受け取ってもらえなかったら。
それを考えると胸が痛む、彼に限って他人の善意を無下にするとは思えないがそれでも少し怖い。

文にとって霖之助は忘れる事の出来ない人物だ。
天狗の学級新聞なんて言われていた状況から脱したくて、
山以外にも新聞を売り込みに行ったものの誰も相手をしてくれず正直諦めかけていた頃。
新聞を取ってもいいと言ってくれた人がいた、それが霖之助だ。

新聞の執筆に行き詰った時や、
発行部数が伸び悩んでいた時にアドバイスや遠回しに励ましの言葉をもらった事がある。
初めて新聞の大会で賞を取った時等は共に喜んでくれたりもした。
彼は日がな仏頂面の男に見えるが根はそんなにも無愛想ではない。
人の好意を無下にするような対応はしないだろう、多分。

文は疑念を払うように首を左右に振ると、力強く翼をはためかせた。
羽ばたく度に胸の中の不安を払いのける。どこかへ行け、あっちに行けと。
澄んだ羽音と共に体が前へ押し出されマフラーの隙間や無防備な耳に冷たい空気が突き刺さった。
天狗の身でもこの寒さは少々辛い。

だが香霖堂へ辿り着けば暖かい部屋が待っている。
きっと店主も暖かく迎え入れてくれるだろう。




玄関から入れるぎりぎりのスペースしか雪掻きされていない玄関前を見て、
実にものぐさな店主らしいと思う。

屋根の雪も大分残ったままだし店の前の道にいたっては開けられてすらいない。
こうなると香霖堂は空を飛ぶ手段を持つ者ぐらいしか入る事が出来ない。
この時期はただでさえ静かな香霖堂は、ストーブを焚く音ぐらいしかしないので。
雪の積もる音でも聞こえてきそうなくらい静かになる。

だがそんなのも悪くない、むしろ好都合だ。

顔からゴーグルを外し首に吊るすと、扉に手を掛け勢いよく押す。
文が扉を押すと同時に扉に設置されたカウベルも勢いよく鳴った。

そしてカウベルに負けないくらいの元気な声で。

「毎度おなじみ文々。新聞です!新刊をお届けに来ました!!」

予想通り静かだった店内に文の声が響き渡る。
それとなく店内を見渡してみたが、
来客に気づいて読んでいた本から顔をあげた霖之助以外誰も居ないようだ。

香霖堂の中はストーブがよく効いていて暖かった、
お互いに挨拶を済ますと文は着ている防寒着を玄関横のハンガーへ掛ける。

「前の号から半月ほど経った頃だから、そろそろじゃないかと思ってたよ。」

文の手から新聞を受け取る霖之助、表情は嬉しそうだ。

「それはどうも、待っていてくれる人がいると新聞も作りがいがあると言うものです。」

「それは君の新聞が面白いからだよ。
外は寒かっただろう?何か温かい物を用意しよう。」

文にストーブの近くに座って居る様に言うと、店の奥の居住スペースへ入っていき数分で戻って来た。
手には湯気を上げるマグカップを持っている。

「ココアでよかったかな?お茶よりあったまると思ってね。」

「はい、ありがとうございます。」

先ほどと新聞を渡した時とは逆に霖之助の手からマグカップを受け取る文。
温かいココアがいれられたマグカップは熱を帯び文の手を温める。
そして優しいアーモンドの香りが鼻をくすぐった。

「山の方はどうだい?この雪なら山の方でも天狗は雪掻きで大忙しだろう?」

「えぇ、椛なんかは今朝から雪掻きに駆り出されていましたよ。」

「君はいいのかい?」

「駆り出されたのは普段山の哨戒に当たっている天狗ばかりでしたから。」

「そうか、まぁ君の地位ならそうだろうね。」

「よしてくださいよ、それだとまるで私が楽してるみたいじゃないですか。」

「そんな風に言ってないよ、どうせこの新聞だって昨日徹夜して間に合わせたんだろう?」

図星だ、今回の文々。新聞は文が自分で決めた締切ギリギリに出来あがっている。
ネタの集まりが悪かったのもあるが、
文が霖之助に渡そうとしたある物を作るのに時間を取られたからだ。

「あやややや、どうして分かったんですか?」

「君は徹夜した後新聞を届けに来ると、物凄く安心した顔をするからだよ。
 よかった、間に合った。なんて顔をね。」

「むぅー私そんなこしてましたか?」

「さっきココアを受け取った時なんてそんな顔だったよ。
 だからそのココアは甘めに作っておいたんだ、疲れてると思ってね。」

確かに飲んでみると少し甘めだ。
疲れた体に丁度いい、おまけに体の中から温まる。
体の外からはストーブ、内側からはココアの組み合わせは
ここを離れたくないと思わせるには十分だった。

「うん、美味しいです。」

「それはどうも。」

二人はそれっきり黙ってしまった。
次に言うべき言葉が見つからない、この心地の良い沈黙にずっと寄りかかって居たくなる。

だがこれではいけないのだろう、しっかりと渡す物は渡さなければ。
ここに来た意味の半分くらいが無くなってしまう。

「あのぅ、霖之助さん。」

「ん?なんだい。」

「実は今日香霖堂へ来たのは新聞を届ける為だけじゃないんです。」

そう言って入店してからずっと抱えていた小包をカウンターへ差し出す。

「これは?」

「み、見ての通り貴方への贈り物です!わ、私からの。」

後半になるほど消え入りそうな声で言い、最後に開けてみてくださいと付け加えた。
彼女の顔を見てみると気恥かしさからか耳まで真赤だ。

文の言葉通り小包を丁寧に開けてゆく。
小包の封が一つ一つ解かれていくのを見て心音が速くなるのが分かった。

そして最後の封が解かれ霖之助が小包の中の物を手に取る。

「ほぉう、マフラーか。」

小包の中から出て来たのは紅いマフラーだ。
赤いではなく紅いなのはそのマフラーが紅葉をモチーフにしたデザインだからだ。

このマフラーは秋の初め頃から文が編み始めた物で、
本来なら冬の初め頃に完成する予定だったのだが時間が余り取れずに作業が難航していたのだ。
冬が終わる前には、と頑張ってはみたが結局完成は冬も半ばに差し掛かった今頃となってしまった。

「私が編んだんですよ、ちょっと遅くなっちゃいましたけど。
 霖之助さんは出歩く事は少ないかもしれませんが、
 こんな物でもあれば楽なんじゃないかと思って。あの、その。」

「いいのかい?僕が頂いても。」

「貴方の為に作った物ですから、貴方以外には渡しませんよ。
 いつも新聞を読んでくれるお礼です。」

「そうかい、なら遠慮なく頂くとしよう。ありがとう。」

「ど、どういたしまして。」

霖之助は礼を言うと、
何か思いついたような顔をして立ち上がって、
売り物の防寒着などが置いてあるスペースへ移動すると何やら探し始めた。
手袋でもなくコートでもない、何か別の防寒具を探しているようだ。

「あったあった、これだ。」

「何を探してたんですか?」

「耳あてだよ、君は気付いていないのかもしれないが耳が真赤だ。
 きっと寒い中耳当てもせずに飛んでたからそうなったんだよ。
 だから君に耳当てでもとどうかなと思ってね。」

霖之助が売り物の防寒具達の中から取り出してきたのは、
綺麗なオレンジ色をした耳あててだ。
耳が当たる部分はふさふさとした素材で覆われておりとても温かそうだ。

ポンポンと埃を払うとそのまま文へと渡した。

「そんな、受け取れませんよ。」

「君は僕と違って外へ出歩くことが多いだろう?
 だからこんな物でもあれば楽なんじゃないかな。」

「でも……」

「いつも新聞を読ませてもらっているお礼だよ。」

さっきの自分と同じような言い回しに文は思わず噴き出してしまった。
本当にこんな物事のやり取りが好きなんだと改めて思う。

「仕方ないですねぇ、これは私が貰ってあげます。」

「うん、それでいいよ。」

「大事に使いますからね。」

「そうしてくれ、道具も喜ぶと思うから。」

彼の言葉を合図に文はマグカップに残っていたココアを一気に飲み干す。
胸の中が温かい、まだココアが温かかったせいだろう。

「御馳走様でした、それでは今日はこの辺でお暇させてもらいますね。
 長居すると霖之助さんのご趣味に支障が出そうですから。」

「こらこら、この店のどこが趣味だって言うんだい?」

「全部です、特に店の前をロクに雪掻きしてない時点でお客さんなんて着ませんよ。」

喋りながらも防寒着をさっき脱いだ時とは逆の順番に着ていく。
コートに袖を通し、ゴーグルをはめマフラーを巻いて手袋をする。
勿論貰ったばかりの耳当てをするのも忘れない。

「次の新聞は速く出せる様にしますから期待していてください。」

「あぁ、期待して待ってるよ。」

その言葉を背に玄関の扉を開け、最初は脚力だけで空中へ飛び上がる。
そして次の瞬間には大きな黒い翼を広げ空へと飛び立った。

一気に翼に力を入れて上昇すると先ほどまで居た香霖堂はすぐに小さくなってしまった。
顔に刺す冷気も来る時よりは気にならない、防寒具が一つ増えたからだろう。
おまけに顔が暑いからかもしれない。

文はその感覚を拭い去るように空中でロールを繰り返したり、急降下と急上昇を繰り返す。
我ながら変な飛び方だと思ったが別に構わなかった。
何故か今は物凄く楽しいのだ。

彼とお喋りをしたり、彼のいれてくれたココアを飲んだり、
彼にプレゼントを渡したり、逆にプレゼントをされたり。

今日起こった彼に関する出来事の一つ一つが楽しくて仕方なかった。

これから自分と彼の間にはどんな楽しい事があるのだろう?そんな事を文はぼんやりと考える。
一緒に御飯を食べたり、一緒に何処かへ出かけたり、一緒に店番をしたり、一緒に暮らしたり。

最後の方まで考えて思わず苦笑いする、「何を考えているんだ」っと。

だがそのどれもが今の文には最高に楽しそうに思えた。

Comment

#管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • by:
  •  | 2009/09/04/00:26:35
  •  | 
  •  | Edit

管理者にだけメッセージを送る

Pagetop ]

Copyright (C) 十四朗亭の出納帳 All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。